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デビュー戦当日、俺とスズカは待機場にすでに到着していた。
「初めてのレース……不安か?」
「いえ……早く私たちの走りを見て欲しいくらいです」
昨日の不安も今はないようだ。やる気十分、勝つ気満々と言ったところだろうか。
「今回のレースは芝1600m右回り、馬場状態良で走り易い状態になっている」
「レース中に何か気をつけることとかってありますか?」
「ここの第3コーナー手前には淀の坂と呼ばれる結構な坂がある。そこで無理をしすぎて、スタミナを使い過ぎないようにするくらいさ」
「分かりました。坂は気をつけるようにします」
「今回のレースの作戦は特別に考えてはない。お前の好きなように走ってこい」
「作戦なしですか?それって大丈夫なんでしょうか……」
普通なら先行や差しといった作戦を立てるのだが、今回はデビュー戦でまだスズカは周りにマークされたりもしていない。小細工無しで正面から逃げ切るのが1番だろう。
「大丈夫だ、難しいことなんて考えず、今までのトレーニングで得たものを信じて思いっきり走ってこい!」
「分かりました!行ってきます!」
「せっかくのデビュー戦だ、楽しんで走ってこいよ」
「はい!」
そうして、スズカのことを送り出し、俺は観客席へと向かう。
「おーい、後輩〜こっち来いよー」
どの辺りに座るか悩んでいると、ここに居るはずがない、沖野先輩が俺のことを呼んでいた。
「なんで先輩がこんなところにいるんですか?」
「ちょうどトレーニングの休日と被ったもんでな。せっかくの後輩のデビュー戦だから見に行ってやろうと思ってな」
「それは、わざわざありがとうございます。今日はうちのスズカの走りをしっかりと見ていってくださいね」
沖野先輩には世話になってるし、スズカがしっかりと成長してるところを見て欲しい。
「随分余裕そうだけど、勝算はもちろんあるんだな?」
「もちろんです。勝ちますよ、スズカは」
そんな話をしていると実況のアナウンスが入る。
『出場ウマ娘が今パドックに入場します』
『1枠1番サイレンススズカ、1番人気です』
1枠1番の1番人気か。1が並んでいい事ありそうな並びだな。
『デビュー戦とは思えない仕上がりですね。どんな走りをしてくれるのかが楽しみです』
「いい仕上がりだ。デビュー戦までに、よくここまで仕上げたな」
「スズカが頑張ってくれたおかげですよ」
その後、2番3番と10人のウマ娘たちが順々に紹介されていく。
「パドックで見た感じでは、スズカを上回る娘はいなそうですね……」
「ああ、このまま勝負すればほぼ勝ちは確実だろうな」
(頑張れよスズカ。いつも通りの走りさえ出来れば、お前が負けることはない)
『全てのウマ娘がゲートインしました。芝1600m馬場状態良』
『今……スタートしました!』
スズカは好スタートを切った。練習をしたかいもあり、本番の緊張感から出遅れることも無かった。
『1番サイレンススズカが好スタートを切りました。そのまま先頭にたちます』
「いいぞ、スタートからスピードがしっかりと乗ってきてる!」
「相変わらず、綺麗なスタートだな」
スタートのトレーニングをしたかいもあって、スタートから周りとの差をつける。
『サイレンススズカが先頭に出て徐々に後方との距離を離していきます』
『サイレンススズカが逃げます。少々掛かっているでしょうか?後半にスタミナが持つといいんですが』
2人の実況者さんは的確な実況をしているが、間違いがあるとしたら、スズカは掛かっているわけじゃない。あれがスズカの走りそのものだ。
向こう正面に入って更にスズカがスピードを上げていく。後方とはかなりの距離が離れている。
『サイレンススズカ、更に加速していきます。後方のウマ娘たちは追いつくことができるのでしょうか!?』
スズカが後方を一瞬だけ確認する。レース全体の流れを見る余裕が、まだあるようだ。
第3コーナーの淀みの坂を上り始めて、ペースが少し落ちていた。坂のトレーニングはしてこなかったから仕方ないが、坂もしっかりと練習しないといけないな。
今回こそ後方の差が開いてるから抜かれることはなかったが、隙をついて抜いてくるウマ娘もいるだろう。
『第3コーナーの坂でサイレンススズカが減速しています。しかし、後方との距離が開いていて追いつかれることがありません!』
そしてレースは終盤に差し掛かり、最後の直線に入っていく。
「行け!スズカ!走りきれぇぇえ!」
『サイレンススズカ落ちない!そのままスピードを維持して、そのままゴール!サイレンススズカ、2着と7バ身差をつけて勝利!大逃げを成功させての圧勝です!』
スズカが勝った。1着でゴールしたんだ。
「うぉぉぉぉおおお!」
俺は嬉しさのあまりその場で叫んでしまった。
「うぉ!びっくりしたな。それにしても、ここまで差をつけて勝つとはな。こりゃ俺も負けてられねえな」
「沖野先輩、すいません。スズカのところに行ってきます」
「あぁ、俺のことは気にしないで行ってこい」
「スズカ、1着おめでとう。素晴らしい走りだったぞ」
「トレーナーさん……私勝ちました、勝てました。大逃げで逃げ切りました」
「ああ、終始後方を寄せ付けない力強い走りだった。良くやってくれた」
つい頭を撫でてしまった。マズいと思って、手を退けようかとも思ったが、スズカが尻尾揺らせながら、嬉しそうにしてたのでそのまま撫でることにした。
「トレーナーさんが私のために、しっかりとトレーニングを考えてくれたおかげです」
俺はできる限りスズカの意見を尊重しトレーニングを組んできた。けど、それで大逃げを実行できたのは、誰でもないスズカの努力そのものだろう。
「これからの相手は、もっと強くなっていく。逃げるのも今日のレース以上に難しくなるだろう。そのために、スズカにはこれからも頑張ってもらうぞ」
「それよりも、今はレースに勝ったんだ。お前にはまだやらなきゃいけないことがあるだろ?」
「ウイニングライブ、頑張って踊るのでちゃんと見ていてくださいね?」
「当たり前だ、ライブでミスしないように今は休め。ライブまではまだ時間がある」
「ここで失敗したら、格好がつきませんもんね」
ウイニングライブは、上位3着のウマ娘しか立てない舞台だ。白熱のレースを繰り広げた彼女らのライブは、とても輝いて見える。レースでもライブでも、夢を届けたいというスズカの夢。これはその夢の第1歩だ。
「それじゃあ、俺はウイニングライブの席を取りにいくかね」
「あっトレーナーさん」
俺が部屋を後にしようとするとスズカに呼び止められる。
「どうした?」
「私……レースとても楽しかったです!走ってて楽しいって感じました」
「そうか、それはよかった」
つい笑みが漏れてしまいながら、そう言って部屋を後にした。
「おい後輩、早くしないとウイニングライブのいい席埋まっちまうぞ」
「そうですね、せっかくの自分の担当ウマ娘のウイニングライブ。特等席で見ないと勿体ないですね」
俺もできる限り最前列の方でライブをみたい。
『レースを勝ち取ったウマ娘達によるウイニングライブが始まります』
ウイニングライブが始まった。スズカの踊りと歌は振り付けもしっかりしていたし、歌詞も間違えていなかった。しかし、どこか味気なく感じてしまった。
見本通りのライブという感じになってしまい、自分の色が出てない感じがする。
そんなふうに、思うこともあったし、これからの課題も見つかったが。その日のスズカのウイニングライブは、今までのどんなウマ娘のライブよりも、俺には輝いて見えた。
知識が全くないせいでレースの内容が薄くなってしまうのは申し訳ないです。