ハリーポッターと女王陛下の魔女   作:たはまらたはまさまたらた

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Senseless killing

「女子トイレの3番目…」

 

そんなふうに呟きながら少し急ぎ足で歩けば隣をすれ違った御婦人から変人を見るような目で見られる。たしかに変人に見えたのだろうが…

 

3番目の個室の中に入りトイレの水タンクの蓋を小声で唱えた浮遊呪文で浮かせてそっと床に置き中に貼り付けられた注射器と防水袋に入れられた衣服、そして愛銃とキー、通信機を取り出す。服をすべて脱ぎ捨てその一部を強く噛み締めた上で注射器の保護キャップを外し腕に突き刺して内部の緑色に発光する液体を押し込めば変化は数秒で起きる。

 

内部で骨が折れるような音がして神経が焼き切れるな目のチカチカとする感じが襲う。

遅れて叫び声も上げられないような苦痛が駆け巡る。

時間としては数秒だ、必死に服の布を噛み締めて痛みに耐える。体中から脂汗を吹き出させた頃には痛みもスッキリと収まった。

 

目線の高さが上がり身体の体型はよりメリハリがしっかりとする。自己中心的な評価ではあるが美少女から美少女と美女の間くらいのまさに魔女のような年齢の見た目だ。

 

美しい黒い瞳は夜景を反射して燦めく夜のテムズ川のように、でも同時にどこか誘うような妖しさを持ちサラリと流れる淡い黒色の髪は透き通った夜空のよう…それらとは正反対に白く美しい肌とメリハリのある身体は否応なしに男を興奮させるだろう。

 

まさに魔女にふさわしいその美しさは数年もすれば彼女が手に入れるものではあるが今はまだ魔法薬に頼らなければならない。

 

どうやらMは多少なりとも改善の努力をしたらしい。吐血と鼻血は起きなかったししばらく味がわからないくらいの苦さもなかった。

 

脂汗を脱いだ服で適当に拭くとそのまま着替えの服を着る。白いシャツにスキニーデニム、動きやすさを重視した運動靴、ロンドンの街なかにいる女性として溶け込むには全く問題がない。ポケットに車のキーをねじ込み白いシャツの上から薄手の上着を着込む。胸の下辺りにホルスターを谷間の間にグリップ部分が来るように取り付けセーフティを確認しながら相棒をそこに差し込んだ。片耳に通信機をねじ込みジッパーを閉めれば出来上がりだ。

 

比較的胸部のある私は薄手の上着でも銃の形が出ないようにできる。ドレスコードのあるホテル内でこんなカジュアルな格好をしているのを見られればあまり良い顔はされはないが地下の駐車場に行くなら許されるだろう。

 

トイレを出て廊下を小走りに進みながら普段と違う身体になれる。何度かなったことはあるが慣れないものは慣れないのだ。

 

エレベーターに乗り込みボタンを押してから扉の前には立たずに壁に張り付くようにすればチンッと小気味良い音とともにスルリと扉が開く。少し遅れてドサリと制服姿の警備員がエレベーター内部に倒れ込んできた。

 

頭部に綺麗すぎる貫通痕があり背中にもいくつか焼けたような跡、抜きかけた自動拳銃…グロック17がエレベーターの箱の中で転がる。マニュアルセーフティではないなら発泡されたのかは確認しようがない

 

数発の燻りだす目的で撃たれた魔法の後に本命の貫通系の攻撃魔法…間違いなくイギリス魔法省の役人である闇祓い程度ができるようなことではないし純血の名家が飼っている雇われ魔法戦士の戦い方でもない。

 

高度な魔法戦闘の訓練を受けた"兵士"の殺り方である。

 

現状魔法界において組織だった軍事組織を持つ国は少数、一つはアメリカ、そもそもスカウラーと呼ばれる傭兵崩れや法執行機関がないことをいいことに新大陸に押しかけた魔法犯罪者を排除することを目的にしていたアメリカ合衆国魔法議会は当初英国魔法界を手本に闇祓い局を設置したものの人数の少なさ、装備の不十分さ、何より組織的な戦闘への脆弱性が顕になり大陸魔法警察と呼ばれる半徴兵制のような採用方法と魔法界発の戦闘教範を作成しそれに沿って訓練された治安維持組織が独立戦争時にボランティアで協力した者やその後の南北戦争、1次、2次大戦を経て重武装化し最終的にノーマジ化、結局のところマグルと手を結ぶことを選び更なるノウハウを得た大陸軍と呼ばれる魔法界最大にして最強の軍隊。その強さはグリンデルバルドが暴れまわったヨーロッパに対してマグル界におけるアメリカの参戦と同時にノルマンディーから上陸した大陸軍は従者の軍隊の主力を一瞬で壊滅させたほどなのだ。

 

だがまぁ、今回はアメリカではないだろう。彼らはもっと派手にやるし何より銃火器との併用で戦う以上こんなふうな死に方ではない。

 

となれば候補は絞られる、まずドイツ、ドイツ魔法省の秘密警察はナチのゲシュタポの流れをくむある意味でエリート組織、警察と言っているもののそれなりの規模の特殊部隊と同義。

 

2つ目はロシア魔法界統治局のロシア魔法内務局、彼等は旧ソ連時代秘密裏にマグルと協力していたし今も続けている可能性が高い。旧式とはいえ大量の兵器類を装備もしている。

 

そして最後、国の組織でもない流れの傭兵、これが一番面倒臭い。戦闘慣れしている上に抗議の仕様もなく生け捕りにしないと雇い主もわからない。

 

車のキーを取り出し…とある一つのボタンを押せばアストンマーティン・ヴァンテージがV8エンジンの音を地下の駐車場に響かせ走り出した。

 

少し暗い地下にいきなり赤や緑の閃光が迸り音がするのとのがエレベーターの箱内にいてもわかった。

 

一気に張り付いていた壁から離れ地面に転がったグロックを広いエレベーターから走り出て一番近くの車の後方に隠れそっと脇から様子を窺う。

 

閃光の頻度と数的に2名ほど、姿勢を低くしながら走り出しグロックを構える。普段の差格好なら無理だがこうして成長した姿なら扱える。

 

こういう場所ならむしろ魔法は不利だ、特に私のようにまだ未熟な場合…撃ち殺したほうが早い。

 

走り出したヴァンテージに対して二人のうちひとりは通路に堂々とでて撃ちまくっておりもう一人は離れた柱の影から乱射している。

 

柱の影に隠れた方に狙いを定め一気に近づき3回引き金を引く。

 

一発目が腰のあたりを、2発目で心臓付近を、最後の一発が頭部を貫通して死亡した。

 

魔法とは異なる爆音がすれば当然怪しまれる。

 

「おいっ!どうした、クイニー?返事をしろ!」

 

そう言って魔法を撃つのをやめ振り向いたのが運の尽き、彼の真後ろに停車した車のキーの別ボタンを押せばフロントグリルから銃身が飛び出し飛び出した弾丸は彼の足あたりに刺さったようだ。強力な電撃が走りその場で数回震えると失神した。

 

血溜まりになっている場所に転がるクイニーと呼ばれた死体を見てみればなるほど、女性だ。首元から下げられたロケットには男性と…子供だろうか。幸せそうな顔をした女の子が母親に抱きついている。魔法界のものだからかしっかりと動いていた。

 

「温かい家族を冷たくしてしまったらしいな私は…」

 

なんてつぶやいて車のトランクを開けまず死体に洗浄魔法をかけてから放り込む。次に男性に生ける屍の水薬なんて呼ばれる魔法睡眠薬をダッシュボードから取り出した無針注射器で注入する。身分証明書と杖、武器の類を抜き取り後ろ手に拘束。両足を撃った上で止血。

 

尋問の間持てばいいのだ。

 

「M、聞こえますか?」

 

『聞こえているわ、メアリー。いつまでそこでぼーっとしている気?早く車両を護衛しなさい』

 

「おそらくその必要はないでしょう…襲撃者はこちらに来ました」

 

『殺してないでしょうね?』

 

「片方はまだ温かいです」

 

『及第点よ、なら今すぐ送信した地点に来て』

 

「ホグワーツ急行に乗り遅れちゃいますよ?」

 

『死臭を漂わせて乗り込む気なの?』

 

「仕方ないでしょう」

 

『いいわ、じゃあキングス・クロス駅に急いで。そこにチケットとトランクを持った連絡員がいる。合言葉は午前11時』

 

「了解」

 

耳から通信機を取外し踏みつけて破壊、血で汚れた上着の中に相棒を包んで使ったグロックはよく吹いてからそこら辺に投げ捨てた。今更ながらだがよく警察が来なかったものだと思い見上げてみれば全ての監視カメラのコードは切られている、ずいぶんとちぐはぐな印象である。

 

先程の二人からはプロという印象を受けなかった。狙いはバラバラだし警戒心も薄い、まるで学生か一般人…では誰が警備員を殺しこの隠匿作業をしたのか。すでにこの任務には暗雲が立ち込めているようにすら思える。

 

待てよと思い急いでトランクを開けて女性を確認してみれば思わず車の縁を叩いた、暗くてよくわからなかったが男女共ホグワーツの制服を着ている。ネクタイは緑色、スリザリンだ。

 

なんとも言えない気分でトランクを閉じ運転席に乗り込んでシガーソケットを使いキャメルに点火すると体に悪い煙が気分を落ち着かせてくれる。

 

ゆっくりと車を出しキングス・クロス駅に向かって私は僅かな吐き気を感じながら只管に車を走らせた。




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