「今度の休みにマックイーンの歓迎会ということで、みんなでどっか行こうと思うんだけど案があるやついるか〜」
スカイやキングがメンバーに入った時は、チーム内に誰かしら知り合いがいたから特別開くようなことはなかった。けど、マックイーンはそうじゃない、知り合いが1人もいないチームに入って心配もあるだろう。チーム内の親睦を深めるという意味でもちょうどいい機会だ。
「私はマックイーンさんの歓迎会ならマックイーンさんの行きたいところに行けばいいと思いますけど」
「私も異論な〜し」
「私もそれでいいと思います」
チームの意見はまとまったな、それじゃああとはマックイーンに聞くだけだ。
「それで、マックイーンはどこか行きたいところあるか?」
「私……スイーツバイキングに行きたいですの!」
スイーツバイキングか、ウマ娘は甘いもの好きが多いしマックイーンは特にスイーツが大好物だったな。スズカも甘いものは好きだって言ってたから大丈夫だと思うけど。
「キングとスカイはそれで問題ないか?二人が苦手なら別の場所に変えるのも手だけど」
「私もスイーツは好きだから問題ないわ」
「私も大丈夫だよ~もちろんトレーナーさんのおごりだよね」
スカイはちゃっかりしている。まぁ、俺の奢りで行くつもりだったからいいんだけどさ。トレーナーの給料っていうのは結構いい。スズカの活躍のおかげでかなりのボーナスももらっているし。G1レースの勝利ボーナスっていうのはかなりの額だし、ぶっちゃけしばらくは遊んで暮らせるレベルでは貰ってる。
「最初っからスイーツバイキングってのもあれだし、先にゲーセンか何かで時間でも潰すか」
「ゲーセンですの?」
「私は行った事ないのだけど大丈夫かしら……」
そういえば、キングもマックイーンも一応はいいとこのお嬢様だからな。そういう所に行った経験がないのかもしれない。別の場所に変えたほうがいいだろうか。
「えぇ~キングちゃんもマックイーンちゃんもゲーセンとかいったことないの?」
「恥ずかしながら行った事がないんですの……カラオケなんかは行った事はあるんですが」
「私もそういったところに行ったことはないわね。いい機会だし行ってみてもいいかもしれないわ」
一応はキングもマックイーンも乗り気みたいだし、とりあえずは歓迎会でやることは決まったな。歓迎会というか、みんなで遊びに行くだけな気もするけど……親睦を深めるって意味じゃ問題ないだろう!
「それじゃあ、次のトレーニング休みに近くのゲーセンに集合な。集合時間とかは後々また連絡するから」
というわけで、チームメンバー全員でゲーセンに来たわけなんだけど。スカイはいつも通りフワフワしている。キングとマックイーンはとてもソワソワしながらあたりを見回している。初めての場所に好奇心の目でゲーセンを見ている。
「すごいですわね……こんなに色々な物があるなんて」
「スカイさんには私たちを案内する権利をあげるわ!」
「セイちゃんに任せてください!私はよくここでトレーニングをさb……」
「スカイちゃん?トレーニングサボっちゃダメでしょ?」
俺が様子を見て色々気を使った方がいいと思ったんだけど、あの感じなら俺が干渉する必要はないだろうな。久々にゲーセンに来たんだし、少しだけ俺も遊んでいくか。これでもトレーナーになる前はたまにゲーセンに来て、息抜きに音ゲーとかやりに来てたからな。
昔やっていたダンスゲームのところには先客がいて、小学生くらいの小さなウマ娘だった。小さいだけじゃないな、全体的に体が細くて見てて心配になるくらいだ。けど、ダンスのステップ一つ一つが力強いな。俺の視線に気づいていていたのか、ゲームが終了した後でそのウマ娘が俺に話しかけてきた。
「さっきからなんで私の事見てるのおじさん、もしかして通報したほうがいい感じの人?」
おっおじさん……俺はまだ20代なんだけどな。まぁ、小学生から見れば俺くらいの年齢の男はだいたいおじさんみたいなもんか。って、そんなこと言ってる場合じゃない。この子いま通報とか危ないこと言ってた気がするんだけど。
「俺は怪しいものじゃないって!?ほら、トレーナーバッジだって持ってるトレセン学園でトレーナーをやってるんだよ。ダンスをしているウマ娘がいたからついな」
「トレセン学園のトレーナーね、じゃあおじさん凄い人なんだ」
「今年入ったばかりの新人だけどな。一応はチームも持たせてもらってるし、一応凄い人……なのかな?」
俺の発言を聞いて、そのウマ娘の耳がピクンと反応した。お互い初めて会ったんだから知らないはずなんだけど。この子は俺のことを知っているのだろうか……
「ふーん、あんたが柴葉トレーナーね。ネットとかで名前をよく見かけるよ、もちろんその噂もね」
もしかしておめーアンチだな!って小学生に言うわけにはいかないよな。というより、この子が俺を見る目はキラキラと輝いる……憧れと言うかなんというか……
「知ってもらっていて光栄だよ。まぁ、その様子だと良い噂じゃないことくらい知ってるだろ」
「私はあんたに憧れてるんだよ、周りからどれだけ認められなくても力と実績で周りを認めさせようとするのをさ」
力と実績で周りを認めさせるか……そんな時期もつい最近あったけど、今は違う。俺たちはやりたいことをやって、それに実績がついてくるだけだ。
「お前もトレセン学園に入りたいのか?」
「無理だって言いたいの?こんなに小さくて細い体じゃ無理?あんたもみんなと同じこと言うの?」
彼女から放たれる威圧感は小学生のそれじゃなかった。彼女の目からは何かしらの強い意志だ。周りから認められたい、それだけじゃなくて強くなりたいという純粋な想いや勝利への憧れを感じるんだ。
「そんなことはない、お前にも何か叶えたい想いがあるのなら必ずやり遂げられる。そのためには、トレセン学園を目指すんだ。もしトレセン学園に入れたら俺が面倒を見てやるさ」
あれ、なんか俺凄い偉そうなこと言ってる?しかも、トレセン学園に入学したら面倒を見るとまで言ってしまった!俺が面倒を見るかもわかんないし……みんなには黙っておくことにしよう。
俺がメンバーのところに戻ってみると、チーム全員でプリクラを撮ろうとしている真っ最中だった。プリクラか……俺には無関係な世界だ、少し遠くから出てくるのを待つとしよう。
「トレーナーさんも一緒に撮りましょう?」
「なっ!スズカいつの間に!」
「ほらほらトレーナーさん、一緒に撮りましょうよ~」
俺はスズカとスカイに連行されてプリクラ機の中にぶち込まれた。俺以外の4人で撮ればいいのに、なんで俺がプリクラなんてキラキラしたものに。
「ちょっと狭いですわ!スカイさんもう少し避けてくださらない!?」
「まぁまぁ、そんなに恥ずかしがらないでよマックイーンちゃん。ほらキングちゃんも近づいて近づいて」
「スカイさん!?ペースがあるんだからもう少し離れても」
スカイはコミュ力が高いというか、適応能力が高いというか……キングとも仲直りするのも早かったし、マックイーンと距離が近くなるのも早い気がする。
「トレーナーさんもう少しそっちに寄ってください」
「おっおう」
結局、全員がほぼ密着する形でプリクラを撮ったわけだけど、これってトレーナー的に大丈夫なのだろうか。ウマ娘との距離感はしっかりと保つべきだってよく言われるけど。その後はほぼ放心状態で撮影を終えた。
「トレーナーさん変な顔~」
「しょうがないだろ、こういうのは初めてなんだから」
昔からもっとこういう経験があればよかったんだが。ウマ娘は人間以上の力を持っているが中身は普通の女の子だからな、こういう遊びに関することは詳しいだろうな。
「ほら!そろそろスイーツバイキングの予約時間だ、目的地に向かうぞ」
俺はスズカたちを連れて店に向かった。元々はこれが今日のメインイベントだから遅れるわけにはいかない。マックイーンなんて今日1日ずっと楽しみだったのか会った時からソワソワしてたからな。
「一応ウマ娘食べ放題コースだけどほどほどにな?トレーニングに支障が出ない程度にしてくれよ。特にキングは近々レースがあるんだから、スイーツ食べ過ぎて走れませんわ~なんてことにならんようにな」
「トレーナさん?それは私のモノマネをしているつもりかしら?」
冗談はともかくとして、キングの食べる量は少しだけよく見ておこう。レース前のウェイト管理は大切だからな。スズカなんかはウェイト管理で困ったことがあるようには見えなかったけど、みんなが同じとは限らない。そんな会話を目にも止めずにマックイーンはというと……
「パクパクですわ!これがすっごい美味しいですの!手が止まりませんわ!」
そこには、大量のスイーツをパクパクじゃなくてバクバクと食べるマックイーンが目の前にいる。同じ席に座っているスズカやスカイ、キングもこの光景にはドン引きである。
「ちょっと、なんか食べたいもの探してくる」
「私も~ちょうど食べるものなくなちゃったし」
俺とスカイは二人で新しいスイーツを取りに行った。スズカとキングは、マックイーンの食べっぷりに唖然としていて席に座り込んでいた。あの食べっぷりじゃ体重が増えるわけだ……今日は特別な日だからいっぱい食べてるってのもあるだろうが、あのスイーツ好きは食べ始めたら止まらないだろう。
「マックイーンちゃんも私たちみたいに普通のウマ娘なんだよね」
「そうだな……あの様子をみると普通のウマ娘かと聞かれると微妙なところではあるが」
俺の冗談が面白かったのか、スカイが笑っていた。声に出して笑うほどじゃないけど、笑みがこぼれている。でも、あのマックイーンの食べっぷりは冗談抜きで普通ではない気はする。
「セイちゃんは最初マックイーンちゃんがチームに入るの少し嫌だったんですよ?マックイーンちゃんってお嬢様だし、その上天才だなんて言われててさ。そういう娘に苦手意識が会ったんだよね~」
何それ、俺は初耳だぞそんなの。そんなそぶり少しも見せなかったし、嫌だったら相談してくれれば良かったのに……その割にはスカイってマックイーンと仲がよさそうに見えたけど。
「トレーナーさんが選んだ娘だから、少し歩みよろうって思ってこれでも頑張ったんですよ?模擬レースの時なんてマックイーンちゃんにカチンと来てましたし」
「あぁ、それはレース展開でなんとなくは分かってたけど……」
あの時はスカイがマックイーンを煽ってスタミナをごっそりと削りにかかってたからな。明らかにマックイーンを狙っての作戦だったと思うし、そんなことをしなくてもスカイの方が実力は上だった。
「でも、あのレースの時から気づいたんですよ。お嬢様でも天才でも、できないことだってあるし私たちと同じ女の子だし、マックイーンちゃんって抜けているところあるし」
「まぁそうだな、今だってお嬢様とは思えない顔でスイーツにむさぼりついてるぞ」
マックイーンの方を見ると、饅頭の様に顔をまん丸にしながら幸せそうな顔でケーキを口にしていた。あの顔を写真にとってメジロ家の令嬢ですって言っても誰も信じてくれなそう。
「というわけで、セイちゃんはマックイーンちゃんと仲良くやっていけそうでありま~す」
「ならよかったよ。ありがとうなスカイ」
俺が頭を撫でると、スカイはそのまま顔をうつむかせてしまった。いつもは笑顔なんだけど、今日はなんか気分が悪い日だったのかな……
「そういう不意打ちは私ずるいとおもうなぁ~」
「なんか言ったかスカイ?」
「何でもないです~!早くみんなのところにもどりましょう」
スカイを追いかけるようにみんなのところに戻った。テーブルを見ると驚く量のお皿が積んであった。それを見て、俺が笑ってしまい、それにつられてみんな笑いだした。流石のマックイーンも恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にしていた。
「もっもう私お腹いっぱいですわ!そろそろいい時間ですし、お店を出ませんか?」
「え~マックイーンちゃんまだたべたりないんじゃない~?」
スカイがマックイーンをからかいつつも、実際いい時間になってきていたし、俺たちは店を出ることにした。帰り際にマックイーンが名残惜しそうにスイーツを眺めていたのを俺は忘れない。
「どうだマックイーン。チームでうまくやっていけそうか?」
学園に帰る道中マックイーンと2人になったので気になって聞いてみた。スズカたちは前の方でじゃれ合ってるから、今の内に聞いておいてもいいだろう。
「そうですわね、スズカさんは話下手ではありますけど私の事を気に掛けてくれているようですし。キングさんは私が困っていると色々アドバイスをくれたりしますわ。スカイさんは私のことを苦手意識していたので申し訳なく思っていたのですが、最近は何故かフレンドリーで何かと絡まれることが増えた気がしますわ」
「そうか、ならよかったよ」
「トレーナーさんマックイーンちゃん、二人で後ろでゆっくり歩いてると置いてっちゃいますよ?」
俺とマックイーンが二人で話していると、前の方でスカイたちと遊んでいたスズカが俺たちの方にやってきた。マックイーンがチームになじめるように色々なところで気にかけてくれていたんだな。少し不器用ではあるけど。
「はいはい、ほら行くぞマックイーン」
「皆さん待ってくださいませー!私も混ぜてくださてくださるー?」
俺がマックイーンに声をかけると、俺よりも早くみんなの輪の中に飛び込んで行った。チーム内での争いや、分裂っていうのは良く聞く話だ……でも、俺のチームメンバーはお互いが信じあって支え合って。本当にいいチームだな。
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