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模擬レースを行った翌日。若干の二日酔いに襲われつつ、スズカのトレーニングを考えていた。
(今日はスタートの練習をするか。せっかくたづなさんにアドバイスをもらったし)
たづなさんは立場上、特別に誰かを贔屓するようなことはしてはいけないらしい。ただ『 今回は特別にヒントだけ教えてあげます。スタートを周りより早くするためには、ゲートが開くのを早く反応しなくちゃいけません』
ゲートが開くのを早く反応するためには、反射神経が必要だろう。そして、それを意識し続ける集中力が大事になる。スタート前は緊張などで気が散ったりすることもあるらしい。セイウンスカイみたいなウマ娘が集中力を掻き乱して来るかもしれないしな。
どんな練習をするか……ゲートを使ったトレーニングにするのもいいが、長時間ゲートを使うことはできないしな。
集中力を鍛えるためのトレーニングか……あっそういや、あれがちょうどいいかもしれないな。ちょっと遊びっぽいが逆に飽きなくていいかもしれない。
放課後になって、スズカが来たので今日のメニューについて説明することにした。
「スズカ、今日のメニューはビーチフラッグ形式の練習だ」
「ビーチフラッグですか?一応質問なんですけど、なんの練習なんですか?」
スズカが疑問そうに首を傾げている。ビーチはないのにビーチフラッグとはって感じだし。トレーニングでそんなことしてるとこも少ない。
「ビーチフラッグって言ってもグラウンドでやるからな。後ろを向いた状態でスズカは俺のスタートの合図を待ってもらう。そして、合図と同時に前を向いて25メートルを走りきるんだ」
「一見遊びにも見えそうだが、意外とこれがスタートの練習にもなるし瞬発力や加速を鍛えるいいトレーニングになるんだ」
「そうなんですね。トレーナーさんがそう言うならがんばります」
「やる上で意識して欲しいのが、スタートの合図にできるだけ早く反応すること。前を向いてから加速の体制に入り、25メートルまで全力で走りきれ」
「分かりました。よろしくお願いします」
「それじゃあ、トレーニングを始めるぞ」
準備を終えて、スズカがスタート位置につく。
「位置についてよーい……どん!」
1番最初なせいもあってか、振り向きと加速までに時間がかかっていた。
「トレーナーさん、また面白そうなトレーニングしてますね〜」
スズカがスタートしてから、後ろから声をかけられた。こいつ、またトレーニングサボってるな。
「セイウンスカイ……なんでまたこんなところに。サボりなら他でやってくれよ。というか、トレーニングしろトレーニング」
「やだなートレーナーさん。私がいつもサボってるみたいな言い方して。今日は普通にトレーニングがお休みなんですよ。暇だからぶらついてたら、トレーナーさんがいるのが見えたので話しかけたってわけです」
どうやら、サボりではないらしい。それなら特に問題は無いな。
「見てるのはいいけど、邪魔はするなよ。なんなら参加するか?」
「いや〜セイちゃんは見てるだけでいいですよ〜」
「あら、セイウンスカイさん。こんにちは」
スズカが走り終えて戻ってきた。セイウンスカイとは前回の併走で走ってたし覚えてたか。
「こんにちは〜スズカさん。頑張ってるんですね」
「デビューまでもう少しだから、頑張らないと。あなたも一緒に走る?」
「はいはい、お2人さんお話中悪いけど、2本目いくぞ」
一応トレーニング中だからな、雑談を優先するわけにはいかない。
「位置についてよーい……どん!」
1本目で少し感覚を掴んだのかさっきよりも早く走り出していた。
「いや〜やっぱ速いですねー」
「スズカにとってはスタートのタイミングと加速は命綱だからな。デビュー戦までにはある程度、完成させておきたい」
「へ〜……私もやっぱり次の1本だけ参加してもいいですか?」
「別に構わないぞ。お前にも必要な要素を補えるだろうしな」
やっぱり、こういう練習は競い合った方が意識の向上にも繋がるしいいだろう。
「おーいスズカ、次の1本セイウンスカイも参加するけどいいか?」
「私は大丈夫ですよ。よろしくお願いしますね。セイウンスカイさん」
「お手柔らかにお願いしますね、スズカさん」
何やらスズカの顔が嬉しそうだが、どうやらこの2人は相性がいいらしい。
「それじゃあいくぞ。位置についてよーい……どん!」
スタートの反応がスズカの方が早い!そして、そのまま加速の姿勢に入っていく。セイウンスカイも少し遅れて加速していく。
「スズカの方が早かったな」
比べて初めて気づいたが。スズカはスタートが結構得意な方みたいだ。これは磨いていけば強い武器になるぞ。
「スズカいいスタートだった。加速に入るまでの時間も悪くはない」
「綺麗にスタートできるとなんだか清々しく走れますね」
「トレーナーさん、私にはアドバイスないの〜」
「お前は俺の担当じゃないし、早くトレーナーについてもらうように頼むんだな」
「私は4月の選抜レースまで相手の事情でトレーナーがつかないんですよ」
「あえて言うなら、スタートはあんまり早くなかった。けど、加速力は魅入るものがあったな。スズカはラストのトップスピードに行くまでに時間がかかるが、お前の場合トップスピードで長い距離を走り続けられるからな」
あの加速力はスタートというかラストスパートで役に立つだろう。
「ほらー次行くぞ準備しろー」
「トレーナーさんもう1本参加してもいい?」
スズカと1本走って火がついたんだろうか。理由は分からんがいいことだ。
「競い合うのはいいことだからな、是非参加してくれ」
「それじゃあ行くぞ。位置についてよーい……どん!」
スズカはスタートと加速に入るまでの時間が短く。セイウンスカイはスタートこそ遅いものの加速は早かった。ゴルシはスタートも遅いし加速に時間がかかって大変だ。
ってなんでゴルシがおるねん。
「ゴルシなんでお前がここにいるんだ」
「何言ってんだよ。こんな面白そうなことしてんのに参加しないなんてもったいないぜ」
「悪いな、俺も止めようとしたんだが聞かなくてな」
「しっかりとゴルシの手綱握っておいてくださいよ……」
「邪魔にならんように、さっさと戻るぞゴルシ」
沖野先輩がゴルシを引きずって戻っていった。先輩も色々大変なんだな……
「スズカさんあと一本お願いします」
「いいわよ、頑張って追い抜いてね」
セイウンスカイが予想以上にやる気だ。スズカも返り討ちにする気満々だし。
「次が終わったら、最後にゲートをつかった練習だ」
「位置についてよーい……どん!」
この勝負もスズカが勝った。スズカってスタートやっぱり得意なんだな。
「次は私、スズカさんに勝っちゃうかも」
「最初に先頭を取るのは得意なのよ私」
2人が言い合いをしてるが、仲良さそうだな。結構相性が良さそだ。
「位置についてよーい……どん!」
ゲートが開いた、直ぐにスズカがスタートする。早い、すごい集中力だ。セイウンスカイは普通のスタートになった。
スズカは加速していくが、セイウンスカイはスズカの後ろの方に着くと一気にスピードが上がった。
結果はスズカの勝ちだった。セイウンスカイのスピードアップにはびっくりしたが、それ以上にスズカのスタートが綺麗だった。
「私の勝ちみたいね」
「セイちゃん次は負けないですよ」
今日はあくまでスタートの練習だからな。長距離ならわからないけど中距離以下ならスズカが勝つだろうし。
「2人ともお疲れ様。あとは軽くランニングして終わりだ」
「私はここで帰りますね。さようなら〜」
セイウンスカイはそう言って去っていった。ランニングは面倒臭いっぽくて逃げたな。
「スズカよくやったな。今日得た感覚を忘れないようにしてくれ」
「それと、明日はデビュー戦前最後の調整前休日だ 、疲れを抜いてくれ」
「トレーナーさんは、明日なにか用事がありますか?」
「これといってはないが、どうしてだ?」
「私と一緒にお出かけしませんか?」
お出かけのお誘いらしい。女性とお出かけなんてしたことがないのでどうしたものかと思ったが。スズカがせっかく誘ってくれたんだ断るわけにはいかない。
「ああ、もちろん行かせてもらおう」
「ありがとうございます!一緒に色々回りましょうね」
「デビュー戦前の最後の休日だ、疲れをここで抜いて一気に追い込んでいくぞ」
「はい!私デビュー戦勝ちますね」
「期待してるよ。とりあえず今日はここでもう解散だ」
「お疲れ様でした」
お出かけか、これは実デートなのでは!?そんなくだらないことを考えながら寮に戻って行った。
はよデビュー戦したい