閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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とてもかんたんなあらすじ
「携帯電話騒動」


来訪日記三頁目

「月見からの「お姉ちゃん」呼び……いいわね…その呼び方を強制できる薬とか無いかな。」

「月見兄さんの事だから強く頼めばイケるんじゃないかしら?」

 

妲己は先程の電話で要求した声援が思った以上に刺さってる美穂に呆れた視線を向ける。

 

「はっ確かに!ありがと~きぃちゃん。」

「………ほどほどにしときなさいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこだね。」

「ねぇミキちゃん、そのお店っていかがわしい感じじゃなかったっけ……。」

「一応兄が向かい側の店でお世話になってるし……別に客じゃないから大丈夫……なはず。」

「心配なんだけど!?」

 

電話の声に言われた通りに衆合地獄の花街に訪れた二人だったが、今更になって倫理観的な意味で心配になってきたようだ。

 

「ん?おお、ミキちゃんじゃねぇの。それにマキちゃんまで。ミキちゃんのお兄さんの様子でも見に来たんか?」

「あ、檎さん。いえ、ちょっと用事が……。」

 

例の店の前の長椅子に座る檎が話しかけてくる。

 

「用事?あいつら関係じゃないんじゃったら心当たりないんじゃが。」

「実は、この携帯電話を美穂さんっていう人に渡して欲しいって言われまして…。」

「ゴボッ!?」

 

マキが美穂の名前を出した瞬間、檎が吸っていたパイプの煙をえずくように吐き出す。それを見たまきみきの二人は固まってしまった。

 

「え、ちょ、大丈夫ですか!?」

「ゴホッゴホ……あー、すまん取り乱したわ。……ちなみに聞いときたいんじゃが、その名前電話で聞いたんよな?」

「?そうですけど…。」

呼び捨てじゃった(・・・・・・・・)?」

「えーと……確かそうだったはずですけど。」

 

あー、と何か納得したような声を出した檎を訝しげに見る二人。一人で勝手に理解している檎に目的を思い出したミキが尋ねる。

 

「あの~、結局の所美穂さんっていらっしゃるんですか?」

「あぁ、おるよ。今は妲己様の部屋でお茶してるはずじゃから。」

「………妲己さんとお茶?」

「案内しちゃろ、ついてきんしゃい。」

 

そう言って檎は椅子から立ち上がり、店の中に入っていく。マキはそれについて行こうとするがミキは何かを考え込んでいて中々動かない。

 

「あ、はい!……どうしたのミキちゃん?」

「いや、さっきまでの檎さんの反応が少し気になって……。」

「でも早くしないと置いていかれちゃうよ?ほら、さっさと入ろ!」

「うん………あの人がお茶する女性ってかなり限られてくると思うんだけどなぁ。」

 

しびれを切らしたマキがミキの手を引いて店の中に入る。その間、ミキはずっと何かを考えているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美穂様、貴女宛に届け物だそうです。」

『あ、通してくださ~い。』

「分かりました………ほら、入っていいっておっしゃってるからはよはいりんしゃい。」

 

二階に上がった檎は一つの襖の前まで歩き、そのまま呼び掛ける。ついてきた二人はいきなりのことにしどろもどろになっている。

 

「え、いやまだ心の準備が。」

「オタクらアイドルでしょうが、これぐらいでびびったらイカンよ~。」

「それとこれは無関係だと思うんだけど……。」

 

急かす檎に対して未だ狼狽えているまきみきの二人。その様子を見た檎はため息をつく。

 

「何がいやなんじゃ、せっかく美穂様も許可出してくれとうのに。」

「さっきから不穏なんですよ!「美穂さん」って名前を出した時の反応とか、さっきから様付けで呼んだりしてるから!」

「気にせんくてええよ。」

「そんなこと言われると余計気になって来るんですけど………。」

 

そんなこんなで襖の前で騒いでいた三人だったが、ふと襖からから音がする。比較的静かにしていたミキが反応してその方向を見るが、特に何の変化もない。

 

「…………?」

「はぁ…んあ、どうしたミキちゃん。」

「いえ、なんか紙が舞ったりくしゃくしゃになる音が聞こえた気がして……。」

「へ?そんな音した?」

 

ミキの言葉に周囲を見回すマキは自分の足元に一枚の紙の固まりが落ちているのに気がつく。それを見たマキはその紙のそばにしゃがみこんだ。

 

「これかな、なんか書かれてるけど。」

「えーと………「後ろにいるよ」?」

 

紙を広げ、二人が文字を読んだ瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メキョ メキョ

 

背後で木がへし折られるような音が聞こえて来た。まきみきはその音に体が固まる。嫌な予感がしてブリキの玩具の様にゆっくり振り返る。

 

「「「ガアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」」」

「「ぎいああああぁぁぁぁ!?!?!?」」

 

床から生えているいくつもの竜の首が咆哮する。よくよく見るとすべて体が木で出来ていた。そんな光景を前にしたまきみきの二人は叫びながら後退る。叫び終えた竜はするすると床に戻り、何もなかったかの様に元通りになった。

 

「なになになんなのこれ!?」

「ビックリした!久々に死ぬかと思った!」

「あはは、ナイスリアクションです。」

 

ビビりまくる二人をよそに、美穂が笑いながら襖を開けて出てくる。

 

「ごめんなさい。あまりにも入るのが遅かったからきぃちゃんから「少し驚かせて来なさい」って言われちゃって。大丈夫ですか?」

「あ、はい!」

「は、はい……もしかして貴女が美穂さんですか?」

 

ミキに問われた美穂は笑顔で返事する。

 

「ええ、私が美穂で合ってますよ。とりあえず入って入って。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、誰かと思えば貴女達だったのね。」

「どうも……兄がお世話になってます……。」

 

中で寛ぐ妲己が入って来た二人に視線を寄越すと、美穂についてきたミキに目をつける。

 

「あれ、きぃちゃんこの子と知り合いなの?」

「その子の兄が向かい側の店で働いてるのよ。ここの系列店みたいなもんだし檎に経営任せてるから。……というか人前で「きぃちゃん」はやめてちょうだい。」

「え~かわいいのに~。」

「…きぃちゃん?」

「妲己さんをそんな呼び方する人初めて見た……。」

 

美穂と妲己の気軽な会話に意外そうな顔をする二人。

 

「というか届け物があったんじゃないの?」

「あっそうでした!これなんですけど…。」

 

妲己の言葉に本来の目的を思い出したマキが携帯電話を美穂に差し出す。それを受け取った美穂は電源を入れて中のデータを確かめ始めた。

 

「携帯のロックなし…待受画面がブレブレの自撮り……本人のものですね、ありがとうございます。」

「確かめ方ひどく無いですか?」

 

ミキが思った事をそのまま口に出す。思わず出てしまった言葉にミキは口を押さえるが、美穂は困った様に笑っている。

 

「いやぁ貴女のいう通りなんですけどね……この携帯の持ち主妙に抜けてるので…。」

「「ええ……。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自律紙式 隼、縁結び 失物…………行きなさい。」

 

携帯の端末から淡い光が漏れだし、紙でできた隼に移った。そのまま美穂に命令されると、隼は近くの窓から飛び立っていった。

 

「わぁ……カッコいい。」

「ありがとうございます。……えーと。」

「あ、すいません、名前言ってませんでしたね。」

 

マキは姿勢を正して美穂に向き直る。

 

「改めまして、アイドルをしているまきみきのマキです!」

「ミキですニャ。」

「ああ!道理で既視感があると思いました。よくテレビで見させてもらってます。」

 

美穂は嬉しそうに尻尾を揺らしている。

 

「私は閻魔庁医務室副長と美容関係の仕事を兼任してます。美穂と申します。以後お見知り置きを。」

「閻魔庁……てことは鬼灯様と同じ職場なんですか?」

「立場的にはそうですね。というか獄卒は実質全員鬼灯様の部下ですよ。」

 

へー、といまいち理解してるのかしてないのか分からない声を出すマキだったが、隣でミキが何かを思い出そうとしてるのが見えた。

 

「ミキちゃんどうしたの?」

「……あの~一つ質問何ですけど。」

「はい、何でしょうか?」

 

おずおずと手を上げて美穂に尋ねるミキ。

 

「もしかして月見さんの部下だったりしますか?」

「あっ、そういえばあの人自己紹介で医務室長みたいな事言ってたね。」

「うん、だからちょっと気になって。」

 

以前共演した相手を思い出した二人に対し、美穂が返す。笑顔なのだが何処か違和感がある。

 

「はい、そうですね。こちらからも一ついいですか?」

「?何でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の月見とどういう関係でいらっしゃいますか?」

「「はい?」」

 

さらりと出された言葉にまきみきの二人は固まる。その一方で美穂は静かに目を開いた。瞳のハイライトが完全に消えている。

 

「ちょっと聞かせてくださいな、どうしても気になってしまうものでして。何処でどういう経緯で私の月見をたぶらかしましたか?返答次第では……………。」

 

そのまま問い詰め始めた美穂は傍らにあった湯呑みを手に取ると、そのまま持ち上げた。そして尻尾を構え…

 

「こうなります。」

斬ッ

「「」」

 

尻尾の先で湯呑みを横一文字にぶったぎった。

 

「早く答えて下さい?貴女達の体を真っ二つにされたくなければ。」

「違います!別にそういう関係じゃないです!」

「一度テレビで共演させていただいただけです!」

 

どんどん笑みが深くなって放つプレッシャーにまきみきは思わず互いに抱き合う。しばらくにらみ続けていた美穂だったがふと、殺気を緩めた。

 

「…………………………………………………………………………嘘はついて無いようですね。」

「ついてません!誓って嘘はついてません!」

「分かりました……ごめんなさいね、つい月見の事になると抑えが効かなくなっちゃって。」

「はぁ……。」

 

完全に殺気を消した美穂は困った様に笑いかける。それに加え、指を鳴らすと周りから硝子の割れる音が聞こえてきた。すると今まで完全に無視を決め込んでいた妲己が反応して、呆れた視線をこちらに向けてくる。

 

「全く、その月見兄さんの名前を女性から聞いたら暴走する癖どうにかしなさいよ美穂姉さん。というか私の店で暴れないでもらえる?」

「月見が愛おしすぎるのが悪いとおもうの。」

「はぁ………………良かったわね貴女達。何の話をしてたか知らないけど死ななくて。」

 

反省の色が見えない美穂に対しため息をついた妲己はそのままマキとミキに話しかけてくる。

 

「えっと……どういう?」

「さっき割れたのは美穂姉さんが張ってた消音結界よ。例え貴女が大声を出して殺されても誰も気づきはしないわ。」

「ヒエッ。」

 

マキの口から言葉にならない声が出てくる。

 

「そういえばずっと気になってたんですけど………妖狐のトップみたいな方である妲己様に「姉さん」呼びされてる美穂さんって何者なんですか?」

「何者だなんて…私はただ長生きしてるだけの狐ですよ。」

「嘘おっしゃい。本気出したら私を一方的になぶり殺せるくせに。」

 

恥ずかしそうに頭を掻く美穂だが、妲己の言葉を聞いたまきみきの二人はすっかり怯えきっている。

 

「ふむ……一回色々説明した方がいいですかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと…つまり美穂さんは「月のうさぎ」に出てくる狐で、月見さんとは幼なじみ兼夫婦だということでいいですか?」

「途中で惚気入れてくるから聞き取るのが大変だったニャーン。」

 

落ち着いたまきみきの二人は美穂からの説明を受けていたが、大分疲れたような顔をしている。ちなみに妲己は椅子に座って素知らぬ顔で緑茶を飲んでいる。

 

「はい、それで大丈夫ですよ。」

「色々突っ込みたい事はありますけど、取り敢えず覚えておきます……。」

 

とてもげんなりしている二人だったが、それをよそに美穂が何かに反応したかのように振り返る。

 

「見つけた。」

「「はい?」」

「あぁ、すいません。貴女達が届けてくれた物を使って人探ししてたんです。」

 

そんな説明をしている中、窓から隼が入って来る。その隼は美穂の前まで来るとそのまま一枚の紙となった。

 

「……なるほどショッピング街ですか。ちょっと電話しますね。」

「あ、はい、どうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか最後何か思わせ振りな事言ってたけどなに企んでるの?」

「やだなぁきぃちゃん。アイドルと知り合ったって私に伝えてくれなかった月見にちょっとお仕置きしようかなと思っただけだよ?」

(静かに発情した目してるわね……御愁傷様。)




美穂さんはぶちギレると通常時の鬼灯様以上に強くなります。


次回予告
「あ、これおいひい。」
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