インフィニット・ストラトス 最強と天才の幼馴染 番外編 作:灰崎 快人
身に覚えのない一通の手紙。
宛先は俺だった。
千冬から今朝のポストに入っていたと言われて受け取った手紙、差出人は俺の実の親だった。
俺が小学生の頃に行方をくらましてしまった張本人たちからの手紙、今更なんだというのだろうか?
俺は行方をくらました二人に対して嫌気がさしている、俺が家族の話を一切表に出さないのはそれが原因だ。
親が消えてからというものの俺は大変だった。幸いなことに家にお金はあった為ある程度の不自由はなかった、どこからか入ってくるお金を使いながら俺はなんとか生活を続けた。
家のことは自分一人ですべて行っていた。家事や洗濯、身の回りのことすべてだ。
親がいなくなったことが原因でいじめにあったときもあった、親がいないのは普通のことではないらしかったから。教師にも相談しようとしたが、子供の悪い嘘だと最初は信じてくれなかった。
しかし三者懇談など体験をするたびに俺の言葉が現実であることを理解した教師らは、すぐに俺の親を警察に相談した。相談したところで何も変わらなかったが。
いじめも少しずつ減っていき、二年生になった頃。俺は二人の女の子と遭遇した。それが織斑千冬と篠ノ之だった、二人は過去の俺と同じようにクラスメイト数名にいじめを受けていた。そこが一つ目のターニングポイントだっただろう、俺が干渉したことで二人へのいじめはなくなっていき徐々に仲が深まるようになっていた。
それから何度か俺以外いない家に二人を招き入れる時が増えてきた。初めてできた友達が女の子で今も関係があるのは珍しいのかもしれないな。家はそこまで広くはなかったが子供三人で生活するには十分だった。
それから少し過ぎて千冬には一夏という弟が、束には箒という妹ができたことを知った。弟や妹は俺にはいなかった、少しだけうらやましいと感じたのはここだけの話だ。それからして束の家が剣道場を開いているとのことで千冬と一緒に通うことにした、俺は千冬程度ではないがある程度才能を開花することができた。千冬は小学生の剣道の大会でもある程度入賞できるほどに仕上がっていた。
またそれから少したったとき、まだ幼い一夏をつれて千冬は俺の家に訪れた。そこが二つ目のターニングポイントだった。千冬曰く「親に見捨てられた、今まだ小さい弟をこのままにしておきたくはない。ここに置かせてくれ」とのことだった。
俺は考えるまでもなく「Yes」の返事をし二人を招き入れた。中学生になった俺と千冬、一夏の学費は俺が使っている通帳からすべて出した。お金をそこまで使わなかったのが幸いだった。三人分の食費もあり特に困りはしなかった。困ったのは三者懇談くらいだろう。教師から「まさか黒神くんが織斑ちゃんと一緒の家にいるなんてね、変な気は起こしちゃだめよ?」と言われた。今思えはそれは襲うなってことだったのだろう。小学生の時にそんなことするわけ無いだろうが!
そして三つ目のターニングポイントは、中学二年生の時束が開発した白騎士事件だろう。前々から俺と千冬は彼女が作成したISの存在を知っていた。そもそもISの開発には三人で行っていた。
白騎士の操縦者は千冬で、その白騎士を整備するのは俺。そしてその利便性を伝えるために彼女は全世界のネットワークをハッキングし、日本へミサイルを向かわせた。それによって世界はISの利便性とその恐怖を味わうことになった。ISは篠ノ之が開発したと世界に発信された為、操縦者と技術者である俺たちは何も注目されなかった。
引き起こした事件により束の家族は引っ越しを余儀なくされ、剣道場もなくなってしまった。少しお金が浮いたと思ってしまったのはここだけの話だ。
それから俺と千冬は別の高校に進学した。一夏も中学生になった頃束が失踪した、完全に連絡が取れないという状況下の中で俺と千冬は彼女と通話ができる唯一の存在だった。
彼女の無事を確認できた俺たちは安堵したが、それとはまた別の問題がこの年に起きた。それは第二回モンドグロッソだった。その中で一夏がさらわれたのだ。俺としたことが完全な配慮不足だった。
その状況下の中ドイツ軍の援護もありなんとか一夏を救出することに成功した。誘拐犯は確実に社会的に殺しておいた。慈悲はない。
それから俺と千冬は別々の道を歩み、千冬はIS学園の教師として俺は技術者として活躍することになった。
そんな濃い人生の中一番人生の中で薄くなっている両親から今更なんだというのか?心底その手紙の差出人を見たときに嫌気がさしていた。
「一応見ておいた方がいいんじゃないか?実の親でもあるんだろう?」
「そうだけど……」
「一人で見るのが嫌なのであれば、私も隣で読む」
「そうしてくれると心強いよ」
そうして俺と千冬は両親からの手紙をゆっくりと読み始めた。
『拝啓
お元気ですか?
健康では何も問題がありませんか?
立派に育った貴方がこの手紙を読んでいるとき、私たちは既に亡くなっているでしょう。
私たちが今更貴方の親を気取るわけではありません。でも私たちの最期の言葉を聞いてほしいのです。
まず貴方を一人にしてしまってごめんなさい。小学生の貴方が今立派に成長してくれたことを、私たちはうれしく思います。
私たちが貴方をおいて行方をくらませてしまった理由は一つだけ。
私たちはとある裏世界に手を伸ばしてしまったから。
千春もそれには少し気がついているんじゃないかな?』
気がついている、俺が普通の人間ではなく
きっかけは些細だったが俺にとっては大事な出来事だった、それを今も彼女たちには隠し続けている。俺が話せるときが来たら話すつもりだ。
『貴方を一人にしてしまったのはそれが原因、それが原因で私たちは貴方から離れることになった。
わがままな私たちの最期にできることとして、援助金を毎月出すことにした。
この手紙が届いているころには止まっているだろうけど。』
実際にあのお金の振り込みは高校卒業とともに無くなっている。それは二人が亡くなったということなのだろう。
『決められた期間だったけどお金は有効活用できたみたいだからよかった、貴方ならきっとうまくやると思っていたよ。
私たち親が最低なのは今でも変わらないだろうけど、最期に貴方に気持ちを伝えたかった。
わがままな私たちを許してくれとは言わない、だけどこれだけは聞いてほしい。』
……次のページに行くのが怖かった、今まで過ごして散々嫌っていた親からの本心。それを聞くのにここまで覚悟が必要だとは思わなかった。
千冬がとなりにいてもその手は進まなかった。身体が震える、次のページにいけない。
そんな俺を見ていた千冬は優しく抱きしめ、心の安らぎを与えてくれた。今の俺にはよりどころが必要だったから。
「ゆっくりでいい、お前が見たいときに見ろ」
「あぁ……」
それはその言葉を聞いて覚悟を決める。ゆっくりと紙をめくり母親と父親の本心を聞くことにした。
『千春へ
お前を一人にしてしまったには済まなかった、謝って許してもらえるとは到底思っていない。
お前が成長する過程をこの目で見ることができないのが残念だ。
だがお前は昔から心が強く一本の柱が通っている、お前が簡単にへこたれるわけがない。
お前の輝かしい未来と周囲の人間が引き起こす変化に対応できることを願っている。
父親として何一つ親らしいことは出来なかったが、これがせもてものの親心だ。
お前の人生をあの世から応援している。
父親。黒神季紀より。』
『千春へ
私は母親としてどうしようもないことは理解している、親として最低なことを。
それでもこうして貴方に謝りたかった、今更かもしれないけどそうしたかった。
あの時私は貴方もつれて失踪するつもりだった、だけど幼い貴方には裏の世界を見せたくなかった。
だから貴方は家において一人で生活させることにした、実際問題は無かったけどそれでも私は貴方が心配だった。
何度も手紙を送ろうと思ったけれど、裏の掟で出すことは出来なかった。
こうして出しているのは私たちが掟を破ったから。
私たちがしてきたことを許してほしいとは言わない、それ以上のことをしてきたのだから。
母親として貴方のそばにいられなかったこと、つらい思いをさせてしまったこと。
それを謝りたかった。そしてこれかあ貴方が進んでいく未来、
それはとてつもなく険しい道であることは貴方が理解しているかもね。
もう貴方の顔は見ることが出来ないけど、お空で貴方が千冬ちゃんと幸せに過ごしている
人生をゆっくり眺めているからね。
貴方の人生は貴方自身が決めること、私たちは一切口を出すことは出来ない。
どうか貴方の人生が幸せなものでありますように。
母親。黒神佐月より。
P.S.千冬ちゃん、千春のことをどうかお願いします。』
俺の親二人は失踪したその後も俺の心配をしてくれていた、その援助があって今の俺はこうして生活が出来ている。
千冬たちの影響もあるだろうけど、それよりも親二人の存在の大きさが今になってようやく理解することが出来た。
いろいろな感情が俺の中でぐちゃぐちゃになっている、気がつけば俺はまた千冬に抱かれていた。俺の頬には透明な涙が流れていた。
「辛かったな、今までよく頑張ってきた。千春は頑張ってきたんだ、これからもその先もお前は変わらない。だけど今日だけは私に甘えてくれないか」
気がつけば俺は彼女の胸に身体を預け、叫ぶように泣いていた。今まで積もっていた感情が音を立てて崩れていく。
俺の意識は優しく抱きしめてくれる千冬の姿を最後に事切れた。
翌日机の上には二人の手紙と俺が昔好んでいた、イチゴのケーキが置かれていた。
それは二人からの最後のプレゼントだったのかもしれない。