トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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第28話:激闘!マチカネフクキタル!

 日にちが経ちレース当日。これまでのトレーニングは、筋トレと走り込みを重視して行ってきた。スピード、スタミナ、パワー全てが、このレースを勝つために十分な程に鍛え上げた。

 

「今日は、日本ダービーに備えて出来るだけ抑えて走れ……って言いたかったんだがなぁ」

 

「今日はフクキタルも出ます……手を抜いてたら勝てないと思います」

 

 フクキタルなぁ……速くて凄いってのは分かるんだけど、謎すぎる行動が目立つから、よく分からないんだよな……

 

「今日のレースには、弥生賞で競ったウマ娘達もいる。あの時のお前とは違うってことを分からせてやれ!」

 

「はい!」

 

「このレースを勝てば、後は日本ダービーを待つのみだ。そのためにスズカ、お前はお前らしい走りをしてこい」

 

「分かりました。楽しんで来ますね」

 

 ダービー1個前のレースだってのに……緊張感を全く感じさせないな。いい事っちゃいい事なんだが、もう少し緊張感を持ってもいいと思うんだがな。

 

 そんなことを考えながら、観客席に向かう。その途中で、一緒に来ていたスカイと合流する。

 

「うぅ……なんか見てる私の方が緊張してきましたよ〜……」

 

「なんでお前が緊張してんだよ」ペシ

 

「だって、このレース勝たないとダービー出られないんですよね。私がトレーナーさんの担当になれるかかかってるんですよ?」

 

 たしかに担当になれるなら早ければ早い方がいい。最悪ダービーに出れなくてもその後にG1レースはあるからな。

 

「まっスズカを信じよう。ここから俺たちが出来るのは応援することだけだ」

 

 良さげな席を探していると、見覚えのある背中があった。わざわざ見に来てくれたのかな?

 

「沖野先輩、見に来てくれてたんですね」

 

「ああ、後輩か。前回のスズカのレースをテレビで見て、ダービー前に1回生で見ておこうと思ってな」

 

 そう言いながら振り返ってきた先輩の顔が……陥没していた。何があったんだ……

 

「このおじさん誰ですかトレーナーさん……」

 

「ほら、併走トレーニングの時にいただろ。ゴルシとかスカーレットのトレーナー」

 

 こいつ……相手の顔ぐらい覚えておけよ。まぁ、先輩が走ったわけじゃないけどさ。

 

「おぉ、セイウンスカイを手懐けたのか……いい足だな」

 

「うちのウマ娘に手を出さないでください」

 

 先輩の視界からスカイを隠す。隠れてるスカイはなんだか少し嬉しそうだった。

 

「ところでどうしたんですかそれ、またなんか変なことしたんですか?」

 

「またってなんだよ、俺はたまたまいい足したウマ娘が居たから、足を触ってただけだ」

 

 やっぱり変なことしてんじゃねーか。なんでこの人は捕まってないんだろうか。通報されないか心配なんだけど。

 

「とっとりあえず、知り合いなら横座らせてもらおうよトレーナーさん。ここいい席ですよ」

 

 スカイもちょっとていうか、動揺するくらいには引いちゃってるし……まあいいか。

 

「どうだ、スズカは勝てそうか?」

 

「勝ちます……いや、勝ってくれると信じています」

 

 レースに絶対はないと言われている。それに今日は強い相手が何人もいる。

 

「そうか、ならいい、パドックで俺も見させてもらうぜ」

 

「ほら、パドック入場しますよ」

 

『このレースに出走するウマ娘が入場します』

 

 何人かのウマ娘たちが紹介されていく。

 

『次は5枠9番ランニングゲイルです。いい仕上がりですね、十分に1位を狙っていけるでしょう。1番人気です』

 

 この娘とは競ることになりそうだな……かなりいい体をしている。

 

『続いて6枠11番サイレンススズカです。前回のレースは圧巻でしたからね。このレースでも素晴らしい走りを期待しています。2番人気です』

 

 2番人気か、悪くは無い。1番人気とかだと周りから警戒されちまうからな。

 

『そして6枠12番マチカネフクキタルです。彼女は謎が多いですからね。後ろから一気に抜き去っていく姿を見ることが出来るか』

 

「フクキタルか……調子は悪そうじゃない。でもここから見るだけだと驚異に感じにくいな」

 

「スズカもいい出来じゃねーか。スピード、パワー、スタミナどれをとっても高水準だ」

 

「当たり前じゃないですか〜スズカさんはすごいんですよ」

 

「でも、ちょっとホワホワしすぎじゃねーか?緊張感足りてないぞ」

 

 先輩の言う通りだ。リラックスしてる状態にもメリットがある、けど緊張してるメリットもしっかりあるんだ。

 

「そうなんですよね。どうしたらいいんやら」

 

「今日のレース終わったら飲み行くからそこ来いよ、いいアドバイスできるぜ」

 

「そうですね。とりあえず今は、目の前のレースに集中しましょう」

 

 

「フクキタル、私負けないから」

 

「私だって負けるつもりはありません!シラオキ様もついてくれてますし!」

 

「そう、今日はいいレースにしましょう」

 

「はい!」

 

 言っていることがわからないことはあるが、フクキタルはいい娘だ。全力でぶつかろう。

 

『出走者達が今ゲートインしました。2200m芝左回り、馬場状態は良です』

 

『この晴れ渡った空の下2200m先のゴールを目指して…今!スタートしました!』

 

 スズカが少し出遅れる。綺麗にスタートはきったが出遅れてしまった。

 

『サイレンススズカが少し出遅れる!先頭はカイシュウホマレ!その後続にサイレンススズカが入りました』

 

「出遅れたな、ここから大丈夫か?」

 

「大丈夫ですよ先輩。スズカはこっから行きますよ」

 

『向こう正面に入りました。ここまでレース内で大きな動きはありません』

 

「スズカさん……なかなか先頭を取り戻せないですね」

 

「一瞬の隙があれば……そこで一気に抜いていけるはずだ」

 

 まだスズカは全然諦めてない。先頭を取れず辛い状況だが、それでも1着を取ろうと走り続けてる。

 

『第3コーナー入口でマチカネフクキタルが仕掛けます!第4コーナー回って先頭集団に追いつきます!』

 

 フクキタルが来たか!なんか凄い叫んでる気がするけど。なんなのあの娘は。

 

『そしてここで、サイレンススズカが前に出た!カイシュウホマレを躱して前に出ました!』

 

『大外からランニングゲイルが追い越しにきた!』

 

『残り400m横一線!誰が前に出るか分かりません!』

 

 スズカがほんの少しだけ前に出ている。このままいけば勝てるぞ!

 

「いっけえぇぇぇええ!スズカぁぁぁあ!前にでるんだああああ!」

 

「スズカさん!頑張ってください!」

 

 

 私も含めてほぼ横一線……フクキタルもランニングゲイルもギリギリで走ってる。3人で同じ景色を見ている。でもゴールの景色は譲れない。

 

【先頭の景色は……譲らない!】

 

『サイレンススズカが動いた!1歩前に出ました!ランニングゲイルは追いつけません』

 

『サイレンススズカが先頭で真後ろのマチカネフクキタルが狙っています』

 

 

「今なんですね!分かりました!行きますしらおきさまああああああああ!!」

 

 

「なんかフクキタルが凄い叫んでるな」

 

「セイちゃんああいうのは怖いです」

 

『マチカネフクキタルがサイレンススズカに並んだ!残り100mです!どちらも先を譲らない!サイレンススズカか!マチカネフクキタルか!』

 

 ゴールしたが僅差すぎてどちらが先かわからない。

 

「こりゃ写真判定だな」

 

 先輩が言うように目視でわからないような結果の場合写真による判定を行う。

 

『1着はサイレンススズカです!2着はハナ差でマチカネフクキタル!』

 

「勝った……よかったぁ」

 

「レース前に私にあんなこと言っといて、1番安心しててどうすんですか」

 

 やっぱりいざ勝つと安心しちまうんだよなぁ……とりあえず本当に良かった……

 

「ほらほら、お前らはさっさとスズカのとこに行ってやれ」

 

 先輩の言う通りスズカの元に向かった。

 

「お疲れ様スズカ。最初は苦しい展開だったが、よく諦めずに走った。最後はよく競り勝ったな」

 

「走りきらないと、負けちゃうって思ったらなんだか力が湧いてきました。フクキタルに負けたくないって」

 

 やっぱりスズカには勝負強さと根性があるな。その2つが今回の勝利を手にしたんだろう。

 

「スズカさん!お疲れ様です〜ウイニングライブも楽しみにしてますね〜」

 

「ええ、見てて私のライブを」

 

「それじゃあ、俺らは観客席にいるからまた後でな」

 

「はい!」

 

 

 ウイニングライブ会場にたどり着いた。先輩と合流したんだが、知らないウマ娘も一緒にいた。

 

「その娘どうしたんですか先輩……」

 

「ああ、スズカの走りに見惚れてるところを捕まえたんだ」

 

 もうあんたが捕まれよ。本当に大丈夫なのか……

 

「君、スズカが好きなのか?」

 

「はい!私もサイレンススズカさんみたいにキラキラしてかっこよく走りたいです!」

 

 そうか……スズカのファンってこうやってできていくんだな。自分のことじゃなくても嬉しくなってしまう。

 

「そいつが、お前の好きなサイレンススズカさんのトレーナーだぞ」

 

「本当ですか!?私スペシャルウィークって言います!明日からトレセン学園に転校するのでよろしくお願いします!」

 

「おっおう、よろしくな。多分うちのスカイとクラスメイトだろうしよろしく頼むよ」

 

 こんな時期に転校とは珍しいな。なにか事情があるのかもしれない。

 

「私セイウンスカイだよ〜気軽にセイちゃんって呼んでね!スカイでもいいよ」

 

 こいつってちゃっかりスカイって呼ばれ方気に入っているのな。

 

「よろしくねセイちゃん!私のことはスペって呼んで!」

 

「よろしくね、スペちゃん。ほらもうライブ始まるよ」

 

 俺たちがこうやってしてる間にウイニングライブの準備が整った。スズカ達がライブを始める。

 

「すごいな」

 

 前のライブとは大違いだ。テイオーのおかげで細かいステップもしっかりしてるし、何よりライブからなにか熱いものを感じる。

 

「凄いです!これがウイニングライブ!」

 

「そうだ、ウイニングライブでファン達や俺たちに想いを飛ばしてるんだ」

 

「想いを……」

 

 スカイと俺、スペと沖野先輩の4人で懸命に緑のサイリウムを振った。そして無事にウイニングライブは終わった。

 

 今までで1番輝いてるスズカを見ることができて、とても嬉しい気持ちになった。

 

「私は門限やばいからもう帰るね〜」

 

「私もスカイちゃんと一緒に帰ります」

 

「あー!門限すっかり忘れてました!大丈夫かな……」

 

 スペ……転校前日から遅刻をかますところだったのか……

 

「ちょうどいい、スズカとスカイはスペを案内してやってくれ。俺は沖野先輩と飲みがあるから」

 

「分かりました。今日もありがとうございました」

 

「じゃーね〜」

 

 ウマ娘3人が学園の方に帰って行った。

 

「俺たちも行くか」

 

「はい」

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