閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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こちらの更新は久々になってしまいました。活動報告の通り、他の作品ともクロスオーバーさせていきます。聖杯戦争の方は構想がなかなか練れないのでもう暫くお待ちください。




それでは、どうぞ


聖人日記一頁目

「…もうちょっと持って行くべきかな。」

「あれ、月見?今日どっか行く予定だったっけ?」

 

とある日の朝、自室にて荷物を纏めている月見。化粧品の研究が一段落した美穂は実験専用の部屋から出てきた所でその姿を発見したのであった。

 

「あ、美穂。新しい乳液出来たの?」

「うん、成分弄くって色々したら良さそうなのが……ってそうじゃなくて。その荷物どうしたの?」

「あぁ、これ?」

 

美穂の問いかけに対し、月見はなんでもないかのように答える。

 

「知り合いへのお土産……というよりは差し入れかな?ちょっと現世まで行ってくるよ。」

「…………聞いてないんだけど。」

「?」コテン

「ぐっ、カワイイ……っ!」

 

不思議そうな雰囲気を出しながら首をかしげる姿に心臓を揺さぶられる美穂だったが、気にせず月見は話を続ける。

 

「だって美穂、今日予定あるって言ってたでしょ?確か、清姫さんと玉藻さんと一緒にショッピングに行くって。」

「うぐっ……そ、そうだけど……でも、変化の術かけてあげられないし……。」

「あ、それについては問題無いよ。」ガサゴソ

 

月見は自分の腰に着けたポーチの中から一つの小瓶を取り出し、美穂に見せる。透明なガラス製で、中身が良く見える綺麗なデザインをしている。その中には、透き通った水色の液体が入っていた。

 

「なにこれ?」

「薬草と僕の作った仙薬の対価って事でアスクレピオス様に送って貰った薬。鬼灯様も使ってる『ホモサピエンス擬態薬』を再現してみたらしくて、その試作品を頼んだの。」

「まって大丈夫それ?魔女の谷から怒られない?」

「本神曰く、

 

『材料から作り方まで全く別の作り方だからな、文句を言われる筋合いなど無い。』

 

だって。体が特殊だったり、身体構造が分かりにくい相手に飲ませて人間にして治療しやすくしたかったらしいよ。あとこれ飲んだら肉体の変化のついでにある程度の傷も治るんだって。」

「理由がなんともあの神らしい………。」

「まぁこれ提案したの僕なんだけど。」

 

元凶がここにいた。

 

「そんなわけで、今日に関しては問題無いよ。数が無いから普段使いは出来ないし、欠点があるから美穂の幻術の方が良いんだけどね。」

「欠点?」

「うん、馬鹿みたいに苦いのこれ。試験として飲まされたイアソンさんが泡吹いて倒れたってさ。僕の場合は味覚を狂わせたら何とかなるけど、試しに使ってみた鬼灯様は効果が切れるまですっごいしかめっ面だった。」

 

ナチュラルに巻き込まれている鬼灯をスルーした美穂だったが、自分の思い通りに話が進まない事に少しばかり焦っていた。そんなことになっているとは一切知らない月見は土産を風呂敷に包むと、現世用の服が入っている箪笥の引き出しを開けて中を探り始めた。

 

「どれにしようかな…。」

(くっ………このままじゃ月見が現世で変態に会った時とかナンパに会った時に守れないっ!)

 

割と下らない事を考えている美穂は暫くの間思考を巡らせ続けていたが、不意に下から自分を見上げる視線に気が付く。そこには、いつの間にか着替え終わった月見がいた。

 

「どうかしたの、美穂?」コテンッ

(ヴァッ!!)

 

薄茶色のダッフルコートに紺色のジーンズ、白いスニーカーを身に纏い、パステルグリーンのキャスケット帽子を耳を隠しながら被った月見は、肌が見える部分や顔の半分を覆う包帯や隠しきれない火傷の跡があるものの、現世のモデルと言っても通用するような出で立ちとなっていた。そんな状態の月見(大好きな夫)の上目遣い+首傾げを真っ正面から受けた美穂は両手で心臓の辺りを押さえながら膝から崩れ落ちた。

 

「クッソカワ…………。」

「大丈夫?」

 

突然の行動に少々戸惑う月見だったが、すぐさま復活した美穂は月見の肩を掴んで真面目な声色で話し始めた。

 

「月見………襲われたいの?」

「何を言ってるの美穂?」

「こんな魅力的すぎる姿見たら変態共が黙って無いに決まってるでしょ?只でさえ月見は可愛いって言うのに………。」ブツブツ

 

とてつもない圧をかけながら迫る美穂。しかし月見はなんでもないかのように眼前の美穂に向けて口を開いた。

 

「大丈夫だよ、同行者もいるし。」

「同行者?」

 

月見の言葉の真意を知ろうと口を開こうとした瞬間、

 

コンコン

 

「おい、入っても良いか?」

 

扉がノックされ、二人にとってはとても聞き馴染みのある声が聞こえてきた。声の主は返事を聞く前に扉を開ける。

 

「ったく、師匠はワーギャーワーギャーうるせぇわ、天部の奴らは頭がとち狂ってるわ疲れが取れねぇんだよなぁ………ん?」

 

愚痴りながら入って来た声の主……現代風の服を身に纏った悟空は部屋の中で月見に向かって美穂が抱きついている様子を見て、呆れたような視線を寄越す。

 

「朝っぱらからお盛んだなお前ら、相変わらずお熱いようで何より。」

「こないだぶりだね、美猴兄さん。あんまり褒めなくても良いんだよ?」

「皮肉に決まってんだろ。」

 

悟空は一度ため息を付くと、頭を掻きながら二人に背を向ける。

 

「さっさと行くぞ月見。様子見る限り準備は出来てるだろ?」

「うん、大丈夫。それじゃ美穂、行ってくるね。」

 

その言葉の直後、月見は抱きついていた美穂の額に軽くキスをし、ほんの僅かながらに微笑んで頭を撫でた。美穂の力が緩みその隙に拘束から抜け出した月見はそのまま荷物とバッグを掴んで部屋を出て悟空を追いかけて行った。一人残された美穂は暫くの間呆然としていたが、やがて震えながら静かにベッドに体を預け、枕に顔を埋めてしまったのだった。

 

 

 

「おい、月見。あんなもんどこで覚えた?」

「あんなもんって?」

「さっき美穂の奴にやってたじゃねぇか。」

「あぁ、あれ?リリスさんに美穂にしてあげたら喜ぶかも知れないからって教えられた事なんだけど。」

「…………お前今日の夜気を付けとけよ。」

「??」

「こっちの話だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ醤油買っとかないと……あと味噌もかな。セールっていつだったっけ?」

「ちょっと漫画読みたいから借りてもいい?」

「別に良いよそれぐらいなら。あ、でも汚さないでよ?」

 

同時刻、東京都立川市のとある場所にあるアパート「松田ハイツ」の二階の端の部屋の中で二人の成人男性が言葉を交わしていた。見覚えのあるパンチパーマのような髪型で、長い耳たぶをもった青年は台所下の調味料入れの中を探っており、それに話しかけたロン毛で茨の冠を被った青年はブラウン管テレビの近くに置いてある本棚の中を物色していた。

 

「大丈夫だよ~……あれ?なんか漫画の数増えた?」

「…………気のせいじゃないかな?」

「うーん……そうだね!」

(危ない………また手塚治虫作品が増えたのがバレるところだった………!)

 

一瞬ロン毛の青年の言葉にドキッとしたパンチパーマの青年だったが、違和感がスルーされたことにより心の中で安堵の息を吐いていた。すると、パンチパーマの青年は突然何かを思い出したかのように口を開いた。

 

「あっ!そういえば今日商店街で特売やってるんだった!」

「そうなの?」

「うん、沢山買い込んで節約しなきゃいけないから、手伝って貰える?何か気になる物一つの位なら買ってもいいし。」

「本当!?じゃああのわたパチっていう駄菓子?が気になってたんだけど、いい?」

「うーん……まぁ、100円以内なら。」 

 

そんな会話をしていた二人だったが、不意に部屋のチャイムが鳴る。

 

「聖さーん?松田だけど~。」

「?はーい。」

 

大家が尋ねて来た事に首を傾げながら玄関の近くにいたパンチパーマの青年が扉を開けた。扉の先には一人の老婆がいる。

 

「松田さん、何かありましたか?」

「あぁ、最近ここら辺でひったくりが多くってねぇ。あんたらは大丈夫だろうけど、一応忠告にね。」

「そうなんですか、お気遣いありがとうございます。」

「孫が世話になったからねぇ。あとは時折騒がしくしなくなったらいいんだけどねぇ……?」 

「うぐっ………注意しておきます。」

 

知り合いが起こすあれこれなど、心当たりが多すぎる青年は詰まりながらを返事をする。訝しげにそれを見ていた松田は挨拶をしてから階段を降りていった。その後、

 

「どうかしたの?」

「あぁ、何か最近ここら辺でひったくりが起きてるらしくてね。」

「私達ももしかしたら被害に遭うかもしれないね。一回位は見てみたい気もするけど。」

「………君は特に気を付けるべきだよ。」

 

ほのぼのと話すロン毛の青年に対し、パンチパーマの青年は深刻そうな声色で忠告する。とても真面目に語り掛けてくるその様子に困惑するロン毛の青年は理由を尋ねた。

 

「えっどうしてだい?」

「だって君の物を盗ったと判定された者は……

 

 

問答無用で次開ける扉が地獄(コキュートス)に繋がってるんだよ………………!」

「あっ……そうだったね。」

「だから君が荷物を持つ場合は盗られないように気を付けてね!国際問題にも繋がりそうだから。」

「国際問題?」

 

突然スケールが広がった話にロン毛の青年が首を傾げる。

 

「日本の地獄は日本人全員の人生を記録して、その全員の死後を裁判にかけるからね。ひとりでも裁判所か死ぬ前に外国の地獄に連れていくと色々と面倒な事になるというか………。」

「そう考えると私達の所結構判定ガバガバだねぇ。」

「君の周囲が魔境なだけだよ。」

「うん、まぁ大丈夫だよきっと。」

「……ならいいんだけど。」

 

少し呆れた様子のパンチパーマの青年だったが、ふと何かを思い出したかのように声をあげた。

 

「あっ!そうだ今日月見さん来るんだった!」

「"月見さん"?」

「そういえば君は会ったこと無かったっけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブッダの知り合いにそんな名前の人いたっけなぁ。」

「名前とかは一切残されて無くて功績だけ広く伝わってる人だからね。まぁ意外とノリがいい人だからイエスも仲良くなれるんじゃないかな?」

 

記憶の中を探るロン毛の青年……イエス・キリストと彼に笑いながら話しかけるパンチパーマ(螺髪)の青年……仏陀。二人の聖人男性は、休暇の日々を楽しむのであった。




と言うわけで、聖☆おにいさんより、目覚めた人ブッダ・神の子イエスの登場です。正直、前々からやろうと思ってました。

設定等は基本的に鬼灯の冷徹ですが、天界側の設定は聖☆おにいさんを参考にしようかなと思います。まぁサタンとかベルゼブブは鬼灯の冷徹側ですがね。聖☆おにいさんのルシファーとベルゼブブが好きな人は申し訳ありません。
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