トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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チャンミもあるし執筆がががががががが


第50話:トレーナーはウマ娘に夢を見る

 マイルチャンピオンシップが終わった翌日は、全く動く気力がわかなかった。俺は何をやってるんだろう、レース終わりで負けて傷ついているスズカを怒鳴りつけて……

 

(俺ってなんのためにトレーナーになったんだっけ)

 

 周りを見返したかったから?周りに認めて欲しかったから?わからない、もう疲れた。頑張っているのに、なんで周りから冷たい目で見られなきゃいけないんだ。結局その日は殆ど何もすることなく俺は眠りについた。何も考えたくなかったのかもしれない。

 

 翌朝目が覚めてからもやる気が湧かずにいた。しかし、夕方あたりに俺は学園に向かっていた。今日はトレーニングもないはずなんだけどな。なんでかは分からない。気分転換をしたかったのか、こんなダメになった俺を叱責してほしかったのか……

 

 俺が学園に着いて正門をくぐると、すぐのところで一人のウマ娘がミニライブをしていた。いや、木箱を並べてそのうえで歌って踊ってるし、看板は段ボール製だからミニライブとも言えないかもしれない。

 

「あー!ファル子のライブに来てくれてありがとー!ファル子頑張るね!」

 

 一瞬立ち止まった俺を客だと勘違いしたのか、俺の方に手を降ってきた。声をかけられて手まで振られてなにも返さないわけにもいかずに軽く手を降り返して、ライブを最後まで見ることにした。

 

(こんな堂々とやっている割にはそんな凄い踊りや歌が上手いわけではないんだな)

 

 おそらく、スズカの方がいいライブをする気がする。時々通りかかる学園の生徒や関係者の中には、こちらを見て笑っているやつもいた。なのに俺は、なぜか目を離せずにいた。踊りも歌もスズカの方がうまいはずなのに、なぜかファル子というウマ娘のライブは引きつけるものがあった。

 

(なんでこんなに輝いて見えるんだろうか)

 

 俺がファル子に視線を向けていると、その視線に気が付いた彼女は俺の方を向いて笑顔でウインクをしてきた。ファンサービスという物だろうか……たまたま通りかかっただけで別にファンというわけではないんだけど。

 

「今日はファル子のライブに来てくれてありがとー!これからもライブ頑張るからよろしくね!」

 

 観客は俺だけしかいないのに、ファル子はそれでも明るく観客席の方に笑顔を振りまいていた。なんでそんなにも明るく振舞えるんだ?

 

「なぁ、ファル子だっけか?お前はなんでそんなに頑張れるんだ?」

 

「私はウマドルを目指してるから!そのためにもミニライブでPR活動にいそしんでるんだよ」

 

「お前も気づいてるんだろ?周りからの視線、そして笑われてることだって。酷いことを言われてるかもしれないんだぞ?」

 

 俺はつい最近に周りからの評価というものを思い知った。誰かのためと思い結果を出しても、どこかで自分は罵倒されている。

 

「確かに今は私のことを笑う人も悪く言う人もいるかもしれない、それでもウマドルになることは私の夢だから!誰かにどう思われるとかじゃないの、私がそうなりたいから!誰かにどう思われるかは関係ないの!」

 

 自分がそうなりたいから、周りがどう言っても関係ないか……どうしてそんなにも真っすぐな目をしていられるんだ。どこかで見た事がある目だ……どこで見たものだろう。

 

(そうだ……今までにもたくさん見てきたじゃないか、スズカにスカイ、キングもだし。それだけじゃない、今思い出せば葵さんがスカウトしていたライスシャワーも同じ目をしていた)

 

 俺は自分自身がやりたかったことを見失っていたんだ。周りの評価ばかりを気にするようになって、自分の苦しみを和らげるために少しでも勝利を重ねようと思っていた。

 

「そうか、わざわざありがとう」

 

「ううんいいの、代わりにまたファル子のライブに来てね!」

 

 俺はファル子と分かれてチームルームに向かった。明日からのトレーニングに備えて、トレーニングメニューを考えなくちゃいけないからな。一応チームの連絡用グループに『明日からトレーニングを始めるから、チームルームでメニューをまとめておく』と連絡をいれといた。あんなことがあった後だし、スズカなんかは顔を出しずらいかもしれないしな……メニューがチームルームにあることを伝えておかなきゃならない。

 

 そうして、俺はチームルームに向かう。その途中で何もないところで転んでしまった。その時ふと試験の日を思い出した、あの時は葵さんが駆け寄って来て俺の事心配してくれたんだったな。けれど今回はそうではなかった。

 

「なんだ、チームレグルスのトレーナー様じゃないか。最近調子はどうだ?あっマイルチャンピオンシップで惨敗したんだっけか」

 

 俺に突っかかって来たのは若いトレーナーだった。俺の同期か一つ上くらいの歳だろう、たまたまこけて無様な俺を笑いにでも来たのだろう。そのトレーナーの顔はにやけ顔だったからな。俺は何か言い返そうとしたんだけど、なぜか声が出ずに言い返せなかった。

 

「なんだよ、期待の新人なんか言われても所詮はウマ娘の才能に頼ったへっぽこトレーナーだったか」

 

「そんなこと言うのはやめてください!」

 

 俺が困惑してパニクっていると、俺とそのトレーナーの間に葵さんが割って入った。

 

「柴葉さんはウマ娘に頼るだけでも、へっぽこでもありません!ウマ娘にしっかりと寄り添える立派なトレーナーなんです!」

 

 葵さんに庇ってもらう日が来るとは思わなかった……人と関わるのがあんまり得意じゃないはずだったんだけど、葵さんも成長してるんだな……っと思ったけど、葵さんの足は震えていた。目の前にいる人間が怖いのに俺の事を庇ってくれてるんだ。

 

「お前もそこのトレーナーもたまたま環境と出会いに恵まれただけじゃねえか!お前ら先輩トレーナーとも仲良いらしいじゃねえか。しかもチームリギルのトレーナーだろ?色々教えてもらってんじゃねえのか?」

 

「それは……」

 

 流石に俺たちは何も言い返せなかった。先輩の沖野さんとも仲良くしてアドバイスももらったし、東条さんとも仲良く俺も何回も助けられてる。

 

「俺だってそんだけ人と環境に恵まれてれば、そこの新人なんかに負けたりしない!」

 

 俺は運がよかっただけなのかもしれない、あの試験の日に沖野先輩に出会ってなければ東条さんにも出会えてなかった。その出会いがなければここまでうまくいかなかったかもしれない……

 

「ほぉ?それは面白そうな話をしてるじゃねえか」

 

「それなら私たちと今夜飲みに行ってもいいわよ?まぁ、話は合わなそうだけど」

 

 たまたま近くにいたのか先輩と東条さんが話に入ってきた。俺はまたこの人たちに助けられるんだな……沖野先輩には前にあんなことを言ってしまったばかりなのに。

 

「ゴールドシップのトレーナーにリギルのトレーナーがなんでこんなとこに」

 

「たまたま通りかかったら騒がしいから見てみりゃ、後輩が随分と罵倒されてたんでな」

 

「っく、あんたらもそんなに後輩1人贔屓してていいのかよ!」

 

 沖野先輩はそれを聞いてため息をつき、東条さんは呆れた顔でそのトレーナーを見ていた。自分で言うのもなんだが、飲み会の場面だったり、模擬レースの事についても贔屓と言われても仕方がないと思うんだけど。

 

「そうよ?桐生院トレーナーも柴葉トレーナーも私情で贔屓しているわ。だからなんだって言うの?私たち先輩トレーナーが気に入った後輩トレーナーを贔屓しておかしい?」

 

「そんなの不平等じゃないか!こいつらはたまたま会っただけであんたらみたいな人に贔屓されて、他の俺みたいな後輩はどうなんだよ!」

 

「確かにお前の言う通り俺たちがこいつらに会ったのは偶然だ。でもな、こいつらと仲良くしてるのは偶然じゃない。俺たちがこいつらと仲良くしたいと思ったからこそ俺らはこいつらにアドバイスもするし、助け船もある程度はだしてやる。出会ったのは偶然でも近くにいるのは偶然じゃないんだよ」

 

 会った人と片っ端から仲良くしてたらきりがないのはわかるけど……俺と葵さんってそこまで言われるほどこの人たちに気に入られてたんだな。いざ本人の口から聞くと嬉しいな。

 

「あんたもたまには良いこと言うわね。こいつの言う通り私たちが仲良くしたいからしてるだけ。それに、アドバイスと言っても聞かれたことを答えるくらいだし、トレーニングメニューのアドバイスとかは殆どしてないわよ」

 

「それに、なんでもかんでも答えるわけじゃない……それをしっかりと乗り越えられるからこいつらは強いんだよ」

 

 多分先輩の言ってるのは今回のことだろう。先輩は俺の異常に気付いていても助けてくれようとはしなかった。今回の問題はあくまでも俺に解決させようとしていた気がする。

 

「チームメンバーだって、こいつだからこそみんなついてきたんだよ。なぁそうだろ後輩?」

 

「はい……はい!俺もあいつらだったからこそ、ここまで頑張ってこれたんです」

 

 そうだ、俺は俺のためだけじゃない。何よりもあいつらのために、みんなの夢を目標を叶えるのを少しでも助けたかったんだ。

 

「あなたも他人のことを妬んでいる暇があったら、自分の担当の娘のトレーニングとかレースプランとか考えることはいくらでもあるんじゃない?」

 

「っく……」

 

 東条さんの言葉を最後に、そのトレーナーは何も言い返せずにその場から逃げ出した。東条さんの圧に耐えられなかったてもあるかもしれないけど……

 

「先輩に東条さん、葵さんもありがとうございます。めっちゃ助かりました」

 

「いえ、私はなにも出来ませんでしたから……」

 

「俺たちは本当に用事の途中にここを通りかかっただけだからな、お礼なんて言わなくてもいい」

 

「そうよ、私たちこのあとも用事があるから行くわね。あなたたちも用事があるでしょ?」

 

 そうだ、チームルームに行って明日からのトレーニングメニューを考えないといけないんだった。ちょっと時間を使いすぎたから急がないとな。

 

「それじゃあ失礼します」

 

 俺はそこで先輩達と分かれてチームルームに向かった。部屋の扉の前に立つと、誰もいないはずの部屋からガサゴソという音が聞こえた。泥棒か……?とも思ったんだけど、扉越しで聞く限りでは部屋を漁ってる感じでもない。

 

「誰がいるのか……?」

 

 俺が中に入ると誰もいなかった。ただ、部屋の真ん中に足が生えてる麻袋が……って足の生えた麻袋なんてあるわけない!誰か入ってるのかこれ。麻袋の紐をほどいて麻袋を外すと中からはマックイーンが出てきた。

 

「うわぁ!」

 

「どうしたんですか!?大丈夫ですかトレーナーさん!」

 

「トレーナーさん大丈夫~?」

 

「全く……このチームはいつも賑やかね」

 

 俺が中から出てきたマックイーンに驚いて大声をあげると、外からスズカとスカイ、キングの三人が入ってきた。どうやら部屋の外にはいたけど中に入るか迷っていたっぽい。

 

「それで、どうしてマックイーンが麻袋に包まれてこんなところにいるんだ?」

 

「それはこっちが聞きたいですわ……いつもみたいに学園の中を普通に歩いてたら、背後から急に現れたゴールドシップさんに麻袋を被せられて、やっとあなたに解放してもらえたんですわ」

 

 どういうことなんだ……ゴルシに俺がここに来る事を言ってるわけもないし。何を思ってマックイーンをここに……いややめよう、考えてもわかるわけない。

 

「それで、三人はなんでここに?」

 

「私の話は無視ですの!?」

 

 すまんなマックイーン。ゴルシのやったことを一つ一つ真面目に考えてたら脳みそが沸騰しちまう。それこそ世界の真理でも開けそうな気がする。

 

「私は前回のレースで負けてしまったので……これからのトレーニングを考えるならいた方がいいと思って……」

 

「いや~私は一人でトレーニング考えてたらトレーナーさんが可哀想だな~って思っただけだよ」

 

「そんなこと言って、スカイさんは部屋の前でスズカさんとずっとうろうろしてたじゃない」

 

「ちょっとキングちゃん!それは黙っておいてよ!」

 

 スズカはキングとスカイのやり取りを近くで笑いながらみて、キングはスカイのことを軽く受け流してる。マックイーンは状況が飲み込めきれずに軽い放心状態だ。賑やかというかなんというか……本当にいいウマ娘ばっかりだ。

 

「スズカ!俺たちの目標は何だ!」

 

「目標ですか?えーっと……レースに勝つことですか?」

 

「違う、俺とスズカの目標はレースで皆に夢を届けることだ」

 

 そうだよ、元々はそこから始まったんだ。逃げで勝って皆に夢を届けたいスズカと、そんなスズカに夢を見た俺。二人でその夢を叶えることを目標に頑張ってきたんだ。

 

「次はスカイ、俺たちの目標はなんだ?」

 

「私はクラシック3冠とりま~す……あとキングちゃんに勝ちます」

 

 そして、次にメンバーになってくれたのはスカイだった。最初会ったときはトレーニングサボってるところだったんだよな。庶民的な自分でもクラシック3冠を制覇できて、同期のキングに勝ちたいって目標と夢があった。キングは今でこそ仲間だけど、スカイの中ではライバル的な存在なのかもしれない。

 

「次はキング、俺たちの目標はなんだ?」

 

「全距離G1制覇……そして、私が一流のウマ娘であることを証明することよ!」

 

 最初は別のトレーナーのところにいたキングも、今では立派なチームメンバーだ。キングが入るまでは色々なことがあったけど、キングが来てチームレグルスを作ったんだ。全距離G1制覇……今までに誰も達成したことのない偉業を成し遂げて、自分が一流であることを証明するんだ。

 

「最後にマックイーン……お前が俺と一緒に叶えたい目標ってなんだ?」

 

「私は天皇賞春の連覇……そして、春シニア3冠を取りますわ。メジロ家の念願は通過点で、そこから自分の夢も叶えますわ!」

 

 天皇賞春の連覇はただでさえ難しいことだ、それに加えて春シニア3冠か……でも、それがマックイーンの夢なんだよな。だったら俺はそれを叶えるために全力を尽くすだけだ。

 

「マックイーン、あんなことがあった後で思う事もあるだろうが……俺たちのチームに入ってくれないか?」

 

 もしも、別のチームに移りたいっていうんならそれを甘んじて受け入れるつもりだ。あの時のスカウトはマックイーンというウマ娘を見たものじゃなくて、実力だけをみて決めてしまったからな。

 

「元々私はあなたのチームに入るつもりでしたので、そちら側が受け入れてくれるなら是非入らせていただきますわ」

 

 断られなくてよかった。チームスピカにはゴルシもいるし、居心地が良くなってやっぱりスピカに移りますってことも考えていた。

 

「トレーナーさん、もう大丈夫なんですか?」

 

 スズカが心配そうに話しかけてきた。あの日のレースで俺はスズカを怒鳴ってしまい、怖い思いをさせたからな……絶対にあんなことは二度としちゃいけない。

 

 選抜レースではライスシャワーには申し訳ないことをしたな……現状の実力ではマックイーンの方が上だったけど、才能とあの勝利への執着、レースへの想いはマックイーンと同等かそれ以上かもしれないのに。

 

「あぁ、大丈夫だ。周りからなんと言われようと、俺はお前たちと夢を叶えたい。だから心機一転でマックイーンをチームに加えて、チームレグルス再出発だ!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 まだレースは終わってない。ゴールするまでレースは終わらないからな、ここで終わりじゃないんだ。スズカたちと一緒にゴールするまで頑張っていくんだ。

 

 




シリアス回抜けたァァァァァ!

チームレグルスで1番好きなメンバーは?

  • サイレンススズカ
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • メジロマックイーン
  • トレーナー
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