閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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とてもかんたんなあらすじ
「美穂さん大暴走」


集会日記二頁目

「?」

「ん?どうした月見。」

「いえ……なんか美穂の声が聞こえたような気がして……。」

「あぁ、お主の嫁か。」

 

月読は少し苦笑いしながら月見の隣を歩く。

 

「お主の嫁なぁ、少しばかり過激じゃないか?」

「そうですかね?」

「神である私が言うレベルだぞ。ギリシャ神話ほどではないがなかなか恋愛関係が重い日本の歴史を間近で見てきた神の一柱である私が言うレベルだぞ。」

「自分で言ってて悲しくないですか?」

「……………はぁ。」

「お疲れ様です、炎要りますか?」

「あぁ、頼む……。」

 

本人の残っているエピソードは数少ないが姉と弟の逸話が破天荒なものばかりなため、胃痛がする月読であった。

 

「別に美穂の愛情がイヤだと思ったことは一度もありませんよ。」

「おや、そうなのか。てっきり不満の一つや二つあると思ったが。」

「まぁ何日間かぶっ通しでヤるのは勘弁してほしいんですけど…おかげで部下のみんなに暖かい目で見られるし……。」

「慕われているじゃないか。」

 

ははは、と笑う月読に対しうさみみをペチペチ当てて抗議する月見。あまり効果は無いようだ。

 

「実際、お主は美穂の事をどう思っている?…あー今は答えなくていい。後で聞かせてもらうからな。」

「?」

 

口を開こうとした月見は止められてそのまま首をかしげる。その様子を見た月読はニヤリと笑うと話を続ける。

 

「他の奴らが揃ってる場所で話題振ってやるってことだ。」

「確実に面倒なことになるやつですよねそれ。」

「確実にアルテミス殿あたりは食いついて離さないだろうな。まぁそれが狙いなんだが。」

「炎消しますよ月読様。」

「すいませんでした。」

 

キレイに腰を90度に曲げた月読だった。

 

「………まぁいいです。今回の会場にさっさと行きましょう。」

「うむ…エジプトになったのは何年ぶりだ?」

「仕方ないですよ毎回くじで決めてるんですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!やっと来た!二人が最後だよ~。」

「この間ぶりですねアルテミス様。」

 

部屋に入った月見と月読は入り口の近くにいたアルテミスに声をかけられる。挨拶を終えた月見が部屋を見回すと大量の料理が机の上に並べられている。だいたいエジプト料理が並んでいるがよく見ると世界中の料理が混ざっている。

 

「今回も豪勢ですね。あ、持って来たお菓子厨房に届けて来ます。」

「月見ちゃんも律儀ね~。」

「そうそう、招かれてるんだからお言葉に甘えとけ。」

「わぷっ!?」

 

そう言ってアルテミスの横に座っていたオリオンが月見の頭をがしがし撫でる。その様子を見ていたアルテミスも「私も~」と言って月見の頬を両手でぷにぷにし始めた。その隙に月読はさっさと知り合いの神のところへ行ってしまった。

 

「ふみぅ…。」

「二人共、月見さんが苦しそうにしてるので離してあげてください。」

「はーい。」

「おっそうか悪かったな月見。」

「いえ……ありがとうございますヘカテ様」

「いえいえ、お久しぶりですね月見さん。」

 

黒いドレスとローブを着込んで杖を持った女性が月見に笑いかける。美女……ヘカテは月見に礼を返されるととある方向へ顔を向ける。

 

「セレーネ、月見さんがいらっしゃいましたよ。」

「あら本当、久しぶりね月見。」

「はい、お久しぶりですセレーネ様。」

 

ヘカテに名前を呼ばれた女性…セレーネがゆったりと近づいて来て月見の頭を撫でる。

 

「あぁ、モフモフしてて良いわね。」

「…ありがとうございます?」

「貴女の子供にライオンいませんでしたかセレーネ。モフモフならその子でもいいのでは?」

「嫌よ、あの子毛がゴワゴワなんだから。」

 

ここにいないのに罵倒されるネメアーの獅子だった。

 

「あの…そろそろ荷物を届けてくるので……。」

「あら、ごめんなさいね。」

「また後でお話しましょう。」

 

月見は二人にペコリと頭を下げるとそのまま厨房へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません、お菓子持って来たので置いときますね。」

「あ、月見くんじゃないですか、お仕事は順調ですか?」

「?」

 

厨房の料理人達に持って来た餅菓子を届けて会場に戻る最中、後ろから声をかけられて振り返る。

 

「あ、アヌビス様。この間のハーブありがとうございました。」

「いえいえ、こっちのミイラに使う防腐剤の調合を手伝ってくれたお礼ですよ。おかげで仕事が捗るってもんです。」

 

お互いに手を差し出して握手する二人。そしてそのまま雑談に入る。

 

「最近の調子はいかがですか?」

「えーと…ついこの間からアスクレピオス様との共同開発で色々作ってるんですけど、たまたま保存液が出来たんですよね。」

「ちょっとその話詳しく。」

 

アヌビスの目がギラギラし始めた。

 

「正しくは「肉体の劣化を止める」薬なんですけど…。」

「それって生身で使えば不老になるのでは?」

「ただ欠点がありまして……一時間ごとに効果が切れます。」

「ダメじゃないですか。」

「その上生きている人は10L一気に飲まないと効果が出ません。カフェインもコーヒーの10倍です。」

「中毒で死にますよねそれ。」

「あの時はやけくそでやってたので……。」

 

水は6Lが致死量です。

 

「ミイラの保存に使えればと思いましたが…ダメそうですね。」

「管理が大変なんでオススメしませんよ。材料費バカにならないですし。」

「……ちなみにどれぐらい……。」

「1時間で数十万円ぶっ飛びます。」

「うわぁ…………止めときます。」

 

アヌビスが引いたような声を出していると、後ろから月見に声がかかる。

 

「こんなとこにいたのか月見、全員お前を待ってるぞ。」

「あ、トト様。」

「おや、そこまで話し込んでしまいましたか。では私はこれで。」

「せっかくなんでこれ(餅菓子)どうぞ。」

「おお!裁判も終わったんでみんなでいただきますね。」

 

機嫌よく走り去っていくアヌビスを横目にトトが話を続ける。

 

「私達の分もあるか?」

「皆さんの分用意してますよ。」

「ならいい、早く行かなければ始まってしまうぞ。」

「!分かりました。」

 

月見はトトの後ろをテクテクと歩いていく。

 

「そういえば今回何人ほどいらしてるんですか?」

「従者や眷属を含めて40名ほどだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では始めようか。皆グラスを持て。」

 

開催場所の代表としてトトが指示をする。他の神達は逆らうことなく各々が好きな飲み物を手に取っている。

 

「月神集会開始だ乾杯(フィ・シヒタック)!」

「「「「乾杯(フィ・シヒタック)!」」」」

 

トトの掛け声に神達が一斉に手に持った物を上にかかげる。そのまま全員が飲み物に口を付けた。少し見回すと所々に動物も器用にグラスを持っている。

 

「んく、んく……ぷふぅ。」

「おお月見、あまり飲んでないじゃないか。」

「ソーマ様……毎回言ってますがあまりお酒は強くないので…。」

「ふむ、まぁ強制はせんよ。酒は楽しむものだ。」

 

そう言って月見の隣に来た神……ソーマは自分が持つ酒のグラスを傾ける。

 

宴は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで月見、何を飲んでいるんだ?」

「カシスオレンジです。」

「女子か。」




フィ・シヒタックはエジプトで使われる乾杯の挨拶です。
月神集会にくる神や英雄は大体ノリがいいので開催国の挨拶に合わせます。

次回予告
「その耳自覚ないのか。」
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