休みが明けて、今日はトレーニング開始日だ。一応トレーニング開始時間は連絡で伝えてあるけど、ちゃんと来てくれてるといいんだが……
「トレーナーさん遅いよ〜もうみんな集まってますよ〜」
俺がグラウンドに着くと、みんなが既に集合を終えていた。スカイとキングはいつも通りだったけど、スズカは見て分かるように元気が無さそうだった。
「とりあえず、スカイとキングはアップを始めててくれ。俺はスズカと話さないと行けないことがある」
「それじゃあスカイさん行きましょうか」
「そうだね〜」
キングはいつも通りアップに向かったけど、スカイがニマニマとこちらを見ながらキングについて行った。
「トレーナーさん……私だけに話ってなんでしょうか……」
(レースで負けて、逃げ出しちゃって怒らせちゃったのかも……)
俺に個別で呼び出されたスズカは怯えているように見えた。別にこれから俺は怒るわけではないのに……いや、反省会って意味じゃあ怒るんだろうけど。
「そりゃあの日のレースのことだろ。反省会もしないであの時は解散したからな」
「そうですね……あの時はすいませんでした」
「別に怒ってるわけじゃないんだ。あの日はなんで負けたと思う」
「それは……」
俺の質問にスズカは困っていた。そうだよな、俺が自分が全部悪いなんて言っちまったんだから。
「俺の慢心でマチカネフクキタルの脅威に気づけなかったし、お前の油断も気が付かなかった。でも、レース中に油断しちゃいけないよなスズカ」
俺がそう言うと、スズカは呆気に取られたような顔をしていた。困ってるわけでも、怒ってるわけでもない。
「あの日はすまなかった!俺は俺が頑張ればスズカを勝たせてやれるなんて思い上がってた。俺たちは一緒に頑張ってレースに望んでるんだから、負けた時は俺だけじゃなくて一緒に責任を負って一緒に反省しないとな」
「トレーナーさん……」
「俺は担当が誰でもいいなんて思ったことは1度もない。キングだから、スカイだから、そしてスズカ……お前だからこそ頑張れるし夢を見ているんだ」
今回は慢心っていう悪い形で出てきてしまったが、それは俺がスズカを信頼してるからこそだ。誰でもいい?スズカである必要がない?そんなことはありえない。
「全く……トレーナーさんは不器用なんですから」
少し涙を流しながら、スズカは俺にそう言った。やばい、俺がまた変なこと言ったか?謝るつもりだったのに。俺がスズカの前でテンパっていた。
「そうですよね、反省会しないといけませんね」
「ああ!そうだな。やっぱり油断したのがいけなかった……レースはゴールするまで終わらないからな」
「ですね……私も差し返して完全に油断していました。残り数十メートルで抜かれると思わなくて……」
「マチカネフクキタルのあの成長も予想外だった……スズカの実力が伸びてきているんだから、周りのウマ娘たちも実力を伸ばしてるのは当たり前なのにな」
マチカネフクキタルの最後の伸びは予想外だった。後方からしっかりとレースの流れを確認して、自分の追いつけるギリギリを走っていたんだろうが、あの末脚はダービーの時からは考えられない。
「何よりも勝ちたいっていう気持ちで負けていた気がします……私も同じ気持ちではあったんですけど、やっぱり心のどこかで油断していたのかもしれません」
気持ちで負けたか。なにか前と違うと思ってはいたけど、肉体的にだけじゃなくて精神的にも大きく成長してたんだな。
「ラストは根性でも負けたか……今回の反省を活かしてトレーニングメニューの方針はある程度は決めてはあるんだ」
「それなら、そこに隠れてる2人も呼んだ方がいいんじゃないですか?」
そこに隠れてる2人?スズカの向いてる方に振り向くと、少しだけ耳を出してるスカイとキングがいることに気付いた。俺が気がついたからか、少し小っ恥ずかしいそうの2人が出てきた。
「いや〜まさかバレちゃうとはね。ほらキングちゃんも出ておいでよ
」
「おーほっほっほ!あなたにはこのキングのトレーニングを考える権利をあげるわ!」
2人とも外で走ってるはずだけど……ってあんなことがあったばかりだから気になって当然だよな。ちょうどいいから全員まとめて話しちゃおう。
「まずはスズカからだ。お前にはこれから芝を走る時はこの蹄鉄を付けてもらって、芝以外を走る時はこの重りを付けてもらう」
俺がスカイの足元に置いてあった道具に目をやると、スカイがそれを持ち上げようとした。
「なにこれ、凄い重いぃ!」
「本当ね……こんな重い蹄鉄を付けて走るのかしら?」
2人が片手で持ち上げようとしたが、最初はいつも通りの蹄鉄を持つつもりで持ち上げたせいで腕が上がらなかった。
「私はこんな重りを付けながら走るんですね……上手く走れるでしょうか」
重りや蹄鉄を使ったトレーニングってのは特別に珍しいことじゃない。好みは分かれるようだけど使っているチームはたまに見かける。ただ、逃げウマ娘がトレーニングに使ってるところは殆どみないけどな。
「スピードとスタミナを伸ばすのは勿論だが、足の踏み込み……つまり加速力を伸ばすのにいいんだよ。相性はあるトレーニングだけどスズカには必要だと思ってな」
差しのウマ娘は、逃げや先行のウマ娘よりも少し重めの蹄鉄を付けてレースに出走することが多い。蹄鉄が重い方が踏み込みがしっかりとできて加速がし易いんだ。
「でも、スズカさんは逃げウマ娘よね。なんでこんな重い蹄鉄を付けて練習するのかしら?」
さすがはキング、差しウマ娘ということもあってその辺の知識はしっかりと持ってるな。
「逃げの弱点は最後の伸びだ。逃げウマ娘の中ではスズカのラストスパートは立派なもんだけど、差しウマ娘に比べるとどうしても劣ってしまう。だからスズカには、逃げて差すウマ娘を目指してもらおうと思ってる」
「逃げて差すですか?でも、そんなウマ娘今までに1度もいた事がないんじゃ……」
俺の発言にスズカが困惑する。それも無理はない、逃げて差すなんて前代未聞だ。そんなことができるなら理想的なレースだしな。
「今まで前例はない。だからスズカ、お前が1番最初にそれを実現したウマ娘になるんだ」
今までに前例がないなら作ればいい。それはウマ娘たちの夢に繋が
るだろう。ほかのウマ娘が出来たなら自分も出来るんじゃないかって。
「私が初めてのウマ娘……やります、やらせてください!」
「分かった。それじゃあスズカのトレーニングメニューは、当分重りを付けて行う」
「はい!」
次はキングとスカイだな。2人はまだ基礎を作ってる途中だからな、特別なトレーニングをするわけではない。
「2人は今まで通りスタミナをメインに鍛えて行こうと思う。キングはまだまだスタミナが足りてないからな。スタミナが伸びれば出来るトレーニングの量も増えて質も上がっていく。スカイも基礎を伸ばして行くために今まで通りだ」
「分かったわ、私は異論はないわよ」
「私もスズカさんみたいに特訓!みたいなトレーニングないの〜?」
スカイはスタミナの量はかなり多いからな……でも、それはデビュー前のウマ娘たちの中での話だ。スタミナの多さはスカイの長所の1つだから伸ばしたいとも思ってる。
「スズカはレースでの実践と、トレーニングである程度は自分の走りが固まっているけどお前たちはそうじゃないだろ?変わったトレーニングをして変な癖を付けると良くないからな」
「そっか、じゃあしょうがないね」
「そういえばトレーナーさん、こんな蹄鉄よく用意出来ましたね……お店じゃ見たことないです」
スズカの質問に俺は答えられずにいた。この蹄鉄はたづなさんに譲って貰ったものだ。重い蹄鉄がないかと相談していたところ、この蹄鉄が入った箱を運んで来たんだ。本人曰く『私が昔使っていた蹄鉄があるのでぜひ使ってください。あ、このことは内緒ですよ?』って言われたんだよな。この重さの蹄鉄を付けて走るって、あの人は本当に人間なんだろうか。
「ちょっとツテを使ってな。譲ってくれた人が内緒で頼むってことだから出処は言えないんだ」
「そうなんですね、それじゃあ仕方ないです」
「とりあえず!色々あって迷惑かけたがチームレグルス再出発だ!」
「「「はい!」」」
ウマ娘たちのことを考えて、一緒に頑張って一緒に夢を叶えていこうと再決心できた。そのために、天皇賞秋を勝ちにいくためにトレーニングも頑張んないとな。
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