ゴルシ!おい!大丈夫か!
有マ記念を1着で駆け抜けたゴールドシップが、普段通り俺に駆け寄り蹴りを入れようとしていた愛バが、目の前で崩れ落ちる
しっかりしろ!おい救護を!早く!…脈もある…呼吸も…ゴルシよく頑張った、お前が1着だ!…しっかりしてくれ!おい!
「トレーナー…」
!!!どうした!?今救護班が来るからな!安心しろ!俺が付いてる!
「あのさ…このヘッドギア…
アタシが…ウッ…
…」
大丈夫か!!!???返事をしろ!……ああ……
こっちです!ゴルシをお願いします!!!
ゴルシ…無事でいてくれ…一緒に宇宙に行くって約束したじゃないか…
「トレー…ナー…」
おお、ゴルシ!よかった…
大丈夫だぞ!検査の結果も異常なしだ!全力出し過ぎて酸欠だったらしい!
「アタシの…ヘッドギアは…」
検査の時外しただけだ、みろ!俺の頭に
「なんでアンタが付けてんだよ…
返せ…
……」
…おい!
返事しろ!
…看護師さん!先生!ゴルシが…!あああああああああ!!!!!助けてくださぁあああい!!!!
いやトレーナーさん酸欠だったって言ったでしょもう呼吸も戻ってるしすぐ落ち着きますよ
少し休ませてあげなさい、こんだけ騒がしいと休まらんでしょ…
いや泣き過ぎだよ気持ち悪いな、何度も言ってるけどただの酸欠ですよ…泣くなってば…
…なんでヘッドギア付けてるの?
話聞いてる?ヤバイなこいつ…
精神科に声かけとくか…
その日からゴールドシップは、少しずつおかしくなり始めた…
分岐1
退院おめでとう!
「ありがとうございます」
…?
凄い末脚だった!まさに黄金の不沈艦(ゴールドシップ)!最高だった、もうお前から目が離せないよ!
「トレーナーさんのご指導の賜ですよ。私のトレーナーになってくださって、ありがとうございます」
…??
ああ、こちらこそありがとう!お前は最高のウマ娘だ!ところでこのヘッドギアだが
「どうして装着しているんです?」
いやお前にいつでも返せるようにさお前に何かあった時のために両手は空けておきたかったしとりあえず返すよ
「いえ、今は結構です」
…どうした?まだ本調子じゃないのか?お前がこれ付けないなんて…
「…今はそういう気分なんです」
そうか…まったく気分屋だなあゴルシは!しかし髪もさらっさらだなトリートメント何使ってんの俺も同じの使おうかなすげえキューティクルだよたまげたな石鹸で髪洗うのやめよまあとりあえず外して
「外さないでください」
…なんで?
「…とにかくそのままで」
わかった!いや実は結構これ気に入っててさ
タクシーの運転手も話しかけてこないしいい匂いするし
「そうですか」
…どうした?本当に大丈夫か?なんか話し方も…
「大丈夫ですよ、少し疲れているだけです」
そっか!ゆっくり休もうな焼きそば焼いてやるよ病み上がりだしとりあえず10人前?足りる?
「トレーナーさん」
どうしたゴルシ焼きそばか!?焼きそば食べたいのか!まったく欲しがりさんめわかった今から
「違います」
…本当にどうした?いつもならどのタイミングでも焼きそば大喜びしてくれるのに最高級の青海苔買ったんだこれ金箔と同じ値段
「大事なお話があります」
おうなんでも聞くよ!宇宙?セミ?スイカ?ゴルゴル星?トーセンジョーダンに蹴り入れに行くのはダメだぞ次やったら俺減給なんだあの娘ノイローゼになりかけてるらしくてさまあどうしてもっていうなら2回までね、3回で俺クビだから
「違います
私をなんだと思ってるんですか」
…ゴルシだろ?
「…ゴールドシップですが」
本当にどうした、焼きそばにデスソースもスコーピオンソースもニンニクもアブラもわさびも入れないし、食った後に口拭くし、トーセンジョーダンに蹴り入れないし、トレーニング制限しないし、お前まさか怪我でも…
「トレーナーさん」
ん?なんでも言ってみろ聞いてやるかはわかんないけど聞くだけ聞いてやるよ多分聞き流すけどどうした?
「今までご指導いただきありがとうございました」
え?何優勝したらトレーナーポイ捨て?そんな見捨てないでくれよ俺お前が居ないとどうしようもないクズなんだまあお前が居てもクズなんだけどそれなりに頑張るから一緒に宇宙
「最後まで聞いてください
本当に感謝しているんです
担当になっていただいたこと
指導してくださったこと
私がどんな無茶をしても、ついてきてくださいましたね
私、そんなに強いウマ娘ではないんです
走るのが好きで
走れば勝てて
実力はあるから、自由にさせてもらえて
ただ折れてしまいました
120億が私の脚にかかっている
みなさんに期待されている
そう思えば思うほど
脚が重くなって
ゲートが開いて
気がついたらトーセンジョーダンに蹴りを入れていました
120億を溶かした後、レースが怖くなってしまって
ヘッドギアを着けたのはその頃です
これを着けて奔放に振る舞えば、みなさんがゴルシだからと許してくれる
トレーナーさんを初めてお見かけした時、時間が有り余ってそうだなと
ウマ娘が走るのを見るあなたは、いつも楽しそうでした
他のウマ娘からの指導の申し出を断っていたそうですね
君にはもっといいトレーナーがいる、俺にはあの娘しかいないしあの娘には俺しかいないって
声をかけなかったのは、私の性格を見越してですか?
…そうですか、見透かされてしまいましたね
トレーニングを欠かしたことはありません
ですが不安は拭えなかった
自由に走れ、と言ってくださったのはトレーナーさんだけです
100年後も私から、目を離さないでください」
そう言うと、彼女は俺の頭を抱えて
顔を近づけ
ヘッドギアを外し装着して背を向け
「騙された?」と言い、ターフへ駆けて行った
ゴルシちゃんから目が離せないよ
100年後いっしょに宇宙行こうな…