スカイのお出かけの翌日はグラウンドに集合じゃなくて、まずはチームルームに集まって軽いミーティングをすることにした。スカイの怪我のこともあるし、スズカのレースが2月の頭に決まったからそのことも話さないといけない。
「スカイの怪我はソエだってことがわかった」
「やっぱりそうだったんですね……」
「この時期に怪我をして弥生賞に間に合いますの?」
スズカとマックイーンは心配そうな顔をしていた。スズカは去年にソエになって嫌な思いをしているし、マックイーンはスカイに懐いているから人一倍心配なんだろう。
「とりあえずは弥生賞に向けてのトレーニング計画は立ててはいる」
当の本人のスカイは昨日のうちに話を既に済ませてあるからいつもみたいにダラーっと話を聞いている。一緒に弥生賞を走るキングはスカイのことを信頼しているのか特別心配している様子はなかった。
「スズカは2月の頭にレースが決まった。それに向けて今日からは通常の蹄鉄をつけて2000m走をマックイーンと行ってもらうが、2人とも問題はないか?」
「スカイさんの次はスズカさんを追いかけますのね……」
「マックイーンちゃんよろしくね」
スズカとマックイーンは問題はなさそうだな。スズカは重りをつけるトレーニングが多いから、通常の状態で走る感覚をしっかりと思い出してもらわないといけない。マックイーンは単純なスピードトレーニングなわけだけど。
「スカイは軽いランニングでスタミナをできる限り保つことと、筋トレをメインに肉体作りをしていくぞ」
「えぇ……セイちゃん筋トレ苦手なんだけどな〜」
「怪我だからこそ普段鍛えられない所を集中的に鍛えられるんだ。3冠目指すなら時間は無駄にできないぞ」
「は〜い」
弥生賞までに本調子にまで持っていけるかは分からないけど、少なくとも皐月賞には間に合うはずだ。だからスピードやスタミナを鍛えられない今はパワーを鍛えていくしかない。
「キングは今まで通りスタミナトレーニングだ。皐月賞と日本ダービーもそうだけど、キングの1番の壁は菊花賞だからそのためにも地味なトレーニングが続くが頑張ってくれ」
「分かっているわ……スタミナは努力で補えるはずだもの」
キングもやる気満々でモチベーションも高い状態だ。モチベーションの高い状態でのトレーニングは非常に効率がいいから、キングの成長にもよく観察しておかないとな。逆にスカイは怪我のせいでやる気が少し下がってしまっているから、モチベーションを保ってうまく弥生賞までに持っていければいいんだが。
「今日はスズカとスカイ、マックイーンの三人の様子を見なきゃいけないからキングはトレーニング一人になるけど大丈夫か?」
「問題ないわよ、前みたいに無理して倒れるなんてことはしないわ」
トレーニング中に1人にはあまりさせたくはないんだけどチームメンバーも四人だし、俺の体も一つしかないから全員のトレーニングを同時に見ることもできない。マックイーンはまだ全体的にトレーニングをつまなくちゃいけない時期だから常に二人一組ってわけにもいかないから難しいところだ。
「キングはトレーニング場所の到着次第トレーニングを開始してくれ。スカイは俺の横で筋トレをしてスズカとマックイーンを見守る」
「「「「はい」」」」
とりあえず今後の基本的なトレーニング方針は話したし、今日の予定も決まったから気を引き締めて行こう。スカイも流石に俺の真横でサボり始めたりはしないだろうしな。スズカは久しぶりの2000m走だからしっかりと見ておきたいし、マックイーンも2000mをどれだけ走れるか見ておきたい。
「ほらスカイまずは腹筋からだ」
「筋トレいやだ~」
スカイはグチグチ言いながらも腹筋を始めた。スズカとマックイーンもウォーミングアップが終わってそろそろスタートの準備も終わっていた。スズカは久々のターフと重りなしでの走りに気持ちがウキウキしている。トレーニングメニューを聞いたときからニッコニコだったからな。
「スズカとマックイーンもスタートするぞ」
俺の呼びかけで二人が集まった。マックイーンはつい最近までスカイのトレーニングで1000mから追走する形でやっていたし、スズカも先日までは超長距離のスタミナトレーニングだったから中距離の走りを思い出してもらわないといけないからな。
「マックイーンは今出せる全力を尽くしてくれ。全力のスズカと走るのは初めてだろうから大変な思いをするとは思うけど、盗めるものは盗んで自分の走りを見失わないようにな」
「大丈夫ですわ!私だって最近までスカイさんと一緒に走っていたんですのよ?スズカさんと走って自分の走りを見失ったりしませんわ!」
マックイーンは自信満々にそう答える中、俺の真横にいるスカイはニヤニヤと笑っていた。
「どうしたんだスカイ?」
「いや~マックイーンちゃんは可愛いな~って思っただけですよ」
まぁ、前までスカイと走っていたと言っても途中1000mからだったし。スズカの逃げはスカイの逃げとはまた違った強さがあるのと、クラシックを戦い抜いてきたスズカじゃ逃げとスピードの完成度が全く違う。来年あたりになれば長距離じゃスズカはスカイに勝てなくなっているだろうけど。
「スズカは今までの会話を聞いてたらわかるとは思うけど、気持ちいいように全力で走ってくれ」
「はい!」
スズカはスズカ自身の走りを縛りすぎると力をうまく発揮できないから、走りに対する指摘はあまりできない。まぁ、悪いところとかアドバイスするところがあればするんだけど今のスズカの走りに文句をいう所なんてほとんどないからな。
「それじゃあいくぞー位置に着いてよーい……どん!」
スタートした。最初に前に出たのはやっぱりスズカだった。スズカのスタートにマックイーンは面食らっていたが、すぐに冷静に走り始めた。一応頭は冷静になっているだろうけど、スズカに着いていこうとかなりハイペースになっている。
「スカイはマックイーンどうなるとおもう?」
「初めてスズカさんと走るんじゃペース崩されてラストばてて終わるか、それともスズカさんが久々の2000mでオーバーペースになってるって思って力を溜めるのどっちかだろうね~」
流石はスカイだ。レースの流れをしっかりと見ているし、スズカとマックイーン二人の今までの走りを参考に考えたんだろうな。スカイは意図的に相手のペースを崩したりスタミナを削ったりすることはあるけど、スズカの場合は必然的にそれが起こり得るからな。特に本気のスズカと走るのが初めてのマックイーンだと余計ペースを狂わされるだろう。
1000mを通過してもいまだにスズカのペースは落ちない。スズカはハイペースで序盤から終盤あたりまで走り切る。ペースに特別に波はないから読みやすいのだが、単純なパワープレイほど対策しずらいものはない。マックイーンもスズカに追いつこうと必死にペースを上げるがスズカのスピードに全く追いつけていない。
「ラスト400m切ったぞ!スズカこっからラストスパートかけてけ!マックイーンもまだゴールまであるぞペース緩めるな!」
スズカは一気に加速をかけてトップスピードに乗ってさらにスピードを伸ばしていく。マックイーンはスタミナをかなり削られているが、それでも必死に最後の力を振り絞っている。
(スズカにスタミナがついて最後のスピードの伸びが今まで以上だ……レース中盤のペースもしっかりと保てているしスズカはまだまだ成長していくな)
俺は走り終わった二人にドリンクとタオルを持って歩み寄っていく。マックイーンは倒れこんで息を切らしている。スズカは久々に全力を出して走れたことが嬉しかったのか気分が高揚しているように見えた。スタミナは切れてもまだまだ走り足りないって顔だ。
「スズカは前よりも最後の伸びが良くなったな」
「スタミナに余裕をもって走れましたし、最後の加速も今まで以上にうまくできて楽しかったです」
あんだけギリギリまでスピードだして走り終わった後なのに、そのトレーニングの感想が楽しかったっていうのは何ともスズカらしいな。マックイーンも汗を拭いてドリンクを飲んで落ち着いてきたようだ。
「マックイーンは走っている途中に自分がオーバーペースになっているの気が付いたか?」7
「気が付いたのは最後のラストスパートの時でしたわ……まさか自分がいつも以上にスピードを出しているのに気が付かなくて、最後のスパートをかけるスタミナが切れてしまいましたわ」
「ペースなんかは相手に意図的に乱されることもあるが、相手の威圧感や走りに圧倒されて自らペースを乱してしまうこともあるんだ」
よくよく考えてみればスズカってすごいよな。ルドルフのあの威圧感を後ろに自分の走りをしていたんだよな……我が強いってのもレースでは立派な武器になるんだな。今回の場合はスズカの圧倒的な逃げのスピードに引っ張られてスピードを上げる形になったわけだが。
「わかりましたわ。自分の走りにしっかりと自信を持って、自手に乱されないようにしないといけませんわね」
俺の言いたいこともほとんど自分で理解できたみたいだし、これ以上は言及することはないな。うちのチームのメンバーは俺が一つアドバイスをするとそれから俺が言いたいこと全部吸い取っていく。トレーナーとしては嬉しいことなんだけどなぁ……
スズカもレースに向けての調整は問題なさそうだし、スカイも俺の横でグチグチ言いながらもしっかりと言われたメニューをこなしていたのでとりあえずは大丈夫だろう。心配なことは多いが皆もやる気を出しているし、トレーニングをしっかりこなしていけば弥生賞の方もなんとかなるだろう。どちらかが勝てばどちらかが負けるのは何とも言えないんだけどな。
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