いつも誤字報告感謝しています。
トレーニングを積んで、調子を崩して復帰しての初めてのレースだ。スズカの調子もいいし、目立ったウマ娘は今日出走していない。普通にレースが進めば負けることは無いだろう。
「スズカ、俺からすれば今日のレースは、復帰戦であり日本ダービーまでの通過点だ。サイレンススズカの本当の走りを観客に見せつけてやれ!」
「はい!今日はなんだか負ける気が全くしません」
様子を見る感じ大丈夫そうだな。そうだ、一つだけ言い忘れたことがあった。
「全力で楽しんでこい!」
「はい!」
スズカに激励を飛ばして送り出す。俺も観客席に向かうか。これからに関わる重要なレースだからな。
観客席に向かう途中で、何故かスカイに会った。今日はトレーニングだったはずだが……サボりか?そんな目線を向けていると。
「むむ、その目は私がトレーニングをサボったんじゃないかって、疑ってる目ですね。安心してください、教官にはちゃんと許可取ってますから」
「ついでに、なんて言って許可を貰ったか聞いていいか」
「レースを実際に見て確認してみたいことがあるので、今日はトレーニング休んでレースを見てきてもいいですかって言ったら、快く許可くれましたよ?」
嘘は言ってないな……実際に本番のレースを見て気づくことができることもあるだろうしな……
「それならいい。それじゃあ席に着くか」
『レースに出走するウマ娘達がパドックに入場します』
実況が今回のレースに出走するウマ娘達を、1人1人紹介していく。次がスズカの番だな。
『5枠5番サイレンススズカ1番人気です』
『前回の弥生賞はアクシデントもあり、思うような走りができていませんでしたからね。今回のレースで調子を取り戻しているのか注目のウマ娘です』
「スズカさん勝てますかね〜」
「パドックを見た感じでは、相手になるウマ娘はいない。スズカなら勝てるさ。それに、それは隣を走ってきたお前が1番よく分かってるんじゃないか?」
「まぁ〜そうですけどね」
1番近くでスズカの走りを感じていたのはスカイだ。そのスカイがスズカなら負けないと1番理解しているだろう。
「まぁ、レースに絶対はない。ゴールするまでは気を抜けないがな」
パドックでウマ娘全員の紹介が終わった。あとはゲートインして走り出すだけだ……
『阪神競バ場2000m芝。馬場状態は先日の雨で重となっております』
『各ウマ娘がゲートインしました。2000m先のゴールを目指して……今スタートしました!』
『サイレンススズカが少し出遅れたか!やはり調子はまだ戻っていないのか!』
「スズカさんが出遅れるなんて珍しいですね……大丈夫かな〜」
スズカが出遅れたか……いつもなら不安になるところなんだがな。あんな楽しそうな顔見せられたら、安心せずにはいられんだろ。
「大丈夫だよ。見てみろ出遅れこそはしたがグングン前に出てきてる」
『サイレンススズカが出遅れたと思いましたが、グングン伸びて先頭を取ります。後続が後に続こうと後ろにつきます』
第1コーナーに入る前には徐々に後続との差を開き始めた。周りがスピードについていけていないんだ。
『第2コーナー回って向こう正面、サイレンススズカが更にスピードを伸ばします!』
『少し掛かってしまっているのでしょうか。後続のウマ娘たちは、様子を見てペースを少し落とします』
掛かってなんかないさ。スズカは、自分がこのペースで走りきれると判断したからペースを上げたんだ。後続のウマ娘達は、バテた所を差し切るつもりでいるだろうが。
「スズカさん絶好調ですね〜」
「ああ、もしかしたらここからまだ伸びるぞ」
スズカはまだ余裕を残して走っている気がする。まだゴールまで距離はあるからな。ここから伸びて行く可能性は十分にありえる。
『サイレンススズカまだ落ちない!後ろともう何バ身離れてるか分からないぞサイレンススズカ!完全な独走状態!』
スズカが後ろを全く引き付けないな。ここまで来たらスズカの一人旅だ。
『第4コーナー回ってラストの直線!サイレンススズカここを耐えられるか!?』
(やっぱり本番のレースは練習と全然違う……後ろから負けたくない、勝ちたいっていう気持ちがピリピリ伝わってくる。けど、それがなんだか心地よくて、負けたくないって私に思わせる。力がドンドン湧き上がってくる!)
「いけぇえええ!スズカ!お前の走りを見せつけてやれぇええ!」
「スズカさん!頑張ってください!」
(トレーナーさんもスカイちゃんも一生懸命応援してくれてる。それがとても嬉しくて……走るのがとっても楽しいの!)
【先頭の景色は……譲らない!】
スズカが最後の直線で一気に加速しスピードを上げた。顔に疲れを見せながらもスピードは全く衰えない。
(これなら……本格的に日本ダービーを狙いに行ける!これなら勝てる!)
『サイレンススズカ!ここに来て更にスピードをあげる!凄いスピードだ!後方は全く追いつけない!サイレンススズカ!サイレンススズカが今1着でゴール!』
『サイレンススズカが大逃げで大差を付けて勝利しました!』
『終わってみると圧倒的なレースでしたね。サイレンススズカのこれからのレースにも期待が膨らみます』
「さすがだな……あそこまで差をつけるとは思ってなかったが。スズカにとっちゃ理想的な走りだった」
「凄いです……あんな速い人走ってたらそりゃ勝てないですよ〜」
(私もあんなふうに勝ちたい。これからも頑張らないとな〜)
そんな弱音をスカイが吐いていたが、その目はとてもキラキラしていた。
「初めてスズカのレースを見てみてどうだった?」
「トレーニングで一緒に走ってたから、凄いのは知ってましたけど……あんな穏やかな人なのに、本番だとあんな力強い走りをするんですね〜……」
「お前もいつかあの舞台に立てばきっとそうなるさ」
おっと、長話してちゃいけないな。スズカのところにいかないと。
「スズカお疲れ様。いい走りだった、まさに圧勝だったな」
「ありがとうございます。とっても楽しかったです」
楽しかったか。嬉しいじゃなくて楽しかったって言えるだけ余裕を持って勝てたのか……いや、スズカは最後まで全力だった。レースの緊張感や苦しみも、まとめて楽しいと感じたんだろうな。
「今日の復帰戦でサイレンススズカ完全復活だ。次のレースからは、周りから警戒されることになる」
「それでも、前に立って先頭を守りきってみせます」
頼もしい限りだな。そのためにも……一つだけ課題があるわけだが。これはまた後日でいいな。
「スカイちゃんも、応援に来てくれてありがとう」
「いや〜私もスズカさんがレースで走ってるところ見たかったですし〜」
「スカイはスズカの走り見て感動してたぞ。目をキラキラさせながら見てたよな」
「トレーナーさん!そういうことは言わなくていいんですよ!」
顔を紅くしながら尻尾でペシペシと叩いてくる。スカイって人のことイジるけどイジられるの苦手だよな。
「とりあえず!無事に走りきれてよかった。スズカも自分の成長を感じただろう。それを自信に変えて、これからも頑張っていくぞ」
「はい!これからも頑張ります!」
スズカもまだまだやる気満々だな。ここはまだスタート地点だ、日本ダービーに向けては次のレースが本番だ
「スズカさんには私の為にも頑張ってもらはないと〜」
「そうね、スカイちゃんと一緒に毎日トレーニングするのが楽しみね」
「あはは〜そうですね……」
スカイ……スズカ相手だと一言余計なことを言うな。耳を垂れさせて落ち込んでるけど自業自得だ。
「私はそろそろウイニングライブの準備をしないといけないので、この辺で1回失礼しますね」
「ああ、ウイニングライブ楽しみに待ってるぞ」
「私も見ますからね〜」
そこで1回別れることになった。俺たちは観客席に、スズカはライブステージに。
観客席でしばらく待つとスズカ達がライブステージに上がってきた。
「スズカさん綺麗ですね。いいな〜」
「お前もいつかあのステージに立つんだからな。まあ、スカイは顔も整ってるし、物覚えもいいからウイニングライブは心配なさそうだけどな」
「なっ!」
一瞬驚いた声をあげたが、その後は下を俯いて何かブツブツと言っている。
「ほっほら!ライブ始まっちゃいますから!しっかりと見ましょう!」
ライブが始まって、スズカのダンスと歌を聞いてると少し違和感を感じた。振り付けも問題は無いし、歌の音程もあっているんだが……
(あぁ、ライブは悪くはないんだ、踊りも歌も変じゃない。けど個性が足りてない。そのせいで少しだけ色が出にくくなってる)
これも次のレースまでの課題だな……ウイニングライブはウマ娘達にとっては大切な舞台だからな。
(課題は明日考えればいいか。今はスズカのライブを楽しもう)
スカイと一緒に緑のサイリウムを振って、スズカのライブを盛り上げた。
無事にライブが終わってスズカと合流する。
「スズカさん凄い綺麗でしたよ」
「ありがとうスカイちゃん」
「今日はお疲れ様。寮に戻ったらゆっくりと休むんだぞ」
そうしてスズカの頭を撫でる。頭を撫でるのも最初は抵抗があったが、最近はスズカたちも嬉しそうだしいいかって思ってる。今もスズカの尻尾がゆらゆらと揺れてるし。
そして、学園についてそこで解散になった。去り際にスズカがこちらを振り返る。
「明日もよろしくお願いしますね!トレーナーさん!」
こうして、無事にレースは終了した。