トレーナーはウマ娘に夢を見る【完結】   作:Tmouris_

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第81話:激走!黄金世代!

 今日はトレーナーさんが何やら用事があるようで、トレーニングはお休みだった。

 

「今日は何しようかな〜」

 

 そんなことを部屋の布団の中で考えていると、同級生のグループからメッセージが送られてきた。

 

『今日はみんなトレーニングが休みと聞いたデース!滅多にない機会なのでみんなで遊びませんか!?』

 

 今日はリギルのトレーニングもお休みみたいで、エルちゃんはテンションマックスって感じだな〜どうせ私は元々予定なかったし。

 

『いいよ〜』

 

『私も問題ありません!』

 

『ぜひご一緒します』

 

『あなたたちにはキングと休日を過ごす権利をあげるわ!』

 

 スペちゃんやグラスちゃん、キングちゃんも特別予定があった訳ではないようだったからすぐに決定した。ササッと準備を済ませてから集合場所の正門前に向かう。

 

「あっスカイちゃんおはよ〜」

 

 私が正門前に着くと、既にスペちゃんが到着して待っていた。

 

「おはよ〜スペちゃん早いね〜」

 

「このメンバーでお出かけなんて滅多にできないから張り切っちゃって」

 

 スペちゃんは少し照れくさそうに私に話した。私もスペちゃんと同じで結構楽しみだった。いつもなら1番最後に到着なのに2番目っぽいしね〜。

 

「私も楽しみだな〜久しぶりにお出かけするし」

 

「スカイちゃんは良く外でお昼寝したりしてるじゃないですかー」

 

「授業サボってお昼寝はするけど、放課後とかはトレーニングがあるからさ」

 

 私がそう言うと少しスペちゃんが唖然としていた。トレーニングではスペちゃんと会うこともないししょうがないか。

 

「セイちゃんこう見えてもトレーニングはしっかりやってるんだよ〜」

 

「わっわかってますよー!」

 

 私の発言に慌てふためくスペちゃんが面白くてついついからかってしまう。こんな光景見たらマックイーンちゃんなんかは嫉妬しちゃうかな?

 

(かという私もトレーナーさんがキングちゃんに最近お熱みたいだから妬けちゃうけどねー)

 

 前にそれとなくスズカさんに聞いてみたが、どこか余裕そうというか涼しげに『トレーナーさんなら大丈夫』なんて言っていた。

 

「お待たせしましたー」

 

「お待たせデース!」

 

 スペちゃんと2人でお話をしていたらエルちゃんとグラスちゃんの2人もやってきた。

 

「あら、キングちゃんはまだ来ていないんですか?」

 

「珍しいこともありマース」

 

 グラスちゃんとエルちゃんが少し驚いていた。そういば、こういう集まりの時は大体キングちゃんが1番最初か2番目には来てるんだけどな。

 

「申し訳ないわね……遅れてしまったわ」

 

 少し遅れてキングちゃんが急いでやってきた。

 

「キングちゃんが遅れてくるなんて珍しいね。何かあったの?」

 

 スペちゃんが首を傾げながら聞いている。普段遅れてこないキングちゃんが珍しいのかグラスちゃんとエルちゃんも興味津々だ。

 

「ここ数日のトレーニングが結構ハードで体が重くて遅れてしまったわ……」

 

 キングちゃんは疲れた顔で少しため息をついた。最近凄いハードなメニューをしてるとは聞いてるけど、皐月賞も近いので詳細はトレーナーさんからは教えてもらってない。

 

「私は大丈夫だから行きましょ?」

 

 とりあえず、キングちゃんも大丈夫って言ってるからみんなで目的地のショッピングモールに向かった。最初はみんなで軽くショッピングしてたんだけど、キングちゃんはお疲れでグラスちゃんも足に負担がかかったみたいでエルちゃんが着いて言って休憩している。

 

「いや〜みんな大変だね〜」

 

「グラスちゃんは足を怪我してるし、キングちゃんも疲れてたみたいだもんね」

 

 私とスペちゃんはすぐ近くでお店を見ながら歩いていた。私は手ぶらでスペちゃんはタピオカを啜りながら。

 

 

「グラスにキングちゃん。大丈夫デスカ?」

 

「大丈夫ですよエル。少し疲れてしまっただけだから」

 

 私たち2人を心配そうに見るエルさん。グラスさんは一応少し休めば大丈夫ということだ。

 

「あなたたちには私と一緒に休む権利をあげるわ!」

 

 私がそういうと2人は楽しそうにニコニコと笑う。私がいつも通り元気そうで安心したようだった。

 

「それにしても、タフネスなキングちゃんがここまでヘロヘロなのは驚きデース!」

 

「一体どのようなトレーニングを?」

 

 エルさんは興味津々そうに、グラスさんは少し羨ましそうに聞いてきた。グラスさんは怪我で走れないと聞いているから、走りでクタクタだと思って羨ましいと思ってるのかもしれないわね。

 

「実は最近走りのトレーニング自体はしてないのよ」

 

 私の発言に2人は驚いた顔をした後に心配そうな顔をしていた。

 

「怪我でもしたんデスか?」

 

「たしかキングちゃんは皐月賞出ますよね?」

 

 2人が心配するのもそうよね。G1レース……それも一生に1度のレースまで一月切っているのに走りのトレーニングをしてないなんて。

 

「怪我をしたわけじゃないの。クラシックで勝つために走り方を矯正する必要があって、そのために今は走ってないのよ」

 

 私が怪我してないことが分かると2人は安堵の息をはいた。グラスさんなんかは怪我の途中で大変なのにここまで心配してくれるなんて……私もいい仲間を持ったわね。

 

「走れるのに走れないって辛くないですか?」

 

 グラスさんは走れるのに走れない……そう考えると少し複雑な気持ちね。

 

「最初はそう思ってたわ……でも、走れなくってもやることって多いのね。トレーニングはハードで身体中バキバキだもの。トレーナーさんには迷惑をかけてるけど、あの人が私のために頑張ってるのだから私も全力でトレーニングをしてるわ」

 

「走れなくてもやるべき事……ですか」

 

 私が走れない中でも様々なトレーニングをしていることを理解したグラスさんが何かを真面目に考え始めた。

 

「グラスも怪我で走れないからそういうことしてるデスカ?」

 

「私はトレーナーさんが体に負担をかけないようにとトレーニングのサポートをしていますが……走れなくてもできることはいっぱいあるんですよね」

 

 グラスさんはさっきより何だか前向きというか明るい表情になった気がする。何もできない状態っていうのはやっぱり辛いんでしょうね……

 

「なんだか、こんな話をしていたら走りたくてたまらなくなりマース!」

 

「私も早く走りたいわね」

 

「私もです」

 

 もう少しで走りトレーニングが始まりが、今の話をしていたらなんだか走りたくなってきた。そうして、少しするとエルさんが話し始める。

 

「いい事思いつきました!」

 

「どうしたんですか?エル」

 

 

「スペちゃんは最近のトレーニングどうなの?やっぱ結構きつい?」

 

「うーんキツいけど、チームのみんなは優しいしトレーニングも楽しいですよ!」

 

 スペちゃんは呑気にそう言うけど、スペちゃんのその以前より丸くなったお腹が全てを物語っていた。最近のスペちゃんはどこか緩んでいる気がする。

 

「へー私もだよ。後輩のマックイーンちゃんを揶揄うのが楽しくって熱中しちゃうんだよね〜」

 

 スペちゃんの今の実力がどうしても気になってしまう。今の私の予想が正しいなら……私は皐月賞でスペちゃんには負けない。

 

「なんだかこんな話してたら走りたくなってきちゃったよ」

 

「いつも寝てたいって言ってるスカイちゃんが珍しい!今日はいいお天気だし走ったら気持ちいかもしれないですね」

 

 そんなことを話していると休憩場の方からキングちゃんたちがやってきた。なんかエルちゃんがニコニコしてるけど……

 

「午後から学園に戻ってみんなで走りマース!」

 

 そして、戻ってきたエルちゃんはそんなことを言い始めた。今日は休日で走るつもりはなかったけど、ちょうど気になることもあったしラッキー。

 

「そうだね〜私もちょうど走りたいと思ってたんだよね。ねっスペちゃん」

 

「いいですね!みんなで走る機会なんてあんまりないから楽しみです!」

 

 そうして、私たちはみんなで学園に戻って準備を済ませてからグラウンドに向かった。グラウンドに着くと、ベンチに座って休憩中のスズカさんを見つけた。

 

「あれ〜スズカさんじゃないですか。今日はトレーニングお休みなのにどうしたんですか?」

 

 後ろから急に話しかけたせいで少しだけ驚きこちらに振り向く。でも、私たちがいることの気づくと少し首を傾げていた。

 

「あれ?スペちゃんも他のみんなも今日はお休みでみんなで出かけたって聞いてたのにどうして?」

 

「滅多にみんなで走れる機会がないので、折角だから模擬レースしようって話になったんですよ!」

 

 スズカさんの疑問に対してスペちゃんが経緯を説明してくれた。

 

「私たちからしたら休日にグラウンドで走ってるスズカさんが不思議でしょうがないだけど……」

 

「折角のお天気だから走りたくなっちゃって。トレーナーさんにも確認して少しランニングをね。私は走り終わったからみんなでここを使って」

 

 トレーナーさんに確認を取ったという言葉でグラスちゃん以外が目を逸らした。キングちゃんのこともあるからトレーナーさんには黙ってはいるけど、模擬レースなんて負荷がかかること黙ってやったってバレたらと考えると……

 

「審判は私がやりますから、みんなウォーミングアップしてきてください」

 

 審判とスタートの準備はグラスちゃんがやってくれるみたいで、みんなは各々ウォーミングアップを始めた。1人で大変じゃないかと思ったけどスズカさんが手伝ってるみたいだから問題はなかった。

 

 

(久しぶりの走りなのにぶっつけ本番ね……大丈夫かしら)

 

 私はウォーミングアップをしながらもそんな不安を抱えていた。フォームもペースも上手く作れるか分からない。スタミナトレーニングはしていたから体力が持たないなんてことはないと思うけれど。

 

「どうしたのキングちゃん。久しぶりのレースで不安?」

 

 私が不安を抱えてるのを見てスズカさんが話しかけてくれたらしい。

 

「そうね……不安じゃないと言えば嘘になるわ。トレーナーさんとは走りながら調整したわけじゃないからビジョンしかまだ出来てないから」

 

 そう言うとスズカさんはクスっと笑ってから話始めた。

 

「ごめんなさい。別にキングちゃんの悩みを笑ったわけじゃないの。ビジョンが見えてるならあとはそのビジョン通り走るだけよ。そうして前に行きたいもっと速く走りたいって強い気持ちがあれば体が自然と着いてくると思う」

 

「そうやってスズカさんは強くなってきたんですね」

 

 スズカさんはこくんと頷いた。

 

「そうね。キングちゃん頑張ってね。私は努力してる人が好きだから」

 

(そうだ、私は今まで努力することだけはやめなかった。今回も勝つ努力をするればいいのよ)

 

 私はスズカさんに軽く頭を下げてスタート地点に向かった。このレースは復帰レースには十分すぎるメンバーが揃ってる。このレースで何かを掴み取ってみせる。

 

 

 各々がウォーミングアップを終えてスタート地点に集まった。全員が勝つつもりでいるようで空気がピリピリしている。

 

(みんなで楽しく勝負しようって雰囲気じゃないよね〜)

 

 誰かしらにスタート前に話しかけようかと思ったけど、キングちゃんもいつも以上に集中してたし。スペちゃんやエルちゃんは本気の実力を見たいから。

 

「みんなスタートするから準備してー!」

 

 グラスちゃんじゃなくてスズカさんの呼び掛けで私たちはスタートラインに立った。

 

「それじゃあ、位置について……よーいドン!」

 

 スズカさんの一声で模擬レースが始まった。

 

 

「スズカさんがやらなくても私がやりましたよ?」

 

「いいのよ、私も1回やってみたかったから」

 

 グラスちゃんの仕事を取って悪いことをしてしまったかしら?トレーナーさんがいつもやっているのを見てついついやってみたかったのよね。

 

「スズカさんは誰が勝つと思いますか?」

 

 4人がスタートしてからすぐにグラスちゃんが私にこのレース結果の予想を聞いてきた。

 

「このレースはエルちゃんかスペちゃんが勝つと思うわ」

 

 その質問に私は即答した。グラスちゃんは少し呆気に取られていた。

 

「意外だった?」

 

「はい……スカイちゃんもキングちゃんも居るからどちらかの名前は聞くと思っていました」

 

 スカイちゃんの名前は出そうとは思ってたんだけど……今回は1着は取らないと思うな。

 

「キングちゃんは流石に復帰1戦目であのメンバーは辛いと思うし、スカイちゃんは1着を取る気はなさそうだから」

 

「それはどう言うことですか?」

 

「スカイちゃんはね確かめてるんだと思う。スペちゃんやキングちゃんの実力をね。あと周りからあまり警戒されるのが好きな子じゃないから」

 

 その後グラスちゃんは何かを考えたあとに1番気になっているであろうことを聞いてきた。

 

「皐月賞……誰が勝つと思いますか?」

 

「実力的にはスペちゃんとスカイちゃんが拮抗してる……いや、スカイちゃんの方が少し速いかもしれないけど。でも、キングちゃんは今大きな壁を越えようとしてるわ。私もトレーナーさんと一緒に壁を何度も超えて来たから何となくわかるの」

 

 

 スタートは綺麗に出ることができた。後方からはエルちゃんとスペちゃんが迫ってきてる。キングちゃんの姿が見えないけど後ろの方にいるのかな?

 

(流石に復帰1戦目にこれはキツイかな?)

 

 いつものキングちゃんならこの状況は前に出て狙ってくると思ったんだけど。レースはもう少しで折り返しの1000mを通過するからそろそろ動くかな?

 

 

(スカイさんは逃げでエルさんもスペさんも前よりの先行でレースは前よりの展開になってるわね……)

 

 いつもならスペさんの後ろに付いて走っていただろうけど、今回は足を溜めるのよ。勝負はラストスパートからの600m。

 足以外の部位はトレーニングで負荷をかけて疲れてると思ってたけど、想像ほど体は怠くないし足も軽い。怠いどころか以前よりも走りが安定している気がする。

 

(残り800m……仕掛けるならここから!)

 

 そのタイミングでスペさんのエルさんも動き始めた。スカイさんとの距離をどんどんと縮めていく。

 

(もっと前に!1歩でも前に!)

 

 

 レースは残り400mでスペちゃんとエルちゃんが並んできた。いつもならもうちょっと粘るし、まだ追いつかれないだろうけど。

 

(今日はこの辺で潮時かな?)

 

 私はそこでペースを落とした。みんなには悪いけど……G1レース前に本気を見せるのもねぇ。スペちゃんとエルちゃんはすっかり熱くなっちゃってるけど。

 少しして、後ろからキングちゃんが来ているのがわかった。今日は本気で走る気はなかったけど、キングちゃんが横を通りすぎた瞬間にその考えは変わった。

 

(何それ……それはキングちゃん聞いてないよ!)

 

 キングちゃんは今までにないくらいの前傾姿勢で走っていた。そして、そのスピードは今までに見たことないくらいの速さだった。

 私はすぐにスピードをあげた。しかし、キングちゃんと距離を詰めることが出来なかった。距離を詰める所か離されていくんだから。

 

 

(もっと前に……もっと速く!)

 

 走っている本人は自分のフォームに気づいてはいなかった。ただただ一心不乱に1歩前に少しでも速く走ることだけを考えていた。以前までのキングならここまでの前傾姿勢で走ったらバランスを崩していただろうが、今日この日まで超ハードなトレーニングによってそれを可能とする体幹を手に入れていた。

 レースも残り100mというところまで来ていた。先頭はスペさんとエルさんが並んでいる。少し後方にスカイさんが追って来ていた。

 

(このレース……負けられない!)

 

 強い意志の元、キングは走り切った。しかし、結果は3着だった。久しぶりのレースということもあり、道中のレースペースを上手く作れずに差が開きすぎて追い付き切れなかった。

 

 

「いや〜みんな速いね〜」

 

 模擬レースが終わってみんなでストレッチをしていた。結局最後は本気で走ちゃったし。

 

「スカイちゃんだってスタートからすごいペースだったじゃないですか!」

 

「そう言われると照れるな〜」

 

 スペちゃんが私の走りを褒めてくれた。前半のレースメイクは上手くいったし、褒められるのは悪い気がしない。

 

「私は復帰一回目でスカイちゃんに勝ったキングちゃんに驚いてマース!」

 

 エルちゃんがそう言うと、キングちゃんは一瞬私の方をチラっと見てからため息をついた。

 

「そうね、久しぶりのレースだからどうなるかと思ったけれど……これなら皐月賞も大丈夫そうね」

 

「なにおぉ」

 

 キングちゃんは私が手を抜いていた事には気づいてる。でもね、本気で追いかけて届かなかったのには気付いていない。

 

「みんな速くってびっくりしたわ。ねっグラスちゃん」

 

「私も頑張らないといけませんね」

 

 レースを外から見ていたスズカさんとグラスちゃんは全てお見通しって感じだった。

 

「というか、そろそろ門限近づいてませんか?」

 

 スペちゃんの指摘でみんな一斉に立ち上がって寮にダッシュした。寮長に怒られるのは嫌だからね〜

 

(今日のレースで分かったことがあった)

 

 皐月賞……1番警戒するべきなのはキングちゃんだ。

 

 

 その日のレースから各々が動き始めた。

 

「もう一本お願いしマース!」

 

 後ろから迫り来るライバル達に追い抜かれないように努力する者。

 

「トレーナーさん……トレーニングについてお話があるのですが」

 

 他人を見て自分も何かできることがあると気が付いた者。

 

「いや〜今日のメニューも疲れました」

 

 いつものように普通にトレーニングする者。

 

「トレーナーさん。フォームについて話があるのだけど」

 

 レースで新たな発見をして壁を乗り越えようとする者。

 

「マックイーンちゃん今日も頑張って貰うね?」

 

 後ろから迫る強敵を見つけて今まで以上に努力する者。

 

 皐月賞まであと少し。この日のレースがどんな影響を及ぼすことになるのか。

 

 

チームレグルスで1番好きなメンバーは?

  • サイレンススズカ
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • メジロマックイーン
  • トレーナー
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