第129話:復活!異次元の再来!
十一月のジャパンカップ前日。今日はただのオープン特別レース。
それなのに、観客席は満席で、レース場は重賞レース並みの盛り上がりを見せている。
「あんた、そんな気抜いてていいわけ?スズカ先輩の復帰レースでしょ」
「大丈夫だよタイシン。スズカとはさっき話してきたし、やる気もコンディションも問題ない」
彼女は天皇賞春が終わって、一段落してから改めてスカウトした。去年の合宿の時からの仲だし、本人も声を掛けられるのを待っていた。
まぁ、変な新入生に絡まれて嫌な思いはすることになったけど。性格的にもうちのチームに合わないから断ったり色々あった。
実力を語るなら〜ってリギルの選抜レースを紹介したけど、「あれは無理ね」って東條さんが言ってた。
「なにより、スズカが俺に責任を持ってレースに挑むって言ったんだ。出来ることと言ったら、信じて待つことくらいだ」
そう言いながら向いた先には、空を仰ぎながら久しぶりのレース場を肌で感じるスズカの姿があった。
―――
「トレーナーさん。今日のレース。最初は後ろから行こうと思うんです」
「どうして、そういう大事なことを本番直前で言うんだ!?」
「だって、考える時間があったら、私のために無理やり自分のこと納得させちゃうじゃないですか」
今日のレースは私だけのレースじゃない。だから、トレーナーさんの思ってることをそのまま知りたい。
「たしかに、そうだけどな。俺としては大逃げとはいかずとも逃げで作戦は行くべきだと思う。慣れない追い込みなんてしたらどうなるか……一応、理由を聞かせてくれ」
「レースを感じたいんです。後ろから見る景色も先頭で見る景色も……そして、ここまで戻って来たってファンのみんなにも伝えたいです!」
一回心が折れちゃって、レースから一度は心が離れちゃった。トレーニングにチームのみんな付き合ってくれたけど、レース本番じゃないと感じられないものがあると思うから。
「気持ちはよく分かった。だけど、俺は許可できない。これは、スズカ一人のレースじゃないんだ。全国からスズカの復活を期待してファンが集まってる」
厳しい表情で視線がぶつかり合った。しばらくすると、トレーナーさんはため息をついて口を開いた。
「分かったよ。でも、それを通すなら作戦を無視する責任をもって走るんだ」
「はい!」
返事を聞いたトレーナーさんは扉の方に振り返って、扉の方に歩るき出した。
「全く……勝っても負けても、相手をなめた作戦ってバッシング受けることになるんだから。その時は一緒に頭抱えることになるぞ~」
その背中は昔よりも大きく見えて、揺るがない覚悟を感じる。
―――
「あなたがサイレンススズカね。世間じゃ伝説の復活だのなんだの言ってるけど、私はあなたに勝つ。ウォーミングアップのつもりでこのレースに来たのかもしれないけど、後悔させてあげるわ!」
その娘からピリピリとした雰囲気が肌に触れる。一番最初にゴールするのは私だって強い闘争心。みんなが、このレースに向けて色々な想いを持って挑んでる。
「大丈夫――本気で走るから」
出走メンバー全員が全力でこのレースに挑んでる。
そして、ついにゲートが開いた。
「って、何が大丈夫なの!?スズカさん出遅れてるけど」
「やっぱりそう来るよなぁ」
実は大逃げでスタートするんじゃなんて思ってたけど。あんな、脅しじゃスズカの覚悟は止められないか。
「キングとスカイ、今度は最初から助けてくれよ……」
「あなたはやったことに胸を張ってればいいのよ」
「そうそう、面倒な人たちの言うことなんて聞くだけそんですよ~ね、マックイーン」
「嫌なこと思い出させないでくださいスカイさん……ゴールドシップに拉致されて大変でしたのよ!?」
そうだぞスカイ。あの時のことを思い返すだけで恥ずかしいのに。それはそれとして、バッシングが来ると思うと胃が痛い。
「というか、やっぱり後方から行くんだねスズカさん」
「スズカさんと言えば大逃げのウマ娘。それなのに、復帰レースで最後方からのスタートだなんてレース後は大変でしょうね」
やっぱり、その辺は当事者の彼女たちにしか分からないものがあるんだろう。俺なら、慣れた作戦で安牌を取りに行きたいけどな。
「考えなしってわけじゃないだろうし、ここからどうする?」
序盤のポジション争いが終わって、ここからは中盤戦。どのタイミングで仕掛けていくつもりだスズカ。
一歩一歩踏み出すたびに足が軽くなるみたい。前の娘たちのプレッシャーで目が覚めて、視界がはっきり見える。
(やっぱり、レースって楽しい)
わがまま言っちゃってごめんなさいトレーナーさん。でも、先頭の景色だけは誰にも譲りません。
地面を強く踏み込む。そして、先頭に向けて全力で駆けだす。
ペースは自然と上がって、気が付いたら先頭集団まで追いつき――隣に並ぶことなく追い抜いてた。
(これが私だけの景色)
芝も空も観客席も……ゴールだって全部見える。
やっとここまで戻ってきた。辛いことも苦しいこともいっぱいあった。
だけど、トレーナーさんと夢を追い続けたから……辿り着けました。
観客席を見渡すと、チームのみんなが嬉しそうに手を振ってくれてて、私は大きく振り返す。
ありがとう……私、これからも諦めない。トレーナーさんやファンのみんなが私に夢を見てくれるから。
この日、異次元の逃亡者サイレンススズカがレース界に復活した。
このまま書いていたら絶対に完結できないかまた失踪するので。描きたかった部分だけは書ききって完結に走ります。
粗が目立つことが多いとは思いますが、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。
新生チームレグルスで1番好きなメンバーは?
-
サイレンススズカ
-
セイウンスカイ
-
キングヘイロー
-
メジロマックイーン
-
ミホノブルボン
-
スマートファルコン
-
ナリタタイシン
-
トレーナー