年初めの朝から地獄だ。スカイとマックイーンは2人で抱き合って眠ってるし。キングは号泣してるし。その傍でスズカも寝ていた。
「全く!少し外でてる間に酒を取られると思わなかった……」
「マックイーンちゃんそろそろ離れたら?私の事を好きなのはいいんだけどさ~」
「言われなくてもそうしますわよ!なんで私たちこんな寝かたしてるんですの!?」
叫んだ反動かしらないけど、マックイーンはまた吐きそうになっていた。やめてくれ……頼むから部屋を汚すのだけは勘弁してくれないか。
「あぁ寮長になんて説明したらいいんだよ!」
「トレーナーさん少し静かにしてくださるウップ」
「勘弁して欲しいですわ……」
なんで朝からマックイーンとキングのトイレ往復見なきゃいけないんだ。ていうかお嬢様がそんな醜態をさらしていいのだろうか。いや、考えるのはやめておこう。というか、この地獄の光景に耐えられない。
「すいませんスカイさん、白湯をくださいませんか……」
「はいはい、マックイーンちゃんって!そのボタン今おしちゃダメ!」
マックイーンが誤ってトイレのウォシュレットボタンを押してしまったらしく、凄い勢いで水がマックイーンの顔にかかっている。
「スカイさん、スカイさん……ウォシュレットが私を襲ってきます……助けて下さる?」
「もー!マックイーンちゃんのせいでびしょびしょだよ……」
頼むから止めてくれマックイーン、俺は昨日の事から既に頭がパンクしそうなんだ!あぁ、キングも顔を真っ青にしながらスズカに看病されてるし!
「スカイはマックイーンにシャワーを浴びせてきてくれ!一応二日酔いみたいな状況だからできるだけ様子を見てやってくれ。スズカはキングに水分を取らせながら様子を見ていてくれ!俺はお前らの寮まで行って寮長に謝ってくるから!」
俺はスカイとスズカに指示を出してから、ウマ娘の寮に向かう。結局昨日は自暴自棄になってそのまま眠ってしまったから寮に外泊許可を出していない。本来外泊する場合は軽い手続きをしないといけないんだけど、急な出来事でそんなことしてる暇がなかったからな。
寮に着いて寮長のフジキセキに謝ると、かなりお説教をされたけどわりと早く解放された。これからこういう事はないようにと言われたが、どうやら大晦日やこういったイベントの時なんかは無断外泊するウマ娘はそう少なくはないようだ。
「「きゃぁ!」」
俺がチームルームに戻る途中でシャワールームのほうからスカイとマックイーンの悲鳴が聞こえてきた。俺は思わずシャワールームに飛び込んだんだけど、今考えてみればシャワールームに男が入るのはまずかった。まずは声をかけて状況を把握するべきだったんだが……
「大丈夫かスカイにマックイーン!」
「えっと……その、トレーナーさん?」
中に入ると服を着てない二人が倒れこんで重なっていた。そして、不幸なことにスカイと目が合ってしまったわけだけど……どういう状況?2人ってそういう関係だったの?ていうか俺がここにいたらまずくないか?
「えっと、その……失礼しました」
「トレーナーさーーーん!」
中からスカイの叫び声が聞こえたが、俺はチームルームに向かって走り出した。あのままあそこにいたらスカイにひっぱたかれたに違いない。焦っているウマ娘にひっぱたかれたんじゃたまったもんじゃない!
「スズカ、キングの調子はどうだ?」
「ついさっき顔色が戻り始めて眠っちゃいましたよ」
ソファーで眠るキングの顔は少しだけ赤みを帯び始めていた。とりあえず病院沙汰にならなくてよかったんだけど、そもそもお酒を飲まれた俺も監視不足というか、結構ヤバイんじゃないか?
「ところで、なんでトレーナーさんの後ろでスカイちゃんは手を振りかぶってるんですか?」
「え?」
俺が後ろを振り向くと服を着たマックイーンと手を振りかぶるスカイがいた。待って、スカイさん落ち着いてください。そんな大振りされたら人間の俺は死んでしまいます!まぁ、容赦なくひっぱたかれたんだけど。
「とりあえず、お前らは反省しろ!いくら浮かれてたと言っても酒を飲むのはいかんだろうが!」
「「「「すいません……」」」」
スカイなら考えそうなことだけど、スズカもマックイーンもキングもいるから安心していた。まさか、四人全員が共犯だったとは思わなかったんだけどな。スズカとマックイーンとかならまだやりそうなのかもしれないけど、キングあたりはしっかり止めてくれると思った。そのキングが一番潰れているとは……
「それで?全員が昨日のことをほとんど覚えてないほど泥酔していたわけだが……」
とりあえずは、全員が反省しているからいいか。今後は同じようなことは無いだろう。スカイがマックイーンと抱き合って眠っていたり、キングが号泣したせいで目が赤く腫れていたり……本当に昨日の俺がいない間に何があったんだ。
「はぁ、今回はいいけどこれからは気を付けてくれよ。怒られるのは俺なんだし、困るのはお前たちなんだから」
「「「「はい……」」」」
「よし!なら神社にお参りにいくか。昨日の晩に行く予定だったんだけど、みんなつぶれていたからな」
俺はスズカたちを連れて近くの神社に向かった。新年っていうこともあっていっぱい人がいたけど、固まって動かないと迷子になるほどじゃなかった。スカイとマックイーンとキングの三人は少し前を歩いていた。マックイーンがすごい勢いで屋台を周ろうとするもんだから、スカイとキングがそれを抑える作業をしていた。
「それで?スズカは昨日何があったか覚えているんじゃないか?」
昨日帰ってきたときも普通にキングをなだめていたし、今朝起きた時も他の三人と違って普通に過せていて俺の手伝いまでしてくれていたからな。けど酒を飲んだ形跡はあったから飲んでないわけではない。もしかしたらスズカはかなりの酒豪なのかもしれない……
「ふふ、女の子たちの秘密です♪」
どうやらスズカは昨日のことを覚えてはいるけど話す気はないみたいだ。話さないってことは特別悪いことがあったわけじゃなさそうだし、深入りする必要はないか。本人が話したがらないのを聞いても悪いし、他の三人が覚えてないことを聞くのは気が引ける。
(何よりも初めて酔っ払った時って何をするかわからないし、聞かれたくないのはよくわかる)
「ほらお前ら、そろそろお参りしにいくから買い食いはその辺にしておけ~」
俺がスカイたちに声をかけると、スカイとキングがマックイーンのことを引きずって連れ戻してくれた。いくら年末年始だからといって食いすぎは良くない。マックイーンはスイーツをよく食べるがそれ以外のものも割と平均以上に食べてしまうようだしな。
「ゴルシやきそば~ゴルシ焼きそばはいらんかね~」
お祈りに向かう途中にゴルシに会った。なんでこんなところでこいつは焼きそばを売ってるんだ?そういえば沖野先輩から聞いた話だけど、模擬レースやスぺのデビュー戦の時なんかもゴルシはお弁当を売っていたり、焼きそば屋を開いたりしているらしい。
「おーいゴルシ、沖野先輩は来てないのか?」
「なんだお前たち今頃来たのか。スピカのみんなはとっくに帰っちまったぞ」
だよな……こればっかりは俺たちが悪い。色々なアクシデントがあったせいで来るのが遅くなっちまったからな。あぁ、嫌だ思い出したくない。
ゴルシは俺と会話しながら俺の後ろの方に視線をやっていた。どうやら、マックイーンとスカイの事を見てるらしい。スカイがいつもみたいにマックイーンのことをからかって遊んでいる。なぜだかわからないけど、その視線がとても安堵に満ちていた気がした。
「どうしたゴルシ?うちのスカイとマックイーンがどうかしたのか?」
「いや~あのマックちゃんがしっかりとチームになじんだみたいだな~っと思っただけだぜ!私はそろそろ行かなきゃいけないからまたな!」
気づいたらゴルシはすでにいなくなっていた。あいつは一体何なんだ……普通に現れたと思ったら嵐のように消えていくし、嵐のように現れたと思ったら嵐のように消えていくし。
お参りに向かう途中でマチカネフクキタルが占い屋を開いたりしていたが、看板が胡散臭かったりと見た目が胡散臭かったりとであんまり客足は良くないようだった。寄ってもよかったんだがチームのみんなもいたし、何よりも時間が押しているから寄っている時間がなかったんだ。
(今年は誰も怪我をせずに無事に一年を乗り越えられますように)
(宝塚記念で勝って、天皇賞秋も連覇してトレーナさんと観客のみんなに夢を届けられますように)
(三冠を取れますように……そして、チームメンバーのみんながもっと仲良くなれたらいいな~)
(どんなに負けても挫けない……だから私に一流のウマ娘に、そして勝利を届けてください)
(もっと実力をつけてデビューを果たしたいですわ。チームにももっとなじみたいです)
俺たちはお参りを終えて神社を後にする。寮に戻って昨日の片づけをしないといけないし、スズカたちも家に戻ってゆっくりしたいだろうしな。あんなことがあってマックイーンとキングはくたくたそうだし。
「スカイはすぐにデビュー戦があるし、他のみんなだって明日からトレーニングあるんだからしっかりとかえって休むように!」
「「「「はい!」」」」
こんな感じでチームレグルスの二年目の始まりはグダグダでみっともないものだったけど、チームのみんなで過ごした年末年始はとても楽しいものだった。チームの仲も良くなったみたいだし、またこうやってみんなで何かできたらいいんだけどな。
チームレグルスで1番好きなメンバーは?
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サイレンススズカ
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セイウンスカイ
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キングヘイロー
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メジロマックイーン
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トレーナー