スズカと学園まで帰って、その後1回だけ寮に戻った。今晩の飲み会の準備をするためだ。というか、飲み会とかそういうのは当日じゃなくてもうちょい前に教えて欲しい。
準備と言っても、軽く着替えて今日の片付けをするくらいだから別にいいんだけどさ。ちゃちゃっと準備してゆっくり待とう。
『飲み会に行くのはいいですけど、また新しい娘を捕まえて来ないでくださいね?』
マックイーンと今日会ったこと自体はバレてないけど、ウマ娘と会ったことはバレてるし。前回のテイオーのこともあるしな……ウマ娘の信頼を失うのは危ない。
『トレーナー同士の飲み会だから心配ないよ』
『それならいいんですけど……気をつけてくださいね』
スズカに連絡もとったし、飲み会の会場に向かうとするか。今日誰が来るか全く聞いてないんだけどな。
「あれ、東条さんじゃないですか」
「柴葉君来たのね。全く、主催者の本人が遅れてたら世話ないわ」
東条さんって沖野先輩と結構仲良いよな。なんだかんだ言って先輩の話を聞くし。やばい時は助け舟を出すし。
「悪い!遅れちまった。途中で飲みに参加したいって人にあって遅れちまったんだ」
「急にすいません。私もちょうど飲みたい気分でして」
理事長秘書のたづなさんだ。初めて飲み会した時もちゃっかりと参加してたけど、あの人も飲み会とか好きなんだろうか。
とりあえず、メンバーはこれで全員揃い中に入る。葵さんは断ったと言っていた。少なくとも、スズカの得意距離である中距離のダービーが終わるまでは参加しないとか。
「そういえば、今日のレースはどうだったのよ。あんたは見に行ってたし、トレーナーもいるんだし教えなさいよ」
「フクキタルが強敵でした……他のウマ娘たちも確かに強かった。でもフクキタルは並んで来ました。差しに行くタイミングは完璧でしたから」
「写真判定はたまにあるが、ほとんど横一線だったな。フクキタルのレースセンスは大したものだよ」
先輩もフクキタルを評価していた。本当に凄いウマ娘だった、叫び声には驚かされた。ただ、それ以上に差しに入るタイミングが完璧だった。
「噂では彼女、シラオキ様なる人物の声が聞こえてそれで走っているとか」
実際に占いとかやってて胡散臭いところはあるけど……実は本当だったりするのか。
「そういう娘はうちに合わないから残念だわ。トウカイテイオーなんかは声を掛けたんだけど自由気ままというか、堅実な私のチームと合わないみたいでね」
東条さんはテイオーに声を掛けてたのか。東条さんのチームには、テイオーの憧れであるルドルフがいるから入るかと思ったんだが。
「アイツみたいな天才は自由にやらせるのがいいんだよ。のびのびと成長してもらおうじゃねえか」
「そうそう、テイオーで思い出したけど。後輩は来年のクラシック3冠狙ってるらしいじゃねえか」
そのこと先輩に話したっけかな……この人の情報網もよく分からんくらい広いんだよな。
「3冠狙ってるの?簡単なことじゃないわよ。うちのルドルフほどの実力と努力と運が必要になる」
ルドルフほどの逸材、同期のライバルたちを負かすほどの実力。そして、誰よりも努力しレース中の運。これが3冠には必要だ。
「たしか、セイウンスカイさんですよね。よくお世話することがあるので聞きましたよ」
よくお世話をするって……スカイ普段お前は何やってんだ……大方サボりの現場をたづなさんに抑えられてるってとこか。
「セイウンスカイ〜!?うちとは絶対に合わない娘じゃない!あんな自由にトレーニングすっぽかされたらたまんないわよ」
「セイウンスカイかぁ……おもしれえ走りはするとは思うが、3冠は厳しいぞ?」
「取ってくれます。セイウンスカイはクラシックで暴れますよ。それだけの才能が彼女にはあると思います」
絶対になれると信じてる。スカイの策略性、メンタル、レースセンス。何よりもスタミナの多さと最後の加速力だ。この武器を駆使して戦いきってみせる。
「そういえば、スペシャルウィークってやつが日本一のウマ娘になりますっていってたが、彼女のデビューも来年だ。すごい世代になりそうだな」
スカイの世代に続々と才能あるウマ娘が集まっていく。黄金世代とでもいうのか……
「ところで、スズカのスタートについてのアドバイスってのはなんなんですか?」
「ああ、お前はスズカのスタートの出遅れが何故起っているかわかるか?」
「リラックスのしすぎでしょうか。緊張感が無さすぎるが故に出遅れてしまう」
スズカは楽しく走るために基本的にリラックスして走っている。それがスタートに影響を及ぼすとはな。
「そうだ、スタートには緊張感が大事だ。緊張感の中でリラックスすることが大事なんだ。そして、それを再現するほどの威圧感を持つウマ娘が1人いる」
「もしかして、うちのルドルフのこと言ってんじゃないでしょうね」
「コンセントレーションを目指すなら1番それが早いですね。シンボリルドルフさんの圧の中での緊張、それでいてリラックスするスタートは最高の環境です」
つまりこの人たちはスズカにルドルフと模擬レースをするべきと言っているのだ。スカイのことを知ってるたづなさんが、こんなアドバイスしていいのか?
「たづなさんそんなに色々話してもいいんですか?」
「セイウンスカイさんみたいな実力あるウマ娘は実力のあるトレーナーの元にいるべきです。実力のないトレーナーの元には行かせられませんから」
つまり、実力を示してセイウンスカイの担当になってくださいってことだな。勝てばなれるが負ければなれない。
「でも、いいんですか東条さんは、チームメンバーを勝手に模擬レースに出されて」
「いいわけないじゃない。でも、ルドルフもスズカに興味を持っている。受けてあげてもいいわよその模擬レース。ただし、1度だけ。その1度でスタートをものにしなさい」
「あっ、ありがとうございます!」
「一応貸しだからね」
スズカとルドルフの大勝負。スズカにはここで多くを経験して欲しい。そうすれば、スズカはまた1個レベルアップする
「そういえば、私業務中に外を回ってたんですけど。柴葉トレーナーが別のウマ娘と仲良くしてるの、みちゃったんですよね」
「えっ俺がマックイーンと話してるの見てたんですか?」
あったのもつい最近のことだしバレてないものだと思ったんだが。なんでこの人が知っているんだ。
「マックイーンつうとメジロマックイーンだよな、メジロ家の令嬢の。またすげえやつに手を出したな」
「どうやったら次々そういう出会いがあるのかしら」
「俺は特別何かはしてないですけどね……」
実際何もしていない。話すことを話してただけだ。ただの世間話程度の話しただけで特別なことはない。
「テイオーとか俺が狙ってたのによ……」
「大丈夫ですよ先輩。テイオーのトレーナーになる気はないです。何よりもテイオーは先輩の元で強くなるべきだと思ってます」
「持つものは後輩だな!」
俺はこの人こそテイオーを育てるべきだと思ってる。1番過ごしやすくのびやすいだろ。
「それにしても、ウマ娘の皇帝と対決か……」
「なんだ?不安か?」
実力差は一目瞭然。圧倒的な差でルドルフが勝つだろうな。不安に決まっている。その敗北レースの中でどれだけ成長できるかだ。
「うちのルドルフの圧は並じゃないわよ。普通のウマ娘なら潰れてもおかしくないわ」
「シンボリルドルフさんはレース中怖いですからね。サイレンススズカさんのメンタルとの勝負ですね」
「スズカは潰れませんよ。そのためにスズカは成長してきました。精神的にも肉体的にも」
「それもそうだな……っとそろそろいい時間だ。お開きにするか」
そこで会計になって解散となる。ちゃっかり東条さんが沖野先輩の分も払ってるのを見かけてしまった。
スズカなら一皮剥けるはず、ルドルフとの1戦で絶対に得るものがある。スタートに必要な技術を。
そうしたら、あとはダービーに乗り込むだけだ。誰が相手でも負けない。