第54話:1年の終わり!年末年始!
キングのレースが終わり、今日は大晦日でチームメンバー全員がチームルームに集まっている。キングやマックイーンなんかは実家に帰ると思ってたんだけど、一年目の初めての年末ということでチームの方を優先してくれたみたいだ。
「さぁて、食材の買い出しは済ませてあるし。晩飯の準備を開始するか、この中で料理とかできるやついるか?」
「魚くらいなら捌けますよ~」
「私も軽い料理ぐらいならできますけど」
スカイは魚釣りが趣味なだけあって魚の扱いだけならお手の物だな。スズカは料理とかあんまイメージできないけど基本的なことはできるんだな。
「マックイーンとキングは……手伝えそうなことがあったら手伝ってくれ」
「違うんですわ……メジロ家ではこう言った事は使用人の仕事でして」
「私の家も同じだわ」
マックイーンとキングは名家出身で、使用人を雇うほど裕福な家庭だからな。家事なんかに関わることも滅多になかっただろうから仕方ない。なんかできることがあればいいんだけどな。
「とりあえず、スズカとスカイは鍋に入れる具材の下準備を手伝ってくれ」
「はい」
「は~い」
「キングとマックイーンはそこにある野菜を切っておいてくれないか?」
流石に料理はできないとは言えど野菜を細かく切るくらいならできるだろう。ちょっとキングさん?なんで包丁を振りかぶってるの?猫の手って知ってる?マックイーンもなんでほうほうみたいに納得した顔しているの?
「このくらいなら私にだってできますわ!私はキングなのよ」
「キングとマックイーンはそっちで休んでテレビでも見ていてくれ。よくやってくれたよ後は俺たちがやるから」
「そう?私は何もしなくていいんですの?」
何もしないでというか、何もしないでくれ頼む。なんで大根を切っていたはずなのにそんな四角形の物体が完成するんだ。しかも、包丁を振るたびにあんなことしていたら危なくて集中できない。
「スカイとスズカ悪いけど少しだけ仕事が増えた」
「いいんですよ、二人に割り振ってたのは少しだけですし問題ないです」
「私もテレビみたいな~それにしても、マックイーンちゃんにあんな欠点があったなんてね~」
「だめよスカイちゃん?悪いこと考えちゃ」
「そんなこと考えてないですよスズカさん!ほら早く準備しないと!」
スズカさんも包丁持った状態でスカイを威嚇しないでやってくれ。平然と作業をしているけど、スカイが震えてるから。ていうか、見ている俺も怖いからやめてくれないか。
「ほら、遊んでるとウィンタードリームカップが始まっちまうぞ」
今日集まったのは大晦日って言うだけじゃない。年末に行われるウィンタードリームカップ、本当に選ばれた最強のウマ娘が集まっている。見逃すわけにはいかない、見るだけでいい経験になる。
「今日は会長さんも出走するんですよね」
「あぁ、ルドルフの走りを見るのはスズカの模擬レースぶりだから楽しみだ」
あれはクラシック路線の真っ最中の出来事だった。スズカのために必要だったとはいえ、ルドルフの走りはやばかった。あの時のスズカは未熟だったとはいえクラシック路線で走れるほどのウマ娘だった。そのスズカを子供をあやすかのように走り、スズカの成長のために走ってくれた。最後の最後で一矢報いたとはいえ、かなり手加減された上での敗北だったからな。
「スズカさんはシンボリルドルフ会長と走ったことがあるんでしたね」
「そうなんですか!?シンボリルドルフ会長と模擬レースをするなんて、あなたって本当に新人トレーナーなのですか?」
キングとマックイーンが俺とスズカをキラキラとした目で見てくる。模擬レースが出来たのは沖野先輩のつてだし、スズカもルドルフが手加減してたのを知っているから乾いた笑いをしている。
「まぁ、色々あったからな。ほらレース始まるぞ。キングなんかは脚質が似てるからよく見ておけ」
「言われなくても分かってるわよ」
「他にはマルゼンスキーなんかも出るから、スズカやスカイ、マックイーンもよく見といてくれ」
「「「はい」」」
今言った2人が優勝候補だろうな。マルゼンスキーが逃げるか、ルドルフが差すか。2人とも東条さんのチームメンバーだ、流石はトレセン学園最強チームと呼ばれるチームのエースたちだ。
スタートはマルゼンスキーが取ってレースを引っ張っていったが、最終コーナーで後方から一気にルドルフが上がって来て差し切られる形となった。結局、最初から最後までリギル内の戦いで終わったな。
「やっぱりすごいですねリギルの皆さんは……」
「そりゃトップチームですからね~」
スズカとスカイの言い分もわかるけど、それじゃあ駄目だ。俺たちは憧れるものではなくて、あくまでも挑む者だ。勝つつもりでいないと、今でこそ勝負するまではいかないがいつかは勝利してみせる。
「お前たちもいつかあの舞台に立つんだよ。そのつもりでいないと駄目だぞ」
俺の発言に一瞬みんなは唖然としていたが、すぐに無言でうなずいた。さっきまでとは顔つきが違う、このチームはお淑やかだったりフワフワしてるのが多いんだけど。いざって時は闘志を見せてくれる。
「トレーナーさん飲み物が切れたから買ってきて~」
「なんで俺が買ってこなきゃいけないんだ……しょうがない、買ってきてやるよ」
久々に飲酒をしていたから少し外の空気を吸いたかったところだ。担当の前で酒を飲むのは気が引けたが、スカイがどうぞどうぞと押してきたのでつい飲んでしまった。年末で気が緩んでいるのかもしれないな。
「さぁて、トレーナーさんもいなくなったし。そろそろあれを頂くとしますかね~」
「あれって何のことスカイちゃん」
ずっと気になっていたんだよね。それに今日飲むことができるのはトレーナーさんの好みだから飲んでおきたいし……
「ちょっとスカイさん!?それはまずいわよ」
「そうですわ!スズカさんいつもみたいにスカイさんを止めてください!」
やばっスズカさんのこと忘れてた。スズカさんには勝てない……スズカさんはグラスちゃんと同じで怒らせたら不味い人の人の1人だ。自分の目的ばかりに目がいって他の事を何も考えてなかった……って思ったけど大丈夫そう。
「私も少しだけ気になります……そのトレーナーさんが飲んでいたお酒」
今テーブルの上に置いてあるのはトレーナーさんが飲んでいたコーヒーリキュールとカシスの2本。そして、冷蔵庫に入っていたウマロングZEROとking krowというお酒だ。
「ここまで来たら2人も飲んじゃおうよ。少しだけだからさ」
「もうスカイさんったら……ちょっとだけよね?」
「キングさんまで……こうなったらヤケですわ!」
各々が1つずつお酒を手に取った。私がコーヒーリキュールでスズカさんがカシス、マックイーンちゃんがウマロングZEROでキングちゃんがking krow。
「king krow……まさにキングである私にふさわしい名前ね!」
「それじゃあ、みんな共犯ということでカンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
何これ濃い!お酒ってこんなものなの?もう少しだけ飲んでみようかな……
「ぷはぁ!これうんまいですわ!これを飲めば勝ちですわ!」
「ちょっとマックイーンちゃんそろそろやめておいたら?顔が真っ赤よ?」
「何言ってるのよスズカさん、スズカさんだって顔真っ赤になっているわ」
みんな何言ってるの?みんな顔真っ赤だけど……ってそんな事考えてたら頭がフワフワしてきた。こんな気持ち初めて。
「あれ、これもう空ですの?もっといっぱい飲みてえですわ!」
「あれ〜マックイーンちゃん口調ブレてるけど酔っ払っちゃってるんじゃない?」
「あぁ、またスカイさんが私のことをからかおうとしてきますわ……」
「違うわよマックイーンちゃん。スカイちゃんはねマックイーンちゃんと仲良くなりたいだけなのよ」
「っちょスズカさん!?」
うぅ、いつもなら何かしら言い返すんだけどなんだか頭が上手く回らない。なんか思ったことをッパと喋っちゃうっていうか。
「そうだったんですの!?そうならそうと言ってくれればいいんですわ。私もスカイさんともっと仲良くなりたいですわ!」
「マックイーンちゃん!?私今お酒臭いと思うから抱きつかないで〜!」
「そんなことないですわ。スカイさんはなんだか落ち着く匂いがします」
マックイーンちゃんいつもならそんなこと言わないのに……ちょっとスズカさん助けてくれませんかって思ってスズカさんの方を見ると。
「スズカさん……わだし勝ちたかったのに、負けちゃったの」
「いいのよキングちゃん。キングちゃんは全力で頑張ったんだもの。トレーナーさんもそれを認めてたでしょ?」
「私は一流なのに。トレーナーさんの期待にも答えられなかったわあぁぁああ!」
なんかキングちゃん号泣してるし、スズカさんは聖母のごとくキングちゃんをなだめてる。助けを求められる状況じゃないし……あれなんで私って助けを求めようとしてるんだっけ。マックイーンちゃんに抱きつかれてるのってなんだか落ち着く。
「なんじゃこりゃァァ!」
俺が買い物に行って帰ってくるまでの間に何があったんだ……マックイーンとスカイは抱きつきながら寝てるし。キングはなんか号泣してるし、その近くでスズカは寝てるし。
「こいつら……よりにもよって俺の外出のスキを狙って酒飲みやがった!」
しかも、コーヒーリキュールとカシスなんかは割って飲むお酒なのに原液で飲んである。ウマロングZEROも酔いやすい代表だ。king krowはこの中でも1番度数の高いお酒だし。
(このまま寮に戻っても俺とこいつらが説教されるだけだろうし、未成年に酒飲ませたとなっちゃ問題になりかねん……)
よし、寝よう。この状況じゃお参りにも行けないし。明日のことは明日の俺に任せよう。この絶望的な現実から一刻も早く目を逸らしたくて、俺はそのまま眠りについた。
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