キング達のトレーニングはキングが先頭を走って、その後方をスズカとマックイーンが走ってる感じだ。マックイーンはスズカの後ろをついて行ってるし、キングはペースを探すようにいつもよりはペースが遅い。
「ほらマックイーン! ゴールまではまだ距離があるぞー」
「長い距離を走ってる間にゴールまでのことを言われると何とも言えない気分になりますわ……」
「言いたいことは分かるわマックイーンちゃん……でも目の前のトレーニングに集中しましょう」
言われてみればマックイーンの言うことはもっともだ。自分が20キロ走ってる間に、あと9キロ頑張れって言われたら何とも言えん。それじゃあマックイーンを元気付けるために何を言ったらいいのか。
「マックイーン! これ走りきったらクレープ奢ってやるから頑張れよ〜」
こんな風にもので釣ってもマックイーンには効かないかもしれない。まぁ、単純にご褒美があることを言っておけば少しでもモチベーションに繋がるかもしれないし。
「俄然やる気が出ましたわあぁぁぁ!」
「嘘でしょ……」
マックイィィィィイン! お前はメジロ家の令嬢だろ! クレープ1つでやる気出してどうするんだ……いや、やる気を出してくれて嬉しいんだけど。この娘は単純すぎると言うかなんというか。
(キングの方は最初だし口を出さないで置くか。自分で考えるのも必要なことだし)
ゆっくり走ればキングだってこのコースを走りきるのはどうということは無いんだけど、それじゃあ意味は無い。適度な速度と適度なスタミナ管理で、ゴール時点までに上手く力を振り絞れるかが重要だ。
「スズカさん……なんでそんな重りをつけてゼエ……走れるんですのぉぉ……」
「もちろん最初は全く走れなかったんだけど……慣れなのかな」
スズカさんは絶対おかしいですわ。あんな重りつけてたら平地を走るのも大変でしょうし、それでこの山道を走るってどういうことですの? もしかして、私もいずれはああなるのでしょうか……
「それにしてもマックイーンちゃんすごいわよね」
「何がですの?」
私からすれば、スズカさんもスカイさんもキングさんもチーム全員が自分より凄い。スズカさんは実績を残しているし、スカイさんもキングさんも一緒に走ってみて速いことがよく分かりますわ。
「私はここを初めて走った時は辛くて辛くてしょうがなかった。上りはスピードでないし距離は長いし。それがデビューしてからの話」
スズカさんも最初から凄かったわけじゃないんですよね……少しずつ少しずつ血のにじむような努力の結果が今のスズカさんなのよね。
「こんなトレーニングよく耐えられますわね……」
「めちゃくちゃなトレーニングにも思えるけど、意外と色々考えられてるのよ?」
チームレグルスはマイラー以上……それも中距離から長距離の選手層が厚いからスタミナトレーニングを主流にするのはわかるのですが……どうしてこの山道なんでしょう。
「私も最初はクラシック3冠を目指していたの。その中でスタミナを鍛えつつ、坂道や下り道を経験できるし平地も長いから得られる経験も多いの」
「日本ダービーを制したのは知っていましたが、スズカさんもクラシック3冠を目指していたんですのね……」
私は去年の終わりの頃にチームに入ったから、チームメンバーのそれまでをあまり詳しくは知らない。このチームは各々が大きな目標に向かって頑張ってるということは知ってはいましたが……
「まだチームメンバーの事も知らないことばかりですわ」
「これから長い間同じチームにいるんだから大丈夫……ってこれ以上話してたらトレーナーさんに怒られちゃう」
行きの道は無事に全員が走りきった。スズカは帰りも少し走れそうだけど……マックイーンは行きで完全にダウンしたな。キングはいつもよりローペースってこともあって余裕が見える。
「とりあえずマックイーンは帰り車に積むとして、スズカはまだ行けそうか」
スズカは足に重りをつけてるから、傍から見てるよりも負担がかかっている恐れがある。この辺の確認を怠ると怪我に繋がるからしっかり確認しておく必要がある。
「もう少し走れそうです。だけど途中で拾って貰うことになると思います」
「キングは行けそうか?」
「えぇ、まだ走れるわ」
とりあえず、スズカとキングは2人とも走れるけどマックイーンは無理だな。スズカの後ろをついて行って、スズカを回収してからキングの後ろを追えばいい。前回のこともあるし、キングもぶっ倒れるまで無理はしないだろう。
帰り道は予想通りで、途中スズカを回収してキングを追いかけることになった。キングは無事にゴールしていたが、なんだか浮かない顔をしていた。
「どうしたキング。初めてのゴールだけど嬉しくないのか?」
「嬉しいには嬉しいわよ……でもスカイさんがゴールした時と違って全部を絞り出せなかった。力を残したままゴールしてしまった」
「キングの言うことはもっともだけど、それが出来るようになるためのトレーニングだし……今は完走を喜んどこうぜ」
「それもそうね……」
前にぶっ倒れたばっかりなのに、最初からギリギリの調整で走りきれるとは思ってなかった。やはり恐怖感に打ち勝つのは難しいだろうし、何よりもその調整自体が難しいから。
その日のキングのトレーニングは無事に終了し、翌日はマックイーンと共にスカイのトレーニングの方に行く予定だ。2人の現状を把握するのは大切なことだから、トレーニングが別々な間は行ったり来たりだ。
「というわけで昨日説明したとおり、スカイは2000mでマックイーンは1000mを走ってもらう」
「マックイーンちゃんは最後までに私を追い越せるといいね〜」
「軽口を言ってられるのも今のうちですわ!」
スカイは基本的にスズカ相手にメラメラと闘志を燃え滾らせてるけど、マックイーンと一緒の時はマックイーンがスカイに対して闘志むき出しだからお互いにやる気満々なんだよな。2人ともステイヤーで気が合うのか合わないのか……
「じゃれてないでトレーニング始めるぞー」
「「はい」」
俺が声をかけるとスカイはスタートの準備を始めた。トラック1周1000mのコースだからマックイーンはスタート地点で待機だ。スカイが1周したところでマックイーンが同時にスタートする。
「マックイーンはスタート手前から加速に入ってうまくスカイに合わせてスタートしてくれ」
「分かりましたわ。スタートから遅れるなんてことしませんわ!」
「スカイは1000m通過までは軽くスピードを乗せるくらいのペースで走って、残り1000mに入るところでスピードを伸ばしていくんだ。一気にスピードをあげる必要は無い、少しづつスピードを上げていけ」
「はーい」
トレーニングを開始して最初の1本目の1000mは予定通りのローペースで通過しようとしてた。950mを通過し始めた辺りからマックイーンも軽くスタートしてスピードを合わせる準備をしていた。
(マックイーンのスタート直後の加速力も中々のものだ。メインは先行で逃げとしての適性もありそうだな)
1000mを通過してから少しずつスピードを上げていく。マックイーンもスカイの後ろを頑張って追いかけるが中々追い抜けない。マックイーンもスカイと同じで、ステイヤーとしてスタミナは上等なもんだけどスピードがあまりないから追い抜ききれない。
「2人ともラストの直線だ! 頑張れ!」
スカイが少し早い段階でラストスパートをかけ始める。スズカはラストスパートでスピードが乗ってから更にもう一段階スピードを上げるタイプだけど、スカイの場合は自分の加速力を活かして早い段階からトップスピードに到達して周りより長くスパートで走る。
マックイーンは王道の走りだな。今は特別目立ったスパートをかけるわけじゃない。どちらかといえばスズカみたいなタイプになると思うんだけど……
「2人ともお疲れ様。マックイーンはよくスカイに食らいついたけど、スタート直後はスカイを抜き去るつもりで走り出せ。走る距離は1000mっていう短い距離だから出し惜しみしないでいけ」
「分かりましたわ……短距離はあまり得意ではないのですが」
「その認識を改めるんだ。これはスピードトレーニングであってレースじゃないんだからさ」
レースみたいに全体的なイメージをマックイーンは作る必要は無い。できる限りスピードを出してスカイに食らいつけばいい、ラストスパートでスタミナが切れるのは最悪しょうがない。
「スカイの方はスピードの伸びは悪くないけど、スピードを上げていく距離が長すぎるからもう少し短くてもいい。それとラストスパートのタイミングが早かったせいで最後の最後で少しバテたな」
「分かってはいるんだけど中々タイミングが合わないんだよね〜」
レースでは一瞬の減速で勝負が覆ることもある。スズカの一瞬の油断をフクキタルが差し返したりするんだから減速なんて格好の的だ。
「今回のトレーニングのメインじゃないけど、いずれは乗り越えないといけない課題だな」
「頑張りまーす」
とりあえずスカイとキングは弥生賞までは今のトレーニングをメインにして進めて行って問題は無さそうだ。ジュニアカップもスカイなら確実に1着争いに食い込めるだろうし、勝負は2月の中旬あたりからの2人の様子を見てからだな。
チームレグルスで1番好きなメンバーは?
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トレーナー