トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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急な挿入投稿申し訳ないです。次の話があまりにも急展開になってしまい、急展開の緩和のために執筆しました。


第47話:不穏?周りからの視線?

 天皇賞秋が終わってから、何故か知らないけど視線を感じる気がする。気のせいだとは思うんだけど何なんだろうな。そんなことを考えながら、沖野先輩と計画していた選抜レースの予告の貼り紙を貼っている途中だった。その途中で先輩トレーナーとぶつかってしまった。

 

「すいません!ちょっとよそ見してて」

 

 俺が謝ると、先輩トレーナーは一瞬貼り紙の方を見て俺に一言言って去っていった。

 

「あんま調子にのるなよ」

 

 唖然して、俺はその場で立ち尽くしていた。調子にのるなってどういうことだ?あのトレーナーとは面識はないし何かをした記憶はないんだけな……

 

 俺はチームルームに戻って、自分の評判についてネットで調べてみることにした。今までは自分の評判なんて考えてなかったけど、あそこまで言われたらさすがに俺も気になってしまう。

 

『チームレグルス天皇賞秋を制する!』とか『期待の新人現る!』みたいに最初は明るい記事ばかりだったが、とあるネット掲示板では『ほかの担当から口車に乗せてウマ娘を奪ってる』とか『たまたま優秀なウマ娘に恵まれただけ』『こいつがトレーナーじゃなくてもサイレンススズカやキングヘイローなら勝ってた』と言った酷い内容だった。そこの掲示板だけでなく他の掲示板でも酷い言われように少し頭に来ていた。

 

(俺は彼女たちのために頑張って来たのに!俺じゃなくても別に良かった?そんなわけあってたまるか)

 

 俺だけでも彼女たちだけでも今の成果は残せなかったと思う。それに、俺たちはお互いに夢を追い求めて頑張ってるんだ。

 

「トレーナーさんいますか?みんな集まりましたよ」

 

「あぁ、今行くよ」

 

 パソコンを見ているとスズカ達がチームルームに訪れたので合流した。選抜レースについて話さないといけないからな。

 

「1週間後に俺と沖野先輩、葵さんの3人主催の選抜レースが行われるから、その日は休みだ」

 

「新しい娘をチームに迎えるんですか?」

 

「あぁ、うちのチームは3人の小チームだからな。メンバーを5人揃えてしっかりとしたチームとして認められれば、学園側から受けられる恩恵も大きくなる」

 

「え〜そのために別の娘を入れるの〜セイちゃんは反対だな〜」

 

「勿論誰でもいいわけじゃない。それを見極めるための選抜レースだ。今回のメインは沖野先輩と葵さんがスカウトすることだから、俺はスカウトするかもわからないしな」

 

 そう言うと、スズカとスカイは納得したようだ。どんなウマ娘達が来るかは分からないが、お目にかかるウマ娘がいなければ今回は無理にスカウトするつもりもない。

 

「とりあえず!今日のトレーニング始めるぞー」

 

「「「はい!」」」

 

 トレーニング中にもちょくちょく視線を感じる、一体俺のことなんか誰が見ているんだろうか?人に恨まれるようなことをした覚えもないし。

 

(そういえばルドルフが前に気を付けろみたいなことを言ってきたけど、あれも結局なんだったんだろうか。天皇賞秋も無事に終わったし、その間にスズカやチームメンバーが怪我したりすることもなかった)

 

 ルドルフが何の意味もなくあんなことを言うとは思えないしな……俺がルドルフの忠告について考えていると、1人のウマ娘が俺に話しかけてきた。

 

「あの……サイレンススズカさんのトレーナーさんですか?」

 

「そうだけど……俺に何かようか?」

 

 話しかけてきたウマ娘は身長が低くて気が小さそうな娘だった。こんな娘と知り合いだったけかな?まぁ、わざわざ訪れてきた手前追い返すわけにもいかないし話を聞こう。

 

「私ライスシャワーって言います……その、担当になってくれるトレーナーさんを探していて、いろんな人を訪ねたんですけどどこも追い返されてしまって。あるトレーナーさんが、お前みたいなやつは柴葉とかいう新人トレーナーのところがお似合いだって……」

 

 話を聞く限り逆指名みたいな感じだな。紹介してきたトレーナーは俺のことを詳しく知っているわけではなさそうだけど、俺に押し付けるような感じだな。

 

「なんで他のところは追い返されちゃったんだ?」

 

「ライスって近くにいる人を不幸にしちゃうから……ライスがダメな子だからだと思います……私って足も速くないし、気も小さいから選抜レースなんかもあんまり出れてないんです」

 

 なるほど、実力のないウマ娘をわざわざチームには入れないってことか……それでも彼女はトレセン学園に入ってこれたんだからそれ相応の才能があるはずだ。選抜レース前に特別に1人を見るのも気が引けるけど……まぁ、時間はあるしいいか。

 

「わかったよ、今はちょうど手が空いてるからちょっとトラックを……1000m走って来てみてくれないか」

 

「あっありがとうございます!」

 

 ライスシャワーは体操着で来ていたのですぐに準備は済んだ。あとはスタートを待つだけだが……ライスシャワーがなかなかスタートラインに立たない。

 

「どうした?体調でも悪くなったか?」

 

「そうではないんですけど……スタート前にどうしても緊張しちゃって」

 

 そういえばさっき自分で小心者って言ってたもんな。今日はグラウンドの近くをうろついてるしな、1人で走るより緊張感があるんだろうな。

 

「ライスシャワーは走るのは好きか?」

 

「それは好きですけど……1人でいっぱい走ってるとなんだか元気になります」

 

「なら楽しめ!せっかく自分が好きなことをするんだったら楽しまないと損だろ?」

 

「はい!そうですよね……頑張ってみます!」

 

 俺が少し励ましてやると、少し気持ちが楽になったのかライスシャワーがスタートラインに立った。

 

「それじゃあ行くぞ、位置について……よーいどん!」

 

 ライスシャワーはスタート時点ではスピードを少し抑えていた。なるほど、彼女は先行や差しが得意なんだな。

 

(それにしても、さっきの怯えていた少女とは思えないな)

 

 走り出したライスシャワーはすごい集中力だった。スピードこそ速くはないんだが、ルドルフとはまた違う威圧感を感じる。疲れてきても何とかスピードを維持しようとしている。根性もかなりある、多分だけど彼女はステイヤーに向いているな。即戦力ではないけど、長い目で見れば彼女はいずれ強いステイヤーになると思う。

 

 しかし、そんな彼女を見る周りの目は笑いで満ちていた。低速のスピードでスタミナもそんなにない、それで疲れている彼女を見て笑っているのだ。彼女だけでなく、何人かは俺のことを見ていた。

 

「どうだい?ライスシャワーをスカウトしてみる気はないか?優秀な君にはお似合いだと思うけど」

 

 その内の1人が俺に話しかけてきた。言っていることは何ら変哲もないことだけど、その表情から皮肉を言ってることがよくわかる。ライスシャワーを追い出したトレーナーの1人か。ライスシャワーの今の実力を見て、追い返したんだろうな……

 

「お気遣いありがとうございます。それは彼女とお話をしてから決めようと思います」

 

 俺が冷静にそう答えると、そのトレーナーは面白くなさそうにその場を立ち去った。挑発のつもりで話しかけてきたんだろうけど、そんな安い挑発に乗るわけにはいかない。

 

 そうして、トレーナーが去ってすぐにライスシャワーがゴールした。確かに才能のあるウマ娘だけど現状すぐにスカウトするわけにはいかないな。選抜レースが来週にあるしな。

 

「その……ライスどうでしたか?やっぱりダメダメでしたよね」

 

「そんなことないよ。今でこそ実力不足だけど長い目でみれば確実に活躍できるはずだ」

 

「ありがとうございます!」

 

 来週に選抜レースがあるのにわざわざ俺のところを訪れるってことは、選抜レースのこと知らない可能性もあるし伝えておくか。

 

「このグラウンドで来週選抜レースがあるから、ライスシャワーも是非参加してくれ」

 

 俺に一礼すると、ライスシャワーはグラウンドを後にしようとしていたから最後に一言だけ話しておくか。

 

「ライスシャワー……君には夢はあるか?レースで叶えたい夢が」

 

「夢……ですか?ライスはただでさえ周りを不幸にしてしまうので、そんなことを考えるのはおこがましいというか」

 

 なるほど、筋金入りの小心者だな。彼女が精神的に成長したあとのことを考えると楽しみだ。トレーナーに恵まれればいずれはG1レースの最前線で活躍することになりそうだな。

 

「そうか、もし思いついたらでいいから選抜レースまでに考えてみてくれ。想いってのは強い力になるからな」

 

 ライスシャワーを見送って、そのあとは無事にトレーニングを終えた。トレーニングを終えたあとにスズカたちからは冷ややかな目で見られたのは辛かった。スカウトはまだしてないって言ったんだけどな……

 

ーーー翌日ーーー

 

 どうやらライスシャワーのことを見たのが一部で噂になってるらしい。チームルームに向かってる途中でも色んなトレーナーに見られた。ただし、その視線は憎悪と言うか悪意みたいなものを感じた。

 

 最初は全く気にしてなかったんだが、午後になる時にはその視線がうっとおしくなってきた。周りからの視線なんて気にならないと思ってたんだけど、ずっと視線を向けられてるととっても疲れる。肉体的に疲れるわけではないんだけど、精神的に結構くるな。

 

 放課後になって、チームルームにメンバー全員が集まったのでグラウンドに出てトレーニングを開始しようとしていた。その途中でスズカたちからおかしな話を聞いた。

 

「なに?知らないトレーナーから昨日から声をかけられる?」

 

「そうなんです、私が廊下を歩いていたら『あんなトレーナーの元にいないで私の担当にならないか?』なんて言われたんです。もちろんその場でお断りしたんですけど」

 

「あ~私も声かけられたなー。『あんなトレーナーの元じゃお前はクラシックで勝っていけない』だってさ。そのまま無視してここまで来たんだけどね~」

 

 デビューを済ませていないスカイにまで声をかけるなんて。なんで俺のウマ娘ばかりに声をかけるんだ?他のトレーナーが付いているとわかっているウマ娘をスカウトしようとするトレーナーは滅多にいない。何よりも周りの目があるからな、あいつは他人のウマ娘を奪おうとしたなんて噂が出たら問題になる。なのに、そんな噂を少しも耳にしなかった。

 

「私も声をかけられたわ。『私のところに来るなら、G1レースでの勝利を約束しよう。君ならば短距離レースで絶対に活躍できるはずだ』だそうよ」

 

「キングまで声をかけられたのか……なんで急にこんなことに」

 

 俺がそんなことを呟くと、スズカたちは心配そうな顔をしていた。俺のことでスズカたちを心配させるわけにはいかない。例え俺がどうなったとしても、俺はこの娘たちだけは巻き込んじゃいけないと決意した。

 

「さぁ!そんなことはどうでもいい!言いたい奴には言わせておけ!俺たちのやることはトレーニングをしてレースに出て夢を叶えることだ!」

 

「「「はい!」」」

 

 それにしても、ルドルフが言ってた忠告ってのはこのことだったか。新人の俺が活躍すれば嫌でも目に留まる。嫉妬するトレーナーもいるのかもしれない。

 

ーーー選抜レース前日ーーー

 

「おい後輩聞いてるのか?」

 

「あっすいません沖野先輩……少しボーッとしてました」

 

 俺はあの日から、できる限りはチームのみんなに心配かけないように心掛けてきた。ただ、最近は周りからの評価が気になってパソコンとにらめっこすることが増えた気がする……そのせいで最近は眠れていない。

 

「明日は選抜レースに参加するウマ娘全員で2000mのレースを行って、その中から各々1人ずつスカウトするウマ娘を決めるっていうことでいいんですよね」

 

「柴葉さんすいません、私のためにわざわざ名前を貸していただいて」

 

「いやいや、俺も新しいメンバーが欲しいところですから。自分のためでもあるので気にしないでいいですよ葵さん」

 

 誰か気になるウマ娘がいた気がするんだけど、誰だったかな。最近は視線に追われたり、チームメンバーを気に掛けたりしていて忙しかったからな。

 

「それじゃあ、ここらで解散かな。時間には遅れないようにしてくれよ。特に後輩は今日はずっとボケっとしてるからな」

 

「気を付けます……」

 

 寮に帰る途中で先輩トレーナーとぶつかった。俺はバランスを崩して尻もちをついてしまったが、相手はそのまま立っていて俺に手を差し伸べた。

 

「すいません……少しボーっとしていて」

 

 俺はその手を取って、立ち上がろうとしたが急に俺の支えがなくなってもう一度尻もちをついた。

 

「悪い、手が滑った」

 

 そのトレーナーはもう一度俺の手を取ることなくその場を立ち去った。最初から俺のことを立ち上がらせるために手を差し伸べたわけじゃないんだ。明らかに俺に悪意を持って接触してきた。

 

 その瞬間に俺の中の何かがプツンと切れる感覚があった。

 

 先輩トレーナーは、新人の俺が活躍するのが気に入らないのだろうか。同期のトレーナーは同じ世代で活躍する俺が妬ましいのか。どうやれば俺のことを認めてくれるんだ、大人しくしていればよかったのか?

 

「勝ち続ければいいんだ。そうすれば俺のことをみんなが認める……いや、認めざる負えない」

 

ーー一方その頃沖野トレーナーはーーー

 

「あいつのことを見てると昔のことを思い出すよ」

 

「それはどういうことかしらね?」

 

「オハナさんだって少しくらいは聞いてるでしょあいつの噂は」

 

 盗人だとかたまたまウマ娘に恵まれただけだとかひどい言われようだ。後輩のチームメンバーを奪おうとするやつらもいるみたいだけど、そいつらが結託しているのと新人で活躍していて妬まれているのもあって、それをしたやつらの悪い噂はこれぽっちも流れてこないんだけどな。なんで俺がそれを知ってるかって?ゴルシの謎の情報網のおかげだよ。

 

「えぇ、良くも悪くも柴葉は目立っているからね。いつかこうなるんじゃないかと思ってたわ」

 

「さすがはオハナさん、話が早いねー」

 

「それでどうするの?助けてあげなくてもいいの。このままじゃあいつは絶対潰れちゃうわよ」

 

 今日少し顔を合わせただけでもわかった。あれは寝不足ってだけの顔じゃない、精神的にかなり追い詰められていたからな。

 

「いや、これはあいつ自身が乗り越えなきゃいけない問題だ。そうだろオハナさん?」

 

「そうね……なんでもかんでも私たちが助けてたらあいつの成長につながらないわ。どうせもしもの時は助けるつもりなんでしょ?」

 

「まぁな……でもギリギリまで今回は見守る予定だ。同期の桐生院に助けられるくらいはいいけどな。先輩の俺らが口出すわけにはいかない。自分で解決しないといざって時になにもできなくなっちまう」

 

 それにあいつはこんなところでへばるやつじゃないだろうしな。そうじゃないとスズカやセイウンスカイ、キングヘイローをあそこまでまとめ上げて鍛えることなんてできない。

 

「もしも道を踏み外しそうになったらどうするの。それでも見て見ぬふりをするの?」

 

「少しくらい道を踏み外しても見守るさ。それでも大丈夫なように俺たち先輩がいるんだ」

 

 あいつが1人ならあいつだけで乗り越えなきゃいけない。それは酷く辛い道のりだ、だけどあいつには俺たちもいる。あいつは1人じゃないんだ。

チームレグルスで1番好きなメンバーは?

  • サイレンススズカ
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • メジロマックイーン
  • トレーナー
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