トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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ほんの少しだけいつもより長いんじゃ。誤差程度に。
感想がログインユーザーのみ可になってたので非ログインユーザーも可に変更しました。全く気が付かなかった……


第22話:登山!坂道トレーニング!

 あれから2週間近く、同じような練習を繰り返した。スズカが稀に見せるスピードと加速力。加速はしっかりと出来るようになって来たのだが、あのスピードが出るのは稀だ。

 

 あれはレースでも強力な武器になるだろうが、それにうつつを抜かして他を疎かにはできない。スズカには坂道の登り下りに慣れてもらい、スタミナもつけて貰わないといけないからな。

 

「今日からスズカには山に行って走ってきてもらう」

 

「山ですか……」

 

 トレーニングの内容を話すと、露骨に嫌そうな顔をしている。前に階段で登りのトレーニングもしてたし、問題ないと思ったんだけどな。

 

「不満か?」

 

「不満というか……私って山道を走るのが苦手なんです。登るだけとかなら大丈夫なんですけど。平地を走った後に登ったり、下り坂が私苦手で……」

 

 そうか、スズカは平地ではよく走ってるけど、山道を走ってるとこってあんまり見ないもんな。そんな理由があったのか。

 

「ダービーではスタートから直ぐに下り坂がある。先頭を取って走るスズカの走りなら、しっかりと下りでスピードに乗りたいんだよ。しかも、ラストにも急な上り坂がある。どうしても乗り越えなきゃいけない壁なんだ」

 

「分かりました……必要なことですもんね。克服出来るように頑張ります!」

 

 やる気になってくれて良かった。今回トレーニングはスタミナ強化も兼ねた重要なトレーニングだからな。

 

「ところで、今回はスカイちゃんは来ないんですか?」

 

「スカイのやつはトレーニングの内容を話したら『あ〜最近教官さんのトレーニング受けてないから受けに行かなきゃ〜』って言ったきりだ」

 

 十中八九キツいトレーニングが嫌で逃げたんだろうけどな。

 

「そうですか……今度一緒にトレーニングする時は頑張ってもらいましょうか」

 

 スカイのことになるとスズカってたまにこの顔するんだよな。顔は笑ってるんだけど目が明らかに笑ってない。

 

「とっとりあえずスタート地点まで向かおうか。俺は後ろから車で追いかけるから」

 

 一緒に走れればいいんだけど、さすがに無理だからな。ウマ娘と山走るとか多分足がぶっ壊れる。

 

 とりあえず、スタート地点までスズカを連れて移動した。

 

「とりあえずここがスタート地点だ。ここから2km程は平地が続く。その後1km程の登り坂があって、次は1kmの下り坂がある。そこから5kmは短い登りと下りの繰り返しだ。そして、最後の1kmの後半500mは急な坂になっている」

 

「今言ったコースを6割くらいの力で走り切ってくれ」

 

「分かりました。頑張って走りきります」

 

 話を終えて、スタートした。

 

 最初の2kmは問題なく走っていたんだが、登り坂に入った途端に減速した。本人もどこか走りずらそうにしている。それでも500mを過ぎた頃にはいつも通りの走りを見せる。

 

(道が傾斜になれば、平地よりも接地が早くなる。その変化にテンポがズラされて、平地から傾斜に移るタイミングで減速してしまうんだ)

 

 登り坂が終わって下り坂に入ると、目に見て分かるくらいに足にブレーキがかかっている。あれじゃあ足に負荷がかかるしスピードも出ない。スタミナの消耗も激しいだろう。

 

 その後の5kmも、登ったり下ったりで上手くスピードが出ない。

 

 ラスト1km、ここまでの走りで、かなりのスタミナを消費したスズカはヘトヘトだ。ラストの500mはスタミナも足りず急な坂なこともあって加速も出来ず、スピードも出ていない。

 

「お疲れ様スズカ。大分お疲れみたいだな」

 

「はい……登ったり……下ったりで……とっても疲れます」

 

 大分息が切れてるな。結構ギリギリ走り切った感じだろう。とりあえず、走りを見てて気がついたことを話さないとな。

 

「平地と坂じゃ、足の接地までの時間が微妙にずれる。その微妙なズレで、スズカは走りのテンポが合わずにいるんだ」

 

「なんで接地までの時間がズレてしまうんですか?」

 

「平地なら、足を前を着地させた時とその足を前に出してもう一度着地する時の地面と高さは同じだろ?」

 

「そうですね」

 

「傾斜になると、次に足を着地させる場所は高かったり低かったりするわけだ」

 

「なるほど……だからいつもと同じ感じで走れないんですね」

 

 自分で違和感を感じるだけあって察しがいいな。理由が分かってるなら改善まで時間はかからないだろう。

 

「とりあえず、休憩を挟んでから帰り道を走ってくぞ」

 

「え……トレーナーさん、帰りも走るんですか?」

 

「もちろんだ。このトレーニングには、スタミナ強化と坂道に慣れるって意味合いがあるからな」

 

 キツイのは分かる。体にかかる負荷はかなり大きい。連日続けるのは厳しいだろうな。

 

「明日も同じ練習をする。代わりと言ってはなんだが、明後日は休日にするつもりだ」

 

「分かりました……頑張ります。けど、限界そうになったら車に乗って帰りますからね」

 

 冗談混じりにスズカがそう言ってきた。疲れは出ているが、まだ走る元気は残ってるようだ。

 

「冗談を言える余裕が残ってるなら大丈夫だろう。もう少ししたら出るぞ」

 

「その前にちょっといいですか?トレーナーさん」

 

「どうしたんだスズカ?」

 

 やばい、この顔には見覚えがある。スカイに酷い目を合わせてる時の笑顔だ。

 

「せっかくなので、明日はスカイちゃんにもこのハードなトレーニングを味わって欲しいなって思っただけです」

 

 そう言うとスズカは、手に持っていた携帯をしまった。いつの間に連絡先を交換してたんだ。あの2人はあんな感じでも結構仲いいんだよな。

 

「来てくれるなら大歓迎だが……そう簡単にスカイが来てくれるとも思えんな」

 

 そう言っていると、携帯の通知音が鳴った。携帯を開くとスカイから連絡が入っていた。

 

『明日トレーニングには出させてもらいますね〜。代わりに明後日の休日は私に付き合ってくださいね!』

 

 この文章と一緒に可愛らしい猫のスタンプが送られて来たわけだが。スズカめ……俺を売りやがった。

 

 問いただそうとスズカの方を振り向いたら、もうそこにスズカの姿はなかった。俺が携帯を見てる間にスタートしたようだ。

 

 帰りは行きの逆コースになるから、スタートから500mは急な下りだ。行きの時よりはスピードが出てるが、かなりブレーキがかかってる。

 

(よく考えたらウマ娘って、素の体で50kmとか60kmで走ってるわけだもんな。下りで、しかもスピードも更に出るんじゃおっかないよな……)

 

 この課題をどう解決したものか……走ってれば慣れるものなのか?とりあえずしばらくは様子を見るか。

 

 帰り道はスタミナを消費しているのもあって、中々スピードが出ないな。平地ならスタミナを保てるかもしれないけど、山道になると話が違うな。

 

(残り2ヶ月で仕上げきれるかどうか……仕上げるしかないんだけどさ)

 

 残り2kmに差し掛かった所で息が荒れ始めた。フォームも若干崩れている。

 

「スズカー!呼吸乱れてるぞーフォーム崩すな!」

 

「はい!」

 

 声をかけると、呼吸とフォームが少し整った。やっぱり声援って大切なんだな。

 

「いいぞーその調子だ。ゴールまであと少しだ!頑張れ」

 

 その後も、疲労は見えたが何とかゴールした。

 

「よく最後走りきったな。本当に車に乗せて帰ろうかと思ったぞ」

 

「トレーナーさんが応援してくれたので、頑張っちゃいました」

 

 頑張っちゃいましたって……本当によく走りきれたな。無理そうなら車に乗せる気満々だったんだけど……

 

「まあ、無理してないならいいんだけど……一応少しだけ足を見せてくれないか?」

 

「……分かりました。どうぞ」

 

 少し間を置いてから、足を前に突き出して見せてくれた。外から見た感じは特に問題ないな、腫れたりはしていない。

 

「ありがとう。また足に違和感があるとかあったら教えてくれ」

 

「えっこれで終わりですか?」

 

「ん?一応足の状態は確認できたし問題ないだろう」

 

 少し拍子抜けした顔をしている。なんか確認怠ったりしたかな俺。

 

「前みたいに足を触られるのかと思ってました……」

 

「ああ、前の時は緊急だったからな。さすがにそんな無闇矢鱈に足を触ったりしないよ」

 

 そんなことするのは沖野先輩ぐらいだろうしな……俺はウマ娘の脚力で、顔面を蹴られるのはごめんだ。

 

「前みたいに怪我をしないためですし……少しくらいなら大丈夫です」

 

「そうか?なら失礼して」

 

 許可は貰ったので、少々失礼させてもらおう。前回は緊急事態で突発的だったからあれだけど……いざ触るとなると気まずい。

 

 筋肉はいい感じに付いてるしいい感じだな。筋肉でもっとガッチガチかと思ってたが、硬すぎず柔らかすぎず……って何考えてんだ俺は!

 

 そんな邪なことを一瞬考えていたら、足首に熱がこもってることに気がついた。ただでさえハードなトレーニングで、ラストあそこまで走ったんだ。かなりの負荷が掛かっていたんだな……

 

「足首が熱を持ってるな。帰ったら足をしっかりと冷やしてストレッチをすること。明日のトレーニングの強度は少し落とす」

 

「そうなんですか?自分だと全く気づかなかったので、ありがとうございます」

 

「俺も触ってしっかりと確かめなきゃ分からなかったさ。仕方がない」

 

 目視だけじゃ、あそこの疲労に気づけなかった。触診ってのも大切なんだな……沖野先輩、今まで変態扱いしてごめんなさい。でもあなたはやりすぎだと思います。

 

「寮の近くまで送ってこう。車に乗ってくれ」

 

「そんな……いえ、ありがとうございます」

 

 学園って結構敷地広いからな。トレーニングは明日もある。疲労を下手に足に残すわけにはいかない。

 

 そして、スズカを寮の近くまで送り届けたんだが……そこをスカイに見られてるとは当時の俺は全く気が付かなかった。




書いてて思ったんですど、ウマ娘の方が人間より速く走るのは分かるんです。でもトレーニングってどうなんですかね?速く走る分足に負担がかかって練習量自体はそんな変わらないのでしょうか。
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