トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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第20話:目指せ!日本ダービー!

 休日が明けて、いつも通りグラウンドにあつまる。皐月賞は間に合わないから、日本ダービーに向けてプランを組まないと行けないからな。

 

「スズカ、これからダービーを目指す上で、2つのレースに出走しなくちゃならない」

 

「2つのレースですか?」

 

「1つ目は、来月行われるクラシック級ウマ娘のみで行われるレースだ。このレースは特に問題はないだろう」

 

「1つ目はということは、もう1つのレースになにか問題があるんですね」

 

「ああ、ダービートライアルの青葉賞に出走するか、プリンシパルステークスに出走するかだ」

 

 青葉賞はG2レースでプリンシパルステークスはOPレースだから、どちらに出るかは、話合わないといけない。

 

「私は……青葉賞に出走してみたいと思うんですけど。トレーナーさん的にはどうでしょう」

 

「俺個人としては、プリンシバルステークスに出て欲しいと思っている。G2の青葉賞よりも気持ち的に楽だろうし、何よりも怪我のことが少し心配だからな」

 

 1番最悪なのは、もう一度怪我をして日本ダービーに出走できないことだ。それを避けるために、刺激が緩いOPレースを俺は選びたかった。

 

 スズカが少し考えている。スズカ的には、強い相手と走りたいという気持ちがあるのだろう。

 

「分かりました。私、プリンシバルステークスに出走します」

 

「いいのか?青葉賞に出走したいって言っていたが」

 

 スズカがこれで青葉賞に出走したいと言ったら、それはそれでプランを組むつもりではいた。

 

「私はトレーナーさんと同じくらい日本ダービーで勝ちたいんですよ?そして、スカイちゃんのためにも。何より自分自身のために」

 

 弥生賞の辛い思いを経て精神的に1歩成長したのか、スズカには心の余裕を感じさせられる。

 

「それじゃあ、1ヶ月後にジュニア級レースに出走して、2ヶ月後はプリンシバルステークスに出走する」

 

「分かりました。一緒に頑張りましょう!」

 

 次のレースは決まった。次はそれに向けてのトレーニングか……スタミナの強化は大前提だろう。日本ダービーのレース距離は2400mで、弥生賞や皐月賞よりも更に長い。

 

 レース場の東京競バ場は高低差の激しいコースだ。スタート直後に下り坂があり、ゴール直前の200mは高低差2mの上り坂だ。下り坂はスピードが出る分、スタミナの消費も多い。上り坂に関しては距離も長く、高低差も激しいからスタミナ消費は相当なものだろう。

 

「これからはスタミナを伸ばしつつ、坂の登りと下りにも慣れていかないといけない」

 

 それともう1つ気になっていることがあった。河川敷で最後に見せた走りは、今までにないくらいスピードが出ていた。それをものにしておきたい。

 

「先日、河川敷でやった勝負を覚えてるかスズカ」

 

「はい……あの日の走りは忘れてません。今まであんな気持ちで走ったのは初めてです」

 

「あの日の走りが必要だ。これからのレースで必ず強力な武器になる」

 

 あの走りを実現するためにはどうしたらいいだろうか……やはり誰かと競い合うべきか。とりあえず今日は走り込みだな。

 

「今日はダービーを意識して2400mを走ってみよう。現状2400mをどのくらいで走りきれるのか見たい」

 

「2400mですか……いつもより長い距離ですけど頑張ります」

 

「それじゃあ、位置について、よーいどん!」

 

 スズカのスタートを見送った後に、後ろから誰かが来ているのに気がついた。

 

「お前がスズカのトレーナーで間違いないな」

 

「そうですけど、なにか用ですか?エアグルーヴさん」

 

 たしかあれは、スズカの同級生のエアグルーヴさんだ。一体なんの用なのだろうか?

 

「私に敬称はいらない。エアグルーヴでいい」

 

「さっきの質問だが、スズカが最近怪我に不調が続いてたのでな。それをまだ引きずらせるようなトレーナーだったら、スズカのことを引きずってでも私のトレーナーのとこに連れてこうと思ったんだが……杞憂だったようだ」

 

 この娘凄い怖いこと言ってるんだけど。たしかエアグルーヴって東条さんのとこのウマ娘だったよな。東条さんのとこなら安心っちゃ安心なのだが……

 

「不調については俺のミスだ。スズカのことをもう少し理解してやれれば避けれる事態だった」

 

「自分のミスもしっかりと自覚しているわけか。スズカもいいトレーナーを見つけたな」

 

「それはどうもありがとう」

 

 普通に褒められるのは嬉しい、自分が指導するべきウマ娘相手なら尚更だ。

 

「スズカとはいずれ競い合うことになるだろう。その時は私が勝つ。覚悟しておくといい」

 

「スズカは今、もう一歩先に進もうとしている。これから先も伸びていくだろう。その時は簡単に負ける気はないよ」

 

「そうか、それならいい。私もそろそろトレーニングに戻らないといけないので失礼する」

 

 最後にエアグルーヴがご機嫌そうにそう言って、その場を後にした。東条さんのところのウマ娘か……強敵になるだろうな。

 

 っとスズカの走りをしっかりと見ないとな。スタミナはギリギリ足りてるかってところか……ダービー本番は平地を走るよりもスタミナを使うから、スタミナはまだまだ必要だ。

 

 そして、最後の直線だ。相変わらずいいスピードで走る。でも、河川敷で見せた程のスピードは出ていないな。

 

「スズカ、お疲れ様。いい走りだったぞ」

 

「ありがとうございます……でもギリギリ走りきれた感じです。まだまだ足りません」

 

 スズカも自分のスタミナ不足に気がついていたらしい。

 

「やっぱり最後はスピードが出なかったか。あの時みたいに走るのは難しそうか?」

 

「私でもよく分からないんです……なぜかあの日は、気づいたら足がどんどん前に出ていて」

 

 調子とかはあまり関係はないっぽいな。意外と感情的なものが関係したりしてるのだろうか?

 

 スズカは、逃げの時と先行の時に出るスピードが明らかに違う。そう考えると、なにか気分的な条件と要因があるのかもしれない。

 

「まぁ、分からないことは今考えてもしかたない。またなにか感覚を掴めた時には教えてくれ」

 

「はい、分かりました。それじゃあもう1本走ってきますね」

 

 やっぱり、感覚を思い出すなら同じ状況を作り出すのが一番だな。スカイにちょっと連絡してみるか。

 

『スカイ、明日のトレーニングこっちに出れるか?教官の方には俺から言っておくから』

 

『いいですよ〜何をする予定なんですか?』

 

『お前返信早過ぎないか。トレーニングサボるんじゃないよ!』

 

『いやいや、たまたま休憩中に携帯を開いたですって』

 

『それならいいんだが……トレーニングの内容としては、スズカと併走して欲しいんだ』

 

『今のスズカさんと併走なんて、私が置いてかれちゃいますよ!』

 

『スズカには2000mを走ってもらう。そして、スカイにはその途中の1000mから入ってもらおうと思ってる』

 

『それでも十分キツイんですけど……まぁ、分かりました』

 

『ありがとう。それじゃあ、明日は頼む』

 

『は〜い』

 

 これで明日のトレーニングは問題ないな。連絡を済ませるとスズカが丁度戻ってきた。

 

「お疲れ様。今日はこの後休憩を挟んで、あと3本走って終わりだ」

 

「分かりました。ところで誰と連絡を取ってたんですか?」

 

「ああ、スカイに明日トレーニングに出られないか聞いてたんだよ」

 

「スカイちゃんにですか?」

 

「スカイにはスズカの併走を頼んだんだ。明日はスカイと併走トレーニングをしてもらうことになる」

 

 葵さんとかに頼んでもいいだが、一応は日本ダービーでもぶつかる敵同士だからな。さすがにこの時期に、共同トレーニングって訳にもいかない。

 

「私のためにありがとうございます。スカイちゃんのためにも、明日は頑張りますね」

 

 スカイ……大丈夫だといいな……結構スズカも気合い入ってるみたいだ。

 

「そういえば、最近はしっかりと眠れてるか?」

 

 また睡眠不足で不調になったら大変だからな。一応聞いておかなくちゃ。

 

「あの日寮に戻ったあとぐっすりと眠れて、その後からは気持ちが軽くなって夜もしっかりと眠れています」

 

「最近は寝る前に、ジグゾーパズルをするのが習慣になってるんです」

 

 前に出かけた時にジグゾーパズルを買ってあげたが、本人も結構ハマったらしい。気分転換ができる趣味があるのはいいことだ。

 

「それならいい。もし体調が悪くなったら直ぐに言えよ」

 

「はい。見栄を張って黙ってるようなことはしませんよ」

 

 スズカは冗談混じりにそう言う。最近のスズカは、不調が嘘だったかのように伸び伸びと走っている。これなら心配いらなそうだ。

 

「それじゃあ、トレーニングを続けよう」

 

「はい!」

 

 その後は無事にトレーニングを終えて解散となった。それにしても、スズカがジグゾーパズルに1人で向き合ってるのを考えると、少し面白いな。

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