今日は、昨日の約束を果たすために学園の前に来ている。スカイとのお出かけだ。スカイの私生活をあまり知らないけど、どこに連れてかれるのだろうか。
「トレーナーさん、おはようございます。今日はいい天気ですね」
「ああ、おはようスズカ。たしかにいい天気だな」
スズカがスカイより先に着いたようだ……ってスズカさん?今日はスカイとのお出かけで、スズカが来るって一言も聞いてなかったけど。
(スカイがあの後でスズカも誘ったのかな?)
「スカイちゃんはまだ来てないんですね。私もどこに行くのかまでは知らないので楽しみです」
スズカも目的の場所は聞かされていないようだ。スカイのことだし変なところには連れて行かないと思うんだけど。
「トレーナーさんおはようございま〜す。って!なんでスズカさんも居るんですか!?」
あれ、やっぱりスズカ誘ったわけではなかったのか。じゃあなんでこの娘はどうしたの?って顔して平然としているの?
「どうせ出かけるなら皆で行った方が楽しいかと思って」
「ハメられた……」
スズカが平然としている中で、スカイは膝を突いてガクッとしている。スズカがいるのは想定外だったのだろう……
「まぁ、せっかく集まったんだし皆で行こうか。今日はどこに行く予定なんだ?」
「そういうことなら仕方ないですね〜それじゃあ私に付いてきてください」
スカイの後を付いていくと、近くの防波堤にたどり着いた。
「というわけで、今日付き合ってもらうのはこちらで〜す」
スカイがどこからともなく釣竿を3本取り出した。2本なら分かるんだけど、いつの間に3本目用意してたんだ?
「釣りかぁ……昔に少しやったくらいで、最近は全然やってないな」
「私は初めてやります……大丈夫でしょうか?」
釣りと言っても本格的なのじゃないだろうし、特別な技術とかはなくて大丈夫だろう。それに、さすがにスカイが色々教えてくれるだろ。
「分からないところは私がその都度教えるので大丈夫です!」
スカイが胸に手を当ててドヤ顔をしてる。釣りには相当自信があるようだ。こいつトレーニングサボって昼寝してない時、ずっと釣りしてやがるな。
そのあとは、餌の虫にスズカがびっくりしたりと色々あったが、無事に餌を付けて、釣り針を海につけることに成功した。
「これであとはなにかするんですか?」
「基本的にあとは魚が掛かるのを待つだけだよ。退屈に感じる人もいるから、釣りは好み別れるよな」
「私はこの時間結構好きですよ〜」
スズカは浮きをジーッと見ていて、スカイはルンルンと鼻歌を歌って、気分が良さそうだ。
そういえば、スカイとこうやってゆっくり時間を取れることってなかったな。色々聞いてみれば答えてくれるかもしれない。
「そういえば、昨日も今日も、よく教官のトレーニングを休むことを許されたな」
一応スカイは、まだ俺の担当ウマ娘ではない。だから普段は、トレーナーがまだついてないウマ娘にトレーニングをする教官の元でトレーニングしているのだが……
「教官さん的には早く担当トレーナーについてほしいから、トレーナーさんのトレーニングに参加したりだとかは結構受け入れられるんですよ〜」
教官はトレーナーがつくまでの繋ぎだから、教官的にも早くトレーナーを見つけて欲しいってわけか。それなら俺が誘った時のトレーニングの参加率の高さも納得が行く。
「そういうわけだったのか。もしかして、スズカってこれ知ってた?」
「もちろん知ってましたよ?そうじゃなきゃ、スカイちゃんを突発的に呼ぼうだなんて考えません」
その辺の事情はあまり詳しくないから知らなかった。スズカも昔は教官の元でトレーニングを積んでいたから知ってたんだろう。
「スズカさん!掛かってますよ!」
「わっ!えっとどうしたらいいの」
「1回釣竿をッグっと上に上げてから、リールを巻きとってください!」
スズカはスカイの指示どおりにリールを巻いていくが、途中で糸が切れてしまった。
「逃げられちゃいました……」
「今のは大きいのでしたね〜あのサイズになると、魚との駆け引きも大事ですし、初めてのスズカさんじゃ厳しかったかもしれません」
釣りって結構奥が深いんだな……小さいのでもいいから釣れたらいいなぁ……
「釣りに連れて来るだけあって詳しいんだな」
「結構やってますからね〜」
「そのやる気をトレーニングに向けてくれたらいいんだけどな」
その場では笑ってはぐらされてしまった。俺もこうは言ってるけど、ここ最近のスカイはしっかりとトレーニングに取り組んでいる。
トレセン学園に来るのは、レースで目標があったり。夢を見ている奴らばっかだ。スカイも例外ではないということだろうな。
「そういやスカイって、目標というか目的みたいなのはあるのか?」
「目標ですか〜クラシック3冠を取りたいです。そして今は、勝ちたいウマ娘がいるんです」
目標の話をするスカイの顔はとても真剣だった。それほどまでに勝ちたいウマ娘がいるのか、3冠にそこまでの思い入れがあるのか。
「私って、特別な血筋だとかそういうのは無いんですけど〜平凡でも3冠取れるって証明したいんですよね」
「そうなのか……スカイにもしっかりとしたビジョンがあるんだな。もう1つの勝ちたいウマ娘ってのは?」
スカイがそこまで敵対視するウマ娘……1人だけ心辺りがあるな……
「キングちゃんには負けたくないの。キングちゃんとは結構仲良しだったんですよ。でも、そのキングちゃんに、候補とはいえトレーナーさんを取られちゃうとはね〜」
やっぱりか……あれは嫌な思い出だ。それでスカイがうちに来てくれたから俺にとっちゃいい事ではあったんだけど、本人からしたらな……
「キングちゃんは、そういうことするウマ娘じゃないと勝手に思ってたんですよ。だから余計負けたくないというか、なんて言ったら分かんないですけど」
「そうか……それじゃあ来年のクラシックは俺たちが取りに行かないとな」
「私が取れなかった分もよろしくねスカイちゃん」
スズカは怪我で皐月賞を今年既に逃してるからな。取れても2冠までだ。スズカもスカイのこと気に入ってるようだし、応援する気満々だ。
「そのためにスズカが今年のダービー取らねえとな。話はそこからだ」
「私、頑張って勝ちます。トレーナーさんの為にもスカイちゃんの為にも。何より自分自身が楽しく走りたいですから」
スズカも精神的に成長してるな。レースに余裕を持って参加出来ればスズカも存分に力を出し切れるだろう。
「それにしても、キングヘイローさんはプライドが高いって聞いてましたし、そういうことするウマ娘さんじゃないと思うんですけど……」
理由はどうであれ、それが起こってスカイが傷ついたのも事実だ。スカイがキングヘイローに勝ちたいって言うなら、全力で支えてやろう。どっちにしろクラシック路線でぶつかる相手だ。
「何はともあれ、クラシックで戦う相手だ。しっかりと鍛えて勝つぞスカイ!」
「はは〜お手柔らかにお願いしますね〜」
「スカイのポテンシャルなら、3冠は十分に狙っていけるはずだ。まだ2年も先のことだからわかんないけどな」
そうだ、スカイのことも大切だが目の前のスズカのレースも大切だ。
「スズカは次のレースは特に不安なことはない。いつも通り走ってれば、負けることはまず無いだろう。不安なことがあったら、しっかりと相談するように!」
「分かってますよトレーナーさん。追い込み過ぎないように気をつけますね」
微笑みながらスズカが言ってくる。これだけ余裕があれば気持ちが押しつぶされることも無いだろう。
「それじゃあ、そろそろいい時間になってきたし帰るか」
「そうですね〜魚もいっぱい釣れましたし」
スカイの持つバケツには何匹もの魚が入っていた。いつの間にそんなに釣ってたんだ……
「初めてやってみましたけど、面白かったですね」
スズカも多くはないけどちゃんと釣ってるし……
「そうだな、いい気分転換になった。スズカは次のレースまでもう少しだ、明日からまた気合い入れていくぞ!」
「はい!」
「スカイもトレーニングをサボらずしっかりとこなしておくこと。昨日のトレーニングで、まだまだだって分かっただろ」
「は〜い、私なりに頑張りまーす」
その後は、荷物を片付けて学園前までは一緒に帰り。そこで解散となった。