あと誤字報告ありがとうございます……ウオッカをウォッカと書いてしまう致命的なミス……
スカイがメンバーに入ってから少し経ったが、最近スカイの元気がないようだ。なんか良くないことでもあったのだろうか。
「どうしたスカイ、最近あんまり元気がないけど」
「いや〜……キングちゃんがあの日から授業に出てこないんですよ。ご飯とかは食べてるみたいなんですけど」
それは心配だな……一応食事は取ってるっぽいから体は大丈夫だろうけど、精神的に不安だな……あんなことがあった後だし。
「ねぇトレーナーさん。3人でチームを立ち上げないかって、理事長さんに言われてるんだよね」
「うん?まぁ、そうだけど担当するウマ娘がな……ってまさか」
キングヘイローのトレーナーは、あの後にクビになったと聞く。つまり、キングヘイローは今担当のトレーナーがいないわけだ。
「キングちゃんをスカウトしませんか?才能は申し分ないですよね!」
うーん……俺としては問題はないんだけどな。問題はキングヘイローが了承するかだ。今は部屋からもあまり出てこない状態っぽいしな……
「でもキングヘイローが了承するか?俺は彼女とはほとんど接点がないぞ」
「それは任せてください。お膳立ては私がしますから、トレーナーさんは最後にキングちゃんのプライドを再燃させてあげてください」
プライドを再燃か……ていうか、俺とスカイの2人で話してるけどスズカにも話さないといけないな。
「スズカはいいのか?こんなに早く新メンバーなんて」
「トレーナーさんに見てもらえる時間が減るのは少し嫌ですけど……でも、メンバーが増えてチームが持てるってことはトレーナーさんが認められるってことですよね。それなら私はかまいません」
スズカも賛同してるならやるだけやってみるか……上手くいくのか?
「とりあえず、キングちゃんは明日の放課後に必ず連れてくるので安心してください」
「キングちゃん入るね」
私はキングちゃんの部屋に訪れていた。相部屋のウララちゃんには話をして少し席を外してもらってる。
「何の用ですスカイさん……こんな落ちぶれた私を笑いにでも来たのかしら」
「いや〜最近キングちゃんが授業に出てこないから、何してるのかな〜って」
ベットの上でうずくまっているキングちゃんからは、以前のような覇気を感じられない。体も気持ちやつれている気がする。
「何をしてるのか……ね。見ての通り、あの日から何もする気が起きない。最初は怒りの気持ちでいっぱいだったのに、気づいたらやる気が起きないの」
「ふ〜ん。たしかに今のキングちゃんになら、短距離でもマイルでも勝てちゃいそうだね〜」
いつものキングちゃんならここで言い返してくるんだけど、その様子は全くなさそうだ。
「そうね……私にはあなたを……いや、ここにいる輝くウマ娘達を超える程の才能はないのよ……」
「なになにキングちゃん。あんなやつの言ってたこと気にしてるの〜?」
あんなやつの言ってたことなんて気にしなくていいのに。なんでキングちゃんがそんなことを引きずってるの?
「あのトレーナーは間違ったことは言ってなかったわ。私には才能なんてないのよ、お母様が言ってたように……」
「才能……ね。それじゃあ確かめてみようか」
「確かめるって?どうするのかしら」
「私と明日勝負して。短距離とマイルで勝負しよう、私は1人で走る。キングちゃんは私のトレーナーさんの作戦で走ってよ」
キングちゃんに才能がないって言うのなら、たとえトレーナーの指導があっても勝つことができない。 それに、短距離とマイルでの勝負ならキングちゃんは負けない。トレーナーさんがキングちゃんの自信とプライドを取り戻せばね。
「そうですわね、得意な距離でトレーナーの力を借りても勝てないようなら踏ん切りもつくというもの。その勝負お受け致します」
「それでこそキングちゃん、それじゃあ明日の放課後待ってるからね」
「今日1日よろしくお願いします」
本当にスカイのやつキングヘイローを連れてきたな。しかも、昨晩急に『明日キングちゃんと勝負するから、キングちゃんのトレーナー役よろしくね〜』なんて言われた。急いでキングヘイローのデータとか集めることになった……
「ああ、よろしく頼むよ。1戦目は短距離だからな、スカイが1番苦手と言ってもいい距離だ。それでも逃げで来るだろうから、こっちは先行策でやろう」
「えっと、それだけかしら?」
「ん?そうだけど、これ以上なんかあったか?」
キングヘイローのレースセンスとその足があれば、スカイ相手に近距離で負けることはまずありえない。
「そう……それじゃあ行ってくるわ」
このトレーナーさんも結局私に期待なんてしていないのね。自分の担当ウマ娘に負けたウマ娘ですもの、当然ですわね。
「キングちゃんよろしくね〜なんだか今日ならキングちゃんに勝てる気がするよ」
「そうね、よろしくお願いしますわ」
スカイさんもいい人ですわね、こうやって走ることで諦めさせてくれるのだから。
その後ですぐにスタートした。先頭はスカイがとった。少し後ろの方にキングヘイローが控えている。
(ここまでは理想通りの展開だな)
そして残り500mになった。キングヘイローが少し前に出ようとする。
(仕掛けるならここですわ!……)
『キングには才能が足りなかった』『あなたがトレセン学園に入っても辛いだけです』
(ここで……いいのかしら)
仕掛けると思っていたキングヘイローは仕掛けなかった。結局その後はスカイがトップでゴールする。
「ガッカリですわよね。あのウマ娘の娘がこの程度の才能しかないなんて」
「ああガッカリだ。一流を口にするウマ娘の走りがこの程度だったと思うとガッカリするよ。今は良くて3流ってとこだ」
「そうですわ、私には結局才能なんてないのよ」
「才能?何言ってんだ 、圧倒的レースセンス、惑わされない絶対的自信、誰にも負けまいとするそのプライド。才能のバーゲンセールだ」
「なのになんださっきのレース。負けまいとする闘争心もなければ自信も無くレースセンスも生かせない。がっかりだよこんな3流ウマ娘だったなんて」
「うるさい!うるさいですわ!あなたに私の何が分かるの!どうすればいいって言うのよ!」
「お前が何を考えてるかは知らない。でも一流になるのに才能が必要か?3流でも汚らしくもがいてトレーニングすればいいじゃねえか。そうすればいつか2流だ、それを繰り返せばお前は一流だ。そしてお前にはそれが出来る努力の才能があるじゃねえか!」
「あなた何を……」
「今勝てなくたっていい、勝つべきレースのために足掻いてもがいてひたすら鍛えて。そうしていけばいつかお前は一流だ」
努力の天才ってのはいるんだ。それで他の才能を開花させていけばいいだけだ。
「だから今は足掻け!できる限りを尽くして、勝利をもぎ取るんだ!自分を信じろ!お前は強い!」
「全く……おばかなんだから。いいですわ!あなたには私の勝利を受け取る権利を差し上げますわ!」
「勝ち取ってこい。自分自身を信じるんだ」
「スカイさん待たせてしまったわね」
「いや〜私は別に問題ないけど〜」
「残念だけどあなたにはこのレース負けていただきますわ!」
勝てないかもしれない、でも今できる限りのことをするのよ。たとえそれがどれだけ泥臭くても。
「へぇ〜それは楽しみだね」
「キングさん大丈夫ですかね?」
「大丈夫だよ、キングヘイローは弱いウマ娘でも才能のないウマ娘でもない。彼女は自分を信じたが周りは彼女を信じなかったんだよ」
「トレーナーさんは信じているんですか?」
「当たり前だろ」
レースがスタートした。レース展開はさっきとほぼ同様だった。しかし、残り600mのところでキングヘイローが一気にスピードをあげる。あのスピード尋常じゃないな。
「凄いですね。あのスピードじゃ私もすぐ抜かされそうです」
「ただ問題はスタミナだ、最後まで走りきれるかだ」
(肺が痛い……足が重い、でも動きますわ!)
あれはすごいな、ラスト100mは根性で走りきってる。しかも仕掛けるタイミングも完璧だった。
ゴールすると、キングヘイローはそのまま倒れ込んでしまった。息も切らして、身体中も汚れている。
「大丈夫か!?」
「えぇ……私は勝ったわよ、一流の走りだったかしら」
レース展開は良かったが圧勝では無いし。息も切らして身体中泥だらけ。一流とはいえないな。でも。
「一流とは言えなかったけど、かっこいいと思ったよ」
「そう……あなたには、私のトレーナーになる権利をあげるわ!元々そのつもりで呼んだんでしょ?」
「それは光栄だ、よろしく頼むよキングヘイロー」
「私のことはキングと呼びなさい!」
そんな中近くでスカイが満面の笑みを浮かべていた。全く、スカイの予定通りってところか。とりあえず、契約するためにキングと理事長室に行こう。