インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 番外編 作:灰崎 快人
消えたAE
これはまだ黒神が若かりし頃の記憶。彼が倉持技研に勤めていた時に起きた出来事である。
「黒神さん!この装甲はどこに保存しておけば良いですか?」
「それはこっちの第3格納庫でお願いします、別のISのものと混ざってしまわないよう注意をお願いします」
その言葉を受け取った作業員はすぐさま打鉄弐式のパーツを移動させる、あのパーツは黒神が厳選して選んだ最高品質のものであった為他のものでは代用できない。
システムも未だに開発が進んではいないが、未だに第三世代型も開発されていない世の中だ。たとえあったとしてもほとんどが試作機としての意味合いが強いだろう。第二世代型を超えるための特殊兵器、そのアイディアが山ほどあるがそれを実際に開発できるかは別問題だ。それに仮に開発できたとしてもそれを扱える操縦者、さらに改良を加えることの出来る技術者がいなければ計画は頓挫する。
それだけ第三世代型ISの開発は難航しているということだ。
「神童さん、先に上がりますね」
「おつかれ、今日も走りにいくのか?」
「軽くですけどね、少しでも頭の中整理したいので」
個人的な楽しみでもある。あの道あの風景を見ていると何処かすっきりするんだ、そういえば最近変な噂を耳にしたな。なんだったか……悪魔のZ?ブラックバード?それが一体何なのか俺にはわからない。
特にこの言葉を耳にするのは高速のサービスエリアだ。走り屋と呼ばれるクループがあるのは前から知っていたが、そのグループが話しているとすればおそらく誰かの二つ名。
「面白い二つ名だな、出会って見たいものだ」
俺は86に乗り込んで、高速へと乗り込んでいった
とは言うものの、そう簡単に出会えるものではなかった。そもそも噂を聞いただけであってその全貌を俺は知らなかった、どんな人物かどんな車なのかすら俺は知らなかった。
軽く休憩してから走り出すとするか、この時間には大体走り屋か大型トラックしかいない。走り屋がいるのであればあれを聞くことにしよう、それで相手の情報を聞き出すか。
「悪魔のZか……」
ポツリと呟いた言葉。それを誰かが聞き取ったようで近づいてくる、外灯が少ない無尽のエリア。近づいてくる相手の顔すら見えない、だが女性だと言うことは理解できた。
「悪魔のZを探しているの?」
あの噂をしているようだった、この人も走り屋だったのか……いや人を見た目で判断するのは失礼だったな。
「いや噂だけ、貴女は?」
「私?私は知ってるわよ。走ったこともあるし乗ったこともあるわ」
あの噂のZに?どういうことだ?もしかして俺が知らないだけで結構知られている存在なのか?それとも彼女が特例なのか?
「その悪魔のZってやつは一体何なんだ?」
「知りたい?」
「興味惹かれます」
「ならついてきて、ついてこれるならね」
ついてこれるなら?あぁ走り屋だから走ってついて来いってことか、俺の腕でいけるだろうか?いやそれでもあの噂心引かれる。86お前の力借りるぞ。
「それじゃあ先に行くわね」
そう言って彼女は一足先に走り去って行った、振り切られる前にさっさと追いつくとしよう。目印はクリスタルホワイト日産スカイラインGT-R、ナンバーは品川34 よ 71-023。白だから目立つな、対してこちらは白黒のAE86。どこまで追いつけるかな?
「さぁいくぜ86!」
旧式のAE86が後ろにピタリとついてくる。あの悪魔のZ、フェアレディZが現役で動いている今、あの車が現役で走っていてもおかしくはないのかしら?
それにしても速すぎる、あの車はメーター読みで180kmまでしが出ないはず。だけど今は軽々と250kmを越えている。普通じゃない、悪魔のZと同じ……いやそれ以上!
「振り切れない!」
本気で走るしかない、出なければ彼の実力は分からないからね!
アクセルを踏み込み私は私の最高の走りをすることにした、あのZにあのブラックバードに近づけた存在そして!
「速くなった、今までのは本気じゃなかったか」
車内では危険信号のように速度警告チャイム音が響く、これは変わらない日常だ。
86がここまで耐えているのは不思議でならないが、俺に力を貸してくれているのであればそれはありがたい。
「それにしても彼女はどこに向かっているんだ?」
湾岸を流しているが未だにこの道から降りていない、出会う為に走っていろと言うことなのだろうか?サービスエリアも過ぎてしまっている、走るにしても長すぎるそう思っていたときだった
「ウインカー……この道を下りるのか、随分とかかったな」
本当に追いつけなくさせるつもりだったのか、何度も同じところを走っていた。俺は試されていたと言うことだろう、そしてある程度の実力が認められた。その解釈でいいのだろう。
そうして彼女についって行った先にあったのはレストラン、ここで一体何が?いやここで話をしているんだろう、駐車場にはフェアレディZ、ポルシェ911が止まっていた
。どちらも古い車には違いない、これで走っているのか?物好きな人もいたものだ、いや人のこと言えないか。
「ごめん、待たせたかな?」
「いや、時間ちょうどだ」
「それなら良かった。少しこの人にZとブラックバードについて話してあげてほしくって」
「知り合い?」
「ううん、ついさっきバトルしてきただけ」
あれはバトルだったのか、勝敗のつけ方がいまいち分からないが……勝ったのか?
あのバトルの勝ち判定は追いついて行けたことなのだろうか?負けは追いつけなかったときと言うことか。
「それで彼は俺たちの何を知りたいんだ?」
「俺たち?」
どういうことだ?まさかこの二人があの噂の二人なのだろうか?
「噂だけしか知らなかったらしいから、どういったものかも知らない。だから一から説明してあげて」
それから話は簡単に進んだ、まず悪魔のZ。この二つ名を持っているのは
そしてもう一人の方は
「なるほど……悪魔に帝王か、それは噂が広がるわけだ」
「それで貴方は?」
「俺は黒神千春、さっき彼女と走って来たんだ。愛車はRの隣に止まっている86」
そう言って車両を指差す、白いRの隣には白黒の86が止まっている。それを見た二人は何処か様子がおかしかった。
「あの86」
「あぁあの時突き放された86だ」
何を言っているのか俺にはわからなかった。もしかして何処かで彼らとは面識がないだけで何処かで戦っているのだろうか?だとしたら俺はそんなことすらどうでも良くただ走りたかっただけと言うことになる。
「ちょっと見に行って良いですか?」
「構わないよ」
少し夜風に当たりたいと思っていた所だ、俺は彼の意見を了承して外に出た。
だが俺の86はいたってシンプルなものだと思う、そこら辺の走り屋なら大丈夫だとは思うが……
「これは自分で?」
「はい、趣味程度ですけど。何か辺でしたか?」
おかしいところはないと思うが、それに走ってみて歪んでいる場所があったら気が済むまで直しているだけなのに
「いや凄いんだ、ここまで徹底的に仕上げていることに。何処かのショップで仕上げているのならまだしも自分で仕上げていると言うのだから驚きだ、素人では到底できないだろう」
「それはどうも」
「少し走っているところ見てみたいです」
それは同感だ、そこにあるZとポルシェの走っている姿もぜひ拝んでみたいものだ。う噂の実力をね。
「じゃあ行ってみますか」
「ええ」
「そうしましょう」
「私を置いていかないでよ?」
そういえば彼女の紹介を忘れていた。
「湾岸の道は知り尽くしていますか?」
「何度も走ってるから問題はない、だから軽く走っても追いつけますよ」
「それは心強い、こっちも本気で走れそうですね」
本気とまでは行かないがある程度の実力も見れそうだ、これからが楽しみだな
「R-200クラブって言うのが最近また私たちのこと狙っているらしいから、出会いたくはないんだけどね」
なんだそのクラブRシリーズだけで構成された走り屋のクラブか?だが何故そいつらが彼女たちを狙う?
「そのクラブは一体?」
「チューナーたちが集まったクラブなんですよ、私たちをターゲットにしている理由は分かりませんけど」
「厄介なものに目をつけられたと言うことですか」
変な噂なり色々と走り屋の世界では回っているようだ、この世界は情報が流れるのが速い。まるでISの情報戦線と一緒だ。
「それじゃあ湾岸に行きましょうか、噂の実力見せてくださいよ」
「あなたの実力もね」
そうしてZを先頭に首都高へと移動した、車のコンディションはいつも通り問題はない。これならこの二人にもついていけそうだ。
同時刻、別のレストランにて6人のチューナーが話を弾ませていた。
「三台で行く、今度こそ逃がさねぇ。白の32Rだろうとブラックバードだろうと、見つけたら必ず堕とす」
「おう!古臭せぇチューナー達の車に、いつまでもデカイ顔させていられるかよ!」
「「「「おう!」」」」
古臭いチューナー、それは一体誰のことを指しているのか分からない。だがあのブラックバードを狙っていると言うことは、あの車を作り上げたチューナーのことを言っているのだろう。だがそれは果たして正しいことなのだろうか?
それは本人たちにしか分からない。
「そういえば最近変なやつがいるの知ってるか?」
「どんなやつだ?」
「何でもあのZの前を走っていたらいい、ただその車両が……」
「どんなやつだよ?」
「86らしいんだ」
「86?トヨタ86か、それならある程度速い奴らならいるだろう。BRZに似ていて少しややこしいけどな」
トヨタ86なら納得だと周りのチューナーはうなずいているが、話し手の男はそうじゃないと話を続ける
「トヨタ86じゃない、AE86だ」
この型式番号のカローラレビンとスプリンタートレノに対し、俗に“ハチロク”という呼称が付けられている。
消して悪い車ではなく、モータースポーツなどに用いられているがここ最近この車を手にしているのは極僅か、特定しようとすれば出来る。だがここ最近でしか確認されていない86の持ち主を探すのは面倒だと言うことだろう。
「AE86だと?そんな夢語るなよ、幽霊でも見たんじゃないか?」
「そうだと良いけどな」
首都高を軽く流しつつ、二つの車を追っていく。流しているだけとはいえ流石に少し速い、Rも少し後ろを走っているがこれがもし本気だったら追いつけているのだろうか?
後一週は踏んで大丈夫か86……
「あの車両でよく来れる、加速を一切落とさない走り方。やはり只者ではないな」
あの男、走り屋やチューナーとはまた違う。一体何者だ?あの86は徹底的に整備がされて尚且つチューニングされていた、普通のものじゃない!
「ブラックバードとZにぴったりついてくる、凄いや……」
もしかしたらZを超えるかもしれない、そんな予感がする
そうしてC1を走っていたとき、零奈さんの後ろから別の車がついてきていた。車種は一体?
後ろに一台……GTR。もしかしたら彼らが言っていたR-200クラブか?だとしたら最悪だな。こんな面倒なことになるとは到底思わなかったが、ここから先は振り切る為に本気で走るだろう。展開は最悪だが、本気を見れるのであれば好都合だ
「見つけたぜ白い32R!」
「ミキだ、こっちで32Rを追っている。前にもいるぞ三台!この速さで走れるやつらは……」
「おそらくブラックバードと悪魔のZ、だが後一台は?」
そうして赤いGTRが四つの車両と並んだとき、白黒の86が姿を現した。
「86だ、あれは噂に聞いたAE86だ!」
悪魔のZ、ブラックバード、謎の多い86そして白の32R。これを逃してなるものかと赤い車両のスピードが上がっていく、これは仕掛けられているんだろうな。
「今浜崎橋ジャンクションから湾岸線に向かってい、横浜方面だ、こっちは羽田トンネルでテヅカ達と合流する予定だ。そっちは?」
「俺たちは横羽線を流している、負けんなよ!」
時刻が遅くて良かった、もし一般車が多かったら事故になっていただろう。全車オーバー250km、下手な操縦をしたら巻き込み事故になりかねない。繊細な運転技術が必要だな。
「今有明ジャンクションを抜けたところだ、そっちは?」
「スタンバイオーケーだ、大井パーキングを降りて羽田トンネル手前にいる。やつらが来たら飛び出すぞ!」
面倒だ、まさかここまでついてくるなんて。どうやら本気でこの二人を倒しに着ているらしい。そしてそれに俺と零奈さんは巻き込まれた形になるのか?こうなると二手に分かれたほうがいいのだろうが、そんなことを意図的に伝える動作や合図など俺は一切知らない。結論このまま四台で振り切るしかない。
「海底トンネルを通過した!」
「わかった!よし俺たちも行くぞ!」
「よっしゃ、やってやるか!」
そうして道端に止まっていた青いRがその場を一気に駆け抜けて行った
「もう一台か……これは本気の本気だな」
それを察知したかのように、前の二台はすぐさま戦闘モードに入っているようだった、さっきよりも速い。これはしっかりついていかないとな!その前に先に零奈さんを優先させるか、俺はアウトオブ眼中だろうからな。
ゆっくりと32RとAE86の順番を変えていく、こうすれば三人は逃げられるからな。
「やるかやられるか、結果が全てだ。あの時はやられたが今度こそケリをつけてやる!」
だが俺にとってそんなことはどうでもいい、面倒なやつが一台から二台に増えただけ。さらに行ってしまえば彼らは悪魔のZ達に全く相手にされていないだろう、俺もさっさと抜ききって走り去るとするか。
「おい、もっと加速しろ!すぐ後ろに来てるぞ!」
「クソッ!スピードが違う!」
比べてしまうのはなんだが、あの青い車両よりもZやブラックバードのほうが速いのは明白だった。どうあがいてもこいつらでは太刀打ちできないだろう。
「来るぞ!」
「畜生!何でこんなに速いんだ!こっちは組みなおした最高のチューンなのに!」
「いいからアクセル踏め!」
こいつらはZを倒す為、ブラックバードを倒す為だけに走っている。だがZもブラックバードもあいつらとは何もかもが違う、求めているものや探しているものが普通じゃない。このスピードに対するスピリッツそのものが違う。良くも悪くも、鎖に繋がれていない自由な存在と言うことだ。
「クソッやられた!」
「Zだけじゃねぇ!まだ来るぞ!」
Zに抜かれた直後、ブラックバードと32Rも続いて追い越していく。残っているのは俺だけだな、さっさと抜いてしまうとするか。そうだろ?86
「うわぁぁ!」
両方からすさまじい速さで抜かれたからだろうか?前の車両は制御が利かなくなり、右に傾いてきている。背後には赤いR、このままでは確実に板ばさみ。だがそんな子の絶対にさせない、いやさせるわけには行かない。事故を起こすのであれば勝手に自分達で起こせ!
「なにやってんだよ!馬鹿ヤロウ!」
一気に左レーンまで移動したことで俺はなんとかクラッシュに巻き込まれることなく、その場を走る抜けることに成功した。少し冷や汗が出たのはそのせいだろう。
「もう一台……Rだな」
まだいたのか……糞みたいなやつらだな
「来た!どうなったんだ!?」
「知るかよ!俺たちの出番だ、絶対に抜かせねえ!」
そう意気込んでいるが、徐々に四台との差は埋まっていく。左のレーンだけずっと開いてるな、その先に一般車もいない……少しいたずらしてやるかな?
「駄目だ、速ぇ!」
自分たちの車がかなわないと知っていても、諦めない精神には脱帽するけどな。現実は現実だ。あのZに勝てるやつは指で数えられるくらいしかいないだろう、その中の一つは間違いなくブラックバード。それ以外は知らん。
そろそろ帰るかな……あまり時間をかけていると睡眠時間もなくなるからな、挨拶は出来ないが変わりに先頭で走ってみようかな!
「んっ……動きが変わった?」
「先ほどまでの走り方ではない、本来の走り方に戻したのか?」
「あの車凄い!Zと並んで走ってる!?」
ここから家までは少し遠いからな、一気にスピード上げて帰るとするか。Zにもブラックバードにも悪いけど、また会うことができたら走ってみたいものだな。
「速い、本当にあのAE86なのか!?」
理論上の話ではあったもののまさか86が300kmを叩きだせるのをこうして目の前で見ることになるとは……侮れないな
「Zが追いつけない……あの人の腕北見さんより凄いのかもしれない」
北見さんが造った最高傑作であるこの悪魔のZが追いつけない、エンジンパワーもあげてボディの強化も施した。だけど……あの86には勝てない。
完全に消えた、AE86……あの人の名前も知らずに完全に突き放されてしまった。また会うことができたらその時は、全力で相手をしたい。一対一で全力で。