元旦の翌日はしっかりとみんなが顔を出してくれた。誰か1人でも体調を崩していたらどうしようとは思ったんだけど、どうやら杞憂に終わったらしい。
「まずはスカイ!お前はもうデビュー寸前だからなギリギリまで走り込みだ。お前の自慢のスピードで走りこむぞ!」
「は〜い」
スカイは完全にスタミナが鍛えきれてるわけじゃない、かといってそのスピードを生かしきれるほどのスピードがないからどうにかしないといけない。
「次にスズカとキングとマックイーンは例の場所に」
「今日もあれをつけて走るんですか?」
スズカがいうあれとは重りのことだろう、つけるにこしたことはない。ただ、スズカも年末年始で体を休めていた。だから最初は刺激が強すぎないペースで走るべきだ。
「はあ、結局はあそこに戻ることになるのね……スタミナを鍛えるのにいいとは言うけどハードね……」
「あそこってどこですの!?私の知らないとこですよね……キングさんの怯え用からしてやばいってのはわかったわ」
「あとスズカはマックイーンの監視も兼ねてるから後ろから走ってくれ」
「はい!」
「スカイ!俺についてこい、今日からは別の場所で走り込むからな」
スズカ達が例の山道に向かう中、俺たち2人が近くの神社に向かっていた。スズカがクラシック路線に挑む前にやっていたトレーニングだ。
「あの、トレーナーさん?この坂と階段はなんですか?」
「坂と階段だろ」
「いや、そういうことを聞きたいんじゃなくて。この急な坂と階段の数はなんですか!?」
まぁ、俺とスズカも初めて来た時はこんな感じだったからな。驚くスカイの気持ちもわからなく無いんだが。
「今日からのトレーニングはこの階段をひたすら登ってひたすら下れ、それがお前のスピードになるし坂道を走るいい経験になる」
「えぇ……本当ですか?」
疑う気持ちもあるだろうが、実際に効果があった。フォームの改善や、坂道の登り方、そしてスズカのスピードの基礎を上げてくれた。ここで得られたものは多くあった。
「ほら行くぞー!」
「は〜い」
「位置についてよーいドン!」
スピードは悪くない、最後まで登りきれているし。ただ、悪くないというだけで特別に早いわけじゃない。ここからは早くて持続力のある力を手に入れないといけない。
「ほらスカイ!上で休んでないでくだってこーい!」
「ちょっと休ませてよ〜ここ登るのすごいつらいんです!」
スカイが弱音を吐きながらも階段を下ってきた。一応文句は言いつつもしっかりとトレーニングをこなす気はあるようでなによりだ。スカイもわりとやる気満々だ、文句を言っていてもトレーニングをこなしてくれる。
「去年のクラシック前にはスズカもこのトレーニングをやってたんだ、スピードトレーニングと坂道トレーニングをするためにな」
「へぇ、スズカさんもやってたんだ」
スカイはスズカに昔から対抗心を燃やしている。スズカがデビューするより前からスズカと走ってきたから、スズカと同じチームで走ってきたからこそ勝ちたいという思いがあるのだろうか。今はまだ勝つことはできないが、スカイならばいつかスズカにくらいつく日が来るかもしれない。
ーーースズカサイドーーー
「ほらマックイーンちゃん頑張って」
「なんてコースですの……スズカさんたちはいつもこんな所走ってるんですか?」
「うーん、スタミナトレーニングの時は良く来てるかも、でもグラウンドでもしっかり走るわよ?」
マックイーンちゃんのスタミナは初めてここで走った時のスカイちゃんぐらい?とりあえずペースメイクはマックイーンちゃんに任せて、私はその後ろをついて行けばいいか。
「こんな……コースを走るなんて……聞いてないですわぁー!」
「ほら、ラスト1kmよ頑張って」
そういえば、初めてスカイちゃんと走った時は最後抜かされちゃったんだっけ。あの時は坂が苦手で上手く走れなかったとは言え、すごい悔しかったな。
「スカイちゃんは私のこと最初抜かしてきたけど……マックイーンちゃんには厳しいかしら。スカイちゃんに話したらどんな反応するかなー」
「スカイさんが!?こんなところで諦めてたら笑われてしまいますわ!」
私が少し煽りを入れただけですぐにマックイーンちゃんはやる気を取り戻したみたいで、最後の1kmの坂を登り始めた。スタミナもギリギリでヘトヘトみたいだけど、それでもゴール目指して走りきろうとしていた。
(スカイちゃんとマックイーンちゃんは本当に仲がいいのね。あと、マックイーンちゃんは少し正直過ぎない?)
最後の坂をクタクタでマックイーンちゃんは登りきった。マックイーンちゃんからは何かをやり遂げたような雰囲気を醸し出していた。
「やりました!ゴールしましたわぁぁ!」
「それじゃあ帰りも頑張りましょう?」
「え?帰りも走るんですの?どこを走るんですの?」
「今来た道に決まってるでしょ?」
「いやぁぁぁ!」
マックイーンちゃんはその場で崩れてしまった。まさか、そこまでショックを受けると思ってなくて。軽いジョークを言ってみたんだけど……
「大丈夫よマックイーンちゃん冗談だから。帰りは私とゆっくりジョギングして帰りましょ?」
「十分にきついですわ……」
「私は普通に走るけど、途中で厳しくなったらズズカさんたちと合流します」
3人でこの後の行動をまとめて休憩に入った。マックイーンちゃんは初めてここにきたし、キングちゃんは往復するにはギリギリだからちゃんとした休憩が必要ね。
「マックイーンちゃんはゆっくり休憩取ってね。普通に走るよりもかなり負荷が掛かってると思うから」
「そうですね……想像以上でしたわ。距離だけならいいのですが、ここまで坂と下りがきついと」
普段のトレーニングはグラウンドでやってるから、ここまで高低差が厳しいコースを走ることは滅多にない。足にかかる負担はすごいけど、トレーナーさんは私たちにできると思ってトレーニングを考えてる。しかも、私たちの体調やコンディションをよく確認して怪我をしないようにしてくれてる。
「それにしてもめちゃくちゃなトレーニングよ。最初の内なんか私でさえ心が折れると思ったもの」
「キングちゃんはスタミナが最初なかったから本当に苦労していたわね」
「本当に大変だったわ……最初の内は半分程度走り切るのがやっとだったわ」
最初はスカイちゃんに序盤ついていくのもままならなかったキングちゃんがここまでスタミナをつけた。まだ往復しきるまではいかないけど、片道走り切るだけなら問題なく走ってる。こんなコースを走るトレーニングなんて他のチームじゃ見ないけど、私たちはトレーナーさんと私たちが信じ合ってるからこそうまくいくのかな。
「それじゃあそろそろ出ましょう?休憩時間はおしまい」
「私は先に出るわね」
キングちゃんは普通に走るから先に出て行った。私は帰り道もマックイーンちゃんの後ろを走って戻るから後ろの方からスタートした。マックイーンちゃんはくたくたになりながらも、帰り道をジョキングして戻るくらいのスタミナは残っていたみたい。
「マックイーンちゃんチームには馴染めそう?」
「前にトレーナーさんからも同じことを聞かれましたわ……そんなに心配ですの?」
「うーん……マックイーンちゃんの才能とか実力を疑ってるわけじゃないのよ?うちのチームって少し変わってるでしょ」
私もトレーナーさんの担当になる前は別の人に教わってたからわかるんだけど、トレーナーさんは周りのトレーナーとは教え方が違う。他の人達はウマ娘達をしっかりと管理している感じがするけど、トレーナーさんは道は示してくれるけどどこか放任主義な気がする。
「今回もトレーナーさんは見に来てないし、マックイーンちゃんにペース配分とか聞かなかったじゃない?そういう風に私たちにトレーニングを任せたりするの」
「確かに変わっているとは思いましたが、私は嫌いじゃないですわ。このチームの……なんというんでしょう、メンバー同士の信頼関係やトレーナーさんの信頼と自主性を重んじる形は嫌いじゃないですわ」
マックイーンちゃんもこのチームを気に入ってるみたいで良かった。スカイちゃんとも仲が良さそうだし、トレーナーさんの方針にも不満がないなら大丈夫ね。
「それに、チームメンバーの皆さん。もちろんスズカさんのこともチームに入ってもっと好きになりましたわ」
「なら嬉しいけど、何かあった?」
私も出来る限りマックイーンちゃんと関わるようにしてるけど、元々コミュニケーションが得意じゃないから上手く話せてる自信はないんだけど。
「入る前はスズカさんって走ることにしかあまり興味ないと思っていて、スカイさんは不真面目でトレーニングをサボってるイメージでキングさんはもっとプライドが高くて冷たい方だと思ってましたわ」
「実際は違った?」
「えぇ、スズカさんはチームのことを思って行動することも多いですし、スカイさんはトレーニングに真面目に向き合って私のことも気にかけてくれます。キングさんはプライドは高いけど色んなところで面倒を見てくれます」
マックイーンちゃんの言ってることはあながち間違って無いかもしれない。私は夢は持っていたけれど走れればそれで良いと思ってたし。
「みんなちょっと前まではそんな感じだったのよ?トレーナーさんに出会ってちょっとずつ変わっていったの」
「そうなんですのね……私はこのチームに入れて良かったですわ」
私がマックイーンちゃんと話しながら走っていて、残りは3kmまで来たんだけどこキングちゃん大丈夫かしら。もしかしたらしっかりとゴールまでたどり着けてるかもしれないけど。
「マックイーンちゃん少しだけペース上げれる?キングちゃんが少し心配で」
「わかりましたわ」
私の嫌な予感は的中してしまって、残り1kmの上り坂に差し掛かったところでフラフラになりながらも前に進むキングちゃんがいた。
「キングちゃん大丈夫!?」
「大丈夫……です……最後まで」
私の声掛けに返答はするもののしっかりと返事が出来てない。あと少しでゴールだけど……止めてもいいのか、止めちゃダメなのか……いや、トレーナーさんならきっとこうする。
「マックイーンちゃんはキングちゃんを支えてゴールまで連れて行って。私はトレーナーさんの所まで行ってすぐに連れてくるから!」
「キングさん捕まってください!このままじゃ危ないですわ!」
私は全力で走った。坂の練習って言ってたから多分あの神社の階段ダッシュをしてると思う。
「トレーナーさん!」
「どうしたスズカそんなに急いで……まさか何かあったのか!?」
「最後の坂でキングちゃんがフラフラで……会話も上手くできないほど息も切らしていて、マックイーンちゃんに任せてトレーナーさんを呼びに来たんです!」
私は急いでパニックになっていたせいで上手く状況は説明できなかった。だけどトレーナーさんは私の言っていることはある程度理解はできたみたいだった。
「スカイ!キングがやばそうだから急いで車に乗ってくれ!」
私とスカイちゃんは急いで車に乗り込んで、キングちゃんのところに向かった。ゴール地点にたどり着くと、そこには倒れ込んでいるキングちゃんと看病をしているところだった。
「トレーナーさん……一応は身体中に氷を当てて体温を冷やすようにしたんですけど」
「よくやったマックイーン!」
トレーナーさんはキングちゃんの様子を見ると、急いで携帯を取り出した……そしてしばらくして救急車が来てキングちゃんを運び込んだ。
チームレグルスで1番好きなメンバーは?
-
サイレンススズカ
-
セイウンスカイ
-
キングヘイロー
-
メジロマックイーン
-
トレーナー