トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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レオ杯頑張ります。
誤字報告ありがとうございます。訂正させてもらいました。とても助かります。


第15話:登れ!坂ダッシュ!

 今日からは坂の練習だ。昨日沖野先輩に場所は聞いたから、あとは行ってみて、走るだけだ。

 

(どのくらいの坂なのかくらい、聞いておけばよかったな)

 

 というか、トレーニング開始時間は過ぎたけど、スズカが来ない。遅刻することなんてなかったのに、珍しいこともあるな。

 

「すいませんトレーナーさん!遅れてしまいました」

 

「珍しいな、スズカがトレーニングに遅れるなんて」

 

「ここに向かう途中で、巨大な金の鯛を持ったフクキタルに追いかけられて……」

 

「ちょっと待ってくれスズカ、どういうこと?」

 

 昨日といい今日といい、情報量が多い内容を話されると困る。頭の処理が追いつかない……

 

「えっと、私がトレーニングに向かおうと、廊下を歩いていたんです」

 

「なるほど、それで?」

 

「そしたら後ろからフクキタルが『今日のラッキーアイテムは金の鯛ですよ。スズカさ──ーん』と言って追いかけて来て。驚いて逃げ回ってたんです」

 

 結局、巨大な金の鯛を持ってるフクキタルは理解出来なかったけど、スズカが逃げ回ってて遅れたのはよく分かった。

 

「そうか……それは大変だったな」

 

 なんか、トレーニングも始まってないのに凄い疲れた気がする。

 

「すいません……遅れるつもりはなかったんですけど……」

 

「いや、大丈夫だ。そういうこともあるさ。トレーニングに行こう」

 

 もう、そういうこともあるということにしようそうしよう。

 

「今日は何をすればいいんですか?」

 

「今日は、昨日言っていた通り坂ダッシュだ。とりあえず、トレーニング場所に向かおう」

 

「わかりました」

 

 スズカを連れて坂に向かう。確か、近くの神社の階段を使えって言ってたな。

 

「そういえば、昨日の飲み会は楽しかったですか?」

 

「ああ、葵さんと先輩とゆっくり話が出来たしな。何より、先輩からトレーニング場所を聞くついでに、いいアドバイスも貰えたし」

 

「わざわざ聞いてくださったんですか?」

 

「元々、先輩に聞くつもりだったからな。ついでだ」

 

 実際に、飲み会がなかったら、直接会いに行って聞くつもりだったしな。

 

「私のためにありがとうございます」

 

 スズカは嬉しそうにお礼を言うと尻尾を揺らしていた。自分のために何かしてくれたのが嬉しかったのかもしれない。

 

「俺はスズカの担当だからな。っとそろそろだな」

 

 目的地に着くと、スズカと俺は絶句した。なにこれ、想像以上に角度がキツいし、距離も長いんだけど。

 

「本当にここで走るんですか……?」

 

 スズカが不安そうだ。俺が驚いてたらいけないな。

 

「スズカは、この坂の階段を速く登るためにはどうしたらいいと思う」

 

「足の接地時間を短くですか?」

 

 昨日した話を、しっかりと覚えていてくれたらしい。

 

「そうだ。そのためにも、階段を登ってく上では走るテンポが重要だ」

 

「テンポですか?リズムよく走るってことですよね」

 

「ああ、これは普通に走る場面でも同じだが。テンポがズレたりすると、走りがブレたり、上手く走れないんだ」

 

 いくら接地時間が短くなっても、タイミングが合わなければ、踏み込みで得られるスピードを上手く得られない。

 

「連続でジャンプするのを想像するとわかりやすいな。テンポがしっかりすれば、上手く跳ね続けるけど、テンポがバラバラだと上手くできないだろう?」

 

「確かに……」

 

「とりあえず、走ってみるか」

 

 兎にも角にも走ってみないとわからないだろう。

 

「いくぞー位置について、よーいどん!」

 

 最初はさすがに、階段を上手く走れないだろうと思っていた。走り慣れない環境に、この坂だ。スピードが上手く乗らないし、スタミナも持たないだろう。

 

 スズカが走り抜き、タイムを見てみると、想像以上にタイムは早かった。終盤走りが鈍くなり、ゴール後も息こそ切れていたが、思っていたよりも、スタミナが持っていた気がした。

 

(走り慣れない環境に、この坂だ。なんでこのタイムが出せたんだ)

 

「なあスズカ、なんか走ってていつもと違うこととかってあったか?」

 

「やっぱり坂が急で、すごい疲れました……でも想像してたよりは走りにくくなかったですね」

 

 やはり、そんなに走りにくさは感じなかったらしい。何故なんだろうか……

 

「何か悪いところがありましたか?言ってくれれば、直すよう頑張りますけど」

 

「いや、悪いところは無い。むしろ初めての練習で、よく走れていたほうだ。けど何が良かったのか分からないんだ。すまない」

 

 何が良かったのか、考えてみたがまだわからない。

 

「そんな、謝らないでください。何かわかったら、また教えてくださいね」

 

 俺が謝ると、スズカが少し困惑してしまった。

 

「走りを見ながら、俺も考えてみるよ。休憩が終わったら、また走ってみてくれ」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「いくぞー位置について、よーいどん!」

 

 腕の振り方はいつもと変わっていない。ストライドはいつもよりも短いけど、これはあまり関係ないだろう。階段の1段ごとの幅的に仕方ないことだ。

 

 あとは……姿勢だ。姿勢が前に傾いてるんだ。それで、スピードが乗っているのか。

 

「スズカ、少しだけ理由がわかった」

 

「凄いです、トレーナーさん。まだ少ししか走ってないのに」

 

「階段を登ってる時に、姿勢がいつもより前に傾いてる。だから足がどんどん前にでるんだ。それがスズカに合ってたんだろう」

 

 それにしても、予想外の収穫だ。スズカに合っているフォームが見つかるとは。

 

「無意識だったので、全く気が付きませんでした」

 

「次は前傾姿勢を意識して走ってみてくれ」

 

「分かりました。次は意識して走ってみますね」

 

「それじゃあいくぞー、位置について、よーいどん!」

 

 さっきより分かり易く前傾姿勢になっている。その影響か、さっきより更にスピードが乗っている。それによって、普段と違ったところが顕著に出ていた。

 

(足裏の着地地点がいつもと違うんだ。普段はかかとから入るのだが、今は拇指と指の付け根から着地しているんだ)

 

 これが自然に出来たのは、スズカの走りの天才的な才能によるものだろうな。

 

 スズカがゴールしたので、このことを伝えないとな。

 

「スズカ、突然で悪いんだが、少しそこで走って見てくれないか?」

 

「この平地でですか?わかりました」

 

 やっぱり、平地で走る時は踵から足が入って、姿勢も真っ直ぐになっている。

 

「次は拇指辺りから着地するイメージで、姿勢を前傾姿勢気味に走ってみてくれないか?」

 

「わかりました」

 

 凄いな、初速も今までより速いだろう。スピードもしっかりと乗っている。

 

「スズカーもういいぞー」

 

 なかなか止まらないので、止まるよう言うとそのままコケてしまった。

 

「おい大丈夫か!?」

 

「イタタ……大丈夫です、少し擦りむいただけです」

 

「そうか……ならいいんだが」

 

「それよりも、トレーナーさん凄いです!今までより気持ちよく速く走れます!まだ少し走り慣れないですけど」

 

 本人も走っていて実感していたらしい。どうやら、スズカにはこのフォームの方が合っているらしい。

 

「今までスズカのしていた走り方は、ヒールストライク走法と言うんだ。踵から着地して、走りやすく、足に負担がかかりにくいんだが、変わりにブレーキがかかってしまうんだ」

 

「逆に今していた走り方は、フォアフット走法って言ってな。拇指の方から着地することによって、着地時の衝撃が分散されて疲れにくくなるんだ。しかも、前傾姿勢になりバランスを取れば、足が前に出てスピードも出るってわけだ」

 

 ヒールストライク走法も悪いわけじゃないが、フォアフット走法の方がスズカに合ってたんだろうな。

 

「これからは、フォームの改善を意識しつつトレーニングすることにしよう。ハードなトレーニングになるが大丈夫か?」

 

「私は大丈夫です。もっともっと速くなって先頭を走りたいんです。それに、弥生賞を勝つためにも必要なんですよね?」

 

(速くなることだけじゃなくて、レースのこともしっかりと考えてるんだな)

 

「そうだよな、レースもしっかりと勝ちたいよな」

 

「それもそうですけど……私のために頑張ってくれてるトレーナーさんのためにも勝ちたいんです」

 

「なんか言ったか?」

 

「なんでもありません」

 

 速く走れたのがそんなに嬉しかったのだろうか。尻尾を凄い揺らしているが。

 

「私……この走り方をマスターしてみせます。勝つためにも、速くなるためにも」

 

「ああ!俺もできる限りサポートしよう!」

 

 スズカの調子もいい。フォームを改善して、更に力をつけてたいけば……弥生賞だけじゃない、皐月賞も十分に勝ちに行けるだろう。

 

「今日の練習はここまでにしておこう。明日はグラウンドで走り込みをしながら、フォームを改善しよう」

 

「分かりました。明日もよろしくお願いしますね」

 

 そうして、俺たちは解散した。明日に備えて、スズカにはゆっくり休んでもらわないとな。




少しだけスズカのセリフを増やすよう努力しました。スズカって静かなキャラだから話させるの難しいです。
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