ドールズフロントライン ~魔術師殺しの夜~   作:弱音御前

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暑いですね。もう・・・とにかく暑いですね。そんな毎日、皆様いかがお過ごしでしょうか?
どうも、弱音御前です。

本日より、新シリーズのスタートになります。
あらすじにも書きましたが、本作はFateシリーズの一部設定を織り交ぜているお話なので、どうかご了承下さい。
とはいえ、クロスオーバーほど大々的なものではなく、あくまでもドールズフロントなので、そこはご安心を。

それでは、また短い間ではありますが、ごゆっくりとお楽しみください~


魔術師殺しの夜 1話

 

 

 

 薄暗い街頭と月明りを頼りに山道を歩き続ける事1時間。

 まるで、真黒な壁のようにすら見えた林が開けた先にようやく目的地の姿を捉える。

 

「はぁ~・・・ようやく見えてきたよ。あと少しだから、みんな頑張って」

 

 まず安堵の息を漏らしたのは〝X-ray小隊〟の隊長であるキャリコ。

 

 先頭を歩く彼女は後ろに続く3人を鼓舞する。

 

「1時間もあんな泥道を歩かされるなんてホント信じらんない! 大体、これだけ開けた場所に

あるならヘリでも来れたんじゃないの?」

 

 キャリコの気遣いもお構いなしに愚痴を吐き出すのは、ワルサーWA2000。

 林道を歩いている間、定期的にぶつくさと言っている彼女だが、他の3人にちゃんと気を配って歩いくれていたので、もうご愛敬である。

 

「確かに、この様子なら着陸できないこともないでしょうが。ちょっとでもバランスを崩して樹に激突でもしたら大惨事ですから。徒歩で森林を抜けるのが最適解でしょうね」

 

 後ろに続くコンテンダーがワルサーの愚痴に冷静な分析で返す。

 自分も疲れているのだろうに、それでも落ち着いて対処できる仲間がいてくれるというのは隊長として非常に頼もしい限りである。

 

「あら? 森を抜けた途端に小雨も止んでしまったようですね。残念ですわ・・・」

 

 そして最後尾、ワルサーとコンテンダーの背後の闇から滲むように姿を現すのはステアーAUGである。

 雨が好き、という趣味の彼女は森林特有の小雨のような湿気がお好みだったらしく、この4人の中で唯一ここまでの道のりを楽しんで歩いていた。

 どんよりとしているよりはマシだが、ちょっと不思議な娘を抱えているというのは隊長として

不安なところである。

 

「じゃあ、パラシュート降下でもしたほうが良かった? こんな真夜中に、こんな森のど真ん中に着地できる自信ある?」

 

「そこまでは言ってないじゃない。ただ、なにも森の入り口に車止めて歩いてくるよりはマシな

方法もあったんじゃないか? っていう事。指揮官もそれくらいの策は用意しろってのよ・・・」

 

 完全にふてくされてしまっているワルサーの気持ちは分かる。

 けれども、森の中を半分迷子になりながら彷徨う事になろうがなんだろうが、これは上官から

与えられた立派な任務なのだ。

 戦術人形として、全力を以ってこれを遂行しなければならない。

 今回、初めて小隊長を任されたキャリコは1人、そんなヤル気に満ち満ちていた。

 ピピっ、と緑に囲まれたこの場には不釣り合いな電子音が鳴り響く。

 音の出所はキャリコが装備している通信端末。定時連絡の時間を知らせるアラームだ。

 

「全員、ちょっとだけ休憩。離れすぎて迷子にならないようにね」

 

 3人バラバラな返事を耳にすると、キャリコは小さく咳払いをして喉を整えてから通話を

始める。

 

「こちらX-ray。本部、聞こえますか?」

 

『ああ、聞こえるよ』

 

 こんなに遅い時間なのだ、代役でも立てればいいのに応答してくれた指揮官の声を聞いて、胸の陰りが少しだけ晴れてくれる。

 これに指揮官の優しい笑顔をイメージで加えれば、合わせ技で効果も大幅上昇である。

 

『そちらの状況はどう?』

 

「はい、つい今しがた山道を抜けて目標を視認できる地点に来ました。予定時刻を20分以上もオーバーしてしまってごめんなさい」

 

『謝ることはないよ。真夜中の森林地帯なんだから、進行に支障が出るのは当然だ。それよりも、負傷した娘なんかはいないかな?』

 

「はい、全員無事です」

 

『オーケー。それじゃあ、目標の様子を教えてくれ』

 

「了解」

 

 ポーチから双眼鏡を取り出し、暗視モードに切り替える。

 目標との距離は直線距離でおおよそ500メートル。適切な倍率に合わせて双眼鏡を覗き

込んだ。

 暗視装置特有の、ぼんやりとした緑色で映し出されているのは一戸の建物。

 今のご時世では、それこそ写真や映像データくらいでしかお目にかかることのできない、巨大な古城である。

 キャリコ達が所属するグリフィン基地から、東に100キロ以上離れた渓谷沿いにポツンと佇むこの古城を調査、偵察するというのが、今回のX-ray小隊に与えられた任務である。

 最近、渓谷の向こうで鉄血が基地を設営、戦力を整えているという情報を確認したグリフィンは立地に適したこの古城を基地侵攻の前線拠点として使用する考えのようだ。

 

「周囲に敵影無し。外壁に損傷の痕無し。どの窓からも明かりは確認できません。事前の情報

通り、依然として無人の城みたい」

 

 古城は、その様式が主流だった中世に建てられたものではなく、ここ十数年の間でどこかの

物好きが趣味で建てたものであるらしい。

 所有者などの詳しい素性はデータが紛失して判明していないようだが、あまり色々な情報を

もらっても面倒なだけなので、キャリコはあの城にどんなドラマがあろうが特に興味はなかった。

 城を見に行って、使えるかどうか調べる。それが終わったら帰って寝る。

 シンプル・イズ・ベストである。

 

『異常がなさそうであればそのまま調査を続けてくれ。その渓谷は鉄血とグリフィンのボーダー

ラインみたいなものだから、くれぐれも気を付けて。危険と判断したら無茶しないですぐに切り

上げていいからね』

 

「うん。みんな無事に連れて帰るから、安心して待ってて」

 

 指揮官との通信を終えると、双眼鏡をポーチに戻す。

 休憩の指示を出していた3人を呼び戻すと、キャリコは再び古城へ向けて歩みを進めるの

だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・近くで見ると荘厳な佇まいですね」

 

「ええ、とても素晴らしい装いですね。ここが現代であるという事を忘れてしまいそう」

 

 城というのは、住まいであるのと同時に戦火を防ぐための砦としての役割をも備える。

 その定義に沿ったように、古城はあまりにも巨大で堅牢。

 それでいて、この暗がりでも分かるほどの威厳と気品を纏っている。

 芸術的な感性にはあまり自信のないキャリコでも、知らずに気圧されてしまっているほどだ。きっと、この城をわざわざ建設した人間は、よほどの物好きなのだろう。

 月明りを背負い、青白い輪郭を浮き上がらせる古城の姿を目の前に、キャリコはコンテンダーとステアーの横で言葉を忘れて呆と佇み、見上げている。

 

「ふ~ん、フェイクなのかと思ったら、ちゃんと本物の石で組み上げた外壁なのね。・・・でも、自然の石ではないのかしら? 何かを混ぜてる人口の石?」

 

 そんな3人を置いて、ワルサーは城の外壁を眺めながら、すでに調査を開始している。

 その姿を目の当たりにして我に返るキャリコ。

 こういう時に隊長が真っ先に行動しなくてどうするというのか。

 

「2人とも、いつまでもお城を眺めていないで調査を始めるよ」

 

「まあまあ、もう少しこの景色を堪能してもいいじゃないですか。これだけのモノを実際に目の当たりにできるなんて、とても貴重な事ですよ?」

 

「そうですよ。皆々様、今夜は私のお城でどうかごゆっくりとおくつろぎくださいませ」

 

 あまりこういう冗談は言わない性格なのかと思いきや、ステアーは、まるでこの城の城主であるかのようにスカートの裾をつまんで優雅にお辞儀をして見せる。

 ステアーの服装とか静かな雰囲気が見事に噛み合って、本当にここの城主のように見えてしまうのが悔しいところである。

 

「今のところ危険な要素はないんだから、ちょっとくらい自由にさせてもいいんじゃない?」

 

「もう、ワルサーまでそんな事を」

 

「大体、初めての隊長だからって気負いすぎなのよアンタは。今回なんて非戦闘任務なんだから、もう少し気を楽にして、落ち着いて構えてればいいじゃない」

 

 そう指摘されると、思い当たる節がここまでの道中で何度かあった事に気付いて何も言い返せない。

 ワルサーに言われたことは、任務前のミーティングで指揮官から言われていた事にほとんど相違ない事だった。

 

「・・・・・・そうだね。ありがとう、ワルサー。私の事を気にしてくれて」

 

「別に、アンタの為に助言してあげたわけじゃないし。お堅い隊長だと私もやりづらいから、私がやりやすいようになるように誘導しただけだし。って、なんで笑ってんのよ!?」

 

「ふふ、こっちの事だから気にしなくていいよ」

 

 暗がりでも分かるくらい顔を赤くしたワルサーを見ていると、いつまでも笑いが止まりそうにないので視線を逸らす。

 すると、視線を向けた先、エントランスへと上がる階段の石垣に金属のプレートが埋められているのが目についた。

 

「? 何か書いてある。えい・・・アイ・・・ン・・・??」

 

 鈍色に光るプレートには文字のようなものが書かれているが、流暢な筆記体なものだから、

キャリコにはハッキリと読むことができない。

 

「〝アインツベルン城〟ね」

 

 眉をしかめながらプレートと睨めっこしているキャリコの脇から、ワルサーが助け舟を出す。

 

「読めるんだ?」

 

「ん、私の出身地の言葉だから」

 

「へぇ~、アインツベルンってどういう意味なの?」

 

「意味っていうか、城ってそこの城主の名前が付くものじゃない?」

 

 ならば、この城はアインツベルンという人物が建てたということなのだろうか。

 まだ、どこの誰が所有者なのかも分かっていない状況なので、これも指揮官にしっかりと報告しておかなければいけないことである。

 十分に雰囲気を堪能したコンテンダーとステアーが合流したところで、いよいよ城内の捜索へと向かう。

 石造りの階段を上がり、エントランスの扉へ。

 キャリコの身長より遥かに高い両開きのそれは、もはや、扉というより門と言った方が適切とも思えてしまう。

 

「鍵がかかってたらどうします?」

 

「裏口とか窓とか、他に侵入できそうな場所を探す。壊して強行突破っていうのはナシだからね」

 

「そんな事は考えませんよ。ショットの娘達じゃないんですから」

 

 グリフィンがこのまま使うという事を考えると、できればこの建物を破損させたくはない。

 幸運にも、というか、恐らくそうならないことを見越しての事なのだろう、この部隊は4人ともスマートに事を進める性格揃いだ。

 改めて、指揮官の采配に感謝したい気持ちのキャリコである。

 ドアノブに手をかけ、体重をかけつつ押してみる。

 華奢な身体のキャリコではビクともしなそうな豪奢な扉は、けれども、音もたてずにスゥと開いてくれた。

 

「あら? 見た目よりもすんなりと開きましたわ」

 

「この城、建てられてからそれほど経ってないレプリカなんでしょ? 見た目はボロいけど、中身はそれほど劣化していないはずよ」

 

 扉を開いた先は、月明りが遮られている分、外よりも暗く、1メートル先の状況も視認できないような状態である。

 

「全員、お互いの背後をカバーするように固まって付いてきて」

 

 ポケットから取り出したフラッシュライトを構え、まず、キャリコがエントランスに足を踏み入れる。

 銃を構える右手にライトを握る左手を添え、射撃線上を照らすようにして明かりを付ける。

 白色の光がまず映し出したのは巨大な階段。

 エントランスの踊り場へと上がる中央階段なのだろう。真っ赤な絨毯が敷かれ、彫刻の施された手すりに彩られ、まさに、童話にでも出てくるお城の階段そのままの装いである。

 

「見事ですね。外観だけでなく、内装までもこれだけ豪華とは」

 

「レプリカだってのにやりすぎだわ。ホント、これを造った奴は正真正銘の変人ね」

 

「このような場所で指揮官と一緒に過ごしたいものですわ」

 

 フラッシュライトが照らす断片的な映像だけでも、このエントランスが古城の外観となんら遜色ない造りであることが見て取れる。

 生活区域から何十キロも離れたこんな辺鄙な土地で、ただ暮らすためだけの建物にしては手が込みすぎだと思えてしまう。

 まだ、キャリコには人間の感性というものを理解しきれていないだけなのだろうか?

 周囲を確認した3人からクリアの合図を受け、ひとまず安堵の息をつく。

 

「エントランスはクリアっと。それじゃあ、電気が点くか確認してみよう。照明のスイッチがどこか・・・」

 

「スイッチなら、たぶん玄関扉横のあれですわ。私が押してまいります」

 

 玄関まで戻るステアーをフォローするように、3人で行く先を照らす。

 飾り細工が施された壁に埋め込まれたパドルスイッチをステアーが操作するが、カチカチという音が響くだけで周囲の様子に変化はない。

 

「駄目ですね。スイッチの手応えはあるのですが」

 

「こっちのスタンドライトも点かないわ。電気が通っていないみたいね」

 

「う~ん・・・指揮官の話だと、この城まで引かれている電線は生きているみたいだから、城の

配電盤で止まっちゃってるのかな?」

 

 指揮官の下調べで、ライフラインが通っている事は確認済みである。

 滞在に必要な設備がすでに整っていたというのも、グリフィンがここを欲しがる理由のひとつなのだろう。

 まあ、それらライフラインは正規に引いているものではなく、盗んで引いているものだという話はキャリコ達が気にすることではない。

 

「指揮官に状況の報告をしておかないと」

 

 通信機のコールボタンを押すが、耳には潮騒のようなノイズが届くばかりで正常に繋がってくれる様子はない。

 不安を煽るような耳障りな音に、キャリコは思わず顔をしかめる。

 

「繋がらないのですか? ・・・あら、私のもですわね」

 

「私のもですね。もしかして、城内にジャミングが施されているのでしょうか?」

 

「石造りの城だから、電波との折り合いが悪いのかもしれないわね。一旦、外に出て試してみなさいよ」

 

 ワルサーの提案にのり、外での通信を試してみる。

 扉を開け、外に一歩踏み出ただけで通信機のノイズが弱まった。

 これが意図的な電波干渉なのか、それとも城の構造上の副産物なのかは分からないが、これからの調査が必要になる事だろう。

 2歩、3歩、と進み、玄関屋根から出たところでいつものコール音が鳴ってくれた。

 

『こちらHQ。X-ray小隊どうぞ』

 

 また指揮官と話ができる、と少しドキドキしていたものだから、通信機越しに女性の声、副官であるUMP45の声を聞いて心底ガッカリしてしまうキャリコ。

 

『あ、いま私が出たもんだから露骨にがっかりしたでしょ?』

 

「そりゃあガッカリもするわよ。誰だって、指揮官と話できるのが嬉しいに決まってるもの」

 

 もう、バレてしまっているのは下手に取り繕ったりしないキャリコなのである。

 

『指揮官は休憩中よ。報告は私が受け付けるわ』

 

「目標に侵入してみたのだけれど、電源が落ちているみたいで電気が点かないの。城内を探索する前に、まずは電源の制御盤を見に行ってみるわ」

 

『電源の制御盤・・・か。場所は分かりそう?』

 

「ん~・・・地下にありそう、ってくらいしかアタリは付けてない」

 

『それじゃあ、城の東側の地下を捜索してみて。地形図を見ると、電線は東側の地下を通って

城まで伸びてるみたいだから』

 

 ガサガサ、と45の声に混じって紙の擦れる音が聞こえる。

 しっかりとX-ray小隊のサポートができるように、ありったけの資料を用意してくれているのだろう。

 それでも、城の詳細は依然として不明なのだから、全くもって謎の建物である。

 

「あと、城の名前はアインツベルンっていうみたい。城主の名前だとしたら、建てたヤツを洗い出す手掛かりになるんじゃないかな?」

 

『了解。こっちも引き続き城の素性調査を続けてるから、何か分かったら教えるわ』

 

「うん、城の中は電波状況が悪いみたいだから、定期的に外に出るようにするね」

 

 連絡を終えて再び城内に戻る。

 エントランスは依然として真っ暗だが、そんな中でもフラッシュライトの明かりを囲んで3人はくつろいでいる様子。

 未知の場所だというのに、その順応力の速さは流石といったところである。

 

「指揮官はまだ起きていましたか?」

 

「休憩中みたいでUMP45が対応してくれたわ。城内の探索を始める前に、まず電源の様子を見に行く。制御盤は城の東側地下にありそうっていう話だから、迷子にならないよう慎重に進みましょう」

 

「迷子とか・・・私たちは子供じゃないっての」

 

「ふふ、きっと、キャリコなりのユーモアのつもりですわ」

 

 4人で陣形を組み直し、先を照らしながらエントランスを進んでいく。

 エントランスと東ウィングを繋ぐ扉を開くと、その先に延びるのは長い廊下。

 まるで、どこまでも延々に続いているのでは、と錯覚してしまうほどの長さである。

 窓から差し込む月明りのおかげでエントランスより見通しが良く、ライトを当てなくても、周囲の様子が視認できるのは救いか。

 

「・・・クリア。ひとまず、廊下の突き当りまで進んでみようか」

 

 この廊下にも敵影、戦闘の痕が無い事を確認。一面に敷かれた、やたらと踏み心地の良い絨毯の上をゆっくりと進んでいく。

 エントランスでもそうだったが、敵なんかよりも、いたるとこに置かれている調度品に気を配った方がいいのではないかという気もしてきてしまう。

 キャリコには詳しい事は分からないが、きっと、これらは戦術人形の給料何か月分にも相当するような値段なのだろう。

 

(・・・もう長いあいだ城主は留守みたいなのに、調度品は手付かず。盗んで売り飛ばすような人間は来なかったのかな?)

 

 ふと、根本的な疑問が浮かび上がるキャリコだが・・・

 

「それにしても、45が応答するとは。もしかしたら、悪い事をしてしまったかもしれませんね」

 

 それよりも、もっと興味深い事をコンテンダーが呟いたものだから、思考の中から即退場させてしまう。

 

「悪い事って、私たちが? 何で?」

 

「だって、日付も変わったこんな真夜中ですよ? そんな時間に、誓約を交わした2人が同じ部屋にいるんですよ? そこで何をするか、という選択肢はあまり多くないと思います」

 

 コンテンダーが何を言いたいのか分かり、途端に顔がオーバーヒートでもしたかのようにアツアツになってしまう。

 まさか、生真面目な彼女からそんな話題が飛び出すというのは驚きである。

 いや、まあ、現実的というか、論理的な性格の彼女だからこそ、そういう考えを導けたのかもしれないが。

 

「え? なに? それってもしかして・・・そういうこと!?」

 

「キャリコからの連絡に対応していた45はベッドの上で指揮官に跨ったままで・・・。45の声に何か異変は感じませんでしたか?」

 

 そういわれると、いつもよりも息遣いが荒かったような、声が時折上ずっていたような、そんな気もしてきてしまう。

 もう、キャリコの思考はあの2人のピンク色な妄想がグルグル回って、全く使い物にならない

状態である。

 

「で、でもでも! 指揮官は真面目な人だから、私たちが任務に就いている間にそんな事をする

わけ」

 

「確かに、指揮官は考えないでしょうね。しかし、相手はあの45です。あの手この手で迫られれば、いくら指揮官とはいえ篭絡せざるを得ないでしょう」

 

 もう、キャリコには意見を差し込む隙も無いほどの正論。

 結局、あの時2人はキャリコに気付かれないようにシテいた、という答えでファイナルアンサーとするしかないのだろうか?

 

「コラコラ、そこのバカ2人は何をバカな話してんのよ。ヤル気あるわけ?」

 

 そんな女子トークにナイフを差し込むのはワルサー。

 暗がりの中でも分かるくらいに呆れた表情だが、なんとなく顔が赤らんでいるようにも見える。

 

「アナタがどうにも落ち着きがないように見えたので、冗談でも言えば気が紛れるかな、と思いまして。少しは落ち着きました?」

 

「わ、私のどこが落ち着きないっていうのよ!? 今だってこうしていつも通り普段通り、ひぃ!?」

 

 突然、ワルサーが引き攣ったような声を小さく漏らして会話を止めてしまう。

 視線の行先からして、どうやら床に映ったキャリコの陰に驚いていたようだ。

 身体が動くたびにゆらゆらと揺らめくツインテールの影は、なるほど、見ようによっては奇妙に見えるのかもしれない。

 

「ワルサー、もしかして怖いの? こういうの苦手なら言ってくれていいのに」

 

「そそそそ、そんなわけないじゃない! これくらいで怖がっててグリフィンの仕事なんか務まるかってのよ!」

 

 明らかに挙動不審だし、ワルサー特有の所謂〝素直じゃない〟言いっぷりだし。この空間に

怖がっているのがみえみえである。

 もちろん、どこかに潜んでいる敵にではなく、もっと非科学的なものに対して、だ。

 

「無理して隠すことないでしょう? 少しくらい弱みを見せた方が指揮官からの好感度も上がってくれるはずですよ。ステアーもそう思いませんか? ・・・・・・ステアー?」

 

 しばらく話に入ってこなかったステアーに話を振るが、応えが返ってこない。

 それどころか、最後尾をついてきていたはずの彼女の姿が、いつの間にか消えている事に気が付く。

 

「え? ステアーったらどこに行っちゃったの? みんなで一緒にこの廊下を進んでいたよね?」

 

「それは私も確認しています。勝手に他の場所を探索に行くような娘ではありませんし、敵に襲撃されたら私達の誰かが気付くはずです。そうなると、認めたくはありませんが、これはもしや」

 

「そんなわけないでしょ!? オバケなんてこの世に居ないの! オバケなんて怖くないんだ

もん!」

 

 自慢のライフルを胸の前でギュッと抱いて、しどろもどろしているワルサーの様子は普段のドライな彼女とは全く正反対で、ちょっとだけ愛らしさを感じてしまう。

 ・・・などと、冷静にワルサーの挙動を観察しているだけの余裕がキャリコとコンテンダーにはあった、という時点で全てはお察しなのだ。

 

「ええ、もちろん。私は怖い事なんて何も致しませんわ」

 

 暗闇に溶けるような黒いドレスと持ち前の静けさで気配を消し、まんまとワルサーの背後に潜んでいたステアーがワルサーの耳元で囁く。

 その瞬間だった。

 

「ふにゃああぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁ~~~~~!」

 

 とてつもない音量の大絶叫が廊下の空気をシェイクする。

 それはもう、新手の戦術兵器なのかと思うほどの強烈さで、陶器製の調度品なんかが割れても

おかしくないレベルだ。

 咄嗟に耳を塞いだキャリコとコンテンダーは無事だったが、ステアーは近接距離だったために

直撃を受け、少し怯んでしまっている。

 

「ふざけんじゃないわよバカ! バカ! バカ! バカ! 馬鹿ステア~~!」

 

 一通り叫び終え、事の次第を理解すると、ワルサーは背後のステアーに殴り掛かる。

 殴り掛かるとはいえ、ぽかぽかと可愛らしい音が聞こえてきそうなくらい力無いものだ。

 きっと、声と一緒に気力も身体から抜け出てしまったのだろう。

 

「ふふふ、怯えているワルサーを見ていたら、ついイタズラ心に火が付いてしまいました。ゴメンなさいね」

 

 優しく微笑みながらワルサーを宥めるその様子は、まるで子供をあやしているかのよう。

 基地では見かけた記憶もないワルサーとステアーのやり取りを前にして、自然とキャリコの表情も緩む。

 

「なかなかどうして、良いチームのようですね。今まで、ほとんど話をする機会もなかった4人とは思えないくらいです」

 

 コンテンダーの言う通り、この4人はお互いの存在と戦績を知っている程度の間柄で、同じ任務に就くのも初めての者同士だった。

 それも、キャリコが隊長を務めるうえで非常に気がかりな事の1つだったのだが、今ではもう

そんな不安に感じていた事すらくだらなく思えてしまう。

 

「そうだね。私、ワルサーはもっと怖い感じの娘だと思ってたんだけど、実は可愛い娘だったからちょっとビックリした」

 

「誰がカワイイ娘だってのよ! がるるるるる~」

 

「ほらほら、キャリコに噛み付いてはいけません。ステイですわ、ワルサー」

 

 いつのまにかイジられキャラになってしまったワルサーを囲み、姦しい笑い声が廊下に

響き渡る。

 ついさっきまではどこまでも続いているかのように思えた廊下だったが、そんな明るい雰囲気で進んでいけば終点までは本当にあっという間だ。

 

「もう突き当りか。んで・・・この扉っぽい感じするね」

 

「ええ、明らかに作りが違いますからね」

 

 廊下に並んでいたドアはいずれも細かな装飾が施されたものだったが、このドアは平たい木の板にドアノブを付けただけ、といった装いでサイズも少しだけ小さい。

 これほどに凝って再現されている城である。同じ客室に通じているのに、このドアだけ手抜きをしたという可能性は低いだろう。

 キャリコがドアノブに手をかけて押すと、ギィ、という軋み音をあげながらドアが開いた。

 その先には、フロア下へと降りる階段が伸びている。

 ライトを向けても終着点が見えない暗闇の下り階段を前に、一同のさっきまでの明るい雰囲気はどこかに吹っ飛んで行ってしまった。

 

「だ、誰が先頭を行く?」

 

 キャリコはコンテンダーを見て、コンテンダーはワルサーを見て、ワルサーはステアーを見て、ステアーはキャリコを見る。

 誰だって、こんな末恐ろしい中に先陣きって挑むのはイヤに決まっているのだ。

 

「さっきの罪滅ぼし。先に行きなさいよ、ステアー」

 

「・・・はぁ~、致し方ありませんね」

 

 さすがにさっきのは悪かったと思っていたのだろう、ステアーは溜め息をつきこそすれ、大人しく先頭につく。

 1人が通るので一杯な狭さなので、ステアーの後ろにコンテンダー、ワルサーと続き、最後尾をキャリコが務める。

 カビ臭い湿った空気にコンクリート剥き出しの壁。1階の華やかさがウソのような階段を、全員無言のまま降りていく。

 そうして辿り着いた先は机やラックが並べられた部屋。おそらく、倉庫として扱うような部屋なのだろうが、生活用品のようなものは何一つ見当たらない。

 

「この部屋から更に別の部屋に繋がっているようですわ。どちらに進みます?」

 

「階段から見て正面と右の2方向か。ん~・・・」

 

 明かりも差し込まない地下室である。当然、この部屋から繋がっている先はライトを当てても全く様子が分からない漆黒。怖い思いをしながら進むのは勘弁なので、できれば一発で配電盤の部屋を当てたいところである。

 

「? そこの床、何かの痕が付いています。誰も踏み入れていない位置ですよね?」

 

 キャリコが思案している最中、何かを見つけたコンテンダーが床に屈みこんだ。

 

「何があったのですか?」

 

「これ、何かを引きずったような跡ですね。・・・正面の部屋に続いているようです」

 

 コンテンダーの背後から覗いてみると、確かに、床にうっすらと被っていた埃が除けられた跡が付いている。

 まるで、筆でなぞったようなそれは、階段正面から繋がっている部屋へと伸びている。

 

「考えていても仕方ありませんわ。これも何かのお導きと思って、行くと致しましょう」

 

 もう完全に割り切ってしまったのか、恐怖の欠片すらも見せずにステアーはさっさと進んで

行ってしまう。

 本当は行きたくないと思いつつも、それに引っ張られるように続く3人。

 

「ちょっと、そんなにくっついたら歩きづらいよ、ワルサー」

 

「わ、私じゃないわよ! コンテンダーが後ろから押すんだもの」

 

「よくもまあ、平気な顔して私に罪を擦り付けますね。この事、基地の娘達に言いふらしたっていいんですよ?」

 

 醜い言い争いを繰り広げながら、隣の部屋へと移動する。

 ライトを向ければ、そこには金属製の箱のようなものが立ち並んでいるのが確認できる。

 すぐ後ろの壁に這っている何本もの配線が箱に向かって伸びているところからみて、どうやら

この場所がアタリのようだ。

 

「それが配電盤みたいだね。壊れたりはしてなさそう?」

 

「ええ、設備に損傷は見受けられません。ただ・・・こちらの方が私は気がかりですわ」

 

 配電盤の横に立つステアーは視線を足元に向けている。

 その視線の先にキャリコも視線とライトを向けてみる。

 そこには、黒い衣服に身を包んだ人型が転がっていた。

 

「ひぃっ!!?」

 

 引き攣った声と共に服をギュッと握られる。服がちぎれるんじゃないかというくらいの力だったので、体まで巻き込まれて少し痛かったが、もういちいちツッコむのも面倒だったので、この事は不問としておくキャリコである。

 

「それって・・・もしかして鉄血の人形?」

 

「ええ。それも、エリート人形のエクスキューショナーですね」

 

 うつぶせに倒れている人形の頭をステアーが足で転がすと、見知った顔が現れる。

 完全にシステムダウンしているのだろう、足蹴にされているというのに鉄血人形はピクリとも

動く気配がない。

 

「大方、城に迷い込んだクズ鉄血が電気付けようとしてここまで来て、寸でのところでバッテリー切れ、ってところでしょうね。ふん、ザマぁないわね」

 

 さっきまでのビビり具合はどこへやら。黒い人影が鉄血だと判明するや、ワルサーはキャリコの真正面に踏み出て偉そうに言い放つ。

 ここでステアーがさっきのをもう一回やってくんないかなぁ、と、割と本気でキャリコは思う。

 

「さっさと電気を付けて調査に戻りましょうよ」

 

「・・・そうですね。すでにこと切れた鉄血に気を向けても仕方ありません。メインのブレーカーはこの配電盤でしょうか?」

 

 ステアーが配電盤の中を覗き込む。

 しばらくして、バチン、と一層大きな音が響いた瞬間、室内の照明が一斉に息を吹き返した。

 天井に小さな白熱球が数個ぶら下がっているだけの弱い照明だが、それでも、暗闇に長く置かれていたキャリコの眼には少し痛いくらいだ。

 

「今のがメインブレーカーのようですので、これで城内に電気が通った筈です」

 

「あ~あ、ようやく見通しが良くなったわね。はい、調査再開~」

 

 肩の荷が下りたかのような軽快さで、スタスタと進んで行ってしまうワルサー。それにステアーも続く。

 

「キャリコ、ちょっといいですか?」

 

 2人を追おうとしていたキャリコをコンテンダーが呼び止める。

 彼女は先ほどからずっと屈みこんで、エクスキューショナーの身体を見ていたのだった。

 

「どうしたの?」

 

「ワルサーをビビらせてしまうのもはばかられるので、隊長のあなたには報告しておこうと思いまして」

 

 手招きするコンテンダーに従い、エクスキューショナーの傍にしゃがみ込む。

 

「このキズ。あなたはどう考えます?」

 

 うつ伏せに転がっているエクスキューショナーの身体をコンテンダーが転がす。

 身体の正面、胸や腹部、腕に付いているおびただしい数のキズを見て、キャリコは思わず息を呑んだ。

 

「これ・・・切創? すごい数だね」

 

「ええ。腕や胸に付いた多数の細かい切創は、比較的小さい刃物で付けられたように見えます。私が気になるのは腹部と右わき腹の切創、それと左手をバッサリ切り落とされている点ですね。人形の、それも鉄血エリートクラスの身体をこれだけ綺麗に斬り裂くなんて。一体、誰にやられたのでしょうか?」

 

 グリフィン所属の人形は基本的に銃器をスティグマとして設定される。もし、対グリフィンで

負傷したとすれば、それは弾痕になるはずだ。近接戦闘でナイフを用いることもあるだろうが、

それだって腹部を大きく切り裂けるような代物ではない。

 

「鉄血エリートの中にはブレードを装備してる奴もいるでしょ? 何かの理由で仲間割れになって、負傷しながらこの城に迷い込んだ。それからは、ワルサーの推測と同じような流れ?」

 

「筋は通っているように思えますね。けれど、ワルサーが言うような、城に迷い込んで、ここまで這ってきて配電盤に手が届くまであと少し、というところで力尽きてしまうなんていうドラマティックな事がこの場で起こるのでしょうか? 可能性がゼロとは言いませんが、低いものだと

いうのはキャリコも分かるでしょう?」

 

 言われてみればそうだと思ったので、コンテンダーの言葉に素直に頷く。

 であれば、当時のエクスキューショナーの行動はどうだったのか? キャリコは自分なりに少し考えてみる。

 理論派のコンテンダーに付き合って色々と考えるのも、ちょっとだけ楽しく思えてくる。

 

「・・・・・・その逆? エクスキューショナーは電源を入れたんじゃなくて、落としてから力尽きた?」

 

「そちらの方が可能性は高そうですよね」

 

「でも、なんで? わざわざ電源を落として何がしたかったんだろう?」

 

「いかんせん情報が少なすぎますから、推理を広げるのはここまでにしておきましょうか。何があるにしろ、電源を入れなければ調査もままならないのです。私たちは最悪の状況を念頭において先に進みましょう」

 

 コンテンダーの言う〝最悪の状況〟をキャリコはすぐに想像することが出来た。

 この城内にエクスキューショナーを切り刻んだ何かが存在する。そして、それから身を守るためにエクスキューショナーは電源を落とした。

 あまりにもネガティブな考えかもしれないが、考えておくに越したことはない。

 戦場ではいつだって、これくらい臆病な者こそ生き残れるのだから。

 

「お2人とも、何か問題でもありましたか~?」

 

 なかなか追いかけてこないキャリコ達を心配したのだろう、隣の部屋からステアーが問いかけてくる。

 

「なんでもないよ~。すぐに行くから~」

 

「早くしてくだいね~。ワルサーが心配しすぎて今にも泣きだしそうですので~」

 

「だから、なんでアンタはそうやって私を弄るわけ!?」

 

 仲良さげに言い合う2人と合流し、一旦、エントランスへと引き返す。

 電気が復旧し、照明が一斉に灯された城内は、まさに絢爛豪華という言葉そのままの装いで、

ステアーとワルサーは興味深げな眼差しを向けている。

 最大限の注意を、とコンテンダーと約束したキャリコも、そのことを忘れて見入ってしまいそうなほどに美麗な古城。

 甘い香りと華麗な彩で獲物を誘い寄せ、捕食する植物が地球上に存在したという話をつい連想してしまう。今まさに、自分たちはその捕食者の口の中なのだろうか? と考え、キャリコは改めて気を引き締め直した。

 

「じゃあ、これから本格的な捜索を始めるわけなんだけど」

 

 エントランスに戻り、異常が無い事を確認したところでようやく任務の遂行にあたる。

 

「城はウィングが東西に延びていて、その背中、崖との間に中庭が広がっている。ツーマンセルで東と西をそれぞれ捜索、終わり次第中庭に降りてくる、っていうのが効率がいいかなって思うんだ。みんなはどう思うかな?」

 

「ん~、いいんじゃない? それなら捜索も早く終わりそうだし」

 

「ええ、私も良い考えだと思います。賛成ですわ」

 

「私も意義はありませんよ」

 

 3人共にキャリコの意見に賛成してくれる。

 なんだか、今回の任務でようやく隊長らしいことができた気がして、ちょっとだけ嬉しい

キャリコである。

 

「チーム分けは? コインでも投げて裏表で決める?」

 

「いやいや、さすがにそんな雑な決め方はやめようよ」

 

 案外に雑な提案を繰り出すワルサーに苦笑いを返す。事前に聞いていた、クールで知的で冷徹な彼女のイメージが、キャリコの中で音をたてて崩壊を始めている真っただ中である。

 

「戦力を考えて、私とコンテンダー、ワルサーとステアーっていう組み合わせにしようかなって

思う」

 

「え~? ステアーと組みかぁ~」

 

「うぅ・・・そんなに嫌そうにするなんて、私は悲しいです。くすん」

 

 裾で涙を拭う仕草をみせるステアーに本気で嫌そうな表情を向けるワルサー。

 キャリコとて、ちょっと面白そうとかいう気持ちでこういう割り振りをしたわけではない。

髙射速で弾幕を展開できるステアーとキャリコ。高威力の一発を撃ち込めるワルサーと

コンテンダー。違う特性の2人を気分でくっつけてみたのである。

 ・・・結局、気分なのでやっぱり私情も入ってたかもしれないが。

 

「イヤ?」

 

「別に・・・いいけどさ」

 

「ふふ、ワルサーったら、素直じゃないですから♪」

 

「あ~もう! うざったいからくっつくなぁ! その代わり、私たちは東ウィングを調べさせてもらうからね!」

 

 1階の様子がある程度わかっている東ウィングの方が調査が楽、という魂胆なのだろう。それくらいは構わないと、ワルサーの申し出に従っておく。

 さっさと進んでいってしまうワルサーに置いて行かれるステアー。

 ちょうどいいタイミングと読んだキャリコが彼女に駆け寄る。

 

「あのね、ステアー。ちょっと話しておきたいことがあるんだ」

 

「? どのようなことでしょう?」

 

 地下室でのエクスキューショナーの傷の件をステアーに簡潔に伝える。

 

「そのような事があったのですね。承りましたわ。ワルサーにも言っておいた方が良いのでしょうか?」

 

「彼女は少々怖がりなところがありますから、伏せておいた方が冷静でいられるかと思いまして。今後はステアーの判断に任せますよ」

 

「なるほど。彼女はアドリブに強い娘のようですから、私も出来る限り伏せるようにしておきますわ」

 

 ワルサーに対してはやたらと砕けた態度であるが、流石はアサルトのエース人形。話が早くてキャリコもコンテンダーも大助かりである。

 

「なにやってんのよ、ステアー! ヤル気あんの~!?」

 

「お待ち下さ~い。仲良くお手を繋いで参りましょ~」

 

「だから、ヤダって言ってるでしょうが! 阿保ステアー!」

 

 お花マークが浮かんで見えるくらい可愛らしい女の子走りでワルサーに駆け寄るステアーを見ていると、やっぱりちょっと不安がよぎってしまうキャリコである。

 

「さあ、私達も行きましょうか」

 

「うん。頼りにしてるからね、コンテンダー」

 

 西ウィングへ続く扉を開けば、先ほど通った東ウィングと鏡写しのような廊下が伸びている。

 小さく息を吸い込んで気分を切り替え、キャリコは全神経を研ぎ澄ませると、未知の廊下へと

踏み込んだ。

 




まだFate感があまり無くて、拍子抜けした方もいらっしゃいますでしょう。
今後、大体こんな感じです。自分の腕前ではこれくらいが限界なのです・・・

タイプムーン好きな当方なので、今月の月姫リメイクを楽しみにしつつ考えた作品なわけですが、なんでこのメンバーを選出したのか、というのは、きっと、Fate好きな方は分かったのではないでしょうか?

次回より本番に突入となりますので、どうかお楽しみに。
以上、弱音御前でした~


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