キングのデビュー戦が終わって休日を挟んで一日が経った。一応次の日にキングの母親について調べてみたけど、ファッションデザイナーを今はしていて、過去にレースで世界的に活躍していたことしか分からなかった。
(なんであの時キングは泣いていたんだろう)
キングが話してくれるまで待つしかないか。無理に聞くのも悪いし、キングにも色々あるんだろうし。
「久しぶりだな、柴葉トレーナー」
「ルドルフか、どうしたんだ?俺のチームルームに来るなんて。今は俺以外誰もいないけど」
俺がチームルームでスズカ達を待っていると、ルドルフが部屋を訪れた。この部屋にチームメンバー以外が来ることなんてほとんどないんだが……
「いや、問題はないさ。今日は君に話があって来たんだから」
「俺に話?特に生徒会にお世話になるようなことはしてないと思うんだけど……」
もしかしてスカイがなんかやったとか?それとも校内でスズカが走るの我慢できなくなっちゃったとか?さすがにないよな……多分。
「そう肩に力を入れなくてもいい、天皇賞秋で今度エアグルーヴと競うだろう?調子はどうか世間話ついでに聞きに来ただけだよ」
「そうか、調子はいいぞ。キングもデビュー戦勝ったし、スカイもトレーニングにやる気を出してくれてる。何よりスズカの天皇賞秋も近いしな」
「そうか、ならいい。天皇賞秋は勝てそうなのかな?」
それを俺に聞くのか……お互いのチームメンバーの戦いでそれを聞いたら答えは決まってるだろうに。
「スズカは勝つさ。相手が女帝と言われる程の相手であってもだ」
「楽しみにしているよ。それじゃあ私はここら辺で帰るとしよう」
「もう帰るのか?」
「私もトレーニングがあるし、それに君のチームメンバーも来るだろう」
それもそうか、ルドルフにもトレーニングがあるよな。スズカたちもそろそろ来る時間だろうし。
「最後に1つ。チームのことを考えるのもいいが、自分のことも労わってあげてくれ……気をつけてくれよ君は」
気をつける?何に気をつけるんだろうか。俺は特別病気があるとかでもないし、スズカ達の中で怪我をしそうな様子もないしな。
俺が質問しようとすると、ルドルフは既に部屋を去った後だった。ついでに言うぐらいだしそんな深刻なことじゃないのかな?
ルドルフがいなくなってからしばらくして、スズカたちがやってきたので全員でグラウンドに向かう。
「今日からスズカには、この前よりかは少し軽い蹄鉄で1000mの走り込みをしてもらう」
「軽くするだけで外しはしないんですね……」
スズカはため息をつきながらその蹄鉄を受け取ると、自分の靴にはめ始めた。ため息をつきながらもやる気はあるようだ。
「今日からレース1週間前まではこの蹄鉄をつけるか、同じくらいの重さの重りをつけて走って貰うことになる」
「これから毎日ですか?」
「あぁ、毎日だ。レースまであと3週間程度だからな、この2週間は追い込んでいくぞ」
「はい!」
次はスカイの番だな。キングとは別のトレーニングをしてもらう予定だから別々に説明しなくちゃいけない。
「スカイはスズカと一緒の距離を走ってくれ。スピードはできるだけ出し切ってくれ」
「りょうかいで〜す」
スカイは十分なスタミナがついてきたからな、これからはスピードをメインに鍛えて行こうと思ってる。
「キングは天皇賞秋が行われる前日にある黄菊賞に出走してもらう」
「天皇賞秋の前日に?私は構わないのだけど、あなたは大丈夫なのトレーナーさん」
俺?あぁ、たしかにレースに出走するとなると俺にも負担はかかる。けどキングは差しウマ娘だから、少しでも多くのレースを経験させてやりたい。
「そんな大きなレースじゃないし、キングの強敵になるウマ娘は出ないと思うしな。キングのレース慣れと、経験を積むためだ問題はないよ」
「そう?なら私は構わないわ」
「そして、トレーニングメニューはトラックでの長距離のランニングが主になるな」
俺がトラックの長距離って言っただけで、キングは安堵していた。やっぱあの山道走るのって相当しんどいんだろうな……あそこを1人で走らせるのはキングにはまだ早いし、スカイとスズカはトラックで見てなきゃいけないから仕方がない。
「そっそう?トラックで走るのね!それでこそキングに相応しいメニュー!」
キングさん、嬉しいのは分かるんだけど、本音が出てるし言ってること滅茶苦茶ですよ。キングって喜んでる時とか焦ってる時は、言ってることが基本的には滅茶苦茶なんだよな……
「それじゃあトレーニング始めるぞ」
「「「はい!」」」
というわけでトレーニング開始をしたが、3人とも最近のトレーニングで成長が著しいな。スカイはスタミナが伸びて、今までよりもハイペースで走りきることができるようになった。スズカは加速時の踏み込みに力強さが出て加速力も上がったし、スピードも速くなった。キングもスピード次第じゃ中距離くらいまでは息を切らさず走り切れるようになった。
スズカは、蹄鉄を前よりかは軽くしたといっても普通に重いだろうにスカイには1000m負けて悔しそうだった。あれだけ走れてればいつも通りの蹄鉄に戻した時の走りが楽しみだ。
そんな感じで2週間のトレーニングを終えて、スズカとキングのレース1週間前になった。
「今日からスズカは重い蹄鉄を外して通常の蹄鉄で走ってくれ」
「やっとあの重りから解放されるんですね……」
スズカは尻尾を揺らすほど喜んでいた。あの重りには大分苦しめられてたからな。まぁ、レースが終わったらまた付けてもらうことになるだろうけど。
「スカイは今まで通りスズカと一緒に走ってくれ」
「は〜い」
「次にキングだけど、キングもスズカとスカイに合流して走ってもらう」
「あら、長距離走じゃないのね」
今日まではスタミナ強化をメインにして、スピードを出すトレーニングをしてこなかった。それでレース本番に挑んでスピードが上手く出ないと困るからな。マイルで走るためのスピードを思い出すために、今は長距離走をするべきじゃない。
「みんなで同じ条件で走るのは久しぶりだからな。お互いライバルのつもりでトレーニングに挑んでくれ」
「「「はい!」」」
全員がトレーニングの準備が終わり、スタートラインに立った。スズカは今にも走り出しそうだ。
「それじゃあ行くぞ、位置について、よーい……どん!」
先頭を取ったのはスズカだった。その後ろにスカイとキングが続くが、そのままスズカに差をつけられていく。
(まさかここまで伸びるとはな……)
大分リスクはあったけど、あのトレーニングはスズカを大きく成長させてくれた。スカイとキングじゃとてもじゃないが追いつけそうにない。
(凄い……足が軽い。まだまだペースを上げられる気がする)
スカイちゃんとキングちゃんは後ろにいる。いつもならここまで離せないんだけど……今はとても調子がいい。
(スズカさん速すぎない!?)
(とてもじゃないけど追いつけないわ……)
残りは大体500m程度……まだ行ける!
500mを超えたところでスズカがペースを上げた。あそこからまだ伸びるのか。スピードが想像以上に伸びてるな……これはまだスタミナを鍛える必要も出てきそうだ。
最高速度が上がればその分消耗するスタミナも大きくなるからな。どちらかを鍛えるだけじゃだめだ。短距離を走るにしても長距離を走るにしてもバランスが大事だ。
そのあとはスズカのぶっちぎり1着だった。2着はキングで3着はスカイだ。この距離じゃスカイはキングに勝てないか……
「3人ともお疲れ様。どうだ調子は」
「前よりも速く走れます……足がどんどん前に出ていくんです!」
鎖から解き放たれたスズカはすごい嬉しそうにそう言った。嬉しく楽しいだけじゃなくて、そのスピードまでが鎖から解き放たれたな。
「私も前よりハイペースで走れるようになったかな〜スズカさんほどじゃないしキングちゃんにも負けちゃったけどね〜」
スカイは短距離やマイルが得意距離じゃないからな、どちらかと言うと中距離……いや長距離からが強いだろう。それでも、キングに負けたのが悔しいのか少しむくれていた。
「最後まで足を溜めて走って、しっかりとスピードを出し切れるわ」
キングはスタミナ不足でその末脚を活かせずにいたからな。スタミナを鍛えたキングなら短距離で道中ある程度スピードをキープした上でラストスパートに入れる。
「とりあえず、みんな調子は良さそうだな。だけど、油断は禁物だぞ。特にスズカとキング」
スズカは以前経験してるから大丈夫だと思うけど、急激な成長っていうのは慢心に繋がるからな。
「私は前にそれで痛い目に合ってますから大丈夫です」
「私もその程度で油断はしないわ。私が強くなっているなら周りの娘も強くなってるはずよ。スカイさんみたいにね」
やめてやれキング、地味にスズカが傷ついてるから。以前それで失敗しちゃってるから。
「皮肉を言ってるわけじゃないのスズカさん!ほらスズカさんはしっかりと乗り越えたじゃない」
「いいのよキングちゃん……それで失敗したのは事実だから……」
「ほらスズカさん元気だして〜トレーニングまだ終わってないんだから」
「ほら、2本目行くからみんな準備しろよ」
まぁ、この様子なら大丈夫そうだな。キングはレース経験のためでそんなに心配はしてないんだが……スズカの天皇賞秋はなんだか胸騒ぎがするからな、できることはやっておきたい。
こうして俺たちは順調に準備を進めていった。次のキングのレースも、そしてスズカの天皇賞秋も勝ちに行くぞ。
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