閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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今回の章は原作第143話を中心に改編したものです。





それではどうぞ


幽霊日記一頁目

「あ、おーい月見くーん。」

「?アヌビスさ……………ま?」

 

月見が閻魔庁の裁判場を通りかかった時、後ろから声がかかる。その声に心当たりのあった月見が振り返りながら名前を呼ぶが次第に声が萎んで行く。月見の目線の先には鬼灯とどこか既視感のある男性が立っていた。

 

「?…?………………………………?」

「月見さん、合ってますよ。」

「どうもどうも、人間に化けたアヌビスです。」

 

男性…アヌビスを見て固まり、しきりに首をひねっていた月見の思考回路は鬼灯からの言葉で再起動し始める。

 

「…………………なるほど?」

「あ、やっと帰って来た。そんなに自分違和感ありますかね?ようやっとここまでこぎつけたんですけど。」

「…………イイトオモイマス。」

「思考停止しないで下さい。」

 

カタコトになった月見に鬼灯からのツッコミが入る。背中に宇宙を背負っていた月見はそのままアヌビスに尋ねた。

 

「ふむ、何故そのような姿に?」

「あぁ、ちょっと鬼灯様に現世を案内してもらおうかと思いまして。私今呪い特集の本書いてるんですけどそのうちの一つにアメリカの呪いの家を入れたいんですよ。」

「この間ちょっとそこの主と知り合いになったんで丁度いいかなと。」

 

鬼灯の言葉に若干不思議な物を見る目になる月見。

 

「いつの間にそんな人脈作ってるんですか。」

「私に言われても「いつの間にか」としか答えられませんし、何より人脈云々は貴方に言われたくありませんよ。医療関係の知り合い何人いるか答えてみなさい。」

「……………………てへ。」

「出来てませんし誤魔化されませんよ。」

 

月見はてへぺろのポーズをとろうとしたが、片目は包帯で塞がっている上、口角がピクリとも動いてないのでかなり違和感のある仕上がりになっていた。

 

「むう…美穂ならこれでいけるのに。」

「美穂さん限定だと思いますよ。というかロクな結末にならないでしょうに。」

「美穂さんって確か月見くんの奥さんでしたっけ。心なしか避けられて、あんまり会話したこと無いんですよね。まぁ月見くんのこと誉めると途端に笑顔になりますけど。」

「美穂さんの神嫌いと月見さん好きは筋金入りですからね。そう考えるとアヌビスさんは会話出来てる分安全なのか……。」

「手出されてないならまだ良い方ですよ。信頼してる神様なら気さくに話しかけますけど、嫌いな方だと最悪見敵必殺(サーチ&デストロイ)ですから。」

「え?私もしかして一時期命狙われてたりしました?」

「………………。」

「………………。」

「二人揃って目そらさないで下さいよ!」

 

気まずそうにアヌビスから目線を外す二人だった。

 

「そういえば月見さん、美穂さんと一緒に明日から休暇取ってましたね。何かご予定でも?」

「あぁ、単純に有給休暇の消費ですよ。僕らが休まないと皆「貴方だけに仕事をさせるわけにはいきません!」って言って休んでくれないので………。」

 

露骨に話を反らした鬼灯から尋ねられた月見は頬を掻きながら答える。それを聞いたアヌビスは感心したかのように声を漏らした。

 

「へぇ~、月見くん中々慕われてるんですね。」

「僕にはもったいないぐらい優秀な方達ですよ。」

「月見さんの部署、職場環境がかなりホワイトですし不満の声もほとんど無いんですよ。まぁただ毎年決まって同じ苦情が入りますけど。」

「「え?」」

 

鬼灯の言葉に驚く二人。アヌビスはともかく何故か理由を知らない月見に鬼灯は呆れたような視線を送る。

 

「自覚ないんですか。」

「何のことだか……。」

「「無理して一人で全部の仕事を終わらせようとしないで欲しい」っていうのが毎年貴方宛に来てるんですよ。貴方に医療関係の仕事を一任してる私が言うのも何ですし、何ならブーメランになってるかも知れませんがもう少し仕事量を減らして下さいよ。」

「いやぁ……少しでも皆の仕事を減らしたくて…。」

「そんなことするから貴方が休まないと他が休まなくなるんですよ。貴方、見た目から既にボロボロ何ですからもう少し周りへの気の使い方考えて下さい。」

「ふぁい………。」

 

表情こそ動かないものの耳が力なくペタンと倒れることで落ち込んでいるのが分かりやすい月見だった。そんな月見の様子を見て何か思い付いたのか、アヌビスがポンと手を叩き話し始めた。

 

「そうだ、せっかくなら月見さんも行きません?呪いの家行ったあとは自由に観光してもいいでしょうし。」

「ふむ、それもそうですね。護衛という名目で連れていけば恐らく経費で落とせますし。」

「…………美穂と一緒がいいです。」

「ええ、構いませんよ。目的地の館の主が女性なのでもしかしたら美穂さんと気が合うかも知れませんから。」

「分かりました。美穂に伝えて来ますね。」

 

鬼灯の言葉を聞いた途端耳を激しく揺らし始めた月見は、踵を返して医務室の方へ向かって走って行く。その足取りはとても軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、現世のアメリカかぁ。」

「うん、「もし1ヶ所ついてきてくれるなら旅費を経費で落とせる。」って鬼灯様が。その後は自由に観光していいってさ。」

 

医務室の一角にて、月見から説明を受けた美穂が腕組みをして唸っている。

 

「ん~、向かう場所にもよるけど………どんな所って言ってた?」

「呪いの家。何でも最近そこの主と知り合ってアヌビス様に案内する事になったって………あ、アヌビス様もいるけど大丈夫?」

 

少しばかり上目遣いで心配そうに見てくる月見に(なにこの可愛い生物…あ、私の夫だった。)と顔に出さず興奮してる美穂はニコッと笑いながら答える。

 

「別にあの人を狙ったりしないよ。貴方がお世話になってる人でしょ?抹殺リストからは外してあるからね。」

「うん、あんまり安心できない単語が聞こえたけどとりあえず大丈夫ってことでいいかな?」

 

一瞬聞こうかと考えた月見だったが、薮蛇でしかないと思い至りそのまま会話を続けることにしたようだった。

 

「ま、鬼灯様にはパスポート対策とかは用意しとくって言っといて。私は月見用の術式端末の調整しとくから。」

「分かったよ美穂、とりあえず行って来るね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タッタッタッタッタッタッ

 

「鬼灯様、アヌビス様、美穂からの賛成得られましたよ。」

「おや、早かったですね。それと、アヌビスさんはセーフゾーンでしたか?」

「元々リスト入ってたみたいですけどもう外してあるそうです。」

「え、マジでヤバかったんですか私。」

「月見さんに関わった神は漏れなく抹殺リスト行きでしたから。まぁ許されているんですから素直によろこんで置けばいいんですよ。」

(よろこんでいいのかなこれ…………。)




美穂さんは「月見を神に取られた」と認識しており、常識的な神や月神以外は基本的に大嫌いです。特に月見さんに近づく者はまず抹殺リストに入れてしばらく観察して月見さんに色んな意味で手を出さなそうだったら外し、手を出したりしたら即殺しようとしてます。彼女自身、普通の状態でも妲己を一方的に潰せるぐらいには強いので、キレたら月見さん以外の手には負えません。

帝釈天?見敵必殺に決まってるじゃないですか。

次回予告
「僕必要でしたか?」
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