バレンタインデーが終わってから日が経ち、今はもう2月も終えようとしていた。最近ではスカイとキングもレースが近くなってきてピリピリしてきている。弥生賞はクラシック路線に入る前の重要なレースだから緊張くらいするか。
「今日のメニューはスズカはグラウンドで2000m走をやってもらって、スカイは一応は様子を見つつ1000m走りを終わった後にロングランニングだ」
「「はい!」」
スズカはスタミナ的にはとりあえずは現状問題はない。だとしたら今必要なのは更なるスピードだろう。スピードを伸ばしてそれを補うようにスタミナトレーニングを組み込んでいく。スカイは怪我が開けたばかりで心配だが、レースも近いしオドオドしてられない。1000mでスピード感を思い出しながら、ロングランニングで自分の現状のスタミナを把握してもらうしかない。
「キングとマックイーンはいつものコースで走るぞ。キングは弥生賞も近いから気合い入れてけ。マックイーンもまだデビューじゃないっていっても力を抜くなよ」
「「はい!」」
この2人に関しては口で言わなくても心配ないだろうけど、一応活気付ける為にも形だけは言っておかなくちゃな。実際にスカイが怪我をしたと言ってもキングとスカイじゃスカイにまだ部があると思うからキングには頑張ってもらわないといけない。
「今日はキング達のトレーニングを見るからスカイのことは頼むなスズカ」
「スカイちゃんが無理しないようにしっかりと見ておきますね」
「そんなことしなくても大丈夫ですよ〜」
スズカもいるしスカイも無理することは無いだろう。無理することはなくてもサボることはあるかもしれないけど、それもスズカがついているから大丈夫だ。
俺はキングとマックイーンを連れていつものスタート地点に向かう。
「それじゃあ2人とも準備が出来たら教えてくれ」
いつもならすぐにスタート前のアップを済ませたり、足の状態を自分で把握してスタートに備えている。しかし、俺の指示を聞くとキングが俺の方に寄ってきた。
「トレーナーさんちょっといいかしら」
「どうしたんだキング」
キングは最近調子が良い。今日も様子を見る感じじゃ調子が悪いようには見えないけどなにかあったか?
「今日は少しだけ無茶をしてしまうかもしれないけど……構わないかしら」
「無茶か……それは承認しかねる」
「なんでよ!弥生賞までもう時間がないのよ!?スカイさんは怪我をしていたと言っても十分な実力を持ってるし、スペシャルウィークさんだってとても強敵だわ……このままじゃあの二人に勝てない!」
キングも焦ってるんだな……だけど無茶させるわけにはいかない。レースで速く走るためのトレーニングなのに、そこで無茶をして怪我でもしたら元も子もない。だけどキングのいうことも最もだ。このまま行ったら勝てるかどうか怪しいところではある。
「無茶はするな。俺が後ろからついていくから限界まで頑張れ!」
「ふふ、なんだか貴方らしい言い回しね」
キングの頑張りたいという気持ちはトレーナーとしては尊重したい。だけど、トレーナーとして無茶をさせるわけにもいかない。キングが無茶をしそうになったらそれを止めるのも俺の仕事だからな。
「マックイーンも最近はスピードトレーニングを重点的に行っていたから、今までよりもスタミナの消費量が激しいはずだから気を付けて走ってくれ」
「分かりましたわ」
最近のマックイーンは成長期に入りつつある。そのせいで頭が体の成長に最初のうちは追いつかないかもしれない。ウマ娘は成長期が来るのにかなりばらつきがあるからトレーナーの俺がしっかりと把握しないとな。
「それじゃあ準備が出来たらスタートだ」
その後直ぐに2人の準備が完了してスタートした。キングのスタートは上々だ。マックイーンもキングの後ろにしっかりとくっついてスピード負けしていない。
(マックイーンの成長もだが、それ以上にキングのスタミナの伸びとスタミナ管理の技術力も上がっている)
行きの道のりでは最後の坂道まではマックイーンがついて行ったが、そこからキングのスピードが上がったのと、スタミナ管理をミスしたマックイーンが減速していきゴールした。
「マックイーン動けるかー?」
「もうダメですわ……今日は1歩も走れる気がしません……」
マックイーンも最後は減速したとはいえ、スピードトレーニングからスタミナトレーニングに変わって初めてのトレーニングでここまで走れれば上等だ。ステイヤーはスタミナ管理が上手いな。
「マックイーンは帰りは車の中だな。慣れないスピードでよくここまで走った」
次はキングだが……疲労度も折り返しにしてはちょうどいい。体が全体的に温まっていい状態を保っているな。スピード自体も決して遅くないペースだったから、今までで1番いい走りをしてると言っていい。
「キングはまだまだ行けるな?」
「えぇ、今日はなんだかとっても調子がいいの。このまま走りきって見せるわ!」
キングの調子は絶好調だ。後半から疲れで判断力さえ鈍らなければ走り切れるかもしれない。キングの強さはその判断力の高さと冷静さだから恐らく大丈夫だとは思うがどうなるか……
「休憩時間が終わったら直ぐにスタートだ。キングはスタートの準備を済ませておけよ」
「わかってるわ」
キングはドリンクを飲んで水分補給を済ませると、そのまま軽くウォーキングを始めた。この後直ぐに走り始めるからずっと座りきっりになるとせっかく温まった体も固まっちゃうからな。
「キング、そろそろ時間だ」
休憩時間が終わって、キングのスタート準備も終えたのでそのままスタートした。俺とマックイーンが車で後ろから追走する形で後を追う。
(後半が始まったばかりだけど、以前よりも足取りが軽いな)
「キングさん走りきれるでしょうか……」
「マックイーンから見たらどう思う?」
今日のキングはやる気満々だし、調子も今までにないくらいに良い。逆に言えばこのトレーニングでうまくいかなかったら、現在のキングの実力ではこの超ロング走は走り切れないということになってしまう。その現実は本人にも突き刺さるだろう。
「私は正直言ってきついと思いますわ……スカイさんのように中距離やステイヤーとしての才能があれば別なのですけど、キングさんはどちらかというとスプリンターやマイラーとしての才能を感じます……やはり超ロング走ともなると難しいと思うんです」
「まぁ、普通はそう思うよな」
「どういうことですの?」
「見てりゃ分かるよ。そろそろラスト1kmに差し掛かるぞ」
ここまでの道のりでかなりスタミナを消耗している、キングの顔からも明らかに疲れの色が見えている。体幹もぶれてはいるけどスピードは衰えていない。追い込まれてからのキングのスピード保持能力はかなり高い。感情論で全て解決するつもりはないけど、キングの根性はかなりのものだ。
「キングさんスピードが落ち始めましたわよ!?」
(私頑張りましたよね……まだ弥生賞まで少し時間はあるし、今日は無理せずこの辺りで)
「おいキング!まだ誰とも戦ってない!スタート地点にも立っていないのにお前は自分に負けるのか!」
キングの顔からは疲れと同時に走りが弱気になっているように見えた。俺たちが後ろにいるからここで休んでも大丈夫という心の余裕が生まれてしまった。レースで戦う時はいつでも1人だ、ここで自分自身を追い込めないと本番で極限まで自分を追い込めなくなってしまう。
「私はキング……キングヘイローなのよ!こんなところで負けてたまるもんですかぁぁあ!!」
(そうよ……トレーニングで妥協していたら本番のレースで勝てるわけなんかないわ!)
ラスト100mのところでキングがペースを整え直した。さらにそこからペースを上げてそのままゴールしたが、限界まで自分を追い込んだせいでキングはそのまま倒れこんでしまった。
「キングお疲れ様!最後良く耐えきった!」
「あそこまで言われて止まれるわけないじゃない……」
キングにドリンクとタオルを渡して休憩を取らせる。前回みたいに救急車を呼ぶほどの状態じゃないし、意識もしっかりとしている。スタミナも今あるぎりぎりまで絞りつくしたと言ってもいいだろう……キングはこのコースをついに完走したんだ。
「マックイーン見てたか」
「しっかりと見ていましたわ……極限状態まで追い込まれたあの状況からペースを立て直すなんて驚きましたわ」
キングの追い込まれた時の強さは異常だ。ただ、疲れでうまく思考が回らないせいでそれに気がつけないでいる。弥生賞の手前でまさかこんな課題が見つかることになるとは……克服できたならキングの後半の強さは必ず武器になる。皐月賞か日本ダービーまでには間に合わせたいところだが、今日はキングが一つの目標を達成したことを喜ぼう。クラシックで戦っていくための必要最低限のスタミナがキングにはついた……明日からキングは完全に弥生賞に向けての調整が始まるからな。
(弥生賞……本格的にどうなるかわからなくなってきたな)
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