目を開くと、眠っているトレーナーさんが目に入った。そして、それを起こそうと立とうとした時、自分の足が動かせないことに気がついた。正直、無理な走りをした自覚はあるし、こうなるんだろうな……とは思ってた。
「トレーナーさん。トレーナーさん」
私の呼びかけでトレーナーさんが目を覚ました。そして、私が目を覚ましたことにすごく驚いてた。一体どれだけ私は意識を失っていたんだろう……
トレーナーさんの話を聞くと、どうやらレースが終わってから3日間近く私は意識を失っていたらしい。幸いなことに命に別状もないと。
「私の脚はどうなりましたか……?レース中に脚の痛みを振り切って走った時点で覚悟はしてました」
脚が動かないという事は骨折以上の怪我をしているはず……覚悟はしてる。けど、前みたいに走るためならどんな努力だって惜しまないつもり。
「粉砕骨折だ……レースを走りきれたこと自体が奇跡だって言われたよ」
粉砕骨折……しかし、お医者さん曰く、粉砕骨折で済んだことすらも奇跡的なことだと言っていたらしい。
「元通りに走れるようになりますよね」
治すのに時間がかかってもいい。辛いリハビリにも耐えてみせる。また、レースで走ることができるなら。
しかし、次にトレーナーさんが発する言葉は、私の覚悟を軽く飛び越えて行った。
「それが、元に戻るかは分からないそうだ……」
その後も、トレーナーさんが何かを説明してたけど正直頭には入ってこなかった。
「え……?」
頭の理解が追いついた時。ポツンと一言だけしか発せなかった。走れない?もう、前みたいに?
「走れな……え、でも。私、そんなことになるなんて」
怪我は覚悟してた。でも、あんなにも速く走れて。もう無理?嫌だ。嫌だ!
「嫌だ……もう走れない……走れない」
頭が真っ白になった。その後何十分も取り乱して、トレーナーさんに慰められながら何とか落ち着きは取り戻した。
「すいません……今は1人にして貰えないえしょうか……私には少し受け入れられそうにないです」
そう言ってトレーナーさんには帰ってもらった。どんな顔をすれば良いのか分からなかった。どうすれば良いのか分からなかった。何よりも1人になりたかった。
「アアアアアァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!」
声にならない声を出して叫んだ。物に当たった。泣き叫んだ。そして、気付いた時には疲れて眠っていた。
そして、その日から私は面会謝絶となった。
スズカが目覚めた翌日に、俺はチームメンバー全員を集めてことの経緯を話した。
スズカが目を覚ましたこと。脚のことで精神的に大きなダメージを負ってしまったこと。そして、今は面会出来る状態では無いこと。
「スズカの状況は良くは無い……けど、トレーニングを疎かにするわけには行かない。通常通りトレーニングは行う」
部屋に静寂が流れる。軽く受け流せるような内容ではないし、仕方がない。俺がスズカの面会謝絶を聞いたのも今朝のことだ。正直俺自身も困惑してるし、この場を治めることが出来たなかった。
「ほら!ファルコさんブルボンさん!トレーニングに行きましょう?ファルコさんはデビューしたばかりで、ブルボンさんはまだまだスタミナ不足が目立ちますわ!」
その静寂を断ち切ったのはマックイーンだった。
「それでは、私達はお先にグラウンドに向かっています」
マックイーンがファルコとブルボンを連れて部屋を出ていった。残されたキングが1歩前に出た。
「スズカさんの件。私はあなたが間違ったことをしただなんて思わない。これからの事もあなたが悩んで選ぶことなのよね?だったら、その選択を担当である私たちは見守る。もしも間違った道を歩みそうになったら、このキングヘイローが首元を掴んででも引き戻してあげるから安心しなさい」
そう言って、そのままキングは部屋を出て行った。流石に付き合いの長い3人からはこっちの悩みなんてお見通しって訳か。
「にゃはは。キングはあー言ってるけどさ、私たちはトレーナーさんを信じてるよ?私たちは大丈夫だから、間違えないように……後悔のないようにね?まー休み休み行きましょ〜」
「そうだな……あっでもトレーニングは休みすぎるなよ?」
「あははは……それじゃあ行ってきまーす!」
スカイもキングの後を追うように部屋を出て行った。
(たしかに……俺が思い詰めすぎちゃだめだ。俺が何をすべきか分かってないんだからな)
とりあえず、気分転換にコーヒーでも買いに行くか。そう思い、俺は1回仕事を休憩して外に向かった。
「よう後輩」
「沖野先輩」
俺が自販機でコーヒーを買って、1口飲み始めたところで沖野先輩がやって来た。
「随分と疲れた顔してんな。まぁ、お前も最近色々あったから当然っちゃ当然か」
「あはは……傍から見てもそう見えますか」
あまり表には出さないようにはしていたけど、先輩から見ても俺は随分疲れた顔をしているらしい。
「それでなんだが、久しぶりに今晩どうだ?お前も話したいことの1つや2つあんだろ。息抜きついでにな。俺も話してえことあるし」
そういえば、秋になってから忙しいすぎてそういった時間も取れずにいたな。先輩たちに話を聞いてもらいながら、1回リフレッシュするとしよう。
「そういうことなら、いつものところでいいですか?」
「いや、今日はここに来い。俺とオハナさんの行きつけの店でな」
先輩はそう言って、俺に住所の書かれた紙を渡してそのまま去っていった。
「んじゃ、また後でな」
俺もその後チームルームに戻って業務を進めた。月末に控えたファルコの2度目のレースにも備えないといけないしな。
そこからは特に問題なくトレーニングも終えて、俺の少しスッキリした顔を見たみんなも安心して帰って行った。
新生チームレグルスで1番好きなメンバーは?
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サイレンススズカ
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セイウンスカイ
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キングヘイロー
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メジロマックイーン
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ミホノブルボン
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スマートファルコン
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ナリタタイシン
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トレーナー