フェイト・ねむねむオーダー 作:ねむこ
アナスタシア欲しさにガチャ爆死
貯めた石は全て溶け
何故か不夜キャス現れり
ねむこ
「こんにちは、花のお姉さん」
いつもと同じく返事はない。それでも構わず、ナーサリー・ライムは準備してあった椅子に座る。
眠り続けるこのカルデア職員――――マスターではあるが、わたしのマスターではない――――のために、いつでもベッド付近に椅子が準備されている。鍵が開いている日中に入れ替わりで誰かがやって来ては、彼女に話しかけていくのよ。
今はわたしだけ。エレシュキガルは気を利かせて部屋を出て行ったわ。私のやりたいことを知っているし、何より彼女は優しいの。
「今日はこの絵本を読むわ。きいててね!」
手にした絵本を掲げて彼女に見せる。彼女の故郷では有名な昔話。言葉が分からないと言ったわたしに、一つ一つ手ほどきをして、読み方や意味を教えてくれた。
「えっと…『むかしむかし、あるところに――――』」
ゆっくりと、たどたどしくも読んでいく。お姉さんが眠っている間に、少しでもうまく読めるようになりたいわ。
――――あ、ここ、思い出せない…
絵本の後ろに挟んでいた、彼女直筆のメモを広げる。彼女の母語と、わたしの母語もといカルデア公用語が並ぶメモは何度も書き足しをしたのでごちゃごちゃだが、それでも分かりやすいのだから不思議。
「『ねむりからさめなくなってしまったおうじさまのために、おひめさまはひっしにくすりをさがします』」
続きを読んでいく。発音が難しい。彼女の母語を解するサーヴァントたちに発音を度々教えてもらってはいるが、口の動きがちょっぴりマネしづらいの。
「『――――やさしいおひめさまのくちづけで、おうじさまはふたたびめをさましました』」
「『そして、おひめさまは、おうじさまといっしょに、しあわせにくらしましたとさ。おしまい』」
全て読めた!やったわ!と一人こっそり喜ぶ。その時。
「むぅ……」
「?!」
もぞ、と彼女が動く。驚いて、静かにその成り行きを見ていれば、彼女は体ごとこちらを向いて軽く身を縮こまらせた。
ナーサリーは静かに椅子から降り、ゆっくり近づく。上掛けからはみ出た腕の向こうに、穏やかな寝息と、心なしか満足そうな表情をした顔が見える。
――――一瞬、起きるのかと思っちゃったわ…
起きたならば喜ばしい。それでも、瞬間を見守る役は彼女を誰よりも心配し、甲斐甲斐しく世話を焼く冥界の女主人であってほしい。
それが物語における最高にハッピーな展開というものだろう。
そして、そのハッピーな世界で、またわたしに絵本を読み聞かせてほしいわ!