閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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とてもかんたんなあらすじ
「亡者発狂ナウ」




狂乱日記四頁目

「それで、一部っていうのは………。」

「言葉の通りですよ。あくまでもあれは月見さんが使う力の応用みたいなものです。」

 

鬼灯は廊下を歩きながら唐瓜の質問に答える。

 

「彼の狂気は本来被害が一人におさまるレベルじゃないんですよ。唐瓜さん、確か亡者の見ていた物が見えたんですよね?」

「え、ええ、まぁなんかリアリティのある映画を見てる感じでしたけど………。」

「良かったですね、序盤で接続が切れて。下手したら貴方が狂い続けるところでしたよ。」

「はい?」

 

いきなり自分が危機に陥っていた事を聞かされた唐瓜は混乱している。鬼灯はそんな様子である唐瓜を無視してそのまま話を続けた。

 

「よくよく考えて下さい。本来、月の光は全ての生物に対して狂気を与えますが、月見さんはそれを圧縮して自分の内側に貯めてるんですよ。圧縮しまくったそれを使うとどうなるとおもいます?」

「………通常よりも強力になる?」

「正解です。それに加え、今の月見さんは制御が甘くなっているので、普通に近く居るだけで被害を受ける事があるんですよ。それにあの亡者には恐怖による発狂を促してたのでそれに巻き込まれると考えると………………。」

「そこで黙らないで下さいよ!」

「逆に聞きますけど知りたいですか?一回全力でやった記録がありますけど、被害が今回のあれの比じゃないですから。」

 

唐瓜はしばらく黙って考えるが、やがておそるおそる口を開く。

 

「………例えば?」

「ターゲットの亡者達が自分で自分の目を抉り始めたり、心臓を止めようと自分の体を近くのもので突き刺したり、それから逃れようと自殺を図るぐらいが序の口ですかね。周りの獄卒達にも影響が出てたので止めるのに苦労しました。」

「えっっっっぐ。」

 

特に表情も動かさず言い放った鬼灯の言葉ドン引きしてる唐瓜だったが、そこに鬼灯が捕捉するかのように説明を始める。

 

「ただ、本質は「狂わせる」事なので、使い方を工夫すればかなり便利なんですよね。痛覚を狂わせて痛みを失くせるお陰で注射とかの医療行為が楽になると本人もおっしゃってますし。」

「それでもかなりヤバイのに変わりは無いと思います…。」

「それは否定できませんね。」

 

唐瓜は若干疲れているように見えるが鬼灯はそんなことお構い無しのようで、畳み掛けるように次の話題を出す。

 

「そもそも、彼が日常的に使っている炎も本質はかなり異質なものですから。」

「あの「ドクターフィッシュみたいなもの」って言ってたやつですか?」

「そういえば貴方達にはそう言ってましたね。あれ、実はかなり効力を狭めて使ってるんですよ………………いや、使うのがあの人であるからっていうのもあるか………。」

「え?」

 

顎に手を当てながら話す鬼灯の言葉に呆けた声が出る唐瓜だったが、改めて確認するために鬼灯へと質問する。

 

「あれってそんな危ない物なんですか?」

「あの炎の正確な能力は「生物にとって有害なものを燃やす」じゃなくて「月見さんが有害だと思った(・・・・・)物を燃やす」ですから。」

「………………………それって。」

「はい、解釈次第では何でも燃やす事が可能です。」

「だいぶ理不尽じゃないっすか。」

「さっきも言ったでしょう?月見さんが使っているからあの程度で済んでるんですよ。なにせ根っからのお人好しでこの理不尽の塊みたいな能力を基本他人の為にしか使わないんですから。」

「あぁ……そうっすね。」

 

その言葉を聞いた唐瓜は納得したかのように頷くが、また疑問が浮かんできたのか引き続き質問を鬼灯に投げかけた。

 

「でも、何で月見さんがそんな能力を?逸話からしても、破壊特化の力を持つイメージが無いんですけど……。」

「それに関してはその能力を与えた神の頭がバグッていたとしか言えませんね…………時々こっちにアポ無しで突っ込んでくるのホント止めろつってんのに未だに止めないバカですから。」

「あの~鬼灯様?」

 

鬼灯が嫌な物を思い出したと言わんばかりにため息をつく。少し不機嫌になった鬼灯に不安になる唐瓜だったが、そこに前から声をかけてくる存在がいた。

 

「お~い!唐瓜~、鬼灯様~!」

「おや、ちょうど良かった。」

 

目当ての人物である茄子が近づいて来たことにより、鬼灯の苛つきが少しおさまったようだった。息が詰まっていた唐瓜は少し落ち着いてから茄子の方を見るが、その瞬間にピシリと固まる。

 

「おい、いきなり走るんじゃねえ。」

「あ、ごめんなさ~い。」

 

茄子の後ろから黒い着物を着た強面の男が近づいて来る。その場に居るだけで威圧感があり、唐瓜は普通に会話している茄子を信じられない物を見るような目で見ていた。

 

「わざわざ来ていただきありがとうございます土方さん。」

「あ?俺関係の仕事なんだろうが。」

「あ、仕事で思い出したんですけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拷問する亡者を漬物石がわりに沢庵作るの止めて貰えません?」

「やらねぇぞ。」

「要りませんよ。」

「何でいらねぇ。そこまで俺の作った沢庵が不味そうか、ぶっ飛ばすぞ。」

「沢庵と新撰組が絡むと思考回路が可笑しくなるの止めて貰えません?」

 

そんな会話を聞いた唐瓜はすっかり緊張するのも馬鹿らしくなったようで、落ち込むように肩を落とす。

 

「なんでこんな個性の殴り合いみたいな人が多いんだよ……。」

「どしたの唐瓜~。」

「茄子…お前ホント元気だな~……。」

 

いつもと変わらない茄子の様子を見て、少しばかり安心する唐瓜だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、仕事ってのはなんだ。」

「あぁ、そうでしたね。こちらを貴方と茄子さんに担当して欲しいんです。」

「そういや俺、土方さんと仕事するとしか聞かされてなかったな。」

 

茄子がそう言っている中、鬼灯は懐からファイルに入った紙を取り出した。それを三人で覗き見るとそこには「最新拷問器具 日本地獄モデル」と書かれていた。

 

「鬼灯様、これって?」

「中国地獄で毎年ある拷問器具の最新モデル発表会みたいなやつに日本地獄から何か出してくれと言われまして、それをお二人と月見さんに考えて欲しいんですよ。」

「え?月見さんも?」

「そりゃそうだ。」

 

月見の名前が出てきたことに疑問符を浮かべる唐瓜だったが、土方は納得したように頷いている。理由がいまいちわからない茄子は土方に尋ねた。

 

「ねぇねぇ、なんで月見さんも参加するの?」

「あいつは獄卒じゃないが生物に詳しい医者だ。拷問ばっかやってる奴より急所がわかってるに決まってんだろ。」

「ええ、その通りです。」

 

二人の会話に鬼灯が入ってくる。

 

「それに、土方さんは獄卒達にも劣らない拷問のプロですので、実用性に関しての意見を取り入れられるとおもったんですよ。」

「んで、コイツがデザインして作るってわけか。」

「わーい、面白そ~。」

 

話を聞いていた茄子は満面の笑みで喜んでいる。どうやら自分の好きな芸術品づくりとにた仕事が出来ると考えているようだ。そんな中、唐瓜が土方に対して質問を投げかける。

 

「あの~一つ気になった事があるんですけど………。」

「あ?なんだ。」

「茄子と元から知り合いだったりしますか?さっき一緒に歩いてたのが気になってて…。」

「そういえば私も気になってましたね。会うのは今日が初めてじゃないんですか。」

 

その質問をされた土方はなんでもないように言葉を発する。

 

「知り合いも何も

 

 

 

 

 

 

 

 

お前が言った沢庵づくりで使った巨大桶の製作者コイツだぞ。」

「面白そうだったから作りました。」

「元凶の一人がここにいた。」

 

そんな会話をしていると鬼灯達の後ろからブーツの音が聞こえて来た。間隔が短いため、音の主が走って来ていることが分かる。

 

「あぁ、月見さんがいらっしゃいましたね。」

「………鬼灯様。」

「なんですか唐瓜さん。」

 

しばらく言葉をためた唐瓜は近づいてきた月見の方を見て真顔で鬼灯に尋ねる。

 

「二人に今の月見さんの状態説明しなくていいんですか。」

「別に大丈夫ですよ。この程度で一々驚く方達でも無いですし。」

 

鬼灯はそう言って指をさした。唐瓜が釣られて指の先を見ると、そこにはニコニコと笑っている月見の手を掴んで一緒にぐるぐると回る茄子がいた。

 

「わ~~。」

「すっげ~月見さんに表情がある~。」

「茄子ぃぃぃ!?」

 

目の前の光景に思わず突っ込んだ唐瓜だった。しかしそんなことを今の二人が気にするはずもなく、とても和やかに会話し始める。

 

「ねぇねぇ月見さん、お仕事の話聞いた?」

「そういえば聞いてないなぁ。」

「あぁ、そういえば説明してませんでしたね。この前悟空さんが持ってきた案件ですよ。」

 

鬼灯の言葉を聞いた月見は目を細めてニヤリと笑う。

 

「なるほど、機能美のある拷問道具だね?わかるとも。」

「お前どうした、キャラ崩壊が激しすぎるぞ。」バリボリ

「沢庵齧りながら会話に参加しないで貰えます?あとその沢庵どっから出したんですか。」

 

いい加減飽きたのか土方がいつの間にか沢庵を貪っていた。ご丁寧にタッパーに入っているものを箸で食べている。

 

「…まぁいいです。とりあえず頼んでもいいですか。」

「構わねぇ。」

「はーい!」

「了解しました~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………。」ムニムニ

「何してるんですか月見さん。」

「……………………………。」

 

数日後、元の無表情に戻った月見が食堂の一角でひたすら顔をムニムニしていた。カツ丼特盛を持った鬼灯が話しかけてきたが、月見が喋る事はなくただ鬼灯の方を見るだけだった。

 

「……………………………。」

「……………………………。」

「………とりあえず何か喋ってもらえますか?」

「ーー……………。」フルフル

 

困ったように頭を振った月見は左腰のポーチからホワイトボードとペンを取り出すとそのまま文字を書き始めた。十秒後、ホワイトボードを反転させ、鬼灯へと見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スッ[狂気に飲まれてる間に表情変えすぎたせいで表情筋が筋肉痛なんです]

「どんだけ普段表情変えてないかがよく分かりますね。」

 




200年動かしてない筋肉を激しく動かしたらそらそうなる、ということで納得してください。
ちなみに件の拷問器具は「必殺技仕事人再現セット」になりました。首吊りに使える細い糸だったり、骨はずしが再現出来る器具だったりと結構種類があります。


あと余談なんですが、あといくつかやりたい話を書き終えたらFGOがメインの話を書く予定です。
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