葵さんとグラスワンダーの件があってから数日が経った。あっちもそこそこ落ち着いて来たみたいで『何かお礼がしたいんですけど何かありますか?』とのことだった。丁度葵さんには頼みたいことがあったからあちら側から連絡をしてもらえて助かる。
「というわけで、今日は葵さんのところからハッピミークに来てもらいました」
「よろしく」
葵さんとハッピーミークのことはうちのチームなら知ってるだろうけど、形だけでも一応紹介はしておかないとな。そう思っていたんだけど、紹介から入っておいて正解だったみたいだ。スカイとキングは唖然としているし、マックイーンは手を頭に当ててフラフラとしていた。
「今日はスズカとスカイとキング、そしてハッピーミークの4人で模擬レースを行うことにした」
「「えぇ!!」」
「そういうことはもっと早く言ってくださる!?」
「どうしてトレーナーさんはいつもそんなに唐突なの……」
なんで2人はこんなに怒っているんだ?ハッピーミークは去年の皐月賞を制しているし、G1レースにも何回も出走していて実力は確かだ。スズカも日本ダービーを制して、皐月賞のための模擬レースなら最高のカードと言ってもいいだろう。そんな俺と一瞬目があったマックイーンがため息をついて話し始めた。
「いいですかトレーナーさん。ミークさんもスズカさんも去年のクラシックを一つずつ制したウマ娘なのはわかりますわよね?そんな2人と急に模擬レースするなんて言われたら驚きますわ……しかもなんでそんなすごい方をほいほい呼んで来れるんですの……」
「スズカとはよく一緒にトレーニングしているし、葵さんと俺が知り合いなのはみんな知ってるだろ?だから大丈夫かと思って」
「スズカさんとはチームメイトだし。トレーニングを一緒にするのと模擬レースをするのは違うと思うんですよ~」
「もう少し早く伝えて欲しかったのよ。気持ちの準備だって私たちにはあるのよ」
今回の模擬レースは行えるか分からなかったのと、昨晩葵さんから連絡が来て計画したものだったからみんなには連絡していなかった。夜に連絡するのもな~なんて思ってたけどしっかりと伝えておくべきだったか。
「キングとスカイに連絡が取れてなかったのは申し訳ないが……とりあえず!今日はスズカとハッピーミークとの模擬レースだ。スズカたちには話があるから先にウォーミングアップを始めててくれ」
そうすると、なんだかんだ文句を言いつつも気持ちを切り替えて2人はアップを始めた。2人からすると自分の実力を試す絶好の機会だ。スズカとハッピーミークの走り方は全く違うから、キングなんかは走りを勉強する機会にもなるだろう。
「ハッピーミークは皐月賞……ダービーでもいいけど、その時の走りの感覚とか覚えてるか?」
「多分大丈夫だと思う」
「スズカは実力の7〜8割くらいの力で走ってくれ」
「なんで私には違うことを!?」
悪いなスズカ……俺はお前の実力を1度足りとも信用しなかったことはない。ただ、スズカはダービー時の感覚で走ってる途中でその通りの気持ちで走り始めて全力で走りそうだし……
「とりあえず、ハッピミークとスズカもアップを始めてくれ。いくら今の全力を出さないと言っても、これは模擬レースだからしっかり準備してくれ」
「わかった……あと私のことはミークって呼んでいい」
「それじゃあ私も行ってきますね」
何故か知らないけどミークとの距離も気づかない間に縮まっていたらしい。葵さんと仲良くなってから会う機会も増えてたし気を許してくれたのかもしれない。ミークもあんまり積極的じゃないからあっちからそう言ってくれるなら嬉しい限りだ。
「いやー葵さん無理言ってすいません。スズカとだけと模擬レースさせると2人の感覚を狂わせちゃうかと思って」
「大丈夫ですよ。私のところからは今年のクラシックには誰も出走しないですし、恩を受けて返せる機会をもらったのに返さないわけにはいかないですよ!」
俺はその件はあんまり気にしてないんだけど……それでも今回はその好意に甘えるとしよう。今回の模擬レースはそれだけの価値がある。去年のクラシックの最前線……その内二つのレースの勝者がいる模擬レースだ。きっとなにかいい刺激を与えてくれるはずだ。
「4人とも準備はいいか?」
「私はいつでも大丈夫」
「スカイちゃんとキングちゃん相手でも負けないからね」
「スズカさんは実力の7割って言われてなかったかしら……」
「今回の模擬レースならスズカさんに勝てるチャンス!」
4人ともなんだかんだ言ってノリノリだな。スカイはいつもよりもやる気満々っぽいけどな……いやスカイだけじゃない、スカイ以外のメンバー3人もやる気満々だな。キングも他のメンバーに負けまいと目を光らせてるし、スズカとミークも実力を抑えると言っても本気の2人と競い合えるのが楽しみなんだな。
「柴葉さんは誰が勝つと思いますか?」
「スカイとキングの2人の実力は拮抗してると言ってもいい。そうなると問題はスズカとミークだけど……ミークは去年のクラシックの実力を再現してくれるように頼んだしそれを再現してくれるだろう。そうなるとスズカに2人のペースがどれだけ崩されるかですかね」
俺が今回の模擬レースの予想を話していると葵さんが笑っていた。なんかおかしいこと言ったかな?結構まじめに考察したつもりだったんだけどな。ミークは結構忠実というか真面目なウマ娘っぽいし、割と予想通りっぽいんだけど。
「ミークってああ見えても負けず嫌いですから。私は最後の最後で負けたくなくて本気出しちゃってミークが勝つと思います」
あぁ……それは盲点だった。一応お願いはしたんだけど、今の全員の様子を見る感じ凄いやる気だからな。本番に負けず劣らずの気迫を感じる。待って?スズカさんはなんでそんなにもニコニコしているの?大丈夫かな我慢できるかな。
「葵さんの理論で行くと、気づいたらちょっとずつスズカのリミッターが外れてって一番最初に本気で走り始める気がする」
「なんだか、お互い苦労しますね」
苦労することも多いけど、それが彼女たちの短所でもあり長所でもある。意思の力はレース中では大切な要素だからな。それに苦労すると言っても走りすぎないかとか心配するくらいだから問題はない。なんならトレーナーにとっては贅沢な悩みかもしれない。
「っと、そんなこと話してる間に準備整ったみたいですね」
「そうみたいです。柴葉さんスタートお願いできますか?」
「分かりました。お前らスタートするぞー」
俺が声をかけると4人がゲートインを完了した。4人ともすごい集中力だ……それだけじゃない、4人が全員やる気に満ち溢れていて気迫が凄い。
「それじゃあ行くぞ!位置についてよーい……ドン!」
俺の掛け声と同時に4人がいっせいにスタートして模擬レースが始まった。一体全体誰が勝つんだ?
チームレグルスで1番好きなメンバーは?
-
サイレンススズカ
-
セイウンスカイ
-
キングヘイロー
-
メジロマックイーン
-
トレーナー