「茄子と鬼灯様が大炎上」
「落ち着きましたか?」
「…はい。」
「なんで俺まで殴られたんだろ。」
叫び続ける唐瓜のせいで話が進まないため、いい加減にしろと言わんばかりに鬼灯が金棒で唐瓜とうるさくなった原因の茄子を殴り付けている横で、月見は懐を探っていた。
「あったあった。お二人共、湿布つかいます?」
「あっどうも」
「わ~い、ありがとうございます。」
早速殴られた箇所に貼る二人をよそに、鬼灯が会話を始めた。
「取り敢えず本題に入りましょう。」
「あぁ、今回仕入れた薬草の整理でしたね。」
「あ、そういえばそうだった。」
「茄子お前なぁ…。」
そんな事言ってる唐瓜も忘れかけてたりする。
「では行きましょうか。ついてきてください。」
そう言って月見は医務室の中に入って行く。その後ろに三人がついていくと、医務室の全体が見えてきた。
「おぉ~、なんか病院みたい。」
「たしかにな。こんなとこがあったのか。」
「役割としては似たようなものですよ。」
そんな会話を交わしながら、てくてくと歩く月見についていく。
「でも月見さんってめっちゃうさぎっぽいよな~」
「?どういうことだ?」
茄子は唐瓜のほうを向きながら自分の顔を指差す。
「だってさっきの会話ずっと表情が「無」だったじゃん。」
「いやまぁそれはたしかにずっと気になってたけど…。」
「耳に感情が出てる分、彼は分かりやすいほうですよ。」
うさぎの中ではですが、と鬼灯が付け足していると、いつの間にか月見が足を止めて廊下のほうを向いていた。
「おや、どうされましたか。」
「すいません。どうやら仕事のようです。」
すると一人の鬼が月見に向かって走ってくる。首にかけている名札をみる限り、医務室の従業員のようだ。
「月見先生!脱走者です!」
「状況は?」
「一時間前にベッドに横たわって休息をとるように指示した2名の患者が「やりたい事がある」と騒ぎだして出口に向かおうとしています!」
「あぁ、いつものですね。」
冷静に対処している月見を見て、茄子が不思議そうに鬼灯に尋ねる。
「鬼灯様、今何が起こってるんですか?」
「ここの名物です。面白いので見てるといいですよ。」
そんな会話をしていると辺りが段々騒がしくなってくる。すると、奥から二人の男が大勢の鬼から逃げるように一行の隣を走って行った。
「うおぉぉぉぉ!こんなとこで寝てたらチャイニーズエンジェルの再放送見逃すだろうがあぁぁぁ!」
「やっと巨大ヤブ蚊ロボの設計図が頭のなかでインスピがレーションし始めたんだ!邪魔すんじゃねぇぇぇ!」
「いやお前らかよ。」
「烏頭さん…蓬さん…。」
「叫んでる内容があの人達らしいよな。」
鬼灯が思わずツッコみ、唐瓜は呆れ、茄子はケラケラ笑っている。
「知り合いですか?」
「子供時代からの友人です。まぁ遠慮なくやっちゃっていいですよ。」
鬼灯からそう言われた月見は「了解です。」と答え、そのまま力をためるようにしゃがみこんだ。クラウチングスタートのようなものだろうか。何をしているんだろうと頭に「?」を浮かべている小鬼達に対し、鬼灯が話しかける。
「お二人共、そこにいたら巻き込まれますよ。」
その言葉のとおりに月見から唐瓜と茄子が離れた瞬間、
ドパンッ!
大きな音と共に月見の姿がその場から消えた。
「!?」
「あれ、どこ行ったんだろ?」
目の前で起きた光景に驚きが隠せない唐瓜とどこに行ったのかを探す茄子。すると鬼灯が通り抜けた烏頭と蓬の方を指差す。
「ほら、あそこです。」
「おとなしく寝ててください。」
ドゴムッ「ごるぱぁっ」
烏頭の頭上にいつの間にか月見が移動しており、そのまま一回転して踵落としを決めていた。
「烏頭ぅぅぅぅ!?」
「あなたもです。」
ガンッ「うごあっ」
蓬が容赦なく鎮められた相方に驚いている間に前方に着地した月見が続けて蓬の顎に蹴りを入れる。
「「」」
「あれが医務室名物「患者の鎮圧」です。」
今見た光景に驚き過ぎてスペースキャットになった二人をよそに、鬼灯が話し始める。
「いつ見ても見事な蹴り技ですね。」
「いやめちゃくちゃ強いじゃないですか!」
「私がいつ月見さんが弱いと言いましたか。」
そんな会話をしていると月見が帰ってきた。
「お待たせしました、行きましょうか。」
「月見さん、すごいんだね~。」
「あぁ、今の奴ですか。」
「あれでも手加減しているほうなんですよ?」
へぇ~俺には真似できないや、と感心している茄子だった。その隣で唐瓜が顔を青くして鬼灯に質問していた。
「…あれで手加減ってマジですか?」
「彼、やろうと思えば蹴り一発で亡者をきたねぇ花火にできるので。」
さらに顔が青くなる唐瓜だったが、そんなことなど気にせず鬼灯は話を続ける。
「月見さんは自分を不器用と言っていましたがあくまでそれは生前の話です。」
「実は月に昇らせてくださった際、神獣のようなものになったんです。」
月見が恥ずかしそうに頬をかいている。
「まぁそれでスペックとか色々爆上がりしまして…」
「それを駆使して様々な事をしている月見さんを私がスカウトしました。」
管理職としては大助かりですよ、と言う鬼灯は言い忘れていたことを付け足すように口を開く。
「ただ月見さんはその時からなんでもできたわけでは無いんです。」
「そうなんですか?」
唐瓜の素直な疑問に月見が答える。
「あくまでスペックが上がっただけで、できることは生前と変わらなかったんですよ」
「そこから色んな方のもとに訪れ、出来る限りの事を覚えたのが今の月見さんです。」
「がんばりました。」
ふんすっ、と真顔で鼻を鳴らしながら胸を張る月見。小鬼二人はおぉ~、と感心したような声をあげる。
「…すいません、早く倉庫に行きましょうか。」
月見は恥ずかしそうに話を変える。
「そうですね、早めに仕事を終わらせましょう。」
「ここです。」
月見の目の前にある大きな扉には「医療部門薬品・備品倉庫」と書かれていた。
「では早速行きましょうか。」
話の中にあるとおり、月見には先生・師匠のような存在が結構います。鬼灯の冷徹のキャラクターも多いので、そのうちしっかり登場させます。
次回予告
「この人もだいぶぶっとんでんな」