問題児たちが特異点を修復するそうですよ 作:U.N.とーすた
「わっ!」
「きゃっ」
「うおっ」
白夜叉からもらった手紙を読みおわると三人は上空にいた。
「クッソ!またこのパターンか!」
下を見ると大きな川が流れているのが目に入る。このまま落ちていくと死にはしなくてもびしょ濡れは確定だろう。
「じゃあね十六夜、飛鳥」
そう言うと耀はペガサスのギフトを使い足元に力場を生み出すと川岸の方まで飛んでいってしまう。
「それじゃ私も。来なさい、アルマ!」
飛鳥が呼ぶとギフトカードが光り、立派な山羊が現れる。飛鳥はその山羊に腰をかけると山羊は耀の飛んで行った方へと空を駆けて行った。
「まじかよチクショウ! オレを置いていって後悔しても知らねぇぞ」
置いて行かれた恨み言を吐くと空を飛べない十六夜は川との距離を図りながら落ちていく。
「どっせい!」
水面まであと1mを切ったところで十六夜は拳を水面に向かって叩きつける。
瞬間、川は隕石が落ちたような瀑布と化した。
辺り一帯を拳でできた水飛沫が大雨が襲う中、十六夜は弾けて水のなくなった川底に着地し耀と飛鳥がいる川岸にジャンプして向かう。
「ちょっと十六夜くん濡れるところだったじゃない!」
「わりぃわりい」
「でもおかげで火事が少し収まった」
濡れることなく突破した十六夜が川岸で待っている2人のところに向かうと直撃はアルマに守ってもらったのか2人共雨で少し濡れた程度で済んだようだった。
落ちてくるときに見えた異常な景色。石油タンクを転がしでもしないと起きないであろう街全体の炎上。正直そこまで考えていたわけではないが十六夜のトンデモ着地により降った雨により周囲数キロの火の手が弱まり、3人の回りを不快感のある高温の湿気がまとわりついてきている。
「...とりあえずこの場を離れるか、この辺りは残念ながら人気はないが、ここまで大規模な火災だ、どこかにまだ生きている人がいるはず。手分けして探すぞ」
逃げ遅れた人の救出と特異点の修復の手がかりを探すために3人は分かれて行動することにした。
〆
「だれかー!いないのー!」
久遠飛鳥は燃え盛る駅前の広場で生存者を探し回っていた飛鳥は川からここまで走ってきても一人も見つけられないどころかうめき声すら聞こえないことに違和感を覚え始めていた。
(人のいる音というか、そもそも臭いがしない)
"ノーネーム"のメンバーの救出のため外界を旅していた飛鳥はその過程で様々なものを見てきた。その中には人が焼かれるなんて凄惨な光景もあり、そのひどい光景と独特な臭いが頭にこびりつき寝れなくなった時期もあった。
が、今回は街一つが燃えているにも関わらずそもそも臭いがしないのだ。
(もしかしてそもそも人がいない?)
「マスターあちらを見てください」
アルマに促されテラス席のあるカフェを見るとテーブルにはさっきまで人がいたかのように食べかけのケーキと紅茶がそのまま置かれていた。
「これはいないのではなくて突然消えたって感じかしら」
「おそらく。この街に生存者というより人間は1人もいません。特異点修復の手がかりを探すことに目的を絞るべきかと」
「そうね、どこに行ってしまったのか疑問だけれどまずは焼かれた人がいないことを喜びましょうか」
目標を救出から特異点修復の手がかり探しに切り替えて図書館に向かうことにした。
その道中。
「アレは何かしら?骨ということはスケルトンかしら?」
矢をつがえコチラに狙いを定めているエネミーの一団を発見した。
「惜しい、竜牙兵も混ざってますね」
「竜牙兵?聞いたことないわね。アルマ解説お願いできるかしら?」
「ええもちろん。アレらは竜の歯を大地に蒔き、竜種の魔力と大地からの知識を得て作られる自立行動のできる使い魔です。見た目こそスケルトンと同じですが神代ギリシャからある魔術であり、竜種の牙を使っている為見た目以上に強敵ですよ」
「そう、なら仲間にできたら心強いわね」
『−−止まりなさい!!』
その一言で飛鳥は竜牙兵を支配する。ギフト『威光』自分より霊格が下の存在を支配するギフト。神霊とのハイブリッドであり、生まれながらにして半神霊並の霊格を持つ飛鳥相手にスケルトンはもちろん竜牙兵の霊格程度で抵抗できるはずがなかった。
◆
「図書館には1月27日の朝刊までしかなかったわね。防犯カメラの映像も27日の11時頃で終わっていたし事が起こったのは1月27日中ということで間違いなさそうね」
複数のの竜牙兵を味方につけた飛鳥は図書館で得た情報を整理しながら港へと向かっていた。
「あら、何かしらあのモヤがかった人型のアレ?どこかで見たことあるような...アルマわかる?」
「申し訳ありませんマスター。この禍々しい気配、敵であるとしかわかりません」
大通りの真ん中で薙刀を持ち仁王立ちでこちらを見ているシャドウサーヴァント弁慶。
幾ばくかの間両者の間で睨み合いが続き、先に仕掛けたのは飛鳥だった。
『竜牙兵行きなさい!』
凛と響く声で飛鳥が指示を出す。
ただその一言で先程までのノロノロとした動きが嘘のような俊敏さで3人の竜牙兵がシャドウサーヴァントに波状攻撃を仕掛ける。
1人目を手に持った薙刀で、2人目を十手で、3人目を太刀で受け流し、切り伏せ、追撃と放たれた矢を再び薙刀で弾き、無傷で切り抜ける弁慶。
「−−ッ」
お返しとばかりに飛鳥に肉盾の竜牙兵ごと潰さんと斬りかかる。通常なら竜牙兵程度苦もなく斬れるだろうが飛鳥の言霊により強化された個体は受け止め、弾き返す。
弾かれ姿勢を崩したところに2人の刃が迫るが身を捻り、躱す。
そんな応酬が3合、4合と増えていく。
どちらも決め手に欠けている。弁慶側は竜牙兵の壁を突破する術がなく、飛鳥側も弁慶を傷つける前に竜牙兵が破壊されてしまい傷つけられない。
「メルン、足元を崩して!」
ならばと、距離を取ろうと大きくバックステップした弁慶の足がズルリと地中に沈む。
追撃と迫る竜牙兵を両手に持った2本の小太刀でいなすが無防備になった胴に矢が刺さる。
鎖鎌を近くの柱に絡め、ぬかるみから抜けだすと胴に矢を刺したまま弁慶は太刀を構えて飛鳥に突撃、飛鳥は天叢雲剣を構え迎撃する。
「−−ッが」
うめき声とともに弁慶が倒れる。両者の刀がぶつかり合い勝ったのは飛鳥だった。
伝承と霊格を切り分ける天叢雲剣に切られたことでシャドウサーヴァントと言う伝承から切り分けられ黒いモヤが取れていく。
「やっぱり海尊さんだったのね」
「おお、これはこれは飛鳥嬢、お久しゅうございます。飛鳥嬢もサーヴァントになられたのですなアルマ嬢もお変りなく」
「そちらはだいぶ変わりましたね、いくつもの刀剣を担いだりなさってまるで弁慶殿のよう」
飛鳥が戦っていた相手それは飛鳥が外界で途方に暮れていた時に助けてくれた人であり、義経ら一行の頼れるツッコミ役。源義経の郎党の一人、常陸坊海尊だった。
「少しでも弁慶のように見えていたのなら良かった、英霊になったかいがある」
少し寂しそうにそう笑う海尊。両者が旧友との再開を楽しんでいるなか3人の死角を縫うように黒い影が迫っていた。
《
戦闘後の気の緩みに旧友との再開が重なったことによる絶好の機会をアサシンが逃すはずがなく飛鳥に対し必殺の宝具が放たれる。
「ディーン来なさい!」
「DEEeeeN!」
紅い風と共に左手でアサシンと飛鳥の間を遮りながら現れる伸縮自在な赤い鉄の巨人。
必殺の一手はディーンに阻まれ、ディーンは命なき人形故にザバーニーヤでは殺せない。改めて距離を取ろうとするアサシンだがそれを飛鳥は許さない。
着地点周辺をメルンによってぬかるませ、アサシンは避けることができずぬかるみに降りてしまう。
身軽の動きですぐさまぬかるみから脱するがその隙に見た目以上の機動力と突進力を持つディーンの街を巻き込んだ薙ぎ払いに巻き込まれ、大ダメージを負ってしまう。
「−−シッ」
「では、南無三!」
巻き込まれた先には海尊が待ち構えており、薙刀による一太刀によりアサシンは仕留められた。
「さてと、助っ人も見つけたしそろそろ十六夜君のところに戻りましょうか」
「助っ人とは拙僧のことですな? 喜んでお供いたしましょう」
「...飛鳥嬢一つ我儘を言ってもよろしいでしょうか。今は弁慶として呼ばれた身、拙僧の贖罪のためにどうか弁慶と呼んでくだされぬか」
未熟な飛鳥の剣術で切り分けた伝承は本人が望めば戻ってしまう。
シャドウサーヴァントの伝承は棄てたまま、弁慶としてのスキルを含んだ伝承を回収し、海尊はまた弁慶を演じることにしたようだ。
飛鳥が外界にいた時代ってちょうど源平合戦の頃なんですよね、改めて読み返して初めて知りました(汗)