「おや、おはようございます。」
「まだ朝まで時間ありますけどね。」
「月見さんと美穂さんだ」「おそようございます」
「あら、座敷童子ちゃん達一緒にいたんですね。」
食堂に向かった月見と美穂は列の最後尾に並ぶ鬼灯達と合流する。食堂のメニューはうどんか蕎麦のみになっており、一部の机にはかなりの量のトッピングが揃えられている。
「今年は自由に取って良いらしいですよ。」
「昨年どんな感じでしたっけ。」
「たしか………
~~~~一年前~~~~
「鬼灯様!届けもんだ!」
「おや、葛さんわざわざ閻魔庁までどうされました?」
「今年は米が豊作過ぎてな、倉庫に収まり切らないから余った分をこうやって各庁に渡してんだ。」
「つまるところ「保存出来ないからお前らでさっさと処理してくれ」ということでいいですか。」
~~~~~~~~~~~
ということがあってセットでおにぎりかいなり寿司がついてましたね。今年はしないそうですが。」
「………そういえばそうだった。」
「え~今年いなり寿司ないんですか……。」
しゅんと耳と尻尾を垂れさせた美穂。それに伴い、いつの間にか美穂の尻尾に抱きついていた座敷童子たちが振り落とされて着地する。
「こらこら、勝手に人の尻尾に抱きついちゃいけませんよ。」
「大丈夫ですよ鬼灯様、時々尻尾のブラッシング手伝ってくれてるのでそのお礼です。」
「美穂さんの尻尾ふかふか」「抱きつくととても気持ちいい」
「この子達、なかなか上手いんです。」
月見がそう言って腰のポーチから櫛を3つ取り出し、一本ずつ座敷童子に渡すと一緒に美穂の尻尾に櫛を通し始めた。
「はい終わり。座敷童子ちゃん達に報酬のミニ煎餅をあげましょう。」
「わぁい」「あまじょっぱい」
しばらく雑談していると鬼灯達の順番が回ってくる。
「私は蕎麦にしますが皆さんはどうされますか。」
「じゃあ…僕はうどんで。」
「私は蕎麦でお願いします。」
「蕎麦がいい」「うどんがいい」
「はい!わっかりました~。」
注文を終え、それぞれが自分の品をもらうとトッピングを取りに例の机に向かう。
「「海老天!卵!」」
「元気ですね。」
「そりゃ今からが妖怪の時間ですからね。あと月見さん、餅で半分埋めないで下さい。どんだけ餅大好きなんだあんた。」
「鬼灯様だって麺大盛な上にトッピングで麺見えてませんよ。」
「……普通にきつね蕎麦にしときましょ。」
トッピングも終わり、何処ど食べようかと席を探していると、先頭を歩いていた鬼灯に声がかかる。
「鬼灯様、こっち空いてるわよ。」
「おやお香さん。それに唐瓜さんに茄子さんも。」
ちょうど全員が座れる場所を確保できていたため、いそいそと席に座る一行だった。
「ありがとうねお香さん。」
「いいのよ美穂さん。人数は多い方がいいでしょ?。」
隣同士で仲良く話す女性二人に茄子が質問する。
「あれ?美穂さんとお香姐さんって仲良いの?」
「あら、知らなかったかしら?美穂さん、美容液とか化粧品とかの開発もやってて試作品とかを女獄卒のみんなに配ってるのよ。」
「へぇ~。」
「美容とかに詳しいし、相談したらきっちり解決してくれるから衆合地獄のみんなから頼りにされてるわ。」
会話を聞いた美穂は少し恥ずかしそうに頬をほんのり染めながら油あげをかじっていた。
「なんで化粧品の開発を?」
「むぐ………ほとんど趣味なんですけどね。それが高じて商品にしてるんです。」
「月見さんの餅と同じように閻魔庁のHPから買えますよ。」
美容液「天の狐 (税込)1800円」などがあります。
「なんというか、夫婦揃ってわりと万能ですよね。」
「いえ、ちゃんと出来ないこともありますよ。」
うどんにのせた餅5つを含めほぼほぼ食べ終わっている月見が唐瓜の言葉に反応する。
「薬草関係とか餅とかは自分の持つ権能みたいなもので後押ししてるだけです。」
「権能?」
「「月の兎は月で○○をついている。」というようなイメージのことですよ。」
「月見さんなら「餅つき」と「薬草」、この前話をしたゼウスだったら「雷」みたいな感じですかね。」
その鬼灯の言葉に納得する唐瓜で茄子。
「僕の戦闘技術に関してはまぁ、あちこち出張行った副産物として考えていただけたら………。」
「私も一緒に行ってるんですけど場所によってはいきなり襲いかかってくる所もあるので………。」
自分の分を食べきった二人がげんなりしてる。
「それに僕機械が苦手でして……。」
「へぇ~意外。」
「医療関係以外複雑なものはまともに使えないんです………。」
「そこで医療器具使えるあたり流石ですね。」
うさみみの炎が心なしか弱くなった気がする。
「私の場合は虫が苦手で………。」
「あら、そういえばそうだったわね。」
「蚊とかは大丈夫なんですけど、明確に虫ってわかるものが動いていたら動けなくなっちゃって………。」
こちらも耳と尻尾がしゅんと垂れた。
「お二人ともそこら辺は昔から全く変わってませんよね。」
「うぅ……。」
「ちょっと先に準備してきます………。」
目が死んでる二人が立ち上がるとそのまま器を返却口に返して何処かに行ってしまった。
「なんかスッゲェダメージ受けてたな。」
「本人達にとってはトラウマなんだろ……。」
「さて、もう一時ですか。」
退場していった二人の方を見ていた小鬼組をよそに、三人前はあった蕎麦を食べきった鬼灯は懐中時計を見て何か呟いている。
「「ごちそうさまでした」」
「そうだ、これから明日の新年会のイベントの準備があるんですが座敷童子さんも行かれますか。」
「何するの?」「面白いこと?」
「ええ、面白いものが見れますよ。」
「「やる」」
鬼灯はそれを聞いていた三人にも話題をふってくる。
「お三方も手伝っていただけますか?イベントを特別席で見れますよ。」
「?イベントってなんですか?」
「元旦………いや、正月らしいことですよ。」
ガシュッ ガシュッ
「なぁ唐瓜。」
「なんだ茄子。」
ゴリゴリ ゴリゴリ
「なんで俺たちこんな早朝にきな粉作ってるんだろ。」
「いや知らねぇよ。」
閻魔庁とは違う場所に連れてこられた茄子と唐瓜は鬼灯に言われるがまま大量の大豆を石臼で挽いていた。近くではお香や座敷童子が何かを調理している。他のスタッフもせわしなく動いていた。
「調子はいかがですか。」
「あっ!鬼灯様!」
「………その金魚草なんですか?」
「あぁ、具材の一つですよ。今から捌きます。」
そう言って鬼灯は近くの調理台に1mほどの金魚草を置いて解体し始めた。
「小鬼ちゃん達、そっちは終わったかしら?」
「お香姐さん!」
「終わったよ~。」
「じゃあ向こうまで持っていきましょうか。」
大量のきな粉や小豆を調理し終えた三人はそのまま火が焚かれている場所まで向かう。
「ねぇねぇお香姐さん、今なにやってるの俺たち。」
「あら?鬼灯様から聞かされてない?」
「え?はい……。」
「そうねぇ……強いてヒントを言うなら月見さん関係ってとこかしら。」
「月見さん関係?」
唐瓜はお香の言葉に疑問符を浮かべていたが、茄子は何かを思い付いたようだ。
「あっ、わかった!餅つきだ!」
「大正解よ。」
「あぁ、だからこんなに餅に合いそうなものばっか………。」
蒸し器の中のもち米の様子を見ている最中、お香が話を続ける。
「このイベントの参加って抽選式なのよ。」
「なんでですか?」
「希望者は沢山いるんだけど全員分はないからって言ってたわ。」
「ただの餅つきに?」
唐瓜からそう言われたお香はくすりと笑う。
「ただの餅つきじゃないからみんな集まるのよ。」
「「?」」
「その餅つきを担当するのが月見さんと美穂さんなんです。」
金魚草の解体が終わったのか鬼灯が座敷童子と共に近づいてくる。
「あのお二人は地獄で働いてますが立派な神獣です。そんな存在がつく餅なんですからご利益があると話題になったんです。実際加護みたいなものもあるみたいですし。」
「だからかなり前に抽選式になったの。」
ほぇ~、といったような表情をした小鬼組だった。
「裏方を担当してくれた方々にも餅が回ってくるのでスタッフになりたがる人も多いんですよ。」
「マジすか!?」
「わ~い、やった~!」
自分は食べれないと思っていた二人は鬼灯の言葉に驚いて喜んだ。その様子を見ていた鬼灯はさらに付け足す。
「それに餅つき自体もとても人気なんですよ。何せあのお二人が全力でやるんで。」
「どんな感じなんですか?」
「とにかく迫力満点ですし幻想的ですよ。」
月見さんは医療目的以外で電子機器を使おうとしたら一時間ごとにフリーズします。スマホも電話ぐらいしか使えません。
美穂さんは小さな物は大丈夫ですが、蠢く虫を見たら月見さんに飛び付いて顔を埋めるかそのまま気絶するか全力で暴れ始めます。