秋のファン感謝祭当日のステージ裏で、最後の打ち合わせをしている。
「みんなセリフは覚えた?衣装は大丈夫?」
ファルコが中心となって最終確認を行っている。その間にふと観客席を俺とキングの2人で覗き込んだ。すると、そこには想像を超える観客が待機していた。
「キッキングさん?想像以上の観客数ですね」
「そうね……想定より少し多いかもしれないわ」
テンパる俺に対して、この自体を想定していたかのような冷静さ。
「はぁ……あなたねぇ。もう少し知名度とかそういうものは知っておきなさい? 皐月賞を取って菊花賞を控えたスカイさん。ダービー、天皇賞秋、宝塚記念を勝っているスズカさん。そして、私キングヘイローがいる。それだけで注目されているし、チームで注目されているんだからこれだけ集まるのも当然よ」
ついでに、キングは勝負服を着て司会のようなことをする。流石に他のメンバーはステージに出て、キング1人だけずっと裏方をやらせる訳には行かないからな。
「それじゃあ、あとは任せた。俺も観客席から見てるからな」
俺はそう言って観客席に向かった。すると、そこには見かけた顔がいた。
「おぉ、キタサンとダイヤか。よく見に来てくれたな」
フル武装をしたキタサンブラックとサトノダイヤモンドが待機していた。マックイーン直伝のライブ武装だ。そして、その横には見かけない男性が2人……もしかして不審者!
「えっと……そちらのお二人は誰かな?」
「「私たちのお友達です!」」
どうやらレースを見ていくうちに仲良くなっていき意気投合したのだとか。
そんな話をしていたら、ライブの開演時間となっていた。
「ほら、そろそろ始まるぞ。俺たちのチーム逃げ切りシスターズのライブが!」
ステージの中央にコツッコツとキングが1人立ち止まった。
「ファンのみなさん、今日のライブ楽しみに待っていたかしら?」
観客席はキングの登場で既に盛り上がりを見せていた。
「残念ながら私のライブを見ることは叶わないけど、それは菊花賞まで取っておきなさい?」
流石はキング。会場の注目を集めるのが上手いし、いい具合に場も盛り上がってきてる。
「けど、今回はファンのみなさんのために、チームレグルスのウマドルユニットを結成したわ!」
ユニット結成と聞いて会場はザワついていた。それもそうだ。今日のライブは、チームレグルスによるライブとしか告知していない。もちろん、学園側に許可は取ってある。
「それじゃあ、入ってきてちょうだい!ユニット名は逃げ切りシスターズよ!」
逃げ切り♪逃げ切り♪というイントロと一緒にスズカ達がステージに入場していく。そして、整列が終わり。センターのスズカがマイクを手に取る。
「どうも皆さんこんにちは!ライブも全力で駆け抜けます!サイレンススズカです」
エメラルドグリーンのライブ衣装を着たスズカが、手を振りながら観客に挨拶をする。フリフリのスカートに、腰にリボンの装飾が着いたかなり可愛らしいデザインに仕上がっている。
「今日は皆さん来てくれてありがとうございます。ぜひ楽しんで言ってください!」
そうして、そのままマイクはスカイに預けられる。
「どもども皆さ〜ん。白い雲のように、セイウンスカイだよ〜」
スカイは若干水色がかった白の衣装だ。装飾は全員統一してある。
「今回はセンターじゃないけど、菊花賞ではセンターで踊るからみんな応援に来てね〜」
さっきのキングに対抗する発言。それによってスカイとキングのファンは大いに盛り上がりを見せた。そして、マイクはマックイーンに。
「どうも皆さん初めまして。メジロマックイーンと申します。まだデビューもしていないですが、先日「スイーツの」お誘いを受け、お恥ずかしながら「パクパク」させていただきました……ってスカイさん!?」
マックイーンがスカイによる思わぬイタズラを受けて、顔を真っ赤にしてスカイを睨んでいた。スカイは楽しそうににゃははと笑っていた。なお、俺たちは知らないがこの日を境に、デビュー前なのにマックイーンのファンが増えてスカイのファンも増えたと言う。
「コホン……という訳で本日はよろしくお願いします」
マックイーンは薄紫色の衣装を纏っての参加だ。次はブルボンにマイクが移る。正直1番不安だが……
「ライブの楽しさを皆さんにお届け、ミホノブルボンです。よろしくお願いします」
マックイーンの固い挨拶と、直前のブルボンの無機質な表情。それとは真反対のような明るい笑顔での挨拶となった。そのギャップからか、観客的には結構な好印象。そして、ついにファルコの手元にマイクが渡る。
「どうもみんなー!ファルコが逃げたら追いかけろ!スマートファルコンです!ウマドル目指して奮闘中だよ!今年中にデビュー予定だからレース場で見たら応援よろしくお願いします!」
大きな反応は得られなかったが、観客みんながファルコを期待の目で見ていた。そんな視線の中に上を見上げる小さな影が。
「タイシンじゃないか!」
「っげ……」
っげとはなんだ、まるで俺に会いたくないみたいじゃないか。案の定タイシンの目には俺は良く写ってなかった。
「私……入学後のチーム変えようかな……」
どうやら今回のうちの催しがお気に召さない様子だ。
「こういう事はあまりしないストイックなチームだと思ってた」
「まぁ、そう言うな。こういうのも大事なことなんだよ。見てればわかるよ。ほら、始まるぞ」
一曲目はMake debut! ウマ娘にとっては全ての始まりの曲だ。そして、逃げ切りシスターズにとっての始まりになる。続くか……は知らないけど……
会場は大盛り上がりだ。デビュー線でスズカとスカイのファンになった人もそう多くないだろうし。クラシックからのファンにとっては、生で見れる絶好の機会だからな。
(俺はデビューからずっと見続けてるからな)
心の底で周りにマウントを取りつつ、横にいるタイシンの顔を見た。その目は周りの人同様輝いていた。
「みんなー!聞いてくれてありがとうございます!」
1曲目が終わり、スズカが顔を真っ赤にしながらファンたちに手を振る。本当はありがとうございますじゃなくてありがとーって言うところだったんだけどな。
「次に歌うのは私たちのオリジナル曲です!メンバーのファルコちゃんが考えてくれました!」
スズカからファルコへとマイクが渡された。
「どうもスマートファルコンことファルコです♪みんなは私のことを知らないかもしれないけど、チームが出来た時のために頑張って考えた曲なので聞いてください!」
そして、すぐにスズカにマイクを返した。
(良く我慢したなファルコ……)
本当は中央で1番目立ちたいはずだ。自分の曲をみんなに聞いて欲しい。それでも、このライブを1番盛り上げるために我慢してスズカにマイクを返した。
「それじゃあ聞いてください!【逃げ切りっ! fallin'Love】」
新曲のイントロが流れ始めた。ついでに言うと、楽曲作りや衣装作りなど色々な雑務をキングが背負ってくれた……背負ってくれたというかノリノリで作業に勤しんでいた。
(楽しい!私がセンターじゃなくっても。色んな人のためにするライブが!)
(ステータス高揚。ライブの大切さ、ファンからの想い……)
(ライブ中のスカイさんがこんなまじかに!いやいや、メジロ家として初めてのライブに集中しなくてわ)
(いや〜やっぱりステージの上はテンション上がるね。トレーナーも見てるし、気合い入れちゃおっかな!)
(やっぱりこの衣装も曲も可愛らし過ぎない!?)
メンバーが各々の想いを持ってライブに挑んだ。そして、問題なくライブは終了した。
「それで?チーム変えるっていう話は?」
俺がそう言うと、こちらを睨みつけながら軽く背中を小突かれた。
「ふん……元々冗談のつもりだし、調子乗んな」
そのままタイシンはその場を去っていった。俺は俺でメンバーの元に向かった。
「お前らお疲れ様。ライブは大成功だったぞ」
後々知ったが、この時の逃げシスのグループ結成はネットでは結構話題になっていたらしい。
「いや〜本当に疲れちゃったよ〜。セイちゃんはゆっくり休みまーす」
スカイを先頭に更衣室へと足を向けた。そして、最後にファルコが戻ってきた。
「どうだった?楽しかったか?」
「楽しかった!でも悔しかったなぁ……」
ファルコはステージの方を眺めている。
「いつかファルコもセンターで踊れるよう頑張らないと」
そう気合いを入れて、ファルコも更衣室に向かった。さぁ、ファン感謝祭は終わった……ここからは秋のレース本番だ。
新生チームレグルスで1番好きなメンバーは?
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サイレンススズカ
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セイウンスカイ
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キングヘイロー
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メジロマックイーン
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ミホノブルボン
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スマートファルコン
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ナリタタイシン
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トレーナー