トレーニングメニューをみんなで考えたあとで、マックイーンのチームに入る手続きを済ませた。沖野先輩にマックイーンのことを伝えようと思ったら、何故かゴルシに関節技を決められた先輩の写真と『任せた』の1文が送られてきた。
「とりあえず、スズカ、スカイ、キング3人は今後のレースプランについて話すとして。マックイーンは今後のトレーニング方針を考えていこうと思う」
「スズカは来年の天皇賞秋の連覇、そして宝塚記念も狙っていこうと思うんだ」
宝塚記念は人気投票の上位に入ったものしか出走することしかできない、その年前半の一番を決めると言われているレースだ。人気投票上位しか出走できないということもあって、勝利する難易度は高いし、出走すること自体難しい。
「宝塚記念ですか……私に出走できるんでしょうか」
「実力的には問題ないし、今年は十分な戦績を残した。来年はG2とG3レースを主にこの2つのG1レースを目標にレースプランを練っていく予定だ。何よりも人気投票上位で一番を決めるレース……夢を届けるには良い舞台だと思わないか?」
「はい!頑張ります!」
クラシックでダービーを制して天皇賞秋も取った。これからのレースでも一着を取ることができれば人気投票では上位に入れるはずだ。これからのレースと宝塚記念に備えて、トレーニングを緩くするわけにはいかないな。
「次はスカイ。スカイは年初めにマイルのデビュー戦だ。そこから中山競バ場で行われる中距離レースに出走してもらって、まずは皐月賞に備えるぞ」
「ふっふっふ、私も遂にデビューですね~みんなに早く追いついちゃいますよ」
スカイはキングよりも遅いデビューになったけど、実力は申し分ない。クラシック路線で二人が競いあったらどっちが勝つかわからない。
「キングは来月に行われるG3レースに出走するぞ」
「あら、私が今年最後のレースを飾るのかしら?」
「あぁ、前回はマイルだったから今回は中距離レースに出走して皐月賞に備える」
キングは短距離とマイルは恐らく十分に戦っていける。問題は中距離からだな、クラシック路線は全てが中距離以上のレースだ。最後の菊花賞に関しては3000mの長距離レースだから、少しずつ長い距離のレースに慣れて行かないといかない。
「わかったわ、キングが中距離でも戦えるってことわからせてあげるわ!」
2000mの中距離レースをしっかりと走り切れるならクラシック路線でもチャンスがある。ただ、ウマ娘には距離適性という物がある。簡単に言えば得意な距離のことなんだが、キングは仕掛けどころが重要な走り方をするからその感覚がずれる可能性もある。
(まぁ、それは走ってみないとわからないか)
「次はマックイーンだ。と言っても、マックイーンのデビューは早くても来年の年末か再来年の初めになるだろう」
「あら、そんなに遅いんですの?私は今にでもデビューしても構いませんのに」
そうか、マックイーンはメジロ家の令嬢だ。名家出身のウマ娘で自分の力には自信があるだろうし、プライドも才能もある。同期とでは実力差があって負けを知らないのかもしれない。ただ、才能を持って負けを知らないのは非常に危ないことでもある。何よりも、今のマックイーンがデビューしたところでジュニアでも入着が関の山だろう。
「スズカ、スカイ、キング」
「「「はい」」」
「とりあえず模擬レースするか」
自分の実力を知るには、既にデビューしているウマ娘と競い合うのが一番だ。ただ、マイルや中距離じゃダメだ。マックイーンが得意と言う長距離の3200mでレースをしてもらおう。
「急にですの?私はまだチームに入ったばかりなのですが……」
「安心してくれ、模擬レースのレース内容は天皇賞春と同じ3200mで行う」
「トレーナーさん?私はまだ3200mなんてとてもじゃないけど走り切れないのだけど……」
キングが耳を垂れさせながらそう言う。本人は認めたくはないだろうけど、キングはとてもじゃないが長距離レースを走り切れるほどのスタミナがない。ただ、いずれは超えなきゃいけない壁だから経験するのはいいことだ。
「キングの今の限界を知りたいってのもある。ためしに全力で走ってみほしい。最悪最後まで走り切れなくても問題はないよ」
俺の言い分に納得したのか、キングはそれ以上質問をしなかった。気持ちやる気を出した気がするし、キングはこれで問題ないな。
「あとスズカはみんなよりも重い蹄鉄を付けて参加してくれ」
「えっと……私は普通に走っちゃいけないんですか?長距離になると私も辛いんですけど……」
「お前が全力で走ったらレースにならないだろ、スカイならいい勝負をするかもしれないけど。それでも、お前の実力を加味してのハンデだ」
スズカはあまり納得はしてくれてないけど、しぶしぶ了承してくれた。天皇賞秋からのスズカの実力はトップクラスだ、トレーニングついでに重りをつけるのがちょうどいい。
「スカイ、スズカに勝つ絶好のチャンスだぞ?ステイヤーとしての才能はスズカよりも上だし、マックイーンと同等かそれ以上のはずだ。やってみないか?」
「そうですね~スズカさんに勝っちゃうのいいですし。何より舐められっぱなしってのも尺ですからね~」
「あらスカイちゃん、私が弱くなるってだけであなたが強くなるわけじゃないのよ?そんな簡単に勝てるかしら」
スカイとスズカはバチバチだし、スズカに至ってはなんかすごい強者っぽいこと言いだした。舐められっぱなしってスカイは言ってたけど、自分たちと実力が同等かそれ以上だと思ってるマックイーンが気に入らなかったのかもしれない。
「というわけだけど、問題はないかマックイーン」
「せっかくの模擬レース……しかも私の得意な距離での勝負ですから、負けるわけにはいきませんわ!」
マックイーンもやる気満々だな。スズカがハンデを負っている形だから、真剣勝負とまではいかないけどいい勝負になりそうだ。四人全員に見どころありだ。
「とりあえずグラウンドに出るぞ。ここで話してても埒が明かないからな」
グラウンドに出て、スズカは重い蹄鉄を付けて準備完了だし。他のメンバーも各々で準備完了したっぽいな。
「それじゃあみんなスタートラインについてくれ」
全員がやる気に満ち溢れているな。スカイもスズカに勝つ絶好のチャンスだと、目をギラギラさせているし。キングも自分の限界を知るために全力だ。マックイーンも自分が勝つんだと自信に満ち溢れている。
「いくぞー位置について、よーい……どん!」
スタートはスズカが先頭を切ったな。いくら重りをつけてるからとはいえスズカのスタート技術を持ってすれば遅れは取らない。スズカのスタートは誰にでも真似できるものじゃないからな。本人は模擬レース一回で身に付けていたけど……
スズカから少し離れてスカイが二番手に付いており、その後ろにマックイーン付いている。スカイが序盤から前に出たのにマックイーンは少し驚いていたけどな。あのホンワカした雰囲気をみて少し舐めていたな。
そして、さらに後ろにキングがいる。無理にスカイたちについていこうとはせずに自分のペースを保っている。自分のスタミナを加味したうえでのペース配分だ……あくまでキングは勝利する気満々だな。
(スカイちゃんがついてこない?今の私のスピードくらいならついてこれると思ったんだけど)
「あれ~マックイーンちゃん、スズカさんはあんなに前にいるけど大丈夫?」
「その手には乗りませんわよ。序盤からスカイさんがここまで前に来るとは思いませんでしたが」
スカイはまだ全然本気ではなかった。スズカに付いていかずに、あえてマックイーンの前についたんだ。スカイは相手のペースを乱すのが得意だからな。
(みなさんが前に行ってしまいますわ……でもここで我慢しなきゃダメよキングヘイロー、このメンバーは基本的には逃げが得意なウマ娘ばかり、差しの私は今回1人。ペースを乱されたら駄目よ)
最初の1000mはお互い様子見をしている、スカイ以外はだけど。スズカは相変わらず先頭を走るが、スカイが少しずつペースを上げている。その真後ろにいるマックイーンは気づいてるかわからないけどな。スカイがペースを少しずつ上げてるせいで余計わかりにくいだろうな。その証拠にスカイがペースを上げる度にマックイーンもペースが上がってるからな。
キングはまだ後方にいる、だけどまだ1000mだ。距離は離れているが、まだ覆せない程距離は離れていない。キングが動くのは2500mを過ぎたあたりか、そこからが本当の勝負だ。
2000mを通過した辺りでスカイが一気にスピードを上げた。スズカに追いつくために早い段階で一度ペースを上げたんだ。マックイーンもなんとかついて行こうとはしてるが、少しずつ距離は離れていっている。なによりもマックイーンの顔に疲れが出始めた。
(スカイに煽られたせいでマックイーンは大分スタミナを消耗したな。スカイは自分が大丈夫なペース配分でしっかりと走ってただろうから、スズカに追いつくためのスタミナは十分残っているはずだ。
2500mを通過したところでスカイがスズカに追いついた。マックイーンはスズカたちに追いつけなくなっていた。キングも少しずつペースを上げてきたが、その顔には疲労が顔に出ている。そして、模擬レースは勝負は3000mの終盤に差し掛かる。
「スズカさん大分疲れてるみたいですね~この辺で私に先頭を譲る気はないですか?」
「私はね……並ばれてからが強いのよ?何よりもスカイちゃんにまだ先頭を譲る気はないわ!」
『先頭の景色は譲らない……!』
スズカはいつものように最後のスパートをかける。確かに速いんだけどいつもほどじゃない。スピードは確かに上がってはいるんだけど、蹄鉄の影響でスタミナをかなり消耗したらしくてイマイチスピードが乗ってない。
「悪いけど今日は先頭、譲ってもらいますね!」
スカイがスズカを追い抜く。スズカも必死に食らいついてはいるけど足が前に出ない。元々スズカは長距離がそこまで得意なわけじゃない、そこに重い蹄鉄までつけて走ってるんだ。あのペースで走り切ろうとしてるだけで十分にすごい。
先頭であの二人が競り合っている間に、後方ではキングとマックイーンが競り合っていた。後方でスタミナを溜めていたキングと、先頭でスタミナを消耗しきったマックイーン。有利なのはキングなのだが、ここまで長い距離をレース形式でキングに走らせるのは初めてだからどうなるか。
(仕掛けるなら今……!)
キングが仕掛けたが……少し早い。やっぱりマイル以下と長距離とでは勝手が違うか。先頭はスカイとスズカの競り合いで、後方ではキングとマックイーンの競い合いだ。
結局1着を取ったのはスカイだった。スズカはスカイに追いつけずに2着で終わった。3着はマックイーンだ、キングとマックイーンは最後の最後までほぼ横一線だったんだけどマックイーンが最後前に出た。キングは仕掛けるタイミングを間違えたのもあり4着でゴールだ。
全員が一息ついた後で集合をかけた。今日の模擬レースの反省会をしないといけない。今回のレースでいつもよりも知らないことがわかったからな。
「まずはスカイだ。1着でよくゴールしたな。マックイーンのペースを乱す作戦は見事だったし、そのあとのスズカに追いつくタイミングもよかった。スタミナも十分伸びてきたみたいだし、これからも油断せずにトレーニングしていくぞ」
「は~い」
重りをつけてるスズカが相手とはいえ、スズカはクラシックでG1最前線で勝利しているウマ娘だ。これからシニアクラスに入るスズカを相手によく勝ったもんだ。
「次にスズカだ。不得意な長距離レースでよくあそこまで走りきったと褒めたいところなんだけど……ペース配分をミスったな、重りをつけてる中でとは言え最後にスピードが出なかったのは途中のハイペースの影響だ」
「次からは気を付けます!」
スズカの走りはペース配分が命だからな、ハイペースを維持できるのはスズカの強みだがスピードを上げすぎると、最後のスパートでスタミナを残せない。
「キングは長距離とマイルの差を実際に体感しただろう。距離が違えば仕掛けるタイミングももちろん変わってくる、差しで走るならその判断ミスはレースで致命的なミスになる。スタミナも長距離を走るには全然足りていない。これからまだまだ鍛えていくぞ!」
「わかったわ!」
キングには少しきついことを言ってしまったな。だけど、キングのやろうとしていることはそれだけ難しいことなのだ。時には厳しくしないと、キングの為にならない。何よりもキングはそれを自分でもしっかり自覚している。
「最後にマックイーン……今日のレースで分かったと思うけど、マックイーンはまだまだ成長途上で実力不足だ。スカイには完全に手玉に取られたし、中距離以上が苦手なキングにぎりぎり勝利するレベルだ。これを踏まえて、マックイーンのデビューがまだ後なのは理解できたか?」
「えぇ……私は自分のことを過大評価していたようですわ。このままデビューしていたと思うとぞっとします」
マックイーンも納得してくれたみたいだ。マックイーンの実力を測るために行ったつもりだったけど、想像以上の収穫だ。今日のレースの内容を加味したうえでトレーニングの調整もしないとな。
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