今日はトレーニングがチーム全体で休みだ。かと言って俺は特別やることがなかった。そこで、前々からスズカにフクキタル占いは当たると聞いていたので、胡散臭い占いテントに足を運んだ
「ようこそいらっしゃいました」
中に入るとそれっぽい雰囲気の占い屋になっていた。中心のテーブルに水晶を置いて、それをフクキタルが見ている。なんか不思議な感じの紫のライト入ってるし。
「結構本格的な感じなんだな。スズカからよく当たるって聞いて来たんだが」
「ほう!スズカさんが紹介してくれたんですか!」
スズカの紹介と聞くと、フクキタルは物凄く喜んでフンギャロしていた。同級生で仲が良いからしょっちゅうスズカは占って貰っているらしい。
「それで本日はどういう占いを!?恋愛運ですか?金運ですか?」
なんでこんなに食い気味なんだ……フクキタルの後ろに立っているドトウの方を見ると、何故か涙を拭っていた。あっ……あんまり人来ないんだな。
「普通に運勢を占ってくれ。オーソドックスなものでいいんだが」
そう言うと、「分かりました」と言い。フクキタルは水晶に集中し始めた。レースでもシラオキ様がーとか言ってるスピリチュアルガールだとは思ってたけど……まさか本当のガチなやつなのか?
「出ました!」
「それで……運勢は?」
「凶です!」
凶……え?占いってそういう感じで出るものだったのか。どっちかと言えばおみくじな気がするが……いや、あれも占いの1種みたいなものか?
「救いはないのですか〜?その、ラッキースポットとか」
すると、フクキタルがもう一度水晶と向き合って集中し始めた。
「ラッキースポットはズバリ!湖です!」
湖?湖と言ってもこの辺にはそう何個もあるもんじゃないし……いや、確か近場に1箇所くらいあったかな。ちょうど気分転換に外に出たいと思ってたし、散歩感覚で行ってみるか。
「ありがとうフクキタル。ためしに今日行ってみるよ」
「きっと素敵な出会いが待っているでしょう!」
俺がテントを出ようとした時にフクキタルは最後が素敵な出会いがあると言った。それなのに運勢は凶なのか。いや、ラッキースポットに行かなかった場合は凶なんだろう。
こうして俺は湖のほとりでを散歩している。天気も良くって気持ちがいい。すると、近くから歌声が聞こえてきた。
「みんなありがと〜」
歌声の方に行くと、木の下でウマ娘が1人手を振ってファンサービスをしている。そう……誰もいないところに向かって。
「何をしてるんだ?ファルコ」
一段落したところでファルコに話しかけた。以前に何度か会ったことがある。なんなら彼女の前向きな言葉に助けられた。
「あっファン1号さん!ファルコのライブに来てくれてありがと〜」
ファン1号?いつの間にか俺はファルコのファンになっていたのか。ゲリラライブみたいなのには何度か参加したが。
「それで?冗談はともかくとして何してるんだ?」
「冗談じゃないのに……」
俺の反応にファルコはショボンとしてしまった……ファン1号ということにしよう。俺はファルコのファン俺はファルコのファン。
「今日はライブの練習をしてたの。本当はトレーニングもしなきゃいけないんだけど……ちょっと気分転換に」
何かがあったのかファルコは更に落ち込んでしまった。やばい、何か元気づけてやらないと。
「いや〜途中からしか聞けなかったからファルコのライブもっかい聞きたいな」
すると、耳をピンと立たせて急激に元気になっていく。感情がわかりやすいというかなんというか。
「今日はわざわざファルコのために来てくれてありがとう!」
「うぉおおおファルコ!」
俺はマックイーンの真似をしながら場を湧かせていた。何もしなかったらまたお通夜状態だ。
一通りライブが終わった。彼女のライブの完成度は凄かった。デビュー後のウマ娘でも、あそこまでライブに力を入れてる娘は多くないだろう。そこで、再び同じ問いをかける。
「それで?なにがあった」
「実は……もうすぐレースデビューしなきゃいけないの。クラシック走るためにね?でも、私の要望をどのチームを受け入れてくれなかった」
そうか、クラシックに挑むのか。でもチームに所属できてないから出走できない。
「なんでチームに受け入れられなかったんだ?」
幾つのチームを回ったかはしらない。それだけ回ればひとつでも加入できるチームがなかったのか?それだけの理由?
「私がウマドル目指してるっていうと、大体のトレーナーさんが嫌な顔をするし。走りを見せればダートを走れって言うの」
なるほど……そもそも目的が謎でダートを走らせたいけどそれは嫌だから、トレーナーとしてはお手上げなんだろう。
「そもそもウマドルってなんなんだ?」
「ウマドルはアイドル活動をするウマ娘です」
「アイドルとは違うのか?」
「ウマドルです!」
なるほど、ファルコはウマドル?になりたいのか。何となくイメージはつくんだが。
「それで、なんのレースに出たい?」
デビューするだけならダートレースはいくつもある。しかし、芝にこだわると言うことは、何か出たいレースがあるからだろう。
「クラシック三冠取りたいの」
クラシックか……ここまでの話を聞いている感じ、ファルコのバ場適正はダート。芝はあまり高くないんだろう。
「なんでクラシックにこだわるんだ?ダートにもレースはあるだろう」
一応数は少ないがG1のレースもある。G2やG3もあったはずだが。
「ダートが嫌いってわけじゃないんだけど、芝レースに比べると盛り上がってないから。ウマドルとして活動するなら芝を走りたい!」
たしかに……芝レースとダートレースだと人気度に差がある。クラシック三冠、トリプルティアラといった称号も多い。レースの種類の多いからファンも多い……
「なら、必要なのは場適正を変えること。ウマドルとしての活動やトレーニングを上手く時間に折り合いをつけることだな」
俺がそ言うとファルコは口を丸く開けて、ポカーンという顔をした。
「えっと、ダートを走ればいいとか……変な夢を追いかけるのはやめろって言わないんだね」
変な夢?俺にはウマドルというのがどういうのかはイマイチ分からない。けど、これだけ悩むということは、それを叶えるためにファルコは努力してきたんだろう。
「まだ、芝でレースに出たわけじゃないんだろう?諦めるのはチャレンジしてからでも遅くない」
ファルコはそのまま顔を俯かせてしまった。きっと、トレーニングではまだ上手くいったことがないんだろう
「ファルコ……ウマドルになれるかな」
「ウマドルが何かは俺にはしっかり分からない……でも、夢のためにそこまで悩めるなら……きっとなれるさ」
彼女は今悩んでいる。その夢に挑戦すべきかどうか。だが……目標無しに挑んで勝てるほどレースは甘くない。トレーニングのモチベーション、レースに勝ちたいって想いが必要だ。
「それじゃあ……トレーナーさんが支えてくれる?私がウマドルになるために」
その目は期待に満ち溢れていた。だが、希望を与えたからこそ……俺が現実も教えないといけない。
「ダートから芝への転向は難しい。夢は応援するが……勝てないレースに俺はトレーナーとして出し続ける訳には行かない」
彼女の夢は人気になる……勝つことが重要だ。芝で勝てるなら良い。だがもしも、芝で戦えなかったら。
「クラシック皐月賞……それで結果を残せないなら俺でもダート路線に戻って貰うことになる」
皐月賞に出走するレベルに到達することがそもそもの最低前提。しかも、それで結果を出せという条件。かなり厳しい条件だ。
「それでも!チャンスがあるなら私は挑戦したい」
ファルコにとって、俺は唯一のチャンスだったんだろう。実績がある訳でもない、それでも夢を諦められずにいた。その夢に挑める場所がやっとあったんだから。
「ようこそ、ファルコ。チームレグルスに。今月はスズカの宝塚記念があるから、本格的な指導は夏に入ってからになる」
「よろしくお願いします!」
ファルコは本気の目をしていた。その本気に答えられるように俺も頑張らないとな……
フクキタルの占いのお陰で正式なチームメンバー5人目が揃った。ところで……ウマドルになるためには具体的に何すればいいのだろうか……