キング邸に乗り込んだ翌日、トレーニング開始前に今日のメニューを各々に言い渡す。
「スカイは坂道ダッシュでスピード向上を目指せ。スズカとマックイーンの2人はターフで長距離ランニングだ」
「「「はい」」」
今日のトレーニング内容を簡潔に説明してスズカ、スカイ、マックイーンの3人に今日のメニューを渡した。
「私はどうすればいいのかしら?」
「それについてはこれから話すから、とりあえず3人はトレーニングに向かってくれ」
キングには個別に話があるから3人には先にグラウンドの方に向かって貰った。そして、チームルームには俺とキングの2人になる。
「よし!それじゃあまずは買い物でも行くか!」
「えっ?」
発言の意味を理解しきれずに唖然としているキングの手を取ってチームルームを飛び出した。学園内を移動してる途中に何やら視線を感じたが何故だろうか?
「ちょっちょっと!そろそろ手を離して貰えるかしら!?」
ショッピングモールの直前でキングに手を振りほどかれてしまった。未だにキングは何がなんだかわかっていない感じだけど、さすがに手を握られてるのは恥ずかしかったのかもしれない。
「急に買い物なんて連れて来てどういうつもりかしら!?皐月賞まであと1ヶ月もないのよ!」
なんの説明もなしに連れて来たせいでキングも随分とご立腹だ。
「キングにはこれから1週間は走りから離れて貰うことにした。メインのトレーニングは筋トレと水泳とかだな」
「ちょっと待って欲しいわ……少し頭の理解が追いつかないの」
俺の急な発言についてこれずにキングはその場で頭を抱えてうずくまる。
「まずはなんで大事なレースの前に走るのを1度やめるのか教えて貰えるかしら……」
「今のキングの走りには不純物が多いからな。1回走りを忘れてリセットしてから完成まで持っていくことにした」
俺の意図を少し理解したのか、その場から立ち上がり大きな溜息と一緒に俺の方を見た。
「百歩譲ってそれは理解できるけど、なんでその1日目が買い物なのかしら?」
「最近キングの調子があまり良く無さそうだったから、1回パーッとトレーニング休んで気分転換でも思ってな。変に不調を引きずってトレーニングするよりもいいだろうし」
質の良いトレーニングをするにはコンディションが悪いままじゃだめだからな。それに1日キングを走りからすっぱり切り離したいってのもある。
「はぁ……それじゃあ行くわよ」
「キングさん!?ちょっと急に!」
キングは俺の右手を掴んで歩き出した。もうちょっとは言い争いになるんじゃないかって思ってたんだが……
「随分と素直に受け入れるじゃないか。てっきり俺はグラウンドに引きずられるんじゃないかと思ってたぞ」
「私も完全に納得しているわけじゃないのよ?だけど、1番の私の理解者がそうするべきだって言うから今は信用するの」
なんでもかんでも俺の言ってることが全て正しいとはキングも思ってないだろう。それでも、俺の言っていることを聞いて信じても良いと思ったんだ。
(俺がキングの道標になって、その道をキングが歩いて正していくんだ)
キングに手を引かれショッピングモールにとりあえず入っていった。
「それで?今日は何を買って行くのかしら?」
「ドリンクの素とか備品系と、後はみんなにプレゼント渡そうと思っててな」
キングとスカイはもちろんのことだけど、スズカも本格的にレース本番を迎えることになる。それに向けて士気を盛り上げていく意味も込めてな。
「プレゼントってどんなものを買うつもりなの?」
「一応は3人のメンコとマックイーンの耳飾りかな」
スカイとスズカとマックイーンの3人には事前に確認をしておいた。ウマ娘の中にはメンコを付けている娘は多くいる。けれどあんまり合わないこともあるらしいからな。マックイーンなんかは合わないらしいので耳飾りを買うことにした。
「その辺のことはあんまり考えていなかったわね……せっかくだし勝負服のデザインに合わせて見ようかしら」
「俺的にはスズカとキングには1番必要だと思っていてな」
キングは俺の言っている意味が分かってないみたいで頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「まぁ、それはいずれ分かると思う」
そう言って俺たちは店の中に入っていった。中には想像以上の種類のメンコや耳飾りが販売していた。
「ファッションとかそういうのあんまり詳しくないけど凄い種類あるんだな……」
「その娘のイメージカラーだったりとか、普段着ている物に合わせたりとか色々あるのよ」
みんなのイメージカラーか……ファッションとかそういうのはあんまり分かんないけどそのくらいなら思いつきそうだ。
「キングは赤と青だな」
「理由を聞いてもいいかしら?」
キングが興味深そうに俺の方を見てきた。キングはある程度そういうの決めてると思ったけど素人意見も気になるもんなんだな。
「一見冷静そうに見えるけど、その冷静さの中に熱い情熱があるっていうのかな。矛盾してるように聞こえるけどその2つを同時に持ってるのがキングの強さだとも思ってる」
俺が質問に答えるとキングは少しだけ意外そうな顔をしていた。僕何か変なこと言っちゃいましたか?
「なんでそんなに意外そうな顔してるんですかキングさん?」
「想像以上に私たちのことしっかりと見てるんだなと思って」
「当たり前じゃないか。俺はお前たちのトレーナーだぞ?」
そう言いながら俺は近くの棚にあったメンコを取ってキングの方に差し出す。
「これなんかキングに似合ってると思うけど」
「んっ」
しかし、キングはそれを受け取らずに頭をこちらに寄せて耳を差し出してきた。
「キングさんこれはいったい?」
「あなたって本当に鈍感なのね……」
キングは溜息混じりに呆れた感じで俺の方を見てきた。
「私の耳に直接着ける権利をあなたにあげるわ」
俺は慎重に丁寧にメンコを着用させていった。ウマ娘にとって耳はかなりデリケートな部分と聞いていたので雑に扱ったりしたら怒られそうだし。
「おぉ……良く似合ってるじゃないかキング」
「そうね、なんだか不思議としっくり来る感じがするわね」
メンコをつけたキングは自然体そのものだった。特別目立つわけではないのだが違和感もない。本当にしっくり来るって言葉がそのまま合うだろう。
「どうする?せっかくだしもう少し見てみるか?」
「いえ……せっかくあなたが選んでくれたものだからこれでいいわ」
キングはそれを抱きしめるかのように手で包み胸に当ててる。気分転換のためにプレゼント選びを一緒にしたが、想像以上に喜んで貰えたみたいでよかった。
「スズカなんかは勝負服に合わせて緑色がいいだろうし……これなんかいいんじゃないか?」
「あなたが渡すプレゼントなんだからあなたが決めたらいいじゃない。それに、あなたが選んだものならみんな喜ぶわよ」
みんなにデザインは任せるって言われてたけどいざ自分で選ぶとなると怖くなるな。そんなことを考えているとキングがため息をついて俺に話しかける。
「それはスズカさんに良く似合ってると思うわ。選ぶセンスは悪くないから自信持ちなさいよ」
キングに背中を押して貰いながら、スズカ、スカイ、マックイーンの贈り物を決めた。
「いやーキングのおかげでいいものが選べたよ」
「私は後ろから見てただけで選んだのはあなたじゃない」
(キングが見ていてくれたから安心して選べたんだよな)
少し帰り道を歩いてるとキングが少し下を向いて考え事をしているようだった。そして、不安そうな顔で俺に話しかけた。
「私はスカイさんやスペシャルウィークさんに勝てるのかしら……今の私はやっとスタート地点に立ったみたいなものなのに」
キングの言いたいことも分かる。本番1ヶ月前に走りをリセットして再出発してるわけだからな……
「大丈夫だよ。今までキングが努力して身に付けてきた力は偽物なんかじゃないんだから。それに俺も付いてるからな。今は1人で一流になれなくても2人一緒なら一流にも勝てるさ」
「それじゃあスカイさんも同じじゃない」
キングは笑いながらそう指摘した。たしかにスカイも俺の担当ウマ娘ではあるんだけどさ。キングはそのまま俺の背中に軽くポンと拳を当てた。
「頼りにしてるわよ」
「おう2人で勝つぞ」
そうして俺たちはトレセン学園に戻った。グラウンドでは、ちょうどみんながトレーニングを終えてストレッチをしているところだった。
「みんなーちょっと集まってくれー」
俺の掛け声で帰ってきたのに気づいて3人が集まってきた。
「まずはスカイだな」
「ほうほう、昨日言ってた贈り物ですね〜セイちゃん楽しみにしてたんですよ」
ニヤニヤしながらスカイが俺の手元を見てくる。そんなに期待されるとなんだか緊張するな……
「スカイには少し可愛らしいのが似合うと思って選んできた」
俺がスカイに選んだのは黄緑がベースの雲のような模様が入ったメンコだった。付け根のところにモフモフが着いてて可愛らしいデザインだ。
「うわぁ!ありがとうね〜ほらほらトレーナーさん付けてくださいよ〜」
どうやらデザインは気に入ってくれたようで喜んでくれた。スカイもキングのように耳を差し出して来たので着けてあげた。
「どう?似合ってる?」
「あぁ良く似合ってるよ。想像以上に可愛いな」
そういうとスカイは顔を真っ赤にしながらマックイーンの後ろの方に隠れて行った。
「次はスズカだな。スズカは勝負服に似合うように選んできたんだ。スズカだけ走る時に周りが気にならないように両耳買ってきた」
「わざわざありがとうございます。大切にしますね」
スズカは無言で頭をこちらに差し出す。俺がもう着けること前提だったんですねスズカさん……
「うん良く似合ってる。スズカは緑色が良く似合うな」
「ありがとうございます。これでもっと速く走れますね」
それだけでそんなに変わるのかとも思うんだが、スズカなら本当に速くなりかねないと思えるのはなんでだろうか。
「最後にマックイーンだ」
「私はデビューもまだなのにここまで気にかけてもらってよかったのですか?」
マックイーンは少し申し訳なさそうにしていた。気持ち耳も垂れていて不安そうだ。
「マックイーンも俺の担当ウマ娘でチームメイトだ。これからも一緒に頑張ってくれ」
「はい!」
そう言うとマックイーンは嬉しそうに尻尾を揺らしながらこちらを見た。
「マックイーンはメンコじゃなくて耳飾りにしようと思って紫色のリボンを選んできた。マックイーンの髪色に似合うと思ってな」
俺がそのままリボンを手渡そうとすると、マックイーンはムスっとした顔で耳をこちらに預けてきた。
「私には着けてくださらないの?」
「それじゃあ着けさせてもらおうかな」
リボンを結んであげるとマックイーンは嬉しそうに尻尾を揺らしながらみんなのところに戻って行った。
「スズカもスカイもマックイーンも俺の担当ウマ娘でチームメイトだ。3人のことも俺はしっかりと見ている。これからも一緒に頑張っていこう」
「「「「はい!」」」」
その後は、みんなで俺のプレゼントを見せ合いながら和気藹々と話していた。俺も明日からのキングのメニューを考えないといけないし、スペの対策もしっかりと考えないとな。
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