私はレースが終わって、なだめに来てくれたトレーナーさんから逃げちゃった。期待してくれてたのに、あんなレースをしたのが恥ずかしくって……顔を合わせることが出来なかった。
「スカイさん、こんなところまで来ていましたのね」
そんなことを考えながら海を眺めていると、後ろからマックイーンちゃんの声が聞こえた。学園からここまで追いかけて来たんだ。
「どうしたのマックイーンちゃん。今日はもうトレーニングは終わりだよ〜」
私はできる限りいつも通りにマックイーンちゃんに返答した。彼女にはこんなかっこ悪いところ見られたくなかったのに……
「さっきのレースのスカイさん。凄かったと私は思いますが」
マックイーンちゃんは私の横に座りながら核心を突くような発言をした。
「凄かった……?どこが凄かったって言うのさ!レースの結果は完全敗北!一矢報いることすら許されなかった!ただの一度も背中が近づかなかったんだよ!?」
何も出来なかった……あのレースにあったのは圧倒的な実力の差。才能の差という物を嫌という程見せつけられた。それを凄かった?感情的になるつもりはなかったけど、私はつい声を荒らげてしまった。
「たしかに……レース結果だけを見れば惨敗でしたわ。それでも、私は今日のスカイさんをかっこいいと思いました」
あんなレースを見ても、こんな私を見てもマックイーンちゃんの私を見る目は変わらなかった。憧れの目……そんな目をしている気がする。
「私はそんな凄くないよ……マックイーンちゃんみたいに血筋が良い訳でもない。マックイーンちゃんみたいに天才でも期待され続けたわけでもないんだよ?」
マックイーンちゃんはメジロ家の令嬢だから……もちろん才能だけじゃないのは分かってる。マックイーンちゃんは才能にうつつを抜かすことなく、トレーニングにもストイックに励んでる。一緒にトレーニングをしてきたからそれはよく分かってるのに……
「スカイさんは凄いですわ。今日のレース……たしかに圧倒的な実力差がありました。それでも、あなたはゴールまで決して諦めることはなかった。何よりも、今までで1番速かったの気づきまして?」
私はそれを聞いて呆然とした。今までで1番速く走れていたなんて思いもしなかった……ただ、少しでも追いつかなくちゃって必死だったから。
「それにスカイさんは平凡なんかじゃありませんわ。もしそうだとしたらミノルさんに見る目がないんですわ!もし本当だったとしても、平凡な走りであの皐月賞を制したのならそれもまた才能です」
マックイーンちゃんに正面からそこまで言われると照れちゃう……と言うか口元が緩んじゃうじゃん。
「あははは!マックイーンちゃんったら褒めすぎだよ〜」
私は大きく笑ってしまった。トレーナーさんだけじゃない、私のことを認めてくれる人がこんなにいるのにこんなことで悩んでる自分が馬鹿らしくなってしまった。
「ちょっなんで笑うんですの!私はこんなにも真面目に話しているのに!」
あぁ、支えてくれるトレーナーさんがいて。勝ちたいスズカさんがいて。負けたくないキングちゃんがいて。尊敬してくれるマックイーンちゃんがいる。
「私……このチーム好きだなぁ」
ムスっと怒っているマックイーンちゃんの横でボソッと呟いてしまった。そして、それはマックイーンちゃんに聞こえてたらしくて嬉しそうに笑っていた。
「私も今のチームが大好きですわ。お互いが信用し合って、仲間であってライバルでもある。各々が目標を持ってそれに向かって奮起している……何よりもトレーナーさんがそれを支えてくれますし」
マックイーンちゃんは嬉しそうに語り始めた。本当にこのチームが好きで、チームメイトの私たちのことも大好きでいてくれるんだ。
「スズカさんは少し変わってはいますけど仲間思いですわ。何よりも速く走ることへの妥協がない。キングさんは誰よりもトレーニングにストイックに挑んでいますし。スカイさんはいつも適当そうにしながらもやることはしっかりとしていますわ」
正面から自分のことを褒められるのは、なんだかむず痒くて顔を少し俯かせてしまった。気持ち顔も熱くなってる気がするし……
「それに、別々の才能を武器に走っているのに誰一人その才能に胡座をかくことがないのも凄いと思いますわ。自分や誰かのために努力を惜しまない……そんなこのチームが大好きですのよ?」
全て話し終わると、マックイーンちゃんは恥ずかしくなったのか俯いてしまった。その耳は赤くなっていて恥ずかしがっているのがよく分かる。
「ありがとね……マックイーン」
すると、マックイーンはパッとこっちを見た。そして、何かを言おうとした瞬間に後ろから声が聞こえた。
「はぁはぁ……距離が意外とあったから遅くなった」
そこには膝に手をついて息を荒らげているトレーナーさんがいた。ただ、私もマックイーンも予想以上に楽しそうにしていたせいか、状況を読めずに唖然としている。
「あ〜トレーナーさんじゃん。こんな所まで追ってきてくれるなんて。セイちゃんの好感度がアップしましたよ〜ピロリロリーン♪」
この時にはいつも通り振る舞えるくらい元気だった。それに、トレーナーさんが来てくれて嬉しかったのは本当だし。
「ほら、マックイーンちゃん帰んなきゃ。そろそろ門限すぎちゃうよ〜」
私はマックイーンの手を掴んでトレーナーさんの車に乗り込んだ。トレーナーさんはやれやれって顔をしながら運転席に乗ったけど、その顔はどこか嬉しそうだった。
「ちょっとスカイさんさっきのは……?」
マックイーンが顔をグッと近づけて、さっきのことを問い詰めてくる。驚いて少しだけ呆気に取られたけど問題はない。我ながらさっきのは少し私らしくなかったなぁ。
「さっきのこと〜?セイちゃんはなんのことだか分からないな〜」
私はそっぽを向いて口笛を吹く。それを見てマックイーンがムムムという顔をしてるのが可愛い。
「全く……心配して来てみればスカイがいつも通りだし……一体どんな魔法を使ったんだマックイーン」
私とマックイーンは顔を見合わせてトレーナーさんの方を見て。
「「内緒です(わ)」」
とだけ答えた。
それにしても、これから考えるべきことはいっぱいあるなぁ。私のパフォーマンスをフルに活かし切る……つまりスタミナを上手く使う戦い。レース中盤のペースアップや、駆け引きのためにもっと大胆に勝負していかないと。
「スカイ。お前の実力は俺だけじゃなくてみんなが認めてる。まだ能力を持て余してレースで全力で走れていないなら、俺のミスでもある」
あぁ……本当にこのチームは暖かいな。トレーナーさんに見つけてもらって、トレーナーさんに育てて貰えて本当に良かった。
「トレーナーさん……私ってもっと速く走れるのかな」
自分の実力や才能があるのをマックイーンは認めさせてくれた。だから、トレーナーさんには私の可能性を認めさせて欲しい。
「なーに当たり前なこと言ってんだ。お前はこれからまだまだ速くなるさ。今日のあのメンタル状態で格上相手にあそこまで強気の走りもできたんだ。確実に肉体的にも精神的にも成長してるさ」
トレーナーさんは、私の可能性を疑うことすらしてない。マックイーンの方をちらっと見ると目が合って、無言で頷いてくれた。
「私頑張るね。ダービーで負けないように……これから先も戦っていけるように」
「あぁ!一緒に頑張ってこうな」
トレーナーさんもマックイーンも嬉しそうに笑っていた。今は後ろを向いてる場合じゃない……前も見てできる限りのことをやらないと。
ダービーの結果は執筆時のアンケートの内容も加味した上で書こうと思っています。
日本ダービーを制するのは
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スカイ×キング×スペ
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スカイ×キング
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スカイ×スペ
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キング×スペ
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セイウンスカイ
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キングヘイロー
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スペシャルウィーク