「宴とシリアス?」
「………なんともまぁいきなりですね。」
「ホントはねもっと前から言おうと思ってたんだよ?」
そう月見に返したアルテミスはいつの間にか手に持っていた皿から菓子を摘まんで口に放り込む。
「月見ちゃんも食べる?」
「いただきます。」
月見も皿から一つ取って口に入れる。
「ドライフルーツですか?」
「うん、エジプトの名産品なんだって。」
しばらく無言で食べ続ける二人。しばらくするとアルテミスが口を開いた。
「さっきも言ったけど、貴方は貴方の火傷の痕を治したい?それなら私達月の神の力でどうにかできるけど。」
「………いえ、大丈夫です。いきなりどうしてそんな話を?」
隣に座る月見の顔の包帯を少しずらして問いかけてくるアルテミスに月見は疑問を伝える。
「だって貴方毎年新年に苦手な術をわざわざ使ってまで火傷を隠してるでしょ?あまり月見ちゃんに無理して欲しくないの。他の皆だって言わないだけでそう思ってるわ。」
アルテミスは自分の傍らに皿を置いて、背もたれに寄りかかった。しばらく無言だった二人だが、やがて月見が口を開く。
「……お気持ちは嬉しいですが、やっぱり遠慮しておきます。」
「あら、なんでかしら?」
「証だからですよ。」
そう言って月見は自ら頭の包帯をほどいていく。隠されていた焼けただれた皮膚が露になる。左目は閉じきっており、開く気配はない。
「アルテミス様は僕が
「まだ人化も出来なかった頃?あの頃から貴方包帯してたわね~。」
アルテミスは懐かしむような笑みを浮かべている。
~~~~数千年前~~~~
「ふふんふふ~ん♪…………あら?」
「どういう事だインドラ、集会中にいきなり連絡寄越してましてやその内容が「今から送る兎の子を神獣にしてくれ」だ?何かあったのかお前。お前の部下が血眼で探してるぞ。」
「おいホントに何があった!?今送られてきた兎が全身火傷の重傷な上に耳燃えてるんだが!?は?こいつがお前の命の恩兎?さ迷って死にかけたところでこの兎が自らの肉をお前に捧げた?」
「………あぁ、はいはいわかったしばらく俺が面倒を見ておくからな。あ?こいつの姿を月に移した?……まぁいい、功績を考えると妥当なところだ。」
パチリ
「はぇ?」
「あ、起きた。」
~~~~~~~~~~~~~
「月神集会の途中でいきなり現れるんだもん。びっくりしちゃった。」
「ソーマ様にはお世話になりました。」
あははと笑うアルテミスの隣で月見は自分の顔の火傷痕を撫でる。その手付きは何か大切な物に触れるようだった。そんな様子の月見にアルテミスが優しく話しかける。
「その火傷が証?」
その言葉に月見は頷き、ゆっくりと口を開く。
「かつて何も出来ず誰も助けられなかった僕でも誰かを救えたんです。」
「火傷を負ったとしてもその事実は変わりません。」
「だからどんな姿になろうとも、それを背負って僕は助けたい人を助けるために動きます。」
「それが僕の
そう言って月見はアルテミスの方に顔を向け、少しだけ口角を上げる。
「あぁ、アルテミス様先程の言葉を少し撤回します。」
「?ええ、いいわよ。」
「
月見の言葉を聞いたアルテミスは一瞬キョトンとするが、すぐに笑いながら月見に抱き付き頭をなで始めた。
「もぅ~、ちょっとなによ~。貴方あんな表情出来るのね~。」
「ふみぅ!?…僕そんな無表情ですか?」
「え?自覚無かったの?」
「感情が分かりやすいとよく言われるので……。」
「そりゃあんなに耳で表してたら分かりやすいわよ。」
「?」
月見は首をかしげ、耳をピコピコさせる。その様子にアルテミスが癒されていると、誰かの気配が近づいてくる。
「アルテミス、そろそろ離してやれ。そんな事されてたら月見の嫁にぶちギレられるぞ。」
「それもそうね~。あの子月見ちゃんの事になると
アルテミスは月見を離し、近づいて来たソーマの方へ向き直る。
「にしてもお前がその火傷をそんな風に思ってたとはな。インドラにいい土産が出来た。」
「あぁ、久しぶりに会いたいですね……美穂が許してくれないですけど。」
「止めておけ、おそらくあいつはお前を孫か何かだと思って手元に置きたがってる。確実にお前の嫁と喧嘩になるだろ。千年前を忘れたか?」
ソーマは面白い事を思い出したと言わんばかりに笑う。月見もその言葉に若干遠い目になる。
「………ありましたねそんなこと。」
「え?何々?何があったの?」
「日本地獄で帝釈天様と美穂が全力で喧嘩したんですよ。」
「私達もあのバカの回収に駆り出されたからな。まさか普通に互角とは思わなかった。」
「待って美穂ちゃんそんなに強かったの?」
本人曰く「愛の力」だそうです。
「まぁどっちも機嫌が悪くなった鬼灯様に沈められましたけど。」
「私達が到着した時にはインドラが物理的に地面に埋められてたからな、とても面白かった。」
「あの鬼さん凄かったのね。」
アルテミスは感心するように頷いている。するとソーマは何か思い出し笑いをするように口元をゆがませた。
「あら、どうしたの?」
「いやなに、そのあとに起きた事が面白過ぎてな。」
「えー気になる~。」
ソーマは笑いながら話を続ける。
「掘り起こされた二人が月見に正座させられて説教されてた。しかも月見もガチギレ状態だ。」
「あ~……それは御愁傷様ね。」
「「次やったら二度と口を聞かない」でインドラの奴が号泣して月見にしがみついたのは傑作だった。回収に来た奴らは私も含め全員爆笑してたからな。」
ソーマが話し終えたところで月見のポーチの中から着信音が聞こえてくる。月見は二人に許可をもらってその場で電話にでた。
「もしもし?」
『あ、月見さん今お時間大丈夫ですか?』
「?いいですよ鬼灯様。」
『美穂さんについてなんですが単刀直入に言います。月見さんがいないせいで暴走しそうなんでなんとかしてください。』
「…………美穂に変わってください。」
月見の目が死んだ。
「………美穂?」
『月見月見月見月見………月見?月見の声?ああ!月見なの!?ねぇ早く帰って来てよもう我慢できないよあなたに会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい「ねぇ美穂、ちゃんと待っていられたら何でも言うこと聞いてあげる。」こっちは任せて。ちゃんと仕事を全うするから。』
「………うん、お土産買って帰るね。」
『はーい♥️あ、鬼灯様に返すね。』
月見が空を仰いだ。
『すいませんね月見さん。』
「いえ……僕が被害を受けるだけで済むならそれに越したことはないですよ。」
それでは、と電話を切る月見を見る二人の目はとても優しい物だった。
「………………。」
「ごめんね、私じゃなにも出来ないの。許してね。」
「……幸運を祈る。」
「……いえ、大丈夫です。……僕だって美穂の事が大好きなので。」
((本人がそれ聞いたら暴走するんだろうな……。))
「そういえば美穂ちゃんって説教されてた時どんな感じだったの?」
「何故かは知らんが、何か興奮して悦んでいたぞ。」
「…………………月見ちゃん限定のドM?」
「………と言うと?」
「お仕置き+放置プr「それ以上は止めておけ。」はーい。」
この後帰った月見さんがどうなったか?
まぁ皆さんの予想通りですよ。
この作品ではインド神話の神と仏教の神は共通であるとして登場しています。身内の神同士ではインド神話での他から呼ばれる時は仏教での名前で呼ばれます。
次回予告
「このクソジジイが。」