閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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とてもかんたんなあらすじ
「お土産選び」


集会日記一頁目

閻魔庁の廊下で月見が誰かと話しながら歩いている。

 

「それにしてもお久しぶりですね。」

「そういうもんか?毎年会ってるからこないだぶりぐらいの感覚だぞ。」

「そうなんですか?」

「伊達にお主より長生きしてないぞ。」

 

そう言って月見の隣を歩いていた月の髪飾りを着けた男性が笑いながら月見の頭をガシガシと乱暴に撫で回す。月見はそれに逆らわずおぅおぅおぅ、と声を漏らしながらされるがままになっている。

 

「それじゃ、ここに来たついでに鬼灯殿に挨拶してくる。今どこにいるかわかるか?」

「そうですね…おそらく裁判場で閻魔大王をしばいてる最中かと。」

「だったらとっとと行くぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…全く、こうなりたくないならさっさと仕事をすればいいんですよ。」

 

鬼灯がため息をつきながら手のホコリをはたいて落としていた。その隣には頭に金棒が突き刺さってうめいている閻魔大王がいる。その様子を見ていた鬼灯は閻魔大王に刺さっている金棒を容赦なくグリグリし始めた。

 

「さて、次は何がいいですか?煮え湯の量を増やしましょうか?」

「わかった!わかったからぁ!ちゃんと仕事するから鬼灯くん!」

「分かればいいんですよ。」

 

そう言って鬼灯は金棒を担いで離れる。先程までボッコボコにされていた閻魔大王はよろめきながら立ち上がっている。

 

「鬼灯様、お客様ですよ……また何かあったんですか。」

「おや月見さん。それに……月読さん?」

「おお、こないだぶりだな鬼灯殿。元気そうで何よりだ。」

「十年は「こないだ」なんですかね。」

「細かい事はいいだろ?」

 

ははは、と笑う男性…月読の言葉に首をかしげる鬼灯だったが、月読はそんなこと気にせず隣で倒れ伏している閻魔大王に話しかける。

 

「閻魔殿も久しぶりだな、調子はどうだ?」

「ええ……ご覧の、とおりです……。」

「なるほどいつも通りというわけか。相変わらず容赦がないな鬼灯殿。」

「閻魔大王にはこれぐらいがちょうどいいんですよ。まぁそれは置いといて…。」

 

そう言って鬼灯は月読の方に向き直る。

 

「お二人が一緒にいるという事はもうすぐ月神集会ですか?」

「ええ、少しの間医務室を開けるのでその報告をしに来ました。業務については一週間分終わらせましたし、管理は美穂に任せてます。」

「分かりました。明日からでいいですか?」

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで一昨日から月見さんは出掛けてますよ。少なくとも明日までは帰って来ません。」

「おや、そうなのですか。皆さんでお茶でもと思ったのですが……。」

 

鬼灯から月見の所在を聞いた芥子は残念そうに言葉を漏らす。

周りには桃太郎やお供達、一寸法師、瓜子姫などが立っていた。

 

「おとぎ話関係者ですか?」

「うん!この間のおとぎ人のパーティーで会って今度みんなでご飯食べよって言ったの!」

「そういえば月見さんの伝説もおとぎ話になってましたね。」

「あの~、ところで一つ気になってたんですけど……。」

「どうしましたか桃太郎さん。」

 

シロと鬼灯が話をしているところに桃太郎が入ってくる。

 

「話に出てきたその「月神集会」って何ですか?」

「名前のまんまですよ。世界中の月の神や月に関係する逸話を持っている方が不定期に集まるんです。」

「へ~……ちなみにその内容って?」

「近況報告みたいな感じらしいですよ。日本で言う神無月の出雲ですね。その写真がこれです。」

 

そう言って鬼灯は懐から一枚の写真を取り出した。その写真には様々な姿の人物が撮られており、中には身体の一部が人間じゃなかったり、そもそも人間ですらない者もいる。

 

「前回の月神集会の写真です。」

「あっトトさんだ!」

「何?…ああ、本当だ。人に化けてないから分かりやすいな。」

「それにこっちはハトホル神じゃね?」

「そういえばシロさん達会ったことありましたね。」

「おお、キレイな牛さんですね。」

 

写真を見た動物達が各々感想を漏らす。

 

「なんともまぁ美男美女が多いっすね。」

「それはそうですよ一寸さん。美しいものの例えによく使われる物の一つが月なんですから。」

「「月とすっぽん」なんて言われますもんね。」

 

人間組もチラッと見えた写真から話を広げている。しかし桃太郎はしばらくすると頭に疑問が浮かんだように首をひねっていた。

 

「………あれ?」

「どうしたの桃太郎?」

「そういえばこの写真月見さんが見当たらねぇなって。」

「え?あっホントだ!」

「いえ、ちゃんといますよ。」

「?どこですか?」

「ほらここ。」

 

首をひねる桃太郎ブラザーズを見て鬼灯が写真の一部を示した。よくよく見ると写真の下の部分に白っぽい髪の毛が見えた。

 

「悪ふざけで月見さんを台にして撮ったらしいんですよね。」

「分かりにくいですよ。」

 

思わずつっこむ桃太郎だった。しばらくそんな会話をしているとシロと芥子が何かに反応する。

 

「「?」」

「おやどうしましたか。」

「いや、なんか足音が近づいてくる感じがしまして………。」

「というかすっごい足音がふらついてるよ?」

 

その言葉を聞いた鬼灯はため息をつきながらとある方向に話しかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だそうですよ美穂さん。」

「………あ、どうも鬼灯様………。」

 

そこにはふらつきながら歩いている美穂がいた。よくよくみると目が死んでいる上、全体的に重い空気を纏っている。

 

「「「「「どぅえあ!?」」」」」

「「美穂さん!?」」

 

鬼灯以外の男性陣は声を出して驚き、顔見知りである女性陣は美穂の名前を呼ぶ。

 

「あ………芥子ちゃんに瓜子姫さんじゃないですか……どうされましたか?」

「いや、美穂さんの方こそ何があったんですか。」

「こんなにボロボロになって………。」

「お二人共、良くあることなので気にしなくていいですよ。」

 

心配して声をかける一人と一匹だったが、鬼灯が遠慮なくぶったぎる。そんな鬼灯にシロがおそるおそる話しかけてくる。

 

「ねぇねぇ鬼灯様…結局この人って「………ない……」…ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「月見成分が足りないいいいいいいいい……………」

「この人なに言ってんだ。」

「美穂さんが月見さんと2日以上離れると起こる禁断症状ですよ。月見さん本人を与えることでしかしか治せないのでほっといて問題ないですよ。」

 

美穂が絞り出すような声で嘆く内容にほぼ全員が引いている。

 

「鬼灯様、そもそもこの人は誰なんですか?」

「あぁ、桃太郎さん達は知りませんでしたね。月見さんの補佐…医務室の副長の美穂さんです。」

「つきみぃ……。」

「あぁ!美穂さんがどんどん萎んでいきますぅ!」

(どんどん凄いことになっていく…。)

 

混沌としてきた状況に目が遠くなっていく桃太郎達。そんな中、一寸が鬼灯に話しかける。

 

「あの~鬼灯様、桃太郎達が混乱してるので詳しく説明した方が………。」

「それもそうですね。移動しましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へ!?月見さん結婚してたの!?」

「しかも2000年以上前から………。」

「人は見かけによらないって本当なんだな。」

「初めて会ったときもそんな素振りなかったもんなぁ。」

 

全員が甘味処に移動したところで鬼灯が改めて桃太郎達に説明する。一方美穂は芥子の背中を吸いながらとんでもない勢いでモフモフしていた。

 

「それにしてもなんで一寸さんは驚いてないの?」

「俺は仕事場所に月見さんが薬の材料取りに来るからよく話を聞いてるんだよ。」

 

一寸はシロからの質問を団子を頬張りながら答える。

 

「じゃあ芥子ちゃんと瓜子姫さんは?」

「私は月見さんの妹弟子として知り合ってよく可愛がってくれた方ですので~。」

「私…というか女性獄卒の皆さんは美穂さんに美容関係でお世話になってますから。」

 

モフモフされている芥子とゆっくりお茶を飲んでいる瓜子姫も答えるが、話題となっている本人はいまだにモフモフしていた。

 

「………そうは見えないんですけど…。」

「美穂さん、美穂さん、そろそろ戻って来てください。」

「モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ……………………………はっ!」

「あ、戻って来た。」

 

芥子が前足で美穂の頭をテシテシ叩くとずっと顔を埋めていた美穂が顔を上げた。

 

「あれ?……ここ甘味処?」

「記憶飛んでるじゃないですか。」

「この人が副長って大丈夫なんですか?」

 

柿助が他の二匹も思っていた純粋な疑問を鬼灯に問いかける。

 

「彼女、月見さんが絡むととたんに暴走を始めますが、美穂さん自身はかなり優秀なんですよ。」

 

そう言って鬼灯は頼んでいた饅頭を食べる。

 

「美穂さんは自力で神獣になるまで至った正真正銘努力の天才です。その過程に一切神の力は関わってません。」

「へぇ~。」

「「へぇ~」ってお前…。」

「だって目標があったんですもん。」

 

シロのあっさりとした反応に桃太郎がつっこもうとしたが、いつの間にか復活していた美穂が話に入ってきた。

 

「目標ですか?」

「そうですよ芥子ちゃん。昔、月見が焼かれた後、無気力になってしまったんですよね私。」

 

美穂が懐かしむように語りだす。

 

「それを見かねた帝釈天が私に教えてくれたんですよ。「月見はあの世でも努力して人の役に立とうとしている。」って。」

「………今ナチュラルに神様呼び捨てにしなかったか?」

「しっ!余計な事言うな。」

 

桃太郎と一寸が何かを言ってた気がするが、気にせず美穂は続ける。

 

「その時私はこう思ったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつら(神ども)に月見を渡してたまるか」って」

「………………ん?」

 

なんだか話が不穏な空気になってきた。が、鬼灯は気にせず追加で注文したわらび餅を食べている。

 

「「この行いに感動した!」とか言ってたのに生き返らせることなく月に送って神獣化させる奴らですよ?隣で私達が絶望してる最中なのに容赦なく亡骸を月に送った外道ですよ?月見は可愛いですからね、そのうち誰かに貞操を奪われるかも知れないんですよ?そんな状況で何もしないと思いますか?思いませんよね?だからいち早く月見の元へ行かなければならないと思ったんです。だって月見は優しいですからね、私が守ってあげなくちゃいけないんですよ。幸い良心的な神様がいたお陰で月見は無事でしたが、月見の隣は私じゃなきゃいけないんですよ。あぁ、月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見月見。」

「怖いよ!?」

 

ノンブレスで一気に月見への思いを語った美穂に鬼灯以外の全員がドン引きしている。トリップしている美穂を横目にわらび餅を食べ終えた鬼灯が何もなかったかのように話し始める。

 

「さっきも言ったじゃないですか、「月見さんが絡むととたんに暴走を始める」って。美穂さんの場合優先順位のダントツ一位が月見さんなんです。」

「いやそれどころじゃないレベルでしょこれ。」

「クソデカ感情すぎません?」

 

ちなみに美穂さんはいまだに「月見ぃ」とうっとりしながらトリップしています。

 

「月見さんが精神安定剤なので月見さんと一緒にいるとなりませんよ。それにこれでもましになった方ですよ?」

「はえ?」

 

鬼灯の言葉にシロがアホっぽい声を漏らす。

 

「それこそ新婚の時は一時間でも離れたら暴走し始めたらしいですから。」

「とりあえず月見さんが早く帰って来るのを祈るしかありませんね……。」

 

芥子が両前足を合わせて祈ると、他の全員もそれに習って祈りはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば鬼灯様、月見さん月の神様がいる集会に出てるんだよね?」

「ええ。」

「美穂さん月の神様殺そうとしないの?」

「美穂さんが言っていた「良心的な神様」っていうのが彼らなんですよ。なんせ月に送られて戸惑っていた月見さんを保護して自衛出来るまで育てたのが月の神様達なので。」

 




美穂さんはヤンデレになるんですかね?



次回予告
「ふみぅ……。」
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