「月見さんEU地獄へ」
「クソッ……こいつと話してると頭がおかしくなりそうだ……。」
「それが目的なので特に問題ないですね。」
「お前もはや外交する気ねーだろ!」
ベルゼブブが激昂して鬼灯に指を突き付ける。が当の本人は涼しい顔で会話を続ける。
「失敬な、
「射ろうとするな!言葉を使え!」
一連のやり取りに疲れたベルゼブブが崩れ落ちる。
「…なんで日本の地獄はお前が補佐官で納得してるんだ……。」
「さぁなんででしょうかね。お二人はどう思います?」
そう言って鬼灯が雑に月見と美穂に話を振ってくる。
「……あなた以上に補佐官が務まる者がいないからでは?」
「人望が圧倒的過ぎますし。」
「そんなものですかね。」
鬼灯は首をひねっている。すると先程から黙っていたサタンが話に入ってくる。
「………ところでさっきから気になっていたんだがそいつらはなんだ?」
「日本地獄で働いてもらってる私の部下みたいな方々ですよ。偶然近くに用事があったらしくてついてきてもらいました。」
「はじめましてサタン王、日本地獄で医師兼薬剤師をしている月見と申します。」
「月見の補佐の美穂と申します。」
鬼灯の紹介に合わせて自己紹介する二人。その様子を見てベルゼブブはふん、と鼻を鳴らす。
「なんだ、案外まともそうな奴も居るじゃないか。」
「心外ですね。それでは私がまともでは無いと言っているようなものじゃないですか。」
「そう言ってんだよ!」
「まぁ自覚してますけど。」
「お前ホントぶっ飛ばすぞ!?」
のらりくらりとしている鬼灯の態度にベルゼブブがキレる。が、そこでいつの間にか机でのんびりしているリリスが会話に入ってくる。
「アタシはそういうのも悪く無いと思うけど?」
「リリス!」
「個性的で良いじゃない、鬼灯様のそういうとこ好きよ。もちろんアナタも。だから仲良くしてね?」
リリスは笑いながら話しかけて来るがベルゼブブはあまりいい顔をしていない。
「あのな~リリス、これは国の問題で………。」
「国の問題に口は挟まないけど貴方が怪我したりしたらイヤッ」
「何ィ~~可愛い奴め。」
一瞬で顔が緩んだベルゼブブだった。
「なるほど、彼女がここの黒幕ですか。」
「そうですよ美穂さん。」
ひとしきりやりたい事が終わった鬼灯は話を始める。
「そもそも私も別に喧嘩売りにきたわけじゃないんですよ。」
「イヤ売ってるだろ。」
「ところで遅れましたが親善の品を持って来たんです。月見さん美穂さん、手伝って下さい。」
「一通り俺を痛め付けて満足してから外交思い出してんだろお前。」
少し待つと鬼灯が月見と共に大量の袋や箱を持ってくる。
「大体俺は土産何かで懐柔されんぞ?」
「まぁそう言わずに是非飾って下さい。」
そう言って二人は中身を取り出した。内容は閻魔庁のレプリカ(温度計付き)、こけし、木彫り野干、市松人形、名字ストラップ等である。
「日本らしいお土産選ぶのに苦労しましたよ。」
「いつの間にこんなものを?」
「いつか渡すために事前に用意してました。」
「おまっ…「お土産でもらったけど置き場に困るラインナップ」だろこれ!」
ベルゼブブにそう言われた鬼灯はため息をつきながら向き直る。
「そうですよこんなものでもお土産が無ければ目上の方にいじめられます。どう思いますこの制度?」
「僕には餅という万能土産があるので問題無いです。」
「そういえばそうでしたね。」
月見さん作の餅は高級品です。
「そんなのどうでもいいわ!ドブに捨てろそんな制度!」
「あっベルゼブブさん一応僕からの和菓子です。」
「へ?あぁどうも……。」
いきなり月見からまともそうな菓子をもらったベルゼブブがうろたえている。どうやら鬼灯の対応に慣れすぎて純粋な善意に違和感があるようだ。
「サタン王とリリスさんもどうぞ。」
「あら、ありがとね。いただくわ。」
「……こいつホントにあの鬼の部下か?」
サタンとリリスにも餅菓子を渡す月見。リリスは笑って受け取っていたがサタンは呆然としている。
「いつの間にそんなものを?」
「よそ行きの時は10個ぐらい用意してるんです。」
「最終的に余った物があなたのおやつになるんですね。」
「なぜ分かったんですか。」
月見さんは餅系統が大好きです。
「鬼灯様ー、これどうしますー?」
「そのまま持って来てください。」
「はーい。」
鬼灯に呼ばれた美穂が何かを引きずってくる。見たところ巨大な植物でなぜか蠢いている。
「こちら植物園で購入した巨大ハエトリソウです。」
「まだ攻める気かお前!?」
「イヤ、ホント心の底の底から折っておきたいので。」
「だったら虫除けスプレーの方が良かったんじゃないですか?」
「怖いんだよ!あとその女なんなんだ!?」
ベルゼブブがハエトリソウにロックオンされて必死に抵抗している。それを無視して鬼灯はサタンの方に向き直り懐から巻物を取り出す。
「最後にサタン王…こちらは大王からの親書です。無難なことしか書かれてないので適当に読んで下さい。」
「適当でいいの?」
「そしてここからは私個人の意見です。」
そう言って鬼灯は顔を上げてサタンを睨み付ける。
「私は元来合理主義ですがナメた態度をとられるとどうしても呵責したくなります。相手が国王だろうが関係なく金魚草のエサにします。次ナメたマネをしたくなったら私個人に果たし状をお送り下さい。」
「Oh………サムライ………。」
「鬼灯様?さすがにそれは………。」
「ほら見ろお前の部下も引いてるぞ!」
「どうしましたか月見さん。」
「もったいないのでもしそうなった場合はサタン王の血はとっといてもらっていいですか?」
「何言ってんのお前!?」
「だって堕天使の血なんてほとんど手に入らないでしょう?薬に使えそうなレア素材というやつです。」
「チクショウ!一瞬でもあいつの部下がまともだと思った自分がバカだった!」
「コワイ………日本人コワイ……。」
「もれなく
死者蘇生の薬の原料の一つはメデューサの血です。
「もう月見、あんまり物騒なこと言っちゃダメだよ?」
「冗談だよ……………半分ぐらい。」
「ならよし!」
「イヤ止めろよ!」
美穂は月見の声しか聞こえてないのかベルゼブブをガン無視している。
「まぁいいです、そろそろお暇します。行きますよ二人共。」
「了解です。」
「分かりました「ねぇ美穂。」?どうしましたかリリスさん。」
「日本に帰るんだったらこれ妲己に届けてもらえないかしら?」
そう言ってリリスは一つの紙袋を渡して来る。受け取った美穂が中身を見てみると黒い箱が入っていた。
「これは?」
「今度出る新作の化粧品よ。貴女にも1セットあげちゃうわ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「あ、あとこれ私の連絡先ね。」
「わざわざありがとうございます。今度オリジナルの美容液とか送りますね。」
女性陣が一通り話し終わったあと、鬼灯がサタン達にいい放つ。
「では私たちはこれで。」
「「お邪魔しました。」」
「またきてね~。」
「あ、もしもしきぃちゃん?今リリスさんからきぃちゃん宛に化粧品預かったから今から転送するね~。」
美穂が電話で会話している。手に持っていた荷物は何か呪文が書かれたお札と共に燃えて消えていった。
『美穂姉さんリリスと会ったの?』
「うん!美容品関係の話してたら仲良くなっちゃった。」
『あらそう、まぁ気が合いそうとは思ってたけど。』
「あはは…今から魔女の谷行くんだけどお土産何がいい?」
『……何か私に似合いそうなアクセサリー。なければ面白そうな毒とかでいいわ。』
「それはまた難しいものを…きぃちゃんかわいいからなぁ」
『…………毒の方を月見兄さんに見繕ってもらえば良いじゃない。』
電話から聞こえる妲己の声は少し嬉しそうだった。
「あれ?なんで月見と一緒に居るってわかったの?」
『美穂姉さんが一人で外国とか行くはずないでしょ?』
「エヘヘ、ばれてる…。」
美穂が恥ずかしそうに頭を掻く。すると電話から何かが燃える音が聞こえてきた
「あ、そっち届いた?」
『ちょっと待ってて………ええ、ちゃんと来たわよ。』
「なら良かった。じゃあそろそろ切るね~。」
『お土産よろしく~。』
訪問日記一、二頁目は原作第78話を参考にして書きました。
月見さんはわりと鈍感なため本人の前でも毒を吐いちゃいます。
次回予告
「毒殺でもされるんですか?」