トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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第132話:晴天の春!天皇賞!

「二人のところに行かなくてもいいんですかトレーナーさん」

 

「今日の作戦もコンディションの確認も今朝済ませてある。これ以上二人といるとどちらかに肩入れしすぎるだろうからな……」

 

普通の天皇賞ならこんなことも思わなかっただろうに。マックイーンの三連覇とスカイのラストラン……どちらにも勝ってほしいし、負けてほしくない。

 

(だからこそ、俺に出来るのは真っすぐにこのレースを見届けることだ)

 

***

 

「もしかして、マックイーンビビっちゃってる?」

 

ゲートを前にマックイーンは額から汗を少しだけ垂らして緊張した表情が見える。

 

「べっ別にスカイさんにビビってるわけではありませんわ!ただ……わかるでしょう?」

 

その視線の先には菊花賞でブルボンちゃんに勝ったライスちゃんが佇んでマックイーンのことを見つめていた。

 

(ありゃりゃ、セイちゃんは完全にマーク外ですか)

 

菊花賞の時も思ったけど、ライバルに対するマークと執念がすごいんだよね~。ただ、それが自分の足をすくうことにならないといいけどね。

 

「随分と好かれてるみたいじゃないですか~」

 

「そんな好かれかたしたくありませんわ!それに……テイオーのためにも負けるわけにはいきません」

 

そう言いながら空を眺めて遠くを見ている。

 

「ふぅん。負けるわけにはいかないですか~――こっちはこのレースに勝つために来てるんだけど?」

 

私の言葉にびくりと肩を跳ねさせながら視線が戻る。

 

「天皇賞春二連覇……チャンピオン気分でいるのはいいけどさ。このレースに出走するのはマックイーンだけじゃないし、みんな勝つために来てること忘れてると痛い目見るよ」

 

ゲートに入るまえに見たマックイーンの横顔は以前のように鋭く、出走メンバー全員に意識を向けていた。

 

(そうそう……私のラストランなんだから、甘い走りしたら許さないからね)

 

***

 

わたくしは何を考えていたのでしょう。テイオーのために?三連覇のために?まるでレースで勝つことは当たり前で負けないことだけ考えるように。勝利への欲望が薄れてしまっていた。

 

(ですがスカイさんのおかげで思いだしましたわ)

 

最初は憧れたチームの先輩でした。ですが、今はレースを共にするライバル……そして、ライスさん。あなたの勝利への渇望は凄まじいものなのでしょう。

 

(わたくしは勝ちます。メジロマックイーンとして、あなたたちライバルに)

 

ゲートに入る前に出走ウマ娘たちの顔を見渡す。今から勝負する相手たちの顔を目に焼き付けて、ゲートに足を進めた。

 

―――

 

レース序盤は想定通りパーマーが大逃げで先頭についてその更に後方の逃げ位置にスカイさんが追走して、集団の先頭を私が引っ張っている。

 

(大逃げのパーマーに引っ張られているとはいえ、今年のこのペースは異常ですわね)

 

理由は後方集団にいるライスさんの影響。逃げで集団から離れてる方々には関係ないとはいえ、このプレッシャーではペースは上がる……ですが、いくらなんでもオーバーペースなのは明白。

 

ここは一旦脚を溜めて様子見を――

 

スカイさんはなぜこのペースを良しとしているのですか?

 

(スカイさんもこのオーバーペースに気がついているはず。かといって、パーマーにペースを乱されている様子もない……)

 

いつもならばこの展開を利用して自分だけ脚を溜めてわたくしのように後半の展開で有利に動こうとするはず。

 

(このペースで走らないといけない理由があるはず)

 

……このペースが一着でゴールするための適正速度?ただ、リスクは高い。わたくしだって、これ以上ペースを上げたらゴールまで持つかどうかギリギリに――

 

(このままのペースでスカイさんが走り切ると想定したときに、この位置とペースでは置いていかれるおそれがありますわね。多少リスクを負ってでもペースを上げますわ)

 

その直後、いえ瞬間といった方が正しいですわね。

 

(明らかに集団のペースも上がった……ライスさんが原因ですわね?)

 

つまり、今いる距離感があなたの射程圏内。わたくしを抜く自信とスタミナがある証拠。

逆に、スカイさんに全く動きはなかった。ポジションをキープしていれば一着を狙えるという自信。全くペースが乱れていませんわね。

 

(気持ちを切り替えたつもりではいましたが、まだこのレースを甘くみていたのかもしれません)

 

リスクが高い?そんな安全策を取っている場合?

今相手にしているのはそんな半端な相手ではありませんわね。勝負にリスクはつきもの。余計なリスクは踏まないにつきますが、必要ならば今は攻める時!

 

ペースを上げてスタミナを調整しつつも後方を引きはがし、スカイさんへと迫る。

 

レースはそのまま終盤まで進み、スカイさんの後ろに張り付いた。

 

(このまま!)

 

そう思い力強く地面を蹴りだすと、あっさりとスカイさんの横を抜ける。そこから競り合うこともなく、スカイさんは後ろに下がり、ライスさんにあっという間に抜かれてしまった。

 

(なるほど!それが狙いでしたのね!)

 

ライスさんのマークは完全に私に向いている。なら、単純にわたくしにライスさんをぶつければ消耗し合うのは明白。

 

(かといって、ここでライスさんに先頭を譲ってしまえば一着を譲ることになる……)

 

――いいですわ。その策に乗せられた上で正面からあなたたち二人と勝負いたします!

 

そう決心した瞬間にライスさんが横に並び、一瞬抜かれそうになる。

 

(危ないですわ……ハイペースでスタミナは消耗していますが、ライスさんもそれは同じ)

 

ライスさんの末脚に想像ほどのキレはなかった。それでも、横一線で離しきれない。

ラストスパートに入りペースを上げようとした瞬間、ライスさんの影から一人のウマ娘が隣に並び出た。

 

(やっぱり!このタイミングを狙ってましたのね!)

 

スカイさんも横一列に並んだと思ったらほんのすこしだけ前に出ている。

わたくしとライスさんはお互いに消耗しあっている間にスカイさんは脚を溜めてこの時に備えていた。それを見越してのあのペース配分だったんですわね。

 

(あなたのラストランにふさわしい走りを!わたくしは――絶対に勝利してみせますわ!)

 

この時は天皇賞春三連覇のことも、テイオーのことすら頭から消えて、ただ横に並ぶ二人に勝利する。その一つのことに体を動かしていた。

 

全身全霊。力のすべてを振り絞ってのラストスパート。

そしてこの日――地上初の天皇賞・春3連覇が成し遂げられた。

 




次回最終話です

新生チームレグルスで1番好きなメンバーは?

  • サイレンススズカ
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • メジロマックイーン
  • ミホノブルボン
  • スマートファルコン
  • ナリタタイシン
  • トレーナー
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