トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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トレーナーも1人の男だということを忘れては行けない


第125話:バレンタイン!そこ変われトレーナー!

 今日は2月14日バレンタインデー。去年は初めてチームメイトからバレンタインチョコを頂いたわけで。まだ20代の俺としては、担当と言えど、数歳しか変わらない異性から貰えると嬉しいわけで。しかも、たちの悪いことにウマ娘は全員才色兼備という特徴を持っている。それは俺の担当ウマ娘たちも例外じゃない。よくないことだとは分かっていても、漢として浮かれずにはいられなかった。

 

「あっおはようございます。紫葉さん」

 

 早朝、一番最初に出会ったのは葵さんだった。チームルームに向かう途中に遭遇した。去年もチームルームに向かう途中で会ったんだよな。

 

「おはようございます。葵さん。この時間に会うのは珍しいですね」

 

 チームルームが同じ棟にある関係上、葵さんとこうやってばったり会うことは珍しくない。しかし、今日はやらなきゃいけない仕事が多かったため、いつもよりも早く来ていた。

 

「そうですね。私は、先日あったウララさんのレースデータのまとめや肩を痛めてしまったグラスさんのトレーニング。やらなきゃいけないことが山積みなので」

 

 そういえば、ハルウララも去年にデビューを果たしたらしい。ファルコがダート路線ではなく、芝路線を走っているので、詳しいレース結果とかはしっかりと調べていないが……

 

「あぁ、それと今日はバレンタインなので、これをどうぞ」

 

 葵さんはカバンを開けるとその中から丁寧に包まれたお菓子をくれた。

 

「手作りのチョコレートです。味はライスさんとウララさんのお墨付きなので美味しくできていると思います!」

 

 義理チョコと言えど、同年代の異性からチョコレートをもらえて嬉しくないわけがない。表情には出さないようにしつつお礼を言う。

 

「ありがとうございます葵さん。美味しくいただきますね」

 

「はい。今後もよろしくお願いしますね」

 

 葵さんは軽く手を振りながら自分のチームルームに向かって行った。俺もチームルームに向かおう。

 チームルームのドアを開けると、普段なら想像することが出来ない光景が広がっていた。そう、スカイが俺よりも早く部屋の中にいたのだ。しかし、眠っているようでソファーで横になっている。

 スカイには去年もバレンタインをもらった。今年も何か用意してくれたのだろうか?と思っていたら、俺の視線は机の上に釘付けになった。そこには明らかに贈り物と分かる用に包まれた物があった。

 

(いや、スカイを起こすのも申し訳ないしな……)

 

 普段のスカイなら、確実にまだ寝ている時間だ。それを無理に起こすのは気が引けた。俺はそのまま自分の机に座って、事務作業を済ませることにした。

 

「おはよう、あなた」

 

「おぉ、おはようキング。まだ朝練までは結構時間があるが」

 

 キングは眠っているスカイを横目に俺の横まで寄ってきた。元々大人っぽいキングだが、今日の彼女はなんだかいつもよりも大人っぽいというか色っぽいというか……

 

「これ、今日はバレンタインだから」

 

 キングはそう言いながら、ケーキが入っていると思われる箱を俺の前に置いた。

 

「それに合う紅茶も持ってきたから淹れるわね。開けて待っていてちょうだい」

 

 箱を開けると、中にはサイズが大きすぎない小ぶりなマフィンが6つ入っていた。

 

「それなら仕事しながらでも食べられるし、この時間から食べても重くないでしょ?」

 

 確かに、これなら片手間に食べられる。朝から食べても胃にダメージは来ないな。

 

「流石キングだな。助かるよ。それにしても、随分と紅茶を淹れるのがうまくなったんだな」

 

「ふふふ。私を誰だと思っているの?キングは何事も一流なのよ」

 

 今日のキングはいつもの気高い雰囲気と違い、お淑やかな雰囲気をまとっている。紅茶を淹れるその姿からは気品を感じる。

 そして、キングが今までどれだけ練習を積み重ねてきたのも分かる。キングは元々、料理や家事が絶望的に出来なかった。スカイにはキングクッキングなんてからかわれる程で凄かったらしい。

 

「ほら、少し休憩にしてキングとティータイムを共にする権利をあげる」

 

 キングが出してくれた紅茶を啜りながら、キングが作ったカップケーキを2人で食べた。6個は個数が多いと思ったら、こうやって2人で食べるためだったんだな。

 

「美味いな……前に味見させられた紅茶とは全然違うよ」

 

「もう!そうやって意地悪言わないの」

 

 キングとのティータイムを楽しみながら、俺は気づいてはいけないことにまた1つ気が付こうとしていた。それは、例え相手が自覚しても俺が気付いてはいけない感情。

 キングだってもう子供じゃない。出会った当時の幼さは消えて、今は心身共に成長して大人らしくなった。それを意識してしまったら、俺は自分を律する自信が無い。だからこそ、俺はスズカとトレーナーと担当の関係でいられるのだから。

 

「すまんすまん。でも、ありがとう」

 

 こうして、最後のカップケーキを食べ終えて、ティータイムを終えようとしたところで後ろから大きな声が響いた。

 

「あああああ!寝過ごしてキングに先越されちゃった……」

 

「あら、随分と遅い起床ね。ぐっすり眠っていたわよスカイさん」

 

「ぐぬぬぬ」

 

 スカイは悔しがりながらも、机に置いてあった物を持って俺の方に寄って来た。

 

「私も頑張って作ったので、味わって食べてくださいね~」

 

 貰った包装を開けると、中にはマカロンが入っていた。お菓子作りには詳しくないが、マカロンとかって作るの大変そうだけど……スカイは手先が器用だからな。

 これで、何事もなく平和に朝練までの時間を過ごすと俺は思っていたんだけど……

 

「いやさ~今日のキングはいつもに比べてセクシーな感じだよね~」

 

「それは……何を言いたいのかしらスカイさん?」

 

「最近、大人向けの化粧とか最新作のコスメを調べたりしてたからさ。流石一流のキング。2人きりのティータイムを楽しむのも全力なんだな~って」

 

 あ~。キングの雰囲気がいつもよりも大人っぽく感じたのはそれか。俺は化粧とかはあまり詳しくないが、キングの化粧には何の違和感も感じずに綺麗に感じた。

 

「あらあら、そんなことを言ったらスカイさんこそ。今まで、少しは化粧しなさいって言っても聞かなかったのに、マックイーンさんにナチュラルメイクを随分と熱心に教わっていたじゃない?努力のかいもあって、綺麗になメイクに仕上がってるじゃない?」

 

 やばい、よく分からないけど2人がバチバチやり合い始めた。マズイ……この空気を打ち破る方法と力が俺にはない。どうすれば。

 

「おはようみんな!ハッピーバレンタイン!」

 

「おはようございます」

 

 そこに救世主現る。2人でケーキの箱を持って、ファルコとブルボンが来てくれた。

 

「おはようございます。朝から皆さん元気ですわね」

 

 更に、その後ろからマックイーンもやってきた。3人の登場でさっきまでのバチバチの空気は消え去った。今ではブルボンとファルコが用意してくれたガトーショコラをみんなで味わっている。

 今日は朝練の代わりに、みんなでまったりとティータイムとしゃれこむことになったんだけど……なんで、ファルコとブルボンは黒ずんでいたんだろう……

 そういえば、マックイーンからは何も貰うことができなかった……いや、そもそもトレーナーにバレンタインに贈り物をしなきゃいけない訳でもないし、おかしなことでもないか。マックイーンは料理系統は苦手って聞いたし。

 昼食を取りながらそんな事を考えていると、ドアが開いた。この時間帯に来るってことはたづなさんあたりかな?

 

「失礼します」

 

 だが、そこにいたのはマックイーンだった。この時間は生徒たちも昼休みの時間だから、来ても問題はない。それにしても、昼食時にこの部屋にチームメンバーが来るのは珍しい。

 

「どうしたマックイーン。こんな時間に来るなんて珍しいじゃないか」

 

「そうですわね。今朝はごたごたしてお渡しできなかったのでこちらをお持ちしました」

 

 マックイーンは背中の後ろから箱を取り出して、俺の机の上に置いた。

 

「開けてもいいか?」

 

「その為に用意しましたので」

 

 箱を開けると、中にはいくつかのドーナツが入っていた。形はいびつな物が多いが、美味しそうな匂いがする。その中の1つを手に取って口に運ぶ。

 

「おっ美味い」

 

 形はともかくとして、その味は確かだった。マックイーンも俺の反応が嬉しかったようで尻尾がゆらゆらと揺れている。

 その中で、マックイーンの手に絆創膏がついていることに気が付いた。ドーナツを作る過程で怪我……火傷か。

 

「お恥ずかしながら、こういったものを1人で作ることができないので使用人に手伝っては頂きました。ですが!来年こそは1人で用意してみせますわ!」

 

「ありがとう。俺のためにそんな頑張ってくれて」

 

「いえ、普段わたしたちの為に頑張ってくれているお礼ですので、気にしないでください」

 

 全く……俺は良い担当に恵まれたな。スズカはリハビリが忙しく、今年は用意できないという電話がかかってきた。

 俺の頑張りのお礼と言って、みんなが幸せなバレンタインを過ごさせてくれた。俺はそれに報いるために、これからも彼女たちの為に頑張っていこうと思う。




紅茶を贈る意味は『あなたと幸せな時間を過ごしたい』という意味だそうです

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