閻魔庁の医務室うさぎ   作:ゲガント

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あけましておめでとうごさいます。皆様、お久しぶりです。他の小説の執筆だったりスランプだったりリアルでのゴタゴタだったりでめっきりこの小説の更新が途絶えていたゲガントです。まだまだ期間が開きそうですが、それでも気長に待ち続けていたけたら嬉しいです。


サブタイトルの読み方は「つきのこにっき」になります。言葉の通りです。





それでは、どうぞ。


月子日記一頁目

「あ、そうだ。」

「ん?どうしたんだよいきなり。」

 

閻魔庁の資料室にて、亡者の人生を記した巻物を整理していた茄子がふと思い出したかのように声を上げた。荷台を使って巻物を運んでいた唐瓜は何事かと尋ねた。

 

「いやぁ、もうすぐ俺の父ちゃんの誕生日だからさ、父ちゃんになに送ろっかなぁーて思ったんだよ。」

「あー、もうそんな時期か。」

「唐瓜だって母ちゃんがもうすぐ誕生日じゃん。なんかしないの?」

 

すっかり忘れていた様子であった唐瓜だったが、暫く思考した後、更に深く考え込み始めてしまう。

 

「つってもなぁ~、下手に選ぶとかさばるだけだし……ほら、あの家姉貴の通販の段ボールでいっぱいだろ?どうせなら消え物の方が場所取らないし………。」

「カタログでも見る?」

「そういうのは仕事が終わってからにしてください。」

「「あっ、鬼灯様!」」

 

そこへ荷物を乗せた台車を押している鬼灯が話に割り込んでくる。どうやら耳には入っていたらしく、

 

「親御さんの話ですか?」

「えぇまぁ。」

「ねぇねえ、鬼灯様は誰かへの誕生日プレゼント何が言いと思う?」

「おいこら茄子!」

 

茄子の問いに鬼灯は顎に手を当て、思案するように上を見る。

 

「そうですね……私自身自分の誕生日を知りませんし、他人の誕生日を祝うというのもあまりありませんね。古くから生きる鬼はそんな感じですし。」

「そっか、日にちとかの概念が無かったもんね。」

「贈り物は基本的にほかの王の方々や外交関係で年や季節の節目に贈るぐらいでしょうか。それに、親という存在自体私にとってはよく分からない感覚ですし。」

「「あっ……。」」

 

鬼灯が孤児であり、人柱として死んだ事を思い出し思わず口を押さえる二人だったが、鬼灯本人がそれを咎めることは無かった。

 

「あぁ、お気になさらず。馬鹿にしてる訳ではないのは分かっていますし、事実なのは変わりません。」

「そうですかね………。」

「あーでも、よくよく考えると親がどんな人かあんまり知らない人って多いんだよなぁ。」

「例えば?」

「ほら、月見さんとか美穂さんとか。あの人らの親って多分動物でしょ?どんな感じだったのかなぁって。」

「………言われてみれば気にしたこと無かったな。逸話は有名だけど、その前まで書かれてることなんて無いしな。」

「あの二人も自分の生みの親に該当する存在を知りませんよ。まぁ自我が芽生えた頃から一匹だったと自覚してる月見さんは兎も角美穂さんに関してはほぼ自然発生で生まれたらしいんですよね。分かりやすく言えば精霊的な奴です。何と言っても狐の祖神ですから。」

「美穂さんってそんなに偉いんですか?」

「所謂全ての狐のトップですよ。月見さんも月見さんで兎の中での立場はかなり上位ですし。」

「そんなスッゴい存在まで働いてるんですかこの場所。」

「それは今更というものでしょう。なんなら美穂さんに関しては天照大御神の転生体の育ての親ですし。」

 

スケールの大きさに思わず宇宙を背負う唐瓜。しかしその一方で反応を示しそうな茄子は首を捻っていた。

 

「…………。」

「どうかしましたか茄子さん。先程から静かですが。」

「いやぁ、そういえばあの二人って砂糖吐きたくなる程いちゃついてるし、おしどり夫婦って言われたら凄い納得するけど、その割には親って感じはしないよなーって。何というか近所に住んで世話してくれる新婚夫婦って感じ?」

「何でそう例が具体的なんだよ………。」

「というか、月見さんと美穂さんもう結婚して二千年近く経ってますよ。

 

 

 

それに血の繋がった子供もいますし。」

「「………………はい?」」

 

呆然とする二人を他所に当時を懐かしむように目を細める鬼灯は思い出したかのように話を続ける。

 

「一時期は閻魔庁の職員のアイドルみたいな感じでしたね、子供時代から仕事の手伝いもしてましたし。最近までは様々な庁の助っ人として働いてましたし、話を聞く機会はあったのでは?」

「いやそもそも子供がいるとか初耳ですよ!?」

「へー、月見さん子供居たんだ~!どんな人どんな人?」

 

唐瓜は驚愕で目を見開き、茄子は興味津々といった様子で目を輝かせる。本質が対照的な二人であるが、その関心は今まで情報の無かった人物へと向けられている。

 

「そうですね……強いていうのであれば無個性的で個性的、でしょうか?見た目は二人を色濃く引き継いでるので変化の術を使ってなければすぐに分かりますよ。まぁ今は現世で働いてますが。」

「何で現世なんですか?」

「調査のため現世へ長期出張に行ってもらってるからですよ。かれこれもう3年位ですかね。」

「そんなに!?」

「もう数年位は現世を基本に動いて貰うつもりです。」

「仕事内容ってどんなの?」

「潜入調査……みたいなものが主ですかね。現場のリアルな様子を調べてもらっています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄でそんな会話をしている一方、現世にて兄妹仲良く並んでいる立夏と立香は他愛もない話をしながら家路を歩いていた。

 

「んー!疲れたぁ。今日は早めに終わって良かった!」

「まぁ俺らの部活は自由度高いし、新入部員も少し落ち着いて来たからね。」

「放課後に余裕があるってのは魅力的でも内容が内容だからあんまり人気無いもんなぁ。にしても、中学校なのに歴史研究部みたいなのがあるって珍しいのかな。」

「珍しいんじゃないかな?あんまし他に聞いたこと無いし。面白いから気にしたこと無いけど。」

「なんかやけにスピリチュアルな感じの本が多いよねウチの学校。何であんな妖怪関係とかが揃ってるんだろ。」

「ホントの神様とかと関わってる自分達が言える義理は無いと思うよ。」

「………それもそっか!」

 

深く考えるのを止めた立香を説き伏せた立夏だったが、ふと何かを思い出したかのように顔を上げる

 

「あ、深海さんの所呼ばれてたんだった。ちょっと行ってくる!」

「いってらー。」

 

立香は鞄を持ち直して駆け出す立夏の背中を気の抜けた声で見送った後、そのまま帰路につく。のんびりと機嫌よさそうに歩いていたが、住宅街の中にある一軒家の前まで辿り着くと、鍵を差し込んで捻る。ガチャッと音を立てた扉を開くと声を上げる。

 

「たっだいま~……ってあれ、しほにぃとつきねぇ帰ってたの?早かったね。」

「今日はお休みだった、お帰り立香。」

「立夏は一緒じゃないのか?」

「ちょっと寄るところがあるって言ってどっか行っちゃった。まぁすぐに帰ってくると思うよ。」

 

靴を脱ぎ、リビングを覗き込んだ立香を出迎えたのは一組の男女だった。どことなく似ていて、艶のある茶髪、美形と言える容姿を持つ二人………白穂(しほ)月乃(つきの)は家事をしている最中だったようで、白穂の手には掃除機、月乃の手にはコロコロが握られていた。

 

「今日の晩御飯どうするのー?」

「まだ決めてないな、何か希望はあるか?」

「うーん……昨日は私のリクエストだったし、二人は麻婆だろうし……お兄ちゃんに決めてもらう?」

「ただいまーっと。」

「噂をすればなんとやら。」

「クトゥルフさんの所から大量に海産物もらったから運ぶの手伝ってー。」

 

玄関から響いた立夏の言葉に、リビングに入ろうとしていた立香とくつろぎ始めようとしていた月乃と白穂はわらわらと玄関に集まる。

 

「うわぁほんとにすごい量。ちゃんと鯵とか人数分入ってるし。」

「おぉ、カニもある。季節じゃないが、鍋でもやるか?」

「白菜余ってたっけ。」

「昨日八宝菜作るために買ったやつが半玉位残ってた筈…でも4人分にしては足りないかなぁ。」

「買い物なら俺が行くぞ。」

「ついでにデザート買って来て。」

「アイスで良いか?」

「お高めのやつ4つ。」

「はいはい。じゃ、行ってくる。」

 

いつの間にか財布とエコバッグを手に持っていた白穂はそのまま玄関から出ていく。三人はそれを見送るとそのまま海産物の整理へと移るのであった。

 

「あ、そうそう、近々お父さんとお母さんがウチに来るって連絡来たから。」

「ってことは?」

「もしかして?」

「多分回らない寿司か食べ放題じゃない焼肉屋。」

「「わーい!」」

 

 

 

 

 

「あ-、そういえばもうすぐ醤油切れるっけか。買い足しとかなきゃな。あとは豆腐と豚肉………冷凍する用の物も纏めて買うとして、今日セールとかあったか………ん?」

ピッピッ

『卵と牛乳も無くなりかけてるから追加で。』

「うわ、まじか。」

 

月乃から送られてきたメッセージに整った顔を少しだけしかめる白穂だが、ついでに買うことを心に決め返信しながら道を進む。初夏とも言える気候で、長袖を着るには少しばかり暑い。

 

「白菜売ってっかなぁ……。」

 

しかしその程度ではカニ鍋を遂行しない理由にならないようで、目的は変わらずそのまま近所のスーパーまで足を運ぶ。

 

「うーさぎうさぎ何見て跳ねる……っと?」

 

歌を口ずさみながら歩いているとふと自分のスマホが震えている事に気が付いた。自分の双子の姉からの連絡かと画面を見るが、そこには別の人物の名前が表示されている。画面をタップして電話に出て耳に当てたと同時にスピーカーから彼にとって聞き馴染んだバリトンボイスが流れてきた。

 

『あぁ、白穂さん。少々お時間よろしいですか。』

「えぇ、構いませんが……それにしても急ですね、そちらで何か問題が起きましたか?」

『いえ、地獄ではなく貴方達のいる現世での話です。お二人に少し動いていただくと思うのでご連絡を。』

「………月乃も動かすと言うことは邪神案件ですか?」

『そちらはこの間の藤丸兄妹を挟んだクトゥルフさんとの交渉で一区切りつきました、拷問として亡者を喰らう事を正式に許可しましたよ。そちらではなく妖怪関係です。』

 

最初の世間話をするような雰囲気は無く、スッと細められた目には

 

「現世には原則的に不干渉なのでは?」

『少し厄介な妖怪の封印が解かれましてね。木霊さんや木の神々が再封印を依頼されているようなんです。最近に『人間が木になった』というニュースが耳に入るようになったと思いますが?』

「ありましたね……何かの比喩かと思ってましたがホントに木になってたんですか?」

『えぇ、人間が養分になるのではなく人間が木に変化するので少々厄介なんですよ。その時点で人から外れてしまうのでその状態で死んでしまえば地獄で裁くことが出来なくなります。最悪、その場所に怨念が漂うことになってしまうので早めの対処をお願いします。』

「方法はどうします?悪事を働く妖怪と言えど、下手に地獄に叩き落とすのは憚れますが。」

『なら再封印を、ついでに異界に引っ越していただきましょう。それを利用しようとする魔術師の姿も確認されているのでお気をつけを。』

「了解しました、鬼灯様。」

 

その言葉と共に通話が切った白穂はそのまま携帯を操作して最近のニュースを見始める。幸い、情報となりそうな記事は時間も掛からず発見できたようだが目を通した所で少し顔をしかめた。

 

「うわ、トップニュースになってる………少し急いだ方がいいな、明日も休みだし今日のうちに終わらせるか。」

 

一先ず買い物を済ませようと白穂は再び歩き出す。

 

 

一瞬だけ、彼の姿が陽炎のように揺らいだような気がした。

 

 

 

 

 

「ねーねーおかーさん、そとのおにーちゃんかっこいい!」

「あら、もう色を知る年になっちゃったのかしら。どこら辺がかっこいいの?」

「あのねあのね、なつまつりみたいでもふもふ!」

「夏祭り?もふもふ?…………そんな男の子居ないわよ?」

「えーっ?まっしろなきつねさんみたいでかっこよかったよ~。」




はい、新年早々にクー・フーリンをレベル100にしてカレン様をマイルームに置いてガチャした結果、言峰神父が10連の一番最初に来て爆笑したゲガントです。もう四年近くやってますがそろそろアンリマユが来てほしい今日この頃。

多分Fateをある程度知ってる人なら今回出てきた新キャラが誰か分かると思います。


兎年記念

◯鬼と兎

「あけましておめでとうごさいます、鬼灯様。」
「あけましておめでとうごさいます、月見さん。全力の餅つきの後ですが、体調の方はいかがですか?」
「とりあえずは大丈夫そうです。多分明日辺りに倒れるでしょうけど。」
「おや、随分と余裕ですね。昨年までは終わった直後に倒れていたというのに。」
「新しい薬のお陰です。『一時的に無尽蔵に力を引き出せるようになる』という効果のままで副作用を抑えるのに結構時間がかかりましたよ。ま副作用が遅れて出るので他の方に配布できませんが。」
「その副作用とは?」
「反動が24時間後に来ます。」
「そこまで引き伸ばせるのであればむしろ有効ですが………他にもあるのでしょう?」
「三日間程思考が正常に出来なくなります。」
「(非合法の)薬じゃないですか。」
「(特に危険性のない)薬ですよ?」
「……月見さんの場合狂ってから更に狂えば元通りを素で行くので大丈夫でしょうが、他の獄卒には配れませんね。私が狂うと業務が滞るでしょうし。」
「あと多分明日美穂が動けなくなった僕を食べる(意味深)と思うのでそこのところよろしくお願いします。」 
「一応貴方の方が力が強いんですから抵抗の一つや二つしてくださいよ。」
「別に嫌じゃないので………。」
「お前も色ボケじゃねぇか。」
「雄の兎ですもの。」



「そういえば、鬼灯様もそろそろ身を固められては?」
「おや、随分といきなりですね。私にその気はありませんが、理由を伺っても?」
「只の雑談用の話題です。よくよく考えると僕の交遊関係には既婚者が多いなと思いまして、気になっただけですよ。」
「………閻魔大王にも似たような事を聞かれましたが、別に興味が無い訳じゃありませんよ。」
「そうなんですか?ふむ、身近な方だと………お香さんとかですかね。」
「私特に何も言ってませんが。」
「確か鬼灯様の好みって某番組のミステリーハンターみたいに恐れをものともしない明るい人でしたよね。あとあまり従順すぎないとか………そう考えるとお香さんがぴったりなのでは?」
「確かに割と我が強いですが………やめにしましょう、何処かの記者に聞かれたらスキャンダルとしてばらまかれそうです。」
「そうですか、残念です。」



「こうして地獄で働き初めて2000年以上ですか。長いのやらあっという間だったのやら……。」
「やはり、純粋な神では無い分そういった感覚は曖昧ですか。私自身は仕事三昧で意識したことはあまりありませんが、元々人だった者としてはどうなんでしょうねぇ。正直、『鬼灯』という名前が与えられる前の記憶が曖昧なので人としての部分は無いと言ってもいいんですが、それを完全忘れてしまえば私では無くなる気がします。」
「………きっと貴方の原動力が恨みだったからですよ。人として息絶え鬼と成った今もなお弔われず、その怨念は乾いていたとしても忘れられず根幹にある。だからこそ容赦なく人を裁けるのでしょう?多分、貴方には祟り神としての側面も備わっているんです。」
「そんな御大層な立場ではないんですがね。」
「菅原道真公とかと比べちゃダメですよ?あの人達は知名度もさることながらやった事がやった事なのでその恐れが信仰として成立しているんですから。あと立場云々は謙遜を言えることじゃ無いでしょう、地獄のNo.2さん。」
「こうして振り返ると奇妙な人生もあったものですね。」
「良い縁が多かったのでしょう。」
「………それは否定しませんよ。」




「さて、そろそろ閻魔庁に行きましょう。多分もう新年会が開かれてるかもしれませんし………あぁそうだ、鬼灯様。」
「何ですか?」
「これからもよろしくお願いしますね。友人としても、同僚としても。」
「えぇ、こちらこそ。」




◯いつもの

「ねぇ月見、これどう?」
「うん、まぁ、似合ってるよ?」
「え~、折角体ごと作り替えて兎になってるって言うのに、もうちょっと良い反応してくれてもいいじゃん。」
「何と言うか、目のやり場に困ると言うか……確か、何だっけ、バニーガールだっけ。美穂のスタイルなら殆どの服を着こなせるだろうけど、その、やけに布の面積が小さいというか……。」
「………………へぇ?」ニチャァ
「美穂、どうか……っあ。」ビクンッ
「もう、月見ってばムッツリなんだから~♥️」
「みほッ、そんな、激しく、触らないで……んんっ。」
「え~?そんな事言っちゃうの?体の方はこんなに正直なのにね♥️」
「はぁ……はぁ……。」
「体、火照っちゃったね♥️大丈夫、そのままは体に良くないし、私が発散させてあげるから♥️その代わり月見も私の火照りを冷ますの手伝ってね♥️」
「…………うん。」









「で、それですか、まぁそうなるだろうとは思いましたけど。せめて首の噛み跡とそのヨレヨレの服どうにかしてください。」
「…………………。」
「生きてますか?」
「…………………あい。」
「死にかけですね。」
「部屋だけ、時空を歪めて、五時間を、一週間位に引き伸ばして、ずっと、です。」
「馬鹿なんですか?いや、友人を疑うのは良くありませんか、馬鹿なんですね。」
「…………別に、嫌じゃ、ないですし。」
「業務に影響がでないようにしてくださいよ、この色ボケ夫婦。」
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